松尾清憲 新作『松尾清憲の肖像―ロマンの三原色』を語る(前編)

松尾清憲   2007/07/27掲載
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松尾清憲 新作『松尾清憲の肖像―ロマンの三原色』を語る(前編)
 1980年にシネマの一員としてデビューして以来、BOXピカデリーサーカスなどでのバンド活動と並行し、ソロ・アーティスト/作曲家としてのキャリアを築き続けてきたポップ・マエストロ、松尾清憲ビートルズ〜ブリティッシュ・ロックの伝統を継承しつつ繰り広げられるポップ・ワールド。松尾清憲にしか出せないそんな世界観を凝縮した最新作『松尾清憲の肖像―ロマンの三原色』の発売を機に、話を聞いた。

(2回に分けて掲載します。後編はこちら


20年ぶりのフル・アルバムの中身は……



――3年半ぶりのソロ・アルバムになりますが、ストレンジ・デイズ・レーベルからの『BRAIN PARK』(2000年)以降では、曲数も10曲といちばん多いですね。



「前作の『SPIN』(2004年)のように、7〜8曲が一番作りやすいパターンになっていたので、今度もそうかなと思っていたんですが、時間に余裕があったので、入れたい曲も増え、それでフル・アルバムに挑戦したんです。でも、フル・アルバムともなると、曲順を決めたりとか、けっこうたいへんでした。3枚目の『NO THANK YOU』(87年)以来だったので、作り甲斐はありましたけど」


――アルバム・タイトルが衝撃的ですね。

「最初は『ロマンの三原色』がメイン・タイトルだったんですが、自分の名前をタイトルに入れようということになり、『松尾清憲のおかしなおかしな大冒険』とか『松尾清憲の憂鬱』(笑)とか、スタッフみんなでいろいろ考えたんです。“あ、これは使ったことがあるな”とか言ったりしながら……。そのうち、“肖像”はなかったなあということで、それに決まりました。『ニルソンの肖像』とか海外の作品の邦題にはいろいろあるけど、日本のにはあんまりないでしょ。字画の多いタイトルだし、一度見れば忘れられないかと」


――秋田和徳さんのデザインも素晴らしいですね。よく見ると、アルバム・タイトルがさりげなく入っている。

「タイトルが日本語で、しかも『松尾清憲の肖像』でしょ。秋田さんもタイトルの入れる場所をいろいろ考えたらしいですよ。ぱっと見てわかんないでしょ。でも、ブックレットを見るとわかる仕掛けになっているんです。8枚目のソロ・アルバムなので、“8”もどこかにあるんですよ」


――これまでの作品との方向性の違いや新たな試みはありましたか。

「『SPIN』やその前の『Hello Shakespeare』(2002年)は、意外とバンド中心ではなかったんですよ。ドラムの入ってない曲もけっこうあったり。だから今回は、ぼくの今のバンド“Velvet Tea Sets”の基本の音を中心に作っていくことにしました。小泉(信彦)くんと制作を一緒にやるのは3枚目なので、コンビネーションもいい感じになってきましたね。2年半ぐらいは制作に時間をかけていて、その間に出せそうな機会もあったんですが、大人の取り決めがいろいろとあってね(笑)。発売が少し先になりそうだということになると、意外と聴かない期間があったりして、で、しばらくしてまた聴いてみると、いろいろアイディアが浮かんできて……。アレンジはいろいろチャレンジしました。最終的にこうなりましたけどね」


「曲の展開? ふつうどおりにはいきませんよ(笑)」


――収録曲についてお聞きします。まず1曲目の「太陽が泣いている」は、長い間“寝かせていた曲”とのことですが。

「BOXのころにある程度できていて、自分の次のソロ・アルバムに向けてそろそろ曲を作り始めようかっていうときにできたのが3、4曲ぐらいあって、〈太陽が泣いている〉も『BRAIN PARK』に入っている〈グッバイ・ガール〉もそのときの曲でした。〈グッバイ・ガール〉とはまったく対照的なマイナーな哀愁の曲で、ちょっとプログレも入ってるかな。(『ストレンジ・デイズ』の)岩本(晃市郎)さんがこの曲が大好きで、出せる機会がなかなかなかったんですが、フル・アルバムになったので、だったら今回入れようかと。個性の強い曲だから、これを1曲目にしました。昔のデモ・テープでも岡崎敏之さんがギターを弾いていたんですよ」


――作詞は森雪之丞さんなんですね。

「当時すでに歌詞もあったんです。布袋(寅泰)さんがぼくの音楽に興味があったみたいで、布袋さんと対談したのがきっかけで、布袋さんが当時プロデュースしていた山下久美子さんのアルバム用に曲を書いたことがあったんですが、森雪之丞さんが山下さんの作詞をけっこう手がけていたので、そのときに初めて森さんと会ったんです。じつはその前にぼくが作家として人に曲を提供していたときに、ぼくが作曲で森さんが作詞っていうのもけっこうあったのに、森さんとちゃんと会ったことがなかったんですよ。そのときにちょうどぼくが〈太陽が泣いている〉を作っていたので、森さんに作詞を依頼したんです」


――「MUSIC」は?

