俺らなりのヒップホップを提示するだけ―― BULL CAMP×MIKRIS

BULL CAMP   2018/09/14掲載
はてなブックマークに追加
 ブーム・バップの醍醐味が詰まった、骨太な魅力を感じさせる新作『TRAVEL RECORD』を8月に発表したヒップホップ・ユニット、BULL CAMPJBMZKA)と、“らしさ”溢れるマッド・テイストを全開にしたアルバム『HELL』が注目を集めているラッパーのMIKRISによる鼎談が実現。古くから活動を共にしてきた盟友でもある3人に、お互いの作品や個性、さらには彼らの地元である千葉の現状についても語ってもらった。
――まず、JBMさんにお聞きしたいのですが、MIKRISさんの『HELL』を聴いた感想を教えてください。
JBM 「『HELL』っていうタイトルだけど、MIKRISは天国を夢見ている感じが匂いましたね(笑)」
MIKRIS 「たしかに。このアルバムを作るのに何年もかかってるんですよね。例えばPSYCHO PATCHと作った〈A DAY IN MY MIND〉も2年前ぐらいの曲です。ZKAくんはこの作品を一緒に作っていたから知っていると思うけど、俺はいろんな場所で溺れていた感じだったので(笑)、自分に起きたトラブルやそこで考えたことをリリックにしていった」
JBM 「何回溺れたかは知らないけど、めちゃくちゃ溺れてる時期は俺も知ってます」
MIKRIS 「漂流してたっすね」
――NERO IMAIはこの作品の中でも大きな存在感を発揮してると感じました。
MIKRIS 「そうっすよね。BUSHMINDから“ラップがすげえカッケー”ヤツがいるって聞いて、作品を聴いて、会ってみたくなったんです。〈HSWR〉という曲をやってるUNDER$TABLEは、J.COLUMBUSDJ HIGHSCHOOLとNERO IMAIと俺の謎のユニットです」
ZKA 「MIKRISくんは選ぶビートが変わっていて面白い。VOLOJZAのビートにしてもまさかこれを選ぶとは……というチョイスをしてくる。アルバム最後の僕のビートも、自分としてはラップが入るとは考えてなくて、BULL CAMPのアルバムでスキット的に使おうとしてたんです。そういう“歌えるのかな?”っていうビートでラップできるのがMIKRISくんですよね」
MIKRIS 「毎回ビートメイカーの人に言われます。“あれを選ぶとは思わなかった”って」
――そんなMIKRISさんはレコーディングの仕方も人と違ったりするんですか?
JBM 「こだわりがすごいなと毎回思いますね。ZKAちゃんのところでレコーディングしている時にMIKRISが変えて欲しい箇所を伝えているのを聞いて、俺には理解できないケースもあったんですけど、結果的にMIKRISの音楽ができるんです。俺は、もしかしたらそれほどヒップホップが好きじゃないのかもしれない、こんなにこだわってレコーディングしたことないぞ……って思っちゃうぐらい。これまでいろんなラッパーとレコーディングしてきましたけど、その点でダントツですね。MIKRISにしか聴こえない超音波的な音が聴こえてるのかなって」
ZKA 「MIKRISくんは、レコーディングする前に完成形が見えている人だから、それに近づけるための指示をしてきますね。録音も早くて、難しいラップがタイトに仕上がっていく。そういう点でテクニカルですね」
MIKRIS 「ありがとうございます、そんなに褒めてもらって」
一同 「ははははは」
JBM 「ZKAちゃんに関して言えば、録音した後、その曲が良かったか良くなかったかを背中で語る人なんですよ。それでだいたいわかるんです」
MIKRIS 「それ、俺もよくわかる!(笑)」
JBM 「今回はがっつりタッグを組んで臨んだので、そういう判断がいつもよりわかりやすかった。制作に迷いがなかったですね」
ZKA 「リリックに対してのディレクションはしないですけど、この言葉がいらないなってなると、消しちゃったりしますね。あと、Jさん(JBM)がトラックに対して乗ってない、ラップしづらそうだなっていうのは全部却下しました」
JBM 「その場では“ああ、わかりました”ってZKAちゃんは言ったりするんですよ。でも帰りの車で聴くと、やっぱりZKAちゃんが正しいと思ったヴァージョンになってる(笑)。頑固だなーって」
――MIKRISさんはBULL CAMPのアルバムはどうでしたか?
