アメリカで話題の音楽ムーヴメント“インディ・ジャズ”とは?【アレックス・アンド・サム『ザ・ドリーマー』全曲解説付き】

アレックス・アンド・サム   2010/10/06掲載
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 米ロサンゼルスから発信され、新たな音楽ムーヴメントとして全米で盛り上がりを見せている音楽ムーヴメント、“インディ・ジャズ”。シーンの核を担うアレックス・アンド・サムが日本デビューを果たし、いよいよ日本にも到来の兆しを見せる“インディ・ジャズ”の魅力に迫ります。

 また、10月6日に発売されたアレックス・アンド・サム待望の2ndアルバム『ザ・ドリーマー』も徹底解剖! あわせてお楽しみください。


01.“インディ・ジャズ”とは? その魅力に迫る!
文/房賀辰男


アレックス・アンド・サム
 9月にアルバム『サウンズ・ライク・ジス』で日本デビューを果たしたばかりのアレックス・アンド・サムが、10月6日に早くも2ndアルバム『ザ・ドリーマー』をリリースし、日本においてもブレイクの兆しを見せている。アレックス・アンド・サムは、70年代のウエストコースト・ミュージックに通じるアコースティック楽器を軸にしたポップかつ繊細なメロディと、女性ヴォーカルのノスタルジックで透明感のある風情で、地元ロサンゼルスを中心に高い人気を誇っている男女デュオ。


ジョアンナ・ニューサム
 そんな彼らを軸に、いまアメリカで盛り上がっているのが“インディ・ジャズ”と呼ばれるムーヴメントだ。簡単に説明すると、もともとはロサンゼルスを発信源に、アパレル業界や大学生から広まった音楽スタイルを指す言葉で、それぞれにジャズやブルース、ロックにワールドなどをドリーミィかつノスタルジックに纏め上げた楽曲センスを掘り下げれば音楽オタクとしての一面も出てくるはずだが、見た目にはあくまでファッショナブル、肩肘を張らない落ち着いた雰囲気を醸し出すアーティストのことをいうのだという。アレックス・アンド・サムのほかに、アヴィ・バッファローや(ニューヨーク出身だが)ヴァンパイア・ウィークエンドらが代表格。サウンド的に一貫性のない彼らの音楽に共通して見られるのは、21世紀に生きる“普通の若者”の姿を、あるがままに切り取っているという点だ。あえて積極的に政治問題に首を突っ込むことはしないし、リスナーに問題提起を行なおうという姿勢も見せない。彼らが綴る物語は、あくまで誰の日常でもつねに起こりえる恋愛や願い、失敗などに関する些細な出来事ばかりだ。そこには、隣にいる誰かの、あるいは意外と知らない自分自身の裏の顔が浮かび上がって、ドキッとさせる魅力が(期せずして)含まれている。いま都会の若者に受けているのは、人のつぶやきを読むような親しみやすさと、裏腹の思わぬ意外性のためなのだろう。また、同時代の一般文化をリアルに描く手法はポップアート的であって、その時代の空気を閉じ込めているという意味での意義深さも付け加えておきたい。

 さらに興味深い動きとして、最近ではジョアンナ・ニューサムザ・バード&ザ・ビークレア・アンド・ザ・リーズンズらがインディ・ジャズの代表格に挙げられることもあれば(そもそもシーンの中核をなすアレックス・アンド・サムのメンバーがいずれもバークリー音楽院でクラシックを学んでいて、チェロやホーンの導入を得意にしていることを鑑みれば自然な流れではある)、ストリート・カルチャーのカリスマ、トミー・ゲレロがアレックス・アンド・サムのファンを公言したりもしていて、さらなる広がりを感じさせている。今後、インディ・ジャズが北米ポップス・シーンをどのように動かしていくのか、その行方が楽しみだ。


