ローカルな個性とグローバルな普遍性 FOUR HORSEMEN『FOUR HEAVENLY KINGS』

FOUR HORSEMEN   2019/05/13掲載
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 長野・松本を拠点に、作品リリースやビート提供、客演、ライヴと精力的に活動を行なっているラッパー / ビートメイカーのMASS-HOLE。2017年には地元で活動するラッパーのKILLIN'GVILLAGE O.G)と結成したユニット、KINGPINZとしてアルバム『KINGPINZ』を発表し、スローでヘヴィなビートと攻撃的なラップからなるハードヒッティングな作風を確立すると、その作品にも参加していたMac Ass Tigerと21歳のMIYA da STRAGHTという地元の若手ラッパーを新たに加えた4人組ユニット、FOUR HORSEMENを結成。リリースされた1stアルバム『FOUR HEAVENLY KINGS』は現場映えする重厚なビートとマイクリレーがもたらす高揚感が詰まった特濃のブーンバップ作品となっている。世代を超えて集結した4人のラッパーとバックDJのSIN-NO-SKEからなる彼らが共有するものとは果たして?
――長野県で新たに誕生したユニット、FOUR HORSEMENですが、その土台となったのは、MASS-HOLEとKILLIN'Gのユニット、KINGPINZということになるんですよね?
MASS-HOLE 「そうですね。KINGPINZのアルバムにMac Ass Tigerが参加して。その後、このなかで一番若いMIYA da STRAGHTのライヴを観て、ヤベェなと思ったところから曲を録ろうということになり、その話が派生して、その2人がメンバーとして加わったのがFOUR HORSEMENなんです」
――新たに加わった二人はおいくつですか?
MIYA da STRAGHT 「21です」
Mac Ass Tiger 「24です」
KILLIN'G 「で、俺は33」
MASS-HOLE 「気持ち的には28と言いたいところなんですけど、俺は37です(笑)」
――新加入の2人は世代が一回り以上違うと。
MASS-HOLE 「だから、V6でいったら、トニセン、カミセンみたいな感じですよ」
――はははは。トニセンの2人はカミセンにとってはどんな先輩ラッパーですか?
MIYA da STRAGHT 「MASS-HOLEさん、KILLIN'Gさんは、俺が高校生の頃からずっとライヴを観てきて、作品をずっと聴かせてもらっていたお二人ですね」
Mac Ass Tiger 「自分もそうです。ラップをやる前から客としてライヴを観ていたので、そんな2人に誘ってもらったのは光栄ですね」
――つまり、FOUR HORSEMENは、長野を拠点にヒップホップを発信し続けてきた2人とそれを受け継ぐ若い世代の2人で構成されているわけですね。
MASS-HOLE 「そういうことになりますね。あと補足すると、僕ら2人との違いはもう一つあって、MIYA da STRAGHTとMac Ass Tiger、そして、バックDJのSIN-NO-SKEは長野市在住なんですよ。長野市には、松本市とは異なる長野市独自のヒップホップの土台があって、毎月みんなでやっているパーティもあるし、2人はそこで育てられたんですよ。だから、彼らは突然変異的に登場したわけではなく、今までも地道に活動していましたし、仮に僕らがいなくても、これから先も変わらずやり続けているであろう、そんな連中なんですよ。だって、2人とも最初観た時から自分のスタイルが出来上がってて、格好良かったですからね」
――イベント〈りんご音楽祭〉が開催されていることもあって、MASS-HOLEの地元である松本は音楽リスナーの間で認知度が高いと思うんですけど、長野市のシーンはどんな特色があるんでしょうか?
KILLIN'G 「まず距離的に言うと、長野は松本から車で1時間くらい。街の雰囲気も違いますよね?」
MASS-HOLE 「そうだね。長野市は県庁所在地で人口も多いですし、街もデカくて。上の世代でいうとYOU THE ROCK☆が長野市出身なんですよ。だから、その文脈も長野市には少なからずありますし、ブーンバップのゴツいヒップホップをやってるやつらもいれば、違うスタイルのやつらもいて。スタイル的に幅広いし、独自なものがあるんですよ」
DJ SIN-NO-SKE 「僕が高校生だった10数年前からずっとやり続けている〈水脈〉というパーティがあって。そのクルーにはレゲエのセレクターがいたり、ラッパーがいたり、色んな音楽が楽しめるんですけど、それを観ていたのが、Macであり、MIYAであるという」
MIYA da STRAGHT 「〈水脈〉はSIN-NO-SKEさんが加入して、今は僕とMacさんも入っているんですけど、客としてずっと観てきたこともそうですし、自分にとって身近な存在であるMacさんから受けた影響が今の自分のスタイルを作っているんだと思います」
――Macくんは昨年のUMB長野予選の優勝者でもあるんですよね?
Mac Ass Tiger 「はい。まぁ、全国大会は一回戦で負けちゃいましたけどね(笑)」
MASS-HOLE 「俺は出たのを全く知らなくて、ネットで初めて知ったという(笑)」
Mac Ass Tiger 「バトルが好きというよりフリースタイルが好きで、ノリで出てみたら上手く上がっていっちゃったという。実際、バトルで聴くラップより現場で聴くラップの方が断然格好いいですからね」
MASS-HOLE 「今、ラッパーは数多くいますけど、ヒップホップに特化したラッパーは周りを見回しても、そんなにいない気がするんですよ。でも、ライヴで観たMACとMIYAはラッパーというよりヒップホップを感じたんですよ」
――今回のアルバムに関して、2人のKINGPINZから4人のFOUR HORSEMENになると、ラップの在り方も変わってくると思うんですけど、ご自分たちではいかがですか?
MASS-HOLE 「人数が増えると増えたぶんだけ、ライヴが楽しくなりますね。アルバムの制作も上下関係なく週一で集まって、9月から1月まで、じっくり制作を進めていたこともあって、時間をかけて関係性がタイトになっていったというか、4人で作った手応えがありましたし、そのやり方に関してもお互い吸収出来たんじゃないかなって」
MIYA da STRAGHT 「自分にとっては初めてのアルバム制作だったので、進め方が勉強になったというか、全てが新鮮でした」
Mac Ass Tiger 「一人だとどうしてもだらけてしまうので(笑)、締め切りを設定して進めていったのがよかったですね。周りではみんなもリリックを書いているし、自分が遅れていたら焦ったりもするし、自分の場合、追い込まれると、力が発揮されるのが新しい発見でしたね(笑)」
MASS-HOLE 「今、日本も海外もソロMCが多いじゃないですか。だから、今回、4人でやったのはそれに対する一つのアンチテーゼだなと思っていて。ヒップホップって、クルー感、モブ感が面白がれるポイントだったりもしますし、4人集まるとこれくらい楽しいんだぜっていうものを意識して提示したつもりですね」
――グループ内でのスタイル・ウォーズだったり、いかに格好いいことが出来るかのバトルでもありますもんね。
MASS-HOLE 「完全にそうでしたね。一人がリリックを書いたら、そこから繋げて、次を書いていくやり方だったんですけど、このリリックはダメだなと思ったら、翌週また録り直すっていう。そういう鍛錬の連続でもあって」
――MASS-HOLEに関していえば、ソロやKINGPINZはサブリミナルディスも含め、攻撃的なリリックが多かったと思うんですけど、FOUR HORSEMENはいい意味で内向きというか、いかにそのテンションをアゲていくかというところに主眼が置かれていますよね。
MASS-HOLE 「そうですね。外に向けたソロやKINGPINZに対して、FOUR HORSEMENは地元に根付いた、根付かせるアルバムにしたかったし、地元のやつらにも一緒にラップを重ねて、一緒に歌ったり出来る要素を盛り込みたかったんですよ」
――だから、今回のアルバムは現場で真価を発揮するであろう曲が揃っていますよね。
KILLIN'G 「そう。だから、早く現場に鳴らしに行きたいし、現場で聴いて欲しいですね」
――そして、ビートはMASS-HOLEのほかに、地元長野のFASTRIVERQ.S.I.、福岡のDJ GQとI.LO、浜松のBLAQ CZAというローカルのビートメイカーで統一されているところも大きな特色です。
MASS-HOLE 「そうですね。繋がりのある各地のビートメイカーを紹介したかったということもありますし、この作品を機に、それぞれがソロを作る時にそいつらに頼めばいいだろうし。地元で活動しているとどうしても内に内に向かって、そのまま埋もれてしまうことも多いと思うので、外に向けて広げていきたかったという意図もありました」
――ローカルな個性とグローバルな普遍性。そのバランスが難しくあり、聴いていて面白いところでもあります。
MASS-HOLE 「KINGPINZもそうですし、このアルバムのBPMもめちゃめちゃ遅いと思うんですけど、それに感化されて、地元のパーティでも遅くてヘヴィウェイトな曲が流れるようになってきているし、ローカルな音になってきているところが面白くて。ただ、それは俺らのスタイルであって、周りの若いラッパーがそれを真似しても意味ないことだし、自分たちのスタイルは自分で見つけろって話したりしてますね」
――そして、このアルバムをリリース後はDJのSIN-NO-SKEくん含めた5人で全国を回るんですか?
MASS-HOLE 「そうですね。そして、8月に松本でリリパを予定しているんですけど、それに合わせてもう1枚作ろうということになっていて、結構活発に動くことになると思います。あと、MIYAとMacのアルバムだったり、それぞれの動きをチェックしてもらえればと思います」
取材・文 / 小野田 雄(2019年4月)
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