室田瑞希、ひとりの表現者としての在り方を示す ニュー・シングル

室田瑞希   2022/06/16掲載
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 元アンジュルムの室田瑞希が2ndシングルを発表した。「ひとりの表現者としての在り方を示すニュー・シングル」という室田に、近況から今シングルのことまでいろいろ話を聞きました。
New Single
室田瑞希
M bit

(WANI-1001)

――事務所を移籍した今年5月以降、動きが活発になってきましたね。
 「めっちゃ動いてます。いろんな意見もあると思うんですけど、事務所を最近また移籍してからはイベントも増えていて。それは個人的にはすごくいいことだなと思っているし、ファンの方たちも嬉しいと言ってくれています」
室田瑞希
室田瑞希
――アンジュルム卒業後、ソロとして再始動したのが昨年の8月ですが、そこからいまに至る活動のなかで大変に思うことはありましたか。
 「やっぱり、ほとんどのことを自分で決めないといけないというのは一番大きいかなと思います。たとえば、こういう曲ができます、歌詞の確認をお願いしますって言われるんですけど、え、歌詞の確認? と思って」
――あがってきた歌詞に対して自分がなにか意見するのも驚きだった。
 「いままでなかったことなので。グループにいたときは大人の人たちが確認したものを歌ってくださいと渡されるし、もし変わるとしてもここの歌詞がこう変わるよという結果を教えてくれる感じだったんです。でも、いまは曲もそうだし、ミュージック・ビデオだったり、これで出して大丈夫ですかという確認が私にくるんです。それ、自分が確認していいんだ! って驚いたんですよね。それまで自分が目を向けていなかったところなので、どう確認していいのかもわからないし、本当にこれでいいのか悪いのかもわからず。そういうところから手探りでやってきました」
――そういう場面で判断することが自分にも委ねられることについてはどう捉えているのでしょうか。グループ時代にはあまりなかったわけですよね。
 「私もわからないなりに一歩ずつやってみて、それがちょっと違うなと思ったら変えていけばいいのかなと思っています。ファンの方も、むろのやりたいようにやったらいいよという意見が多いんですけど、それはアンジュルムの頃から変わってない部分でもあるんですよね。私自身、いろんなことに挑戦したいタイプなので、自分で決められるのであればそっちのほうが嬉しかったりします。たとえば、こういうグッズが出ますとなったときに、いや、こっちのほうが可愛いよと言ったりしますし」
――柔軟にやれているし、むしろやりたかったところでもあったわけですね。
「もちろん難しいこともあります。やったことがないことを決めるとなると難しいし、そもそも作業工程がわからないこともいっぱいあるんですよ。Tシャツに何色使うと予算がどのくらいかかるのかとか、これをしたらこれくらいかかるというお金の計算がまったくわからなかったので。じゃあ何色使っていいのかだけ教えて、とか、一旦無色にして、あとは可能な範囲で色を入れてほしい、と伝えたり。ただ、私は発言する側だから細かすぎることを考えないようにしたい、というのもあって」
――たしかにあまり知りすぎて気にしてしまうと、無邪気に自由な発想ができなくなるという可能性もありますよね。でも、なにも知らないよりはよっぽどいいわけで。
 「ですよね。チケット代にしても、このライヴをするとこのくらいかかるけれど、でも若い人がいるからなるべく極限までお値段を抑えたいよね、みたいな。初めての人でも来れるような金額にしたいんです。最近、ミニフォトブックを出させていただいたんですけど、それも初めての人でもなるべく買いやすくて、友達にもお勧めできるようなものにしたいねということで値段を決めました。いままでは値段設定も大人の方たちが考えてくださっていて、こういうことがあってこの値段になっているというのを深く認識していなかったんだと気づきました」
――そういった裏方での発見があった一方で、表の部分、つまりソロでのステージであらためて感じたことはありますか?
 「歌ったり踊ったりすることについては、ひとりならではの楽しさもあれば大変さもあります。みんなでやっていたことを私は踊りながら全部歌わないといけないので。息が思うように続かないこともありましたし。でも、ソロなので歌割が全部私、ずっと私のターンみたいな気持ちもありますよ(笑)。だからずっと意識しなきゃという思いが強まりました」
――それこそすべてが室田さんのターンだから、観客の目線がずっと集まるわけで。
 「そうですそうです。ずっと見られているので、ライヴでもいままで以上に緊張します。気が抜けないです。でも、めちゃめちゃポジティヴにやってますよ。最初の頃は思うようにいかなかったり、わからないことだらけだったので悩むこともあったんですけど、マネージャーさんとのたくさんのケンカを乗り越えて、いまは友達みたいな感覚でいろんなことを相談し合ってます」
――ケンカしてきたんですね。
 「してますねぇ。私のほうが結構年下なんですけど、言い合いになったときに、もう絶交するから! って叫んで走っていっちゃったりして(笑)。なにこのマネージャー? と思って爆笑しました。それを配信の時にファンの方に伝えたらみんなもウケてくれて。そういうマネージャーだから接しやすいですね。いまの環境は楽しいです」
――ただ、その環境に持ってくるまではいかんともしがたい時期があったわけですよね。
 「ありましたね。なにも動けないときは、これじゃ活動する意味がないなと思って。このままいったら本当にファンの方たちが離れていっちゃってなにもできなくなると思ったときに、マネージャーさんに言ったんですよ。ずっとこの状態だったらマジで辞めるかもしれないって。私はもっとファンクラブに力を入れたいし、もっといろんなことをしたい。せめてもうちょっとイベントに出るだけでもできたらいいのになという話はしていました。ファンの方にもイベントをもっと増やしたほうがいいと言われたりしていましたし」
――コロナ禍とはいえ、やっぱりグループ時代の活動ペースと比較できてしまうわけで。
 「どうしても比較されちゃうんですよね。それで言うと、最近ちょっとハロプロモノマネみたいなのもチラチラとやっているんですけど」
――TikTokで。めちゃくちゃ特徴を捉えていて面白いです。
 「最初に鈴木愛理さんのモノマネをしたらみんなが結構気に入ってくれて、誰々をやってくれみたいに言われるようになったんです。それで佐々木莉佳子ちゃんのモノマネをやったときに、さっちゃん(佐々木)も笑ってくれて。その後、石田亜佑美さんのほうから私のモノマネもやってほしいんだけどって言ってきてくれて、じゃあわかりましたということでやったら、それも盛り上がっちゃったんですね。そうしたら、まだハロプロにこだわってんのかよ、みたいな意見も出てきてしまって。もちろんそう言いたくなるのもわかるんです」
――ああ、だから途中からこれはリクエストですと。
 「“ご本人リクエスト”ってちゃんと書いているんです(笑)。小田(さくら)さんとか宮本(佳林)さんもリクエストでした。それを知らない人からは、ハロプロ抜けたのになにやってんだって言われたりすることあります。でも、こっちはメンバーと仲がいいんだよっていう気持ちはあるんですよ。私はハロプロにいたんだから、ハロプロのメンバーと仲がいいに決まってるじゃないですか」
――むしろ青春の一番濃い時間を過ごしてきた仲間なわけで。
 「それは当たり前のことじゃないですか。なのに、いまだにハロプロOGと遊んでるよねと言われたりするんですけど、そこは勝手だろって思うんです」
――(笑)。本当にそうですね。過去にすがるな、みたいなことなのかなぁ。
 「そうですそうです。でもまぁ、アンチも増えてきたということは注目されてきているということなのかなと(笑)。以前は結構な頻度で会っていたし、以前よりも会わなくなったほうだと思うんですけどね。私的にはなにも変わらずにいますので」
室田瑞希
室田瑞希
室田瑞希
――むしろそういう関係性が分け隔てなく続いているのがいいなと思いますよ。先日の中野サンプラザでのイベントで、中西香菜さん、尾形春水さん、島村嬉唄さんと写真を撮っていたじゃないですか。あれもすごくよくて。
 「あれですか! 私、壁とかが全然ないんですよ。きゅるりんってしてみての楽屋に入るときに、中西さんが大丈夫かなって心配してたんですけど、大丈夫ですからって言って。“失礼します! 元ハロプロ入ります!”って言いながら楽屋に突入しました」
