小沢咲希 新進気鋭のピアニストがジャズ愛にあふれたトリオ作でデビュー!

小沢咲希   2023/06/19掲載
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 1995年生まれ、東京出身の小沢咲希が発表したデビュー・アルバム『Cheers!』にはピアノ・トリオによる8曲、ソロ1曲、ヴォーカル入りの1曲が収録されている。2曲のスタンダード・ナンバーと秀逸な彼女のオリジナル曲は、小沢のストレート・アヘッド・ジャズ愛を存分に伝えており、名刺代わりとなる最初のアルバムで、自身の方向性を明確に示していた。アルバムを手に陽の空気を全身から煌めかせていた新進気鋭のジャズ・ピアニストに話を聞いた。
Debut Album
小沢咲希
『Cheers!』

RBW-0027
――3歳からピアノを始めたそうですね。
「お稽古ごととしてクラシック・ピアノのレッスンに通い始めました。どうやら向いていたみたいで、幼稚園の頃には“将来、ピアニストになる”と周囲に宣言していました。今、思えばジャズを聴く環境もたしかにありましたね。父が車を運転している時、いつも和泉宏隆さんのアルバムを流していて、私も聴いているうちにすっかり好きになり、いつの間にか自分でも弾けるようになっていたんです」
――15歳の時にジーン・ハリス・オール・スター・ビッグバンド名義のアルバム『トリビュート・トゥ・カウント・ベイシー』を聴き、本格的にジャズにのめり込んでいったとか。
「中3の時でした。聴いた瞬間に“これがジャズだ!”と嬉しくなり“イェイ!”と言いながら(笑)、何度このアルバムを聴いたことか。高1からはユキ・アリマサさんの元に通い、ジャズを勉強する方法や心構えなどを丁寧に教えていただき、本当に感謝しています。洗足学園音楽大学に入学してからは、授業が終わるとジャズ・クラブやライヴハウスに通う毎日で、自分のリーダー・ライヴをスタートさせたのもこの頃です。セッションに参加しては、自分の未熟さに打ちのめされる日々を過ごしていました(笑)」
――大学を卒業してからは本格的に演奏活動を行ない、目覚ましい活躍の中、デビュー・アルバム『Cheers!』を発表されました。ベーシストはふたり。曲によってチェンジしていますね。
「安田(幸司)さんも粟谷(巧)さんも学生時代からお世話になっていて、それぞれ、トリオで演奏していました。ですから、おふたりにぜひ、参加していただきたかったんです。安田さんの演奏は本当にメロディアスで、その時々の私のプレイをしっかりと受け止めてくれる、包み込むようなベース。粟谷さんは学生時代から憧れていたミュージシャンのひとりで、私のオリジナル曲をタイプだと言ってくれました。男気あるプレイでどんな曲でもかっこよくしてくれるベーシストですね」
小沢咲希
――ドラムの柳沼佑育さんは?
「3歳年上で、ものすごくスウィングするドラマーです。フィリー・ジョー・ジョーンズのリックを、いったいどれだけ知っているんだろうと毎回、驚かされていますし、とにかく、音楽全般に詳しくていろいろと教えてくれるんですよ。みなさんが支えてくれるおかげで私は気持ちよく演奏させてもらっています」
――Emaさんのヴォーカルをフィーチャーしている7曲目の「アイ・ウォナ・ビー・ア・ダック」は、曲だけでなく歌詞も小沢さんが書かれたんですよね?
「曲自体は2020年4月に緊急事態宣言が発令されて、演奏活動がまったくできない期間に書きました。“鴨になりたい”というタイトルにしたのは、あの頃、川に浮いている鴨を見かけてすごく羨ましくなったからです。もともとは、インストゥルメンタルの曲でしたが“鴨になりたい”理由をきちんと歌詞で伝えたくなり、レコーディングが決まってから生まれて初めて作詞にチャレンジしました。内容としては、“鴨が人間になりたい”と言っているパートと“人間が鴨になりたい”と言っているパートがあります。私は英語がネイティヴではないので、得意な友だちに助けてもらい、英語詞を完成させることができました。Emaさんは子供の頃からミュージカルなどに出演しているジャズ・シンガーで、以前から、その歌声に魅了されていたんです。彼女だったら私がイメージした表現で歌ってくれると思い、お願いしました」
――アルバムには20歳の頃に書いた曲もあるそうですね。それは?
「1曲目の〈イントロダクション〉です。ライヴを始める前にベーシストやギタリストはチューニングをしますよね。その後、ひと息ついてから本番に入るのが一般的ですが、個人的には、チューニングをしたその流れのままスタートしたらかっこいいんじゃないかと思い、それをイメージして書きました。録音する際、安田さんと柳沼さんには“いつものライヴ前のような雰囲気で”とお願いしました」
