【ピート・ヨーン interview】粗いギターが映えるロック・サウンド――フランク・ブラックをプロデューサーに迎えたピート・ヨーンの新作

ピート・ヨーン   2010/10/07掲載
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【ピート・ヨーン interview】粗いギターが映えるロック・サウンド――フランク・ブラックをプロデューサーに迎えたピート・ヨーンの新作
 ピート・ヨーンは2001年に『ミュージックフォーザモーニングアフター』でデビューして、たちまち人気を集めた00年代のシンガー・ソングライターの代表格。デビュー作の後、2003年の『デイ・アイ・フォゴット』、2006年の『ナイトクローラー』と“朝昼夜”の3部作に5年をかけたのに対し,ギアを入れ直したのか、2009年に『Back&Fourth』と女優スカーレット・ヨハンソンとのデュエット作『Break Up』を立て続けに発表、それから1年で早くもニュー・アルバム『ピート・ヨーン』が届いた。この意欲的な創作活動をもたらしたものは何なのか、LAに住むピートに電話をかけて聞いてみた。
――15ヵ月でアルバム3枚を発表した計算になりますが、これは曲がたくさん書けている反映なんですか?
ピート・ヨーン(以下、同)「その通りなんだ。爆発したかのようにどんどん曲ができたんだよ」
――何に刺激されて、そんなに曲が生まれているのでしょう?
 「成長の痛みか何かだと思う。この数年で僕は古い皮を脱いで、ある意味では生まれ変わったような気がしている。それは感情面ではとても苦しいことだったんだけどね。それで頭の中にあるたくさんのあれこれを理解しようとして、それらが曲になった。曲作りが頭の中を整理する助けになったんだよ」
――新作『ピート・ヨーン』はピクシーズフランク・ブラック(ブラック・フランシス)のプロデュースで、今までとは異なる粗いギター・サウンドのロック・アルバムです。彼とのコラボはどのように実現したんですか?
 「運命が僕らを結びつけたんだけど、その運命は共通の友人に助けられたことなんだ。長年の知り合いの女性がフランシスと一緒にやるのはおもしろいんじゃない? と提案してくれた。僕はピクシーズのファンだから“フランシスのことは尊敬しているし、興味はとてもあるよ。一緒に何かしたいね”と答えて、それっきり忘れていた。でも、彼女は彼に話してくれていたんだ。で、ある日フランシスからEメールが届いた。それからメールのやりとりで打ち合わせをしてから、飛行機に乗って出かけ、レコードを作った。そんなふうにして生まれたんだよ」
――レコーディングはどうでした?
 「すごく楽しかったよ。残念ながら、病気になって体調が悪かったんだけど、そんなことは関係なかったね。フランシスのような尊敬する人と一緒に仕事をする機会を得られるなんて、結果がよかろうが悪かろうが、少なくとも勉強になると思っていた。彼が投げかけてくるものを受け止めて、そこから学ぼうとしたんだ。歌を録るときにフランシスがコントロール・ルームにいるだけで、こっちのやる気も増す。彼のような人が手助けしてくれるんだから、僕も一段高いところを目指さなくちゃと思うよね。野球で上手くなりたいなら、自分より上手い選手たちのいるチームでプレイしたほうがいいだろ? 彼らと練習すれば、新たな筋肉がついて、もっと逞しくなれるわけさ」
――ブライト・アイズのマイク・モギスと組んだ『Back&Fourth』とはかなり異なるサウンドです。
 「モギスとのレコードは音を重ねた緻密な作りのアルバムだった。もっとアコースティック・ギターが使われているし、丹精こめて細部を加えていく作り方をした。それに対し、フランシスとの本作はエネルギーにあふれたアルバムで、サウンドを迫力あるものにするために余計なものを切り捨てた。もっとミニマリズムのサウンドだね」
――アルバムの雰囲気も対象的です。
 「『Back&Fourth』は後悔して過去を振り返っている。もっとメランコリックなレコードだ。ブラックとの本作は前へ向かって進む種類のレコードで、聴き手をソファから立ち上がらせる。だから、今このアルバムからの曲をライヴで演奏するのを楽しんでいるんだ」
――アルバムを『ピート・ヨーン』と名づけましたが、この時点で名前を題名にしたことに何か意味はあります?
 「実のところ、僕は『ピート・ヨーン』と呼んでいない。(ビートルズの)『ホワイト・アルバム』みたいなものさ。アルバムを作り終わって友だちに聴かせたんだけど、それから皆が“あのブラックとのアルバムはどうなった?”“ブラックとのプロジェクトはいつ出るの?”と訊いてきた。だから、僕にとっては『ブラック・アルバム』なんだ。それでジャケットも黒にした」
――アルバム発表に合わせて、またツアーに出るのだと思いますが、新作には「ロック・クラウド」というお客さんへの感謝を歌った曲がありますね。
 「舞台に立つのが恐かった時期があった。毎日舞台に上がるのが不安で仕方がなく、僕の昼間は台無しさ。でも、いざ舞台に立ってお客さんの顔を見ると数分でその不安は消えて、夜はよく眠れた。〈ロック・クラウド〉はその奇妙な時期から生まれたんだよ」
取材・文/五十嵐 正(2010年9月)
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