――最高に面白いなー(笑)。
 「いつものテンションで行ったら大丈夫でした。そのあと私の楽屋に集合してみんなでTikTok撮りましたよ」
――さっぱりしているのがじつに室田さんだなと思います。ともかく、もっと動きたいという気持ちをずっと抱いていたなかで、最近になってやっといろいろとできるようになってきたわけですよね。
 「はい。やっぱり新曲が出せるのが嬉しいです。とくにミュージック・ビデオは私が一番やりたかったことで。一枚目のときは出せなかったんです。今回ひとりになって初めてミュージック・ビデオが出せるので、それは本当に嬉しいことだなと思ってます」
――室田さんがやりたいことは歌であったり、パフォーマンスだったと。
 「そうです。私はSNSとかも得意じゃなくて、ブログもサボり気味なメンバーだったんですね。でも、いまはひとりでInstagram、ブログ、TikTok、YouTubeと……ファンクラブも新しく開設しまして、とにかくやることがいっぱいあるんですけど、自撮りも全然得意じゃないんですよ! インスタでのおしゃれな写真の選び方もわからないし、その時点で大変なのにストーリーもあげなきゃいけないというのが自分のなかでは苦戦してます……TikTokは楽しくやってますけど(笑)」
室田瑞希
室田瑞希
――だからこそ、発信するのは音楽とかライヴが一番性に合っているということなんですよね。そして事務所を移籍して仕切り直し、今回のシングルをリリースすることになりました。こういうことがやってみたいというのはあったのでしょうか。
 「これはいまでも言っていることなんですけど、かっこいい曲がほしいんです。最近、対バンイベントに出ることが増えてきたし、これからフェスとかに出ることになったらバチバチの盛り上がる曲を歌いたいんです。それで〈B.N.P Brand New Pride〉という曲を書いていただきました。〈I Walk!!〉はライヴで歌える曲を作っていくなかで生まれた、万人受けするようなキャッチーさがあって、ファンの方も好きな曲です。3曲目の〈Tokyo Jungle〉はまだあまりライヴで披露していない曲なんですけれど、大人っぽい、落ち着いたかっこよさを出した曲になっています」
――室田さんとしては、まずはライヴでかっこよく歌えるものを、という気持ちが強かった。
 「強かったです。私のキャラ的に、かわいい系を歌ってなさそうじゃないですか(笑)。それがレパートリーのなかに1、2曲あるのもいいと思うんですけど、私としてはかっこいい曲のほうが歌いやすいし、好きなんです。でも、嬉しかったですね。どういう曲を歌いたいか聞かれたときに、私が決めていいの? と思いました」
――それは楽しいですよね。
 「ただ、自分では室田瑞希といえばこういう感じを歌ったほうが似合うとか、第三者から見てなにがいいかはまだちゃんと掴めていないんです。私はこういう曲を歌いたいけど、マネージャーさんが思う、私が歌ったら似合う曲というのも視野に入れつつ選んでほしいと伝えてあります」
――ソロの自分になにが合うのかトライしてみたい気持ちもあるわけですね。「B.N.P Brand New Pride」は室田さんの心境を描いたものですか?
 「そうです。最初のライヴをやる時にもらった曲ではあるんですけれど、CDを出すのと事務所が変わったタイミングもあるので、テーマ的にもちょうどいいのかなと。新しい人生を歩むというか、いまから別の道であらためて動き出すよという歌詞になっているので」
――室田さんから歌詞のリクエストあったのでしょうか。
 「強い女性のような歌詞がいいですと伝えていました。恋愛ソングとか失恋ソングがあってもいいとは思うんですけど、私は気持ちを真っ直ぐに伝える曲があっていいと思うんです。ファンクラブは7割が女性のファンということもあるので、女性に向けて強い女性の歌を歌っていきたいと思っています。自分自身が弱々しいタイプの女性ではないし、強い性格してるなと思っているので(笑)」
――もともとアンジュルムは女性ファンがかなり多いですけど、そこまでとは。
 「私も知らなくて。当時はわからなかったんです。タケさん(竹内朱莉)の女性ファンが圧倒的に多かったので。私にも女性ファンがいたんだと思って、それを知ったときは嬉しかったですね」
――「B.N.P Brand New Pride」のダンスに関してはどうでしょうか?
