ザ・ブルーハーツ   2010/03/11掲載
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 ミュージシャンのみならず、さまざまなジャンルの才能に多大な影響を与えてきたブルーハーツ。元格闘家にして最近では文筆、講演、俳優、音楽制作など多岐にわたる活動を展開する須藤元気もその中のひとり。先頃リリースされた『THE BLUE HEARTS 25th.Anniversary TRIBUTE』にも参加している彼にブルーハーツの魅力を独自の観点から語ってもらった。


ブルーハーツは、たとえるならば、純米吟醸の日本酒ですかね。


──まずはブルーハーツを知ったきっかけから教えてください。
 須藤元気(以下、同) 「最初に聴いたのは中学生の頃ですね。中1か中2……ちょっと覚えていないんですけど、最初に聴いたのは<TRAIN-TRAIN>です」
──それはドラマ『はいすくーる落書き』の主題歌として?
 「いえ。そのドラマ自体、僕は観てないんですよ。たぶん友達に聴かせてもらったのかな。僕が中1くらいのときに、近所のボーリング場にカラオケ・ボックスができたんですね。そこが仲間の溜まり場になって。友達と一緒に<TRAIN-TRAIN>をよく歌っていました」
──最初にブルーハーツを聴いたときのインパクトは?
 「最初に聴いたとき、すごくオーガニックな雰囲気を感じたんですよ。無添加というか。技術論とは関係ないところで、純粋で混じりっけのない衝動がブルーハーツの音楽から伝わってきたんです。ちょうど僕らの世代ってBOΦWY派かブルーハーツ派かで分かれるような感じだったんですけど、僕は完全にブルーハーツ派でしたね。なんと言うか、BOΦWYってモテそうじゃないですか(笑)」
──わかりやすくモテそうですよね(笑)。
 「そうなんです。中学生の頃の僕は中途半端なヤンキーみたいな感じで、女のコにもまったくモテなかったんです(笑)。何か悪さをするにしても、いちいち中途半端だったり。そういう少年にとってブルーハーツは、ある意味、心の代弁者みたいな存在だったんですね。世の中に対して感じる、目に見えない不安や不満を自分の代わりに歌ってくれているような気がして。それで高校生になってからギターを買って自分でも歌いはじめたんです。やはり最初にカヴァーしたのは、ブルーハーツの曲でしたね」
──ちなみに曲で言うと。
 「<青空>です。真島さんに憧れていたので、お小遣いを貯めて御茶ノ水の楽器屋さんでギブソンのレスポールを買いました。バンドをやっていたんですけど、たまにアコギを持って友達とストリートでも演奏したりして。そういうときに、よくブルーハーツの曲を歌っていました。そうそう、クリスマスイブのときに表参道で<俺は仏教徒>ってオリジナル曲を歌ったこともありますよ」
──めちゃくちゃヒネくれてますね(笑)。
 「なんか屈折してましたね(笑)。今の僕はポジティヴなものが好きなんですけど、さまざまな葛藤を抱えていた10代の頃はやっぱりブルーハーツの歌から感じる反骨精神みたいなものにすごく影響を受けていたんですね。ストレートなのに影があって。もしかしたら、そこが心に深く響いていたのかもしれません。白と黒が混じっている感じというか。歌詞にも、それまでのロックでは使われていないような言葉が使われていたり」
──そもそも当時は、ロックの歌詞に“僕”っていう一人称が使われること自体珍しかったですから。
 「たぶんブルーハーツだからこそ成立したんでしょうね。ほかの人が歌ったらダサくなっちゃうような言葉でも、彼らが歌うとまったくダサく感じない。そこはやはりブルーハーツが醸し出す人間力みたいなものでしょうね。彼らのスタンスにも共感を覚えましたし」
──スタンスですか?
 「はい。ブルーハーツって決してトップランナーじゃなかったと思うんです。5番手、6番手をキープしていながら、常にカリスマ的な光を放っている。そのパラドックスも魅力的でした。あとは見た目のインパクト。メンバー4人ともそれぞれキャラが立ってるじゃないですか。あのヴィジュアルも大きな武器になっていると思うんです。なので、僕が格闘家として、派手な入場をしたり、トリッキーな戦術をとったのもブルーハーツからの影響があるのかもしれません。やっぱり見た目のインパクトって大事ですから。いい意味でも悪い意味でも、とにかく爪跡を残してやろうと思っていました」
──現在、須藤さんが率いているパフォーマンス・ユニット“WORLD ORDER”もヴィジュアル的なインパクトを重視した音楽活動を展開していますね。
 「“WORLD ORDER”は僕なりのヴィジュアル系です(笑)。“これは一体なんなんだ!?”っていうダンス・パフォーマンスを見せて、視覚的なインパクトから音楽に入ってきてもらうっていう。6月にアルバムを出す予定があるんですけど、PVでもいろいろ面白いことをしようと思っています」
──一方、先頃リリースされたブルーハーツの25周年トリビュート・アルバムにはソロ名義で参加。穏やかな弾き語りとエレクトロニクスを融合させたサウンド・アプローチが斬新でした。
 「最初はアコギとピアノとヴァイオリンっていうアコースティックな編成でいこうと思ったんですけど、ちょっとインパクトにかけるかなと思って途中からアレンジを練り直しました」
──歌うにあたって心掛けたことは?
 「とにかく肩の力を抜こうと思いました。すごくパワフルな曲なので、力に力でぶつかったら絶対に勝ち目がないですから。何回かテイクを重ねたんですけど、結局、使われているのも最初に録ったテイクなんです」
──では最後に。須藤さんにとってブルーハーツというバンドはどういう存在なのでしょうか。
 「10代の頃の自分にとってのサントラみたいなものですね。もしも彼らの音楽に出逢っていなかったら、『須藤元気』という映画は非常に淡々とした、抑揚のない作品になっていたと思うんです。あとは、やっぱりお酒ですかね。楽しいときも悲しいときも、いつも僕を酔わせてくれる。たとえるならば純米吟醸の日本酒ですかね。飲み口はいいんだけど、あとから効いてくるみたいな(笑)。僕にとって、ブルーハーツとはそういう存在です」
取材・文/望月哲(2010年2月)
撮影/相澤心也


