【THE VICAR】ロバート・フリップの片腕がソロ・プロジェクトを始動、きわめて英国的な初のアルバムを発表!

ヴィカー   2013/07/24掲載
はてなブックマークに追加
 キング・クリムゾンDGMレコードのエンジニア / プロデューサーであり、ロバート・フリップの片腕として知られるデイヴィッド・シングルトンはフリップと出会う以前に実験的なレコードを出していた経験を持つアーティストでもあるが、さきごろ“ザ・ヴィカー”名義によるソロ『ソング・ブック第1章』を発表した。音楽業界の内情を皮肉とユーモア混じりに描いたストーリー仕立ての作品で、クラシカルなストリングスと複数のゲスト・ヴォーカルをフィーチャーしたきわめて英国的なチェンバー・ポップ・アルバムだ。アルバムのほか小説、コミック(作画は息子のベン)などをメディア・ミックスしたプロジェクトとして、今後も継続していくようである。
――今回のプロジェクトの経緯を。
 「10年ぐらい前、ロバートとふたりでスタジオで世間話をしてる時、音楽業界ってほんとにおかしな所で、ぶっ壊れてる部分とかヤバイ所が一杯あるのに、それを描いた小説や映画ってあまりないよねって話をしていたら、ロバートが“みんな君が書くのを待ってるんだよ。君が書くべきじゃないのかな”と言って、それがすべての始まりだ」
デイヴィッド・シングルトン
――音楽業界のおかしな部分とは?
 「キング・クリムゾンの楽曲の権利関係で年がら年中レコード会社と訴訟沙汰が起きていてね。最大の問題は、アーティストがレコード会社やマネージメントから正当なお金をもらっていないということだ。じつにおかしな、興味深い業界だ。でもこうして作品化することで、ネガティヴなエネルギーをポジティヴに変えることができる。それをやりたかった」
――裏方として長いことやってきて、今回自分のプロジェクトを手がけてどうですか。
 「もちろんプロデュースという行為自体は同じだけど、今回の制作でエキサイティングだったのは、まっさらなキャンバスに自分の思い通りの絵を描くことができたこと。曲作り、アレンジからミックス、マスタリングまで全部自分一人でやることになったので、ちょっとストレスにはなったけど、でもとてもいい経験だった」
――その過程でなにか新しい発見は?
 「作っている最中には気づかなかったけど、完成したものをあらためて聴き返してみると、たしかに“こういう自分もあったのか”と気づいた。これは鏡みたいなアルバムだと思う。15歳ぐらいまでクラシックしか聴いたことがなかったんだけど、今になってその時の知識や経験が出ている。ストリングスの使い方とかね。ビートルズポール・サイモンