忌野清志郎   2010/05/20掲載
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 80年代半ばから1990年までのRCサクセションのライヴ、アルバム『COVERS』レコーディング風景、1990年以降のソロ・ポートレートなど130点に及ぶ写真を収めた忌野清志郎の写真集『NAUGHTY BOY KING OF ROCK 'N ROLL IMAWANO KIYOSHIRO ARIGA MIKIO PHOTOGRAPHS』。写真集のリリースに合わせて、大阪 / 東京にて開催された写真展も盛況のままに終了(※今後は各地方を巡回する予定)。一連のプロジェクトをプロデュースした写真家・有賀幹夫氏に話を訊いた。



――東京での写真展を終えてみて、今のお気持ちは?
有賀幹夫(以下、同) 「おかげさまで大成功のうちに終わることができました。写真集の発売に合わせて写真展を行なうというのは今回が初めてだったんだけど、実際にやってみて、音楽にたとえるならば、写真集が音源で写真展がライヴなんだなということが分かりました。また、今回の写真展では、清志郎さんを支持している幅広い層を実感として知ることができたのも大きかったですね。小さなお子さんも含め、ご家族でファンとか、それこそ16歳の若いコから82歳のお婆様までサイン会の列に並んでくださって。清志郎さんの影響力に改めてびっくりしました」
――写真展にいらした方々の感想で印象に残った言葉は?
 「“ありがとう”という言葉ですね。僕もそうだけど、みんな清志郎さんに対して悲しい気持ちを抱えているわけですよね。でも、みなさん写真展を見てくれて非常に楽しい気持ちになったとおっしゃってくださるんです。それで最後に“ありがとう”と。その一言が本当に嬉しくて。“感じたらアクションしてみよう”という清志郎さんからの影響に衝き動かされる形で、僕は写真展を開かせてもらって、それを見るために、みなさん能動的に来てくださった。清志郎さんの不在は、たしかに悲しいけど、悲しいだけで止まっていたくないじゃないですか。そんな想いをみなさんと共有できたことがすごく嬉しかったんです」
――有賀さんの想いは、写真展にいらしたお客さんにしっかり伝わっていたんじゃないかと思います。
 「泣きながら写真を見ている方もいましたけど、最後には泣きながら“ありがとう”と言ってくださるから。それに対して、僕も“ありがとう”の気持ちで返して。要するに僕は清志郎さんとファンの間の媒体にすぎないんですよ。その媒体としての重要な役目を果たせたかなと思います」
――それぞれの写真に付いていた有賀さんのコメントも本当に素晴らしくて。清志郎さんへの想いがストレートに伝わってきました。
 「変な言い方だけど、僕はRCサクセションのジャケットを撮っていたわけでもないし、清志郎さんチームにとって決して有名なカメラマンではないから。そこはきっちり説明しておかないと。“あ、こいつちゃんと説明できるんだ”っていうふうにしないとダメだと思ったんです。あと僕はロックおたくなんで、そういう解説文を読むのが好きなんですよね(笑)。でも一歩間違えると、大間違いの世界だったので、改めて事実関係は、かなりリサーチしました。それでも1、2点、微妙な部分が出てきましたけど、今は、去年から始まった清志郎さん再発見の旅の途中なので、今後じっくり研究していければいいかなと思っています。今回僕が伝えたかったのは、バンドマンでありロックンローラーである忌野清志郎。清志郎さんは、自分のスタイルをそのままに、ジャズ・ミュージシャンから演歌の人まで、すごく幅広くコラボできる人だったじゃないですか。僕のロック感はすごく狭いんですけど、その代わりローリング・ストーンズまで辿り着ける狭さだと自分では思っていて。そのなかで僕が感じるバンドマンとしての清志郎さんの姿を伝えたかったんです。それと同時に泉谷しげるさんや山口冨士夫さん、清志郎さんのソロ・アルバムに参加しているイアン・デューリー&ブロックヘッズのメンバーや、『COVERS』に参加したジョニー・サンダース。清志郎さんと親交のあったリアルなロックンローラーの姿を通じて、清志郎さんのロックな世界を見てもらえたらいいなとも思ったんです」
――有賀さんの写真からは、忌野清志郎というアーティストが持っている“動”の部分はもちろん、“静”の部分もすごくリアルに伝わってきます。
 「それはみなさんおっしゃってくださいます。僕の好きな清志郎さんの世界っていうのは、すごくローカルなイメージなんです。曲でいえば<多摩蘭坂>とか<世間知らず>。清志郎さんが生まれ育った三多摩の雰囲気──ちょっとヒッピー文化の名残が残ってる感じというか。特に『シングルマン』あたりからは、弱っちいんだけど強がりを言うみたいな、三多摩文化特有のそういう感覚がすごく感じられて。僕も三多摩出身なんで、そういう感覚を出したいなと思ったんですね。まあ出したいというよりも、自然にそういう感覚は出るなと思ったんですね。つまり今回の写真集では、“三多摩出身のカメラマンだからこそ撮ることができた忌野清志郎”という部分に自分としてはプライドを持っているんです。大阪で写真展を見てくれた方が“<山のふもとで犬と暮らしてる>と共通するイメージを作品全編から感じ取りました”と言ってくださって。<山の〜>は僕も大好きな曲なのですごく嬉しかったんですよ。“ああ、分かってくれるんだな”って。今回の写真集には、派手なイメージの清志郎さんじゃない写真も使っているんだけど、そこにはちゃんと意味があるんですね。そういう写真は他のカメラマンさんがたくさん撮ってらっしゃると思うので。つまり僕の中にあるオルタナティヴな感覚ですよね。メイン・ストリームじゃないんだけど、その裏にある隙間は絶対にハズせない。それが僕の伝えたい清志郎さんの世界なんです」
――では最後に、今回の写真集をご覧になって改めて感じられたことは。
 「ロックおたくとして、僕は文章を読んだり書いたりすることも好きなんですけど、文章って嘘が書けちゃったりするんですよ。写真も今はCGで嘘が作れちゃうけど、でもシャッターを押した瞬間に捕らえたものっていうのは、映像とも音楽とも違うリアルさがあるんです。ここには僕が考える“ロックンローラー忌野清志郎”の姿が収められているので、ぜひとも清志郎さんの音源と共にいつまでも手にとってほしいですね。僕らが見ているものはまだまだ氷山の一角にすぎなくて、清志郎さん再発見の旅はこれからも続いていくわけだから、悲しんでばかりはいられないわけで。ご覧になっていただいた方にとって、この写真集が、そういうことを考えるきっかけになったらいいなと思います」
取材/藤本国彦(2010年5月)
構成/望月哲


有賀幹夫 Profile:
1960年生まれ。東京都小平市出身。80年代中頃からアルバム・カヴァー、ツアー・パンフレット、アーティスト写真集などを含む音楽関係を中心に幅広いミュージシャンを撮影。RCサクセションでは『BEST OF RC SUCCESSION 1981-1990』(1990年)ブックレットに写真掲載。1990年、オーディションによりザ・ローリング・ストーンズ・オフィシャル・フォトグラファーとして採用され、以来アメリカだけのツアーを含む各ワールド・ツアーでの来日公演を毎回撮影。1995年からのワールド・ツアー・パンフレットのほか、ライヴ・アルバム『No Security』(1988年)、ローリング・ストーンズ制作の豪華本『A LIFE ON THE ROAD』(1988)、『According to THE ROLLING STONES』(2003年)、そしてDVDボックス・セット『Four Flicks』(2003年)など、ソロではチャーリー・ワッツの3枚のジャズ・アルバム・カヴァー、キース・リチャーズ、ミック・ジャガーのオフィシャル・サイトなどで写真が多数掲載されている。有賀幹夫プロデュースの写真集としては『ザ・ローリング・ストーンズ LIVE ALBUM 1990-2006』(2007年 / ミュージック・マガジン)、『THE YELLOW MONKEY HEAVEN-SICKS years’96〜’97-』(2009年 / 宝島社)を刊行。各方面から好評を得ている。2010年、忌野清志郎写真展&写真集『NAUGHTY BOY-KING OF ROCK’N ROLL』を企画、プロデュース。


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