須藤元気プロフィール

1978年生まれ。1999年、総合格闘家としてデビュー。独自のファイト・スタイルとパフォーマンスで格闘技の世界に新風を吹き込む。2006年の現役引退後は、作家活動の他、「WE ARE ALL ONE」(すべてはひとつ)というメッセージを携え、講演活動、環境問題啓発などのボランティアにも精力的に取り組む。ここ最近はパフォーマンス・ユニット“WORLD ORDER”を率い音楽活動も積極的に展開。最新著作は精神的支えであることを公言している愛猫「プーチャン」と「メイチャン」(ふたりで「プーメイ」)について綴った書き下ろしフォト・エッセイ『Let's猫』(朝日新聞出版)。
http://www.crnavi.jp/sudogenki/blog/


【WORLD ORDER】iTunes&携帯着うた(「DAM★うたフル」「DAM★うた」「レコチョク」)配信中!!】


須藤元気をメイン・キャラクターに数名のダンサーで構成されるパフォーマンス・ユニット“WORLD ORDER”。現在iTunesにて配信販売中のデビュー曲「WORLD ORDER」は、須藤とそのチームによるオリジナル曲で、須藤の演出によるアニメーション・ダンスとデジタル系テクノ・ハウスの楽曲を組み合わせた独創的で斬新な表現が話題を呼んでいる。同曲は昨年9月下旬よりYouTubeにてパフォーマンス映像を一部公開しており、「エンターテイメント部門」の“お気に入り”登録数でWeekly第1位を獲得したほか、総アクセス数10万を突破するなどデビュー前から各方面の注目を集めている。


『THE BLUE HEARTS “25th Anniversary” TRIBUTE』
(TKCA-73508 税込3,000円)

[収録曲]
01.リンダリンダ / THE COLLECTORS
02.君のため / jealkb
03.キスして欲しい(トゥー・トゥー・トゥー) / メロン記念日
04.終わらない歌 / ニューロティカ
05.人にやさしく / PUFFY
06.パンクロック / ローリー&21st Century Stars
07.青空 / BEAT CRUSADERS
08.夢 / MINI SKA BOX
09.電光石化 / ザ・キャプテンズ
10.情熱の薔薇 / 水戸華之介&人間椅子
11.NO NO NO / CUBISMO GRAFICO×WATARU BUSTER
12.チェルノブイリ / Large House Satisfaction
13.皆殺しのメロディー / Merry
14.TRAIN-TRAIN / 須藤元気
15.人にやさしく(Live Version) / 矢井田瞳




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