The Miceteethの元ヴォーカリスト、次松大助が紡ぐカラフルなポップス・ワールド

2009/09/10掲載
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 この4月に惜しまれつつ解散したThe Miceteeth。このバンドのヴォーカリストであった次松大助が、1stソロ・アルバム『Animation for oink,oink!』を完成させた。ここに展開するのは、彼のソロ・ユニット“”とも違う、ジャズやカリプソ、クラシックなどを取り混ぜたカラフルなポップス世界。優美なストリングスやトロピカルなパーカッションが奏でるノスタルジックでファンタジックな調べはふと、ハル・ウィルナーが制作したディズニー楽曲カヴァー集『Stay Awake』やヴァン・ダイク・パークス『Discover America』といった名作を連想させたりも。新たな第一歩を踏み出した彼に話を訊いた。


――アルバムの設計図はどんな感じだったんですか?
次松大助(以下、同) 「ガチャガチャしている曲をいっぱい作りたいと思ってたんです。例えば、カリプソのガチャガチャ感。リスナーとしてはこういうのがカッコいいって思ってたけど、これまであまり出してなくて。レコーディングではドラムをあまり入れず、だいたいはパーカッションでいけるようにしたんですが、このスタイルでやるとなれば、基本のフォーマットはカリプソ寄りになるやろな、と。カリプソほど上モノが優雅な音楽って他にはないと考えてたし、それは楽しんでやれるなって思ってたんですよ。あと一昨年ぐらいから、アフロ・ジャズを好きでよく聴いてたことの影響も反映しているかな」
――確かに楽しい雰囲気に溢れてますよね。それと音のゴージャス感がこれまでの音楽との違いを浮かび上がらせているのも印象的で。
 「そう感じてもらえると嬉しいですね。ストリングスも憧れのまま手つかずで残っていた部分やったから、入れたかったんですよね。レコーディングはほんと楽しくて、いままでにないほどに。まるでご褒美の時間みたいでした。それに大人の娯楽っていうか。お金もらってこんな楽しい時間を作れるなんて、すごい娯楽やなって(笑)」


――ソロ・ユニットの“箱”も今回もそうですが、あなたはこれまで普段の生活で流れている空気を自身の音楽に吹き込もうという試みを繰り返してきましたよね?
 「今回は、ドキュメントであってドキュメントじゃない、みたいな感じはあるかも。アルバム制作中は、夢見れる音楽がいいなぁと考えてました。最近、昔のブギウギを聴いてて思ったんですけど、当時はあの音楽が最先端やったわけじゃないですか。いちばん新しい音楽があんな楽しいものだったってすごく幸せなことで、それがすごく羨ましいなぁと思って。タイトルに付けた“アニメーション”って言葉も、“明るくする”とか“活気付ける”という意味があるんです」
――プレス・シートに〈最近、色んなことがどうでもよくなってきた〉と書いてあったけど、その結果こんなに明るさを湛えた作品ができたことが感慨深くて。
 「なんですかね。いろんなことがどうでもよくなったことから、最近人見知りしなくなって。それまでは、いろんなことがどうでもよくなかったから(笑)。人からどう見られてもいい、って思えること。そこですよね、外向き加減は。言葉足らずで多少誤解を受けても、ある部分がしっかりとしていればまぁ大丈夫かな、って思えるようになって。そのことは自分のなかでかなりデカかったんですよ。ある日ハッと気づいたんですけどね(笑)」
――アーティスティックなアルバムだけど、それでいてポップなフィーリングを持った曲ばかりで。なにやら音楽との戯れ方が大胆になったって印象がある。
 「なるほど。前に“箱”のアルバム(『long conte』)を出したとき、聴き手が想像力を働かして聴いてもらわないと成り立たへん曲があるなって感じたこともあって。なので今回は、わざわざそういう力を働かせなくてもなるべく伝わるようにしたいって考えたりしたんです。例えばピアノだけでもはっきりと世界が描けていたりと、ガッツリいくところはいくというふうに決めて。最後の曲(〈冬のユビキタス〉)なんか、かなりポップやと思うんです。なんかポップで締め括ったほうがシブいと思ったんですよね(笑)」
――“箱”には、行間を読んで面白さを味わう曲が多いから。
 「そうそう。今回は説明のいらないアルバムですね」
――そういえば以前にソロ・アルバムが出来上がったらマイスのメンバーに聴かせたい、と言ってましたが。
 「ミックスの作業中に呼んで、どう?って相談したりしましたけどね。やっぱりいちばん身近なミュージシャンやし、ミュージシャンとしての意見をいろいろ聞きたいから。アルバムはちゃんと送りますよ。会って渡してもいいんですけど、なんかちょっと……(照笑)」


取材・文/桑原シロー(2009年8月)
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