トーキョーキラー センスと個性をあわせ持ったプレイヤーが自由奔放に音をぶつけ合う極上のインスト・アルバム

トーキョーキラー   2019/09/06掲載
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 “ファズギター・ヒロイン”ケメ(g)を中心としたエレキ・インスト・バンド、トーキョーキラーが2ndアルバム『BOOM GO!!』をリリース。ケメ、おおくぼけい(key)、鍵山喬一(ds)に加え、カトウタロウがベーシストとして参加した本作は、ベンチャーズの「ファジー・アンド・ワイルド」、元祖シンセ・ポップと呼ぶべき「ポップコーン」のカヴァー、既存曲「銭ゲバ」「明治百五十年」「桜アイランド」のほか、セッションから生まれた新曲もたっぷり収録。センスと個性をあわせ持ったプレイヤーが自由奔放に音をぶつけ合う極上のインスト・アルバムに仕上がっている。
トーキョーキラー
『BOOM GO!!』

(ソリッド・CDSOL-1851)
――ニュー・アルバム『BOOM GO!!』、ギター・インストの可能性を広げる素晴らしい作品だと思います。まず、トーキョーキラーの成り立ちからあらためて教えてもらえますか?
ギターキラー★ケメ「結成したのは10年以上前です。エレキ・インスト・バンドがやりたくて。私がベンチャーズが好きで始めたバンドでもあるので、最初はカヴァーばっかりだったんですけど。メンバーが流動的で、何年か活動してなかった時期もあったんですけど、おおくぼさん、アッコ(ex.GO!GO!7188)、喬一くんが参加してから、オリジナル曲も作り始めて、アルバム(『トーキョー★キラーストリート』)を出して」
――なるほど。ベンチャーズは10代の頃から好きだったんですか?
ケメ「そうです。ベンチャーズやディック・デイル、60年代のサーフ・インストが好きで。そういう音楽が好きなのは私だけですけど……」
ドラムキラー★キョウイチ(ds)「僕も10代の頃、コピーバンドやってましたよ」
ベースキラー★タロウ(b)「すごい(笑)」
キョウイチ「18才のときに、50才のバスの運転手さんとバンドやってて(笑)。春日部公民館で演奏しました」
ケメ「春日部ベンチャーズだ(笑)」
――ケイさんはどうですか?
ケイ「ベンチャーズのレコードが家にあったから、自然に聴いてました。あと、寺内タケシさんが(ベートーヴェンの)〈運命〉を演奏しているレコードが好きで」
ケメ 「『レッツ・ゴー〈運命〉』」だね。
ケイ「その後、イングウェイ・マルムスティーンを知ったとき、“これは寺内タケシに近いな”と思ったり」
――カトウさんとトーキョーキラーの出会いはライヴだとか。
タロウ「そうですね。永友タロウ(永友聖也とカトウタロウの“同級生ユニット”)とトーキョーキラーで浅草のTHE THREE ROBBERS という洋服屋さんで対バンしたことがあって。海外の旅行者が、“カッコいい音楽が聴こえてきたから”っていきなり入ってきて、レコード買ってくれたり」
キョウイチ「すごく嬉しいですよね」
タロウ「そのときの打ち上げで“スプリット盤を作ろうよ”という話をしたんじゃないかな」
タロウ「その後、“アッコが産休に入るから、ベース弾いてくれませんか?”と言われて、“よろこんで!”という感じで引き受けて。俺もギター・インストは好きだったんですよ。最初はザ・サーフコースターズで、ザ・アストロノーツも聴くようになって。あとは映画『パルプ・フィクション』の〈Misirlou〉(ディック・デイル)ですよね。それまではヘヴィ・メタル一辺倒だったんですけど、あまりのカッコよさに衝撃を受けて」
ケメ「でも、トーキョーキラーではギターじゃなくて、ベースをお願いしているんですけどね(笑)」
タロウ「インスト・バンドはベースもカッコいいんですよ。歌の役割をギターがやっているから、ベースが良くないと曲が成立しないというか。トーキョーキラーはオオクボくんの鍵盤もすごいし、可能性がありすぎるバンドだなと思っていて」
――今回のアルバム『BOOM GO!!』は、まさにトーキョーキラーの可能性が炸裂しているアルバムだと思います。既存曲、カヴァー曲、新曲で構成されていますが、制作はどんなスタイルで進められたんですか?