02.アレックス・アンド・サム、待望の2ndアルバム『ザ・ドリーマー』を徹底解剖


■『ザ・ドリーマー』アルバム・レビュー
文/天辰保文


ザ・ドリーマー
 肌触りは柔らかくて、手のひらで言葉やメロディやリズムを遊ばせているとくすぐったい。感覚に産毛というのがあるとしたら、それと戯れているような感覚だ。男性のアレックス・シルヴァーマンがギターやキーボードを演奏し、女性のサマンサ・シドリーが歌う、そしてアレックスも歌う。ロサンゼルスの高校で知り合って以来の仲だからか、二人の気負いのない関係が音楽にもでていて、普段の我々の暮らしぶりに自然に溶け込んでくる。創意というものに対して肩肘張ったところがないのだ。そう言えば、アレックスはジャンゴ・ラインハルトレス・ポールが好きで、マーク・リボーにはやられたと思い、ソングライターとしてランディ・ニューマンを崇拝するのだという。これだけでも趣味のよさがわかるが、それに溺れず、ちゃんとした技術も身につけているあたりが並と違う。それはサマンサも同様で、彼女の歌声の心地よさと言ったら、3センチほど宇宙に近づいた、そんな気分だ。



■『ザ・ドリーマー』全曲解説
文/房賀辰男


(1)The Dog Catcher
“まるでこの曲のようにシンプルだ”と歌われているように、穏やかなアコースティック・ギターの音色を軸にしたシンプルなナンバー。メイン・ヴォーカルをアレックスが取っており、サビではサムとの絶品のハーモニーを聴かせる。ノスタルジックなスライド奏法も効果的だ。


(2)Everything New
バンジョーやアコーディオンの音色を取り入れたウエスタン風の楽曲。古き良きアメリカの風景を綴ったと思われる詞世界が曲調によく合っていて、どっぷりとその世界に浸ることができる。全編が二人のヴォーカル・ハーモニーで覆われており、煌びやかな印象も受ける。


(3)Emily Song
“エミリー”に対する恋心を綴ったセンチメンタルなナンバー。アレックスの繊細なヴォーカルが、シンプルなギターのアルペジオに乗って胸に迫る。要所要所でささやかに導入されるピアノも含め、シンプルな曲調にメリハリをつけたアレンジメントが秀逸だ。


(4)Right Back Around
サムがリード・ヴォーカルを取ったナンバー。ブルージィかつジャジィなギター・プレイをバックに、しっとりとした美麗な歌声を堪能できる。『DownBeat』誌で新人賞を受賞した彼女のポテンシャルの高さが伝わる、その卓越したヴォーカリゼーションには心を奪われるばかり。


(5)The Dreamer
アレックスがほぼ弾き語りに近い形で送るアコースティック・ナンバー。陰鬱なメロディとともにゆったりと紡がれる“語り”は真摯に胸に響き、若くしてストーリーテラーとしての説得力を蓄えていることを思わせる。緊張感の中にゆとりを持たせるアコーディオン遣いもうまい。


(6)Check Your Machine
彼らが尊敬するというビートルズ風のポップ・チューン。軽快に弾むポール・マッカートニー譲りのベース・ラインも楽しく、愉快な日常風景を切り取った歌詞も魅力的。そんな中、“一人きりでは生きられない”と辛辣に締めるあたりは、一筋縄ではいかない彼ららしさか。


(7)Time To Let You Go
バンジョー風のギターとアコーディオンをフィーチャーしたナンバーで、リード・ヴォーカルをサムが取っている。“あなた”との別れと旅立ちを綴った歌詞の行間にある“覚悟”をたくみに描出する、か細くも芯の強さをうかがわせるヴォーカルが涙を誘う。


(8)Your Hands

曲ごとにさまざまなヴォーカル・スタイルを聴かせてくれるアレックスだが、このスロー・ナンバーではオーガニックでソウルフルな歌声を披露。民俗音楽のテイストをたたえた管楽器を導入するなどして作り上げた、ノスタルジックなムードが味わいどころだ。


(9)Someone That Cares
楽器演奏を極力シンプルに抑え、アレックスとサムのヴォーカル・ハーモニーを前面に押し出した一曲。とくに華麗に高音域をたゆたうサムの歌にはハッとさせられるものがあり、“過ぎ行く日々の中で、早く大事な人を探すんだ”というメッセージと相まって強い印象を残す。


(10)Old Man In Me
アルバムのラストを飾るのは、柔らかなアコースティック・ギターが特徴的なナンバー。ドラムが入り徐々に盛り上がりを見せる後半がドラマティックな仕上がりで、一語一語を噛み締めるようなアレックスのヴォーカルが心地よくも、どこかしんみりとした余韻を残す。


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