インドで生まれ、アメリカで学び、現在は日本で活躍する異色のシンガー・ソングライター、teaがメジャー・デビュー・アルバム『Unknown Places』を発表

tea(Jazz)   2019/10/23掲載
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 インドの広大な都市プネ出身のシンガー・ソングライター、tea(ティー)が10月23日にソニー・ミュージックレーベルズよりメジャー・デビューする。teaはインドでプロのシンガーとして活動後、2011年にアメリカのバークリー音楽大学に入学。卒業後はBlue Note New Yorkなどに出演し、ヴォイス・トレーナーとしても活動。そして2016年に拠点を日本に移し、ヴァイオリニスト川井郁子のサポートでツアーをまわったり、CM曲を歌ったりしてきた。メジャー・デビュー・アルバム『Unknown Places』は、2017年発表の『INTERSTELLAR』に続く2作目。彼女の夫であるベース/ギター奏者の時枝弘がアレンジを手がけ、teaはジャジーなオリジナル楽曲に加えて、「アメイジング・グレイス」やガーシュウィンの「サマータイム」、山下達郎の「シャンプー」(日本語で歌唱)といった曲も豊かな声量と表現力で歌っている。深い光沢感のあるその歌声の魅力が存分に感じられるアルバムだ。
――インドのプネという都市の出身だそうですね。幼少の頃からそこでヴォーカルのレッスンを受けていたのですか?
「はい。インドの伝統音楽と西洋のクラシック音楽のふたつのレッスンを何度か受けていました。けれどもずっと続けていたわけではありません。インドの伝統音楽をやるとなると、実際にステージに立って歌えるようになるまで7年くらいトレーニングが必要なんですよ。とても厳しい世界なんです。また、西洋のクラシック音楽を学ぶとなると、ほかのジャンルの音楽を聴いたり歌ったりすることが許されなかった。ですから、両立させることはとても難しいんです」
――でも、teaさんは両立できていたわけですよね。なぜそれができたのですか?
「インドの伝統音楽と西洋のポップスをミックスして聴きながら育ったからだと思います」
――インドでプロのシンガーとして活動後、2011年にはアメリカのバークリー音楽大学に入学したとのこと。声楽を勉強するために入ったのですか?
「初めは歌を学ぶために入り、クラシックとジャズのヴォーカルを勉強していました。でも最終的にソングライティング科を専攻しました。習っていたのはおもにポピュラー・ミュージックです」
――そして2016年から活動の拠点を日本に移したそうですが、そのきっかけは?
「私と主人(時枝)はバークリーで出会ったんですが、彼が先に卒業して日本に帰ったんですね。それで私も卒業のタイミングで呼ばれて、日本で活動することになったんです」
――川井郁子さんのサポートをしたり、CM曲を歌ったりされているそうですが、日本での活動は楽しめてますか?
「はい。いろんなジャンルのお仕事をすることができて、とても充実しています」
――インドやアメリカで活動してきて、いまは日本で活動しているわけですが、大きな違いはありますか?
「ステージに立った際に、観客の反応の違いを感じます。日本のお客さんはとても静かで、私の歌を真剣に聴いてくださいます。けれども、あまりにもシーンとしすぎているように感じることもある。たとえばゴスペル音楽ですと、歌手が熱を帯びた歌い方になっていくほど、観客も一緒に盛り上がるというインタラクションがある。観客の反応を感じて、自分の歌もエモーショナルになっていったりする。そういうことが日本だと起こりにくいように感じます」
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Photo by SHOKO
――ではアルバムの話をしましょう。『Unknown Place』はあなたにとって2枚目のアルバムであり、メジャーでのデビュー作ということになりますが、どういうものにしたいと考えて作り始めたのですか?
「2017年にリリースしたファースト・アルバム『INTERSTELLAR』の続きになるものにしようと思いました。ですから、前作のテーマを引き継いだものになっています。前作は少し難解な部分があったかもしれないという思いがあったので、今回はサウンド的にシンプルなものを目指しました。目指した、というよりは、自然にそうなった気がします」
――前作にあった難解な部分とは?
「作り込みすぎて、オーディエンスを選ぶ傾向にあったということです。今回は幅広いリスナーの方々に楽しんでもらえるよう意識しました」
――たしかに今作はバラエティに富んだ楽曲が収録されていますね。ジワっと沁み入るスローのオリジナル曲もありますし、誰もが知っているスタンダード曲もある。1枚のアルバムのなかでいろんな試みをしているように思います。
「そうですね。山下達郎さんの〈シャンプー〉を日本語で歌うことに挑戦したり、ゴスペルの〈アメイジング・グレイス〉を歌ったり、ロック調の〈アイム・カミング・アウト〉を歌ったりと、幅広い表現をすることができました」
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Photo by SHOKO
――先ほど、前作のテーマを引き継いだものとおっしゃってましたが、そこのところをもう少し具体的に説明していただけますか?
「たとえば前作に〈All She Had(Amy's Song)〉という曲があって、それはある少女の曲なのですが、今作の1曲目の〈ロシアン・ルーレット〉はその少女が大人になってからの物語だったりします。また、前作の〈I Will Bleed〉という曲は心中をテーマにした曲だったのですが、今作の〈ザ・レッド・ルーム〉にはそのふたりの霊が現れます」
――2枚を聴いてわかることがいろいろあるということですね。
「そうです」
――オリジナルのバラード曲では抑制された歌い方をしていますが、「アメイジング・グレイス」は声を強く前に出している印象があります。そのあたりは意識的に?
「曲ごとに異なる歌唱アプローチをしたいと思っていました。〈アメイジング・グレイス〉はパワフルに歌った一曲ですね。でもすべての曲でパワー・ヴォーカルを聴かせたら、聴き手にとってトゥーマッチでしょうし、飽きてしまうと思うので」
――「シャンプー」は日本語で歌われています。歌ってみていかがでしたか?
「無理して歌ってる感じじゃなく、自然体で歌っているように聴こえるものになったと思います。とはいえ、日本語と英語とではアクセントを置く場所が異なるので、そこは難しかったですね」
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Photo by SHOKO
――個人的には抑制した歌い方のオリジナル曲でこそ、あなたの持ち味が発揮されているように感じました。そういった歌い方において、影響を受けた西洋のシンガーはいますか?
「シャーデーに影響を受けています」
――なるほど。では、ご自身の歌声の特徴を、あなたはどう捉えていますか?
「ロウで、ナチュラルで、ダーク」
――ああ、そうですね。わかります。1曲目の「ロシアン・ルーレット」などはまさにそういう持ち味が出た曲ですよね。僕はこの曲をとても気に入っています。
「ダークな曲がお好きなんですね(笑)」
――あなたはオリジナル曲でどれが気に入ってますか?
「〈スーパーボーイ〉という曲です。とても自然なプロセスで書けた曲なんです。主人がコードを弾いて、私が歌って、気がついたら出来上がっていました」
――このアルバムが聴く人にとって、どういうものであってほしいですか?
「どのように感じてもらってもけっこうですが、とにかく1枚を通して聴いていただきたいですね。なぜならこのアルバムにはストーリーがあるから。4曲目の〈ジ・アザー・サイド〉と5曲目の〈アメイジング・グレイス〉には歌詞的に繋がりがあり、ふたつでひとつというような作りになっています。〈ジ・アザー・サイド〉にはダークな要素があって、〈アメイジング・グレイス〉は神を讃える曲ですが、続けて聴くことで見えてくる世界というものがあるはずです。なので、ぜひとも通して、じっくり聴いてみてください」
取材・文/内本順一
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