MIKRIS 「Jさんは長いキャリアがあって、BANG BLACKS(JBM&KGE)とかソロでもやってきたわけですけど、相変わらずブレがなくて統一感が完璧だと思います」
JBM 「あざっす(笑)。俺はいろんなことをやる器用さはないのでね」
ZKA 「この2枚のアルバムは制作時期も同時進行で、ほぼほぼ一緒でしたよね」
――JBMさんとMIKRISさんには4年前にも取材させてもらいましたが、この4年間で世界的に見てもヒップホップもいろいろ変化があったと思うんです。その点に関して考えることはありますか。
JBM 「たしかに4年前から比べても、ヒップホップはだいぶ変わったと思います。ホントいろんな人たちがいるじゃないですか。例えばですけど、日本だったら、BAD HOPKOHHもいれば、三島十影みたいなラッパーもいる。だから、ますます他の人のヒップホップに何かを言う状況ではないし、時代の流れとか関係なく、俺は俺なりのカッコイイと思うヒップホップを提示するだけですよね。自分の根本は変わらないわけですし。フィーチャリングしたラッパーたちもそういう“自分はこうです”という信念がある人たちです。J.COLUMBUSもそうですし、MEGA-Gはテクニカルだし、D.D.Sは次世代のラッパーで同じ匂いのするヤツですね」
――MIKRISさんはBOB(THE SEXORCIST)の存在が気になるそうですね。
MIKRIS 「BOBは昔から好きなラッパーなんです。あんなムキムキな人が実際にタフなラップしてて言葉がしっかりハマってると本当にカッコイイなと」
――僕はBULL CAMPのアルバムを聴いて、A.G.DITCターマノロジーがいまも活発に活動して作品をリリースしていることなどを思い出しました。近年、彼らのようなアメリカのベテラン勢もとても良い作品を作り続けているじゃないですか。
JBM 「そうですよね。A.G.が売れてるかと言ったら、そんなに売れてはいないと思うんですよ。でもA.G.がヤバいラッパーだってことは、アメリカでヒップホップをわかっている人はみんな知っているわけじゃないですか。やっぱりA.G.もターマノロジーも大事。最近だと、俺はコンウェイとかが好きですね。その一方で、気になってテカシ・シックスナインとか聴いたりしますけど、俺があのスタイルをいきなりやり出したなら“どうしたの?”ってなりますよね」
MIKRIS 「え?! Jさん、そういう新しいのも聴いてるんすか?」
JBM 「聴き込んでるわけじゃないけど、話題になってるし、いちおうチェックするでしょ。でもたぶんMIKRISが思ってるよりもラップもカッコイイと思う。けっこうがなってて。イメージとは違うと思う」
MIKRIS 「聴いてみようかなー」
――あと、この2つの作品のジャケットが面白いなと。
JBM 「ジャケットに関しては基本、デザイナー主導ですね。いつも通りの“BULL CAMPっぽさ”ではない感じにしたいというのはありました。俺とZKAちゃんがアルバム出すってなったら、ぱっと思い浮かぶジャケって色は白黒で、フードをかぶって、みたいのじゃないですか? だから、それが逆にイヤだったんです。新しいところにアプローチしたかった」
MIKRIS 「HONGKONG STARRっていう、『HELL』と同じデザイナーが作ってるんですよ。ちなみに俺の写真はマザー牧場で撮りました(笑)」
JBM 「MIKRISの写真は爽やかさ入ってますよね。でも、丘の上の後ろからゾンビが大量にブワーっとやってくる直前を捉えた、そういうイメージでしょ?」
MIKRIS 「まあまあ、そうっすね。HONGKONG STARRに衣装も全てプロデュースしてもらったんですけどジャケで着てる服、超高いんですよ。上と下で8万ぐらいするんですから! 買い取ったんです!」
JBM 「そうなんだ(笑)! HONGKONG STARRは、俺とMIKRISの作品をずっとやってくれてて、その上でこういう仕上がりにしてくれた。彼はMASS-HOLEのミックスCD『WHITE TAPE』のジャケも手がけてますね」
――近年、千葉や松戸といった地元のヒップホップに変化などはありますか?
JBM 「俺は常磐線沿線の松戸とか柏あたりを拠点として活動してきたんですけど、昔はヒップホップのライヴをするっていったら柏しかなかった。松戸はヤンキーが多い街で、そんなにヒップホップは盛んじゃなかった。でもここ何年かで松戸のアーティストを集めたパーティだったり、DELIさんが松戸市議会議員になったこともあって、行政がお金を出して、ストリート・カルチャーやヒップホップをメインにした〈XP'18 〜Experience Street Culture 2018〜〉(9月23、24日に松戸中央公園で開催)っていうでっかいフェスも始まりますね」
――そういう試みもあるんですね。
JBM 「あと、サイファーやる若い子が増えましたよね。近所の公園で子供とキャッチボールしてたら音が聴こえてきて、中学生ぐらいの子たちがフリースタイルをやってたんです。自分の住んでるところは松戸の外れで駅もないですし、昔じゃそんなこと考えられないですよ。MIKRISのところにも10代のラッパーがいるでしょ?」
MIKRIS 「16歳のラッパーがいます。それこそサイファー系のパーティに遊びに行って控室で話してたら、当時15歳だったんですよ。"ええーっ?"って感じじゃないですか。その年齢でラップやって、勝負したいっていうなら、どうやってCDを出せばいいかとか、どうすればお金をもらえるのかとか教えてあげたいなって。自分も若い頃、先輩にいろいろ面倒見てもらったし、そういうことをしてあげたいなって」
JBM 「ビートメイカーのHIMUKIには会いましたけど、元気でしたね。ベンツ買ったり、家買ったりしてるそうです(笑)。そういうことを彼は知られたい人なんで(笑)。地元についてだと、〈WE ARE〉はノリで千葉ロッテマリーンズのことを書いた曲なんですよ。ロッテは去年成績も調子も超良くて、そんときの思いをしたためた」
――JBMさんはロッテの大ファンですからね。
MIKRIS 「Jさんも、そろそろロッテ好きのラッパーとして認識された方がいいですよ」
JBM 「輪入道には言っといた。あいつも千葉のヤツなんですけど、ロッテから輪入道にそういう仕事が行きそうな予感もするんで(笑)」
――輪入道はロッテのファンなんですか?