ケイ「新曲づくりのために、3月の末にスタジオに入ったんですよ。3日入ったんですけど、新曲はほぼできて」
ケメ「その場で作っていくスタイルですね」
ケイ「それぞれがアイディアを持ち込んで、“こうしたらどう?”って話しながら構成を決めていって。とにかく速いんですよ、曲ができるまでが」
タロウ「インストゆえの速さだよね。歌モノだと、歌詞によって曲が発展することがあるけど、それがないから(笑)」
ケイ「レコーディングも2日間ですからね。3日で曲を作って、2日で録って。ほぼ1週間で完成しました」
ケメ「そんなに曲をこねくり回すバンドではないですから」
タロウ「そのほうがいいんだよ。作り込むより、インプロ感でやっていくほうが向いていると思う」
――スタジオでのインプロヴィゼーションが、そのまま曲につながる。50年代のジャズみたいですね。
キョウイチ「しかもクリックも使ってなくて、一発録りなんですよ。だいぶ時代と逆行してますね(笑)」
ケイ「だいたい最初のテイクがいいんだよね」
タロウ「うん。“いまの良かったから、もう1回”ってなると、どうしても演奏が小さくなるから」
ケイ「あとはアッコさんの“遠隔レコーディング”ですね」
ケメ「それも初めての試みでした。〈桜アイランド〉という曲なんですけど、ベースを抜いた音源を送って、ベースを入れてもらって。完璧でしたね」
タロウ「すげえいい音だよね。ベーシストとしての覚悟というか、男気が感じられる演奏で。アッコは指弾きなんですけど、指が当たる部分の木がエグれてるんですよ」
ケメ「あれはすごいよね。あと、〈桜アイランド〉と〈BOOM GO!!〉にはコーラスも入れてもらって。たまたま“のん”さんのレコーディングで東京に来てたから、“こっちにも声を入れて!”」って」
トーキョーキラー
――全体を通して音楽的なバラエティがあるのも印象的でした。爽快に突き抜けるような「MAKUHARI SUNSET」、攻撃的なロックチューン「ハヤブサ」、70年代の刑事ドラマのテーマ曲のような「カルトクイーン」、哀愁のあるメロディの「夜のマタギ」ザ・アニマルズを想起させるオルガンが印象的な「哀しき埠頭」など、曲のキャラクターがしっかり立っていて。
ケメ「ギター・インストなので、単調になると飽きちゃうと思うんですよ。もともとギター・インストが好きな人はそれでもいいけど、いろんな人に聴いてもらいたいので、ヴァリエーションがあったほうがいいなと。そのあたりはおおくぼくんがバランスを取ってくれましたね。“こういう感じの曲があったほうがいい”ってアイディアをくれて。「ポップコーン」(“ホット・バター”によるカバーが世界的に大ヒットした、元祖シンセポップ)のカバーも、おおくぼくんが「やろう」って言ったんです。
ケイ「このメンバーでライヴやることも増えてきて、“こういう曲をやったら盛り上がるだろうな”ということはつねに考えているので。YMOを曲をカヴァーしたらおもしろそうだな、とか。〈ポップコーン〉もその一つですね」
ケメ「〈ポップコーン〉は誰でも知ってると思いますけど、この時代にカヴァーする人はいないなって(笑)。「パイプライン」っぽいアレンジも気に入ってます。ぜひクラブでもかけてほしい。
――バンドの進化が感じられる作品ですよね、ホントに。
ケメ「みんなの力のおかげです。ボリューム感もあるし、満足してますね」
ケイ「いろんな要素が入ってるのもいいですよね。ドラムもぜんぜんサーフっぽくないし」
キョウイチ「どちらかというとグランジですよね」
ケイ「タロウさんはもともとベーシストではないし、それぞれの個性が混ざっているのがいいな、と。制作中、タロウさんとケメさんのギタリスト同士の会話もけっこうあって、それも良かったんですよね」
タロウ「ケメはこう見えても控えめだから、“もっと出していいよ”ということは言いましたね。あなたのギターが歌なんだから、リード・ヴォーカルが控えめなのはよくないよって」
ケメ「助けてもらいました」
タロウ「いやいや(笑)」
キョウイチ「内に秘めた爆発力がありますからね、ケメさんは。それがさらに出てきたというか」
タロウ「ケメのファズギターは圧倒的ですからね。ヒステリックだし、しかも哀愁もあって」
――この先のトーキョーキラーはどうなりそうですか?
ケメ「まずは9月のレコ発ライヴ(9月15日@渋谷BYG)ですね。将来的な目標としては、海外でもやってみたくて」
タロウ「いいね、フランスとか行きたい。いろんなバンドと対バンもしてみたいし」
ケメ「永友タロウとかPIGGY BANKSとか、身内と対バンすることが多いですからね。フェスにも出たいけど、まったく呼ばれない……(笑)」
ケイ「セルフ宣伝をぜんぜんやってないからね。これからがんばります(笑)」
取材・文/森 朋之
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