――いちばん最近書いた曲は?
「バイヨンのリズムで演奏しているドラム・フィーチャーの〈サムシング・ライク・ザット〉です。去年の夏、1ヵ月間、ニューヨークをひとり旅した時に書きました。滞在先はクイーンズ地区のゲストハウスで、キューバ人やメキシコ人が多いエリア。夜中の1時、2時までご機嫌なリズムが窓の外から聴こえてくるその街を歩きながらできた曲で、宿で親しくなった女性の口癖をタイトルにしています。関西出身の彼女は“知らんけど”と言うようなニュアンスで、会話の最後に“サムシング・ライク・ザット”とよく言っていたんですよ(笑)」
小沢咲希
――「ディア・ジーン」は小沢さんが敬愛しているジーン・ハリスに捧げた曲ですよね?
「15歳から好きだったジーンのトリビュート曲をいずれ書こうと心に決めていましたが、思い入れが強すぎてなかなか踏み込めませんでした。やっと〈ディア・ジーン〉というタイトルを付けてもいいなと思える曲ができて、今回、アルバムのラストに収録しています。彼のアルバムの中でとくに愛聴している『ライヴ・アット・オッター・クレスト』を集約しているような1曲です」
――2曲目の「ポッピン」は、アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズの匂いも感じました。
「メッセンジャーズ、大好きなんですよ! それもあって、セカンド・リフがあり、そこからソロにいくような構成の曲を作りたくなりました。ライヴでは、アルトサックスとトロンボーンをフロントに迎えた編成で演奏することもあります。私の曲はこういうイケイケな作品が多いですけれど、対照的な〈セレンディピティ〉のような楽曲もアルバムには収録しています。ほかの曲を書いている時に偶然、浮かんできたメロディを元に1時間ぐらいで書きあげたんですが、タイトルを決める前にジャズ・クラブで演奏したら、バーテンダーのお姉さんが“偶然の産物”という意味を持つ“セレンディピティ”にしたら? と提案してくれて、しかも、同名のカクテルもあると知り、お酒の名前を曲名にするのが好きな私にぴったりだなと(笑)」
――もしや8曲目の「エムズ・マーク」は……。
「バーボンの“メーカーズマーク”からいただきました(笑)。〈マイ・オールド・グランドダッド〉も“オールド グランダッド”というラベルがオレンジ色のバーボンからネーミングしています。この曲は実家の近所に咲いていた金木犀を思い浮かべて書いたので、最初は〈オールド・ツリー〉と名付けていたのですが、レコーディングをしていた頃に祖父が亡くなり、だったら、私の好きなバーボンの名前と組み合わせたタイトルにしようと思い付いたのです」
小沢咲希
――スタンダード曲は「ステラ・バイ・スターライト」と「タイム・アフター・タイム」の2曲。
「〈ステラ・バイ・スターライト〉は箸休め的な意味合いでワン・コーラスだけピアノ・ソロで弾いています。この曲はBフラットで演奏することが多いですが、すべてのキーで試し弾きしたら、半音上のキーがピアノ・ソロにはいちばんしっくり美しく聞こえたので、その部分にこだわり録音しています。〈タイム・アフター・タイム〉は昔から好きな曲で、粟谷さん、柳沼さんとスタンダード曲をやるならこの曲しかないと即決しました」
――さて、8月30日に東京・丸の内にあるコットンクラブでアルバム『Cheers!』リリース記念ライヴが開催されます。
「あこがれだった場所で演奏できるんですから、それはもう今から楽しみで仕方がありません。CDをお聴きいただき、ぜひ、ライヴも体感してもらえたら嬉しいです。今は都内が演奏活動の中心ですが、これからは全国各地にお邪魔して多くの方と触れ合いたいと思っています。私は誰とでも親しくなりたいし、仲良くなれるタイプなので、その性格を活かしてジャズをもっとオープンにしていきたい。ふだん、ジャズをあまり聴いたことがない人との繋ぎ役になれたら、と思っています」


取材・文/菅野 聖
information
〈小沢咲希トリオ - Cheers! - Release Live〉
8月30日(水)東京・コットンクラブ
出演:小沢咲希(p)、粟谷 巧(b)、柳沼佑育(ds)
http://www.cottonclubjapan.co.jp/jp/sp/artists/saki-ozawa/
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