JBM 「違うんですよ。だから、もしロッテからそういう話が来たら、それだけは俺にも一枚噛ませろと(笑)。他のことでお前が千葉をレペゼンすることを俺は応援する、ただしロッテは違うだろ、そこは譲れない、と。そしたら、“押忍!”って言ってたね(笑)」
MIKRIS 「ははははは」
――今後はどのような予定ですか?
JBM 「まあ、やっぱりライヴをやっていきたいですよね」
MIKRIS 「俺は『6 COFFIN』をリリースした時に“棺桶ライヴ”っていう棺桶をステージに用意したライヴをやったので、今回も一度は特別に工夫したライヴをやりたいですね。“HELLライヴ”みたいな禍々しいライヴがしたいです」
JBM 「それはだいぶヘルってるね(笑)。もうMIKRISじゃなくて“HELLRIS”でいいんじゃない?!」
取材・文 / 二木 信(2018年8月)
Live Schedule
NEW DECADE
2018年9月15日(土)
東京 池袋 BED
開場 / 開演 22:00
2,500円(税込 / 別途ドリンク代)
LIVE: KING104 / KILLER EAT / KNZZ / MIKRIS / PSYCHO PATCH
DJ: BUSHMIND / CRONOSFADER / ETERNAL STRIFE / MANTLE / MASS-HOLE / THE TORCHES
www.ikebukurobed.com/

365 OF MANTEE THE SEXORCIST
2018年10月6日(土)
東京 中野 heavysick ZERO
開場 / 開演 23:00
2,500円 / with flyer 2,000円(税込 / 別途ドリンク代)
出演: NIPPS / CQ / B.D. / VIKN / SPERB / MEGA-G / KNZZ / C.J.CAL / JBM / MIKRIS / KING104 / BOB / Mr.Itagaki a.k.a. Ita-cho / HOLIDAY / J-SCHEME / SCARFACE / MUTA / DOPEY / KILLA TURNER / D.A.I. / MANTLE
www.heavysick.co.jp/zero/
※ 掲載情報に間違い、不足がございますか?
└ 間違い、不足等がございましたら、こちらからお知らせください。
※ 当サイトに掲載している記事や情報はご提供可能です。
└ ニュースやレビュー等の記事、あるいはCD・DVD等のカタログ情報、いずれもご提供可能です。
   詳しくはこちらをご覧ください。
[インタビュー] 消費者だったら消費者らしく盛り上がれ “侵食する”ARKHAM[インタビュー] “歌がうたえればそれでいい”って思えるわたしでありたい 山崎あおい『FLAT』
[インタビュー] クラシック音楽と人々、作曲家と現代人を“つなげる”清塚信也の最新アルバム『connect』[インタビュー] “HIP HOPミーツallグッド何か”の現在地点――サイプレス上野とロベルト吉野『ドリーム銀座』
[インタビュー] また一歩“最終形態”へと近づいた――KOYAN MUSIC『No Border』[インタビュー] 元キャロル内海利勝 10年ぶりのソロ・フル・アルバム完成!
[インタビュー] NHK大河ドラマ『西郷どん』の劇中歌で話題 奄美生まれのシンガー、城 南海が全国ツアーを開催[インタビュー] 挾間美帆がm_unitと描く三部作完結編『ダンサー・イン・ノーホエア』
[インタビュー] 自分には音楽がある KID FRESINO『ài qíng』全曲解説[インタビュー] 人間として、自分に何が出来るか 5lack『KESHIKI』
[インタビュー] 結成20周年を迎えたサックス・アンサンブルの先駆者 ――サキソフォビア『ノクターン』[インタビュー] 主人公の輪郭を求めているのかもしれない 中村雅俊、通算55枚目のシングル「だろう!!」
https://www.cdjournal.com/main/special/showa_shonen/798/f
e-onkyo musicではじめる ハイカラ ハイレゾ生活
新譜情報
データ提供サービス
弊社サイトでは、CD、DVD、楽曲ダウンロード、グッズの販売は行っておりません。
JASRAC許諾番号:9009376005Y31015