【遠藤真理 interview】 大海原を突き進んでいく一艘の船をイメージして演奏した『龍馬伝紀行』の音楽

遠藤真理   2010/09/17掲載
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 2005年に、金聖響指揮オーケストラ・アンサンブル金沢サン=サーンスのチェロ協奏曲第1番などを収録したアルバム『ジャクリーヌの涙』で鮮烈なデビューを果たし、いまや人気チェリストとして大活躍中の遠藤真理。先ごろ、注目の新録音を含むアルバム『チェロ名作選〜龍馬伝紀行III[ロング・ヴァージョン]収録』をリリースしたばかりの彼女に話を伺った。





――NHK大河ドラマ『龍馬伝』第3部のエンディング・コーナー『龍馬伝紀行』のテーマ音楽を担当されていましたね。ギター・デュオのいちむじん(第1部)、ピアノの清塚信也さん(第2部)に続く3代目でした。
遠藤真理(以下、同)「プロデューサーのかたに、ピアノとチェロだとありきたりなのでチェロ1本でやってみませんかって提案されて、でもそれだと限界もあるので、多重録音を希望しました。佐藤直紀さん作曲の『龍馬伝』テーマ曲のメロディをチェロ三重奏にアレンジしてくれたのは、大学の同級生でもある村中俊之君。自分で弾いた伴奏に合わせてメロディを演奏するのはなかなか面白い体験でした。今回のアルバムには、TVで放送されたものに加えて、別アレンジのロング・ヴァージョンも収録しましたので、一つの完成された作品としてお楽しみ下さい」
――ドラマの第3部は、長崎を主な舞台に“亀山社中”の発足、そして“薩長同盟”の成立のために奔走する坂本龍馬の姿が生き生きと描かれていましたね。
 「私も興味が湧いてきて、司馬遼太郎の『竜馬がゆく』などを読み始めましたが、龍馬って本当にどれだけ魅力のある人なんだろう! って。行く先々で人々を魅了し、女性にもモテて……まあ、福山雅治さんほどイケメンではなかったとしても(笑)。私の中では大海原を突き進んでいく一艘の船のようなイメージ。佐藤さんのテーマ曲にも、そして私の演奏する〈龍馬伝紀行III〉にも、そんなドラマティックな龍馬というキャラクターが詰まっていると思います」
――ザルツブルクの音楽大学への留学経験もある遠藤さん。龍馬と同じく、日本と外国の文化の違いについて考える機会も多いのではないでしょうか?
 「龍馬が外国について知りたい、日本を何とかしたいって焦っていた気持ちに心を打たれます。留学時代にはよく日本について質問を受けたのですが、私自身が不勉強で、歴史一つとっても満足に答えられなくて恥ずかしい思いをしたことがありました。やっぱり実際に外国へ行ってみてはじめてわかることってありますよね。外から見た日本の姿とか、愛国心の大切さとか。もちろんヨーロッパでは、クラシック音楽が一般庶民のレベルで人々に深く根付いていることなども実感できたし、留学して本当によかったと思います。でも今は、日本から出たがらない若者が増えているそうです。そんなニュースを龍馬たちが聞いたら、ショックを受けるかもしれませんね」
――今回のニュー・アルバムには、ほかにもチェロの魅力を堪能できる名曲たちがいっぱい。オッフェンバックの「ジャクリーヌの涙」はデビュー・アルバムでも好評だった楽曲ですね。
 「高貴でロマンティックなメロディだけど、どこか気丈で、あまりメソメソしていないところが好きです。タイトルとは裏腹に“男泣き”っていう感じ(笑)。そんなイメージで演奏しました」
――2ndアルバム『サリー・ガーデン〜チェロ・フェイヴァリッツ』からも名旋律を集めましたね。とくに、もともとアイルランド民謡である表題曲や、聖歌の「アメイジング・グレイス」、フォーレの歌曲をカザルスが編曲した「夢のあとに」のような“歌もの”が素敵です。
 「〈サリー・ガーデン〉などのアレンジを手がけてくれたのも村中君で、当時からとても信頼していました。歌詞のあるものはオリジナルの歌唱を聴いたり、詞の意味を深く考えたりします。演奏する時も“歌う”ことを意識していますね。でも言葉がないぶん、聴く側のイメージをかき立てるところがチェロの魅力だと思います」
――今後はどんな作品を演奏したいですか?
 「ここ数年は、ピアノの三浦友理枝ちゃんと共演することが多くて、彼女のレパートリーであるフランスものに惹かれていました。今年7月に共演したプーランクのチェロ・ソナタも演奏される機会の少ない作品ですが、2人で選曲作業をしているときにYouTubeで見つけて聴いて、いいなと思って。もちろん、ブラームスとかシューマンとか、ドイツものにも今後は積極的に取り組みたい」
――三浦さんにヴァイオリンの川久保賜紀さんを加えた“トリオ”での演奏や、新しいレコーディングも楽しみにしています。
 「私も楽しみです(笑)。それと、将来的には弦楽四重奏にも挑戦してみたい。トリオだとピアノを中心にまとまるけど、4人で一つの楽器になるのって本当に難しそうですよね。でもいつかベートーヴェンの作品とかを演奏したいです」
取材・文/東端哲也(2010年8月)
写真(c)Yuji Hori
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