 「踊る曲と踊らない曲があるんですけど、〈B.N.P〉とか、前作だったら〈G.T.B〉みたいな曲だったらしっかり踊りたいという気持ちがあります。ただ、一応ソロアーティストとしてやらせてもらっているので(笑)、歌を聞かせたいというのが一番にあります。踊らなくても伝わるような表現も必要だなと思うので、踊らず歌うだけの曲もありますね。でもやっぱり私はダンスも好きなので、まったく踊らないということはしたくなくて、間奏はバチバチに踊るのもやってみたいです」
――ひとりで歌って踊るうえでの体力的なハードルはありますか?
 「そこはいつもやばいです(笑)。一度、がっつり歌って踊る曲を2曲連続やったんですけど、ソロに慣れていないというのもあって緊張して息も上がってしまって。あのときは水をがぶがぶ飲まずにはいられなかったです(笑)。最近はちょっと慣れてきて、ここで力を入れてここで抜く、というのができるようになってきました。最近、本当に年を感じるんですよ」
――いやいやいや。
 「これを言うとまだ若いじゃんって言われますけど、この前、勝田里奈さんとも年齢感じるよねって話になりました(笑)。階段上るだけでもきついんですよ」
――そんな!
 「しかも、この間、階段を降りているときに足を捻っちゃったんです。私は関節が柔らかいので、一度も骨を折ったことがないし、捻挫したこともなかったんですよ。なので、どれくらい高いヒールを履いても捻挫することはなかったんですけど、その時は初めてグキっとして、痛くなって。さっきのあれは捻挫だったんだって初めて気づきました。1日湿布を貼ってたら治ったんですけど、でも気をつけなきゃと思いました」
――室田さんから年の話を聞くことになるなんて思わなかったです。でも、話しぶりから楽しそうなのが伝わってきてなによりです。
 「それは本当に。やっぱり楽しく生きないと人生一度きりなのでもったいないですよね。楽しんだもん勝ちかなと思ってますよ!」
室田瑞希
――もう少しだけ曲の話も訊かせてください。「I Walk!!」はアップテンポな曲になりました。
 「私がソロになって初めてYouTubeに出たときの動画で(〈室田瑞希 Coming soon...〉)、最後に時計の針がチッチッチとカウントダウンしていくんですけど、その待っているときのドキドキした気持ちを歌詞にした曲です」
――3曲目が「Tokyo Jungle」。
 「同名のゲームをイメージして作ってくださった曲で、動物たちしかいない東京という世界観ですね。わたし的には自分がひとり東京に取り残されて、ちょっとグレーな世界のなかを彷徨っているというイメージです。今回の3曲のなかで一番歌うのが難しかったです。ただ勢いで歌うのではなくて、大人っぽくグルーヴを大事に歌って、と言われて、それが本当にわからなくて苦戦しました。グルーヴの利いたセクシーな感じで歌っている私が聴けます(笑)。それで、CDのタイトルをどうしますかと言われて、3つの頭文字を取って欠片という意味の“bit”にして、室田瑞希の“M”をつけて。いろんな曲の欠片をかき集めて室田瑞希を完成させるという意味を込めて『M bit』というタイトルになりました。でも、こういうのも決めたことがなかったので、本当にどうしたらいいかわからなかったですね(笑)」
――そんな風に自分で決めていくと、CDになったときに感激もひとしおなんじゃないですか?
 「うーん、そう……ですねぇ……」
――そうでもなさそうですね(笑)。
 「いや、これでいいのかなって思っちゃいます。いざ情報が出ましたとなったときに、本当にこれでよかったのかな、みんなどう思ってるんだろうって思っちゃうんですよね(笑)。特にいままでやったことないことだとそうなります。反応がいいと、よっしゃこのままいけるぜって波に乗れるんですけどね。これはこうしたほうがよかったねって意見をいただいたりすると、マジかー、そうだったかー……となって、モツ鍋を食べに行っちゃいますね(笑)」
――好きなものを食べて忘れると(笑)。今回のリリースがあり、夏には主催イベントもありますし、ここからがやっとスタートという感じでしょうか。
 「本当にそう思っています。まだ言えないこともいっぱいあるので。マネージャーには来年の夏まで考えておいてと言っているので、もっと圧をかけておきます(笑)。今後を楽しみにしていてください」
取材・文/南波一海
撮影/竹之内祐幸
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