「〈MUSIC〉は1曲目とはまったく対照的な、かなり明るいサイドの曲でね」


――手拍子がいいですよね。

パイロットやビートルズじゃないけどね。メロディ・ラインは、ブライアン・ウィルソン的な雰囲気をイギリスのバンドがやったみたいな感じかな」


――「天使は知らない」は?

「これはもう、ビートルズ解散後のソロ作品みたいな感じ。ジョージ(・ハリスン)と、ジョージの曲で弾いてる(エリック・)クラプトン、というようなね。でもサビはポール(・マッカートニー)っぽいかな。ぼくにしては珍しくカントリーの雰囲気があって。ピアノもちょっとニッキー・ホプキンスみたいな感じですね」


――『SPIN』収録の「SUNFLOWER」と同じようにブリッジの思わぬ展開がニクイなあと。

「ふつうどおりにはいきませんよ(笑)。ストレートでいくかと思ったらちょっとマジックがあるっていう」


――「ブルー・ローズ」は異色ですね。

「こういうスカっぽいアレンジの曲は今までなかったですからね。アレンジに時間がかかりました。最終的にイントロにストリングスをちょっと入れたりしたし、矢口(博康)くんのサックスが入ったりして、ロキシー・ミュージックじゃないけど、そういう雰囲気も入れながら仕上げました。このアレンジ、気に入ってます」


――サエキけんぞうさんの最後の一節が効いてますね。

「あれはすごい。サエキくんらしい毒のある言葉が出てきますねえ。最初見たときは。“エーッ! 歌うの?”みたいに思いましたけど(笑)」


――サエキさんは今回もいい歌詞をたくさん書いてますが。

「面白いです、あの人の歌詞は。パール兄弟のときにすでに面白いなと思っていたので、長いですね、サエキくんとは。昔のソロの何曲かでもすでに書いてもらってましたから。でも今のほうが仕事の付き合いが深いですね」


――次の「Urban Swimmer」は淡い名曲。

「マイナーなね。この曲を好きだという人が意外と多くて。これは何風とは言いにくくて、独特の雰囲気がありますね」


――ノスタルジックですよね。水や夏の海辺のイメージがどことなくあって……。そうかタイトルは「Urban Swimmer」かと納得したんですが。

「なんとなく海の、水の、そういう詞がいいかなと思って自分で書きました」


――「曲を書くのが趣味だ」と松尾さんは以前に言われていましたが、新作でも、いいフレーズやメロディが次々と出てきますね。

「いろいろチャレンジして、自分の中でメロディやフレーズを選びますけどね。そのときにいいと思っても、2、3日後に聴いたらぜんぜん良くないというのもありますから。あと、何か他の曲に似ていたりとかね。ガックリきますよ、いいと思ってたのにって。曲を作る人はそういうことは多いんでしょうけどね、きっと。“やった!”と思ったら“あれ?”みたいな(笑)」


――(笑)聴いてると、メロディのツボを押されている感じがするんですよ。

「メロディが強いのが好きですね。強いっていうか、コードに引っ張られていく曲じゃないのがいいですね。コードのあとをメロディが追ってるみたいなのじゃなくて、メロディがバッとあって、そのあとコードがある曲。ビートルズとかもだいたいそうですよね。だから逆にコードがわかんないんですよ、聴いてると。そういうのがいつもできればいいなと意識はしてますけどね」



取材・文 藤本国彦(2007年7月)


■松尾清憲 LIVE SCHEDULE■
“New CD「松尾清憲の肖像」発売記念ライブ!!「ロマンの三原色」”
9月9日 Shibuya DUO -Music Exchange-
OPEN 17:00/START 18:00 
前売:\\5,500/当日:\\6,000(tax.in)
【出演】 松尾清憲&Velvet Tea Sets 【ゲスト】 堂島孝平
※メンバー:松尾清憲(vo,g)、小室和幸(b,cho)、朝倉真司(dr,cho)、西村純(key,cho)、小泉信彦(key,g)、岡崎敏之(g)
※問: CLUB CITTA' / [Tel]044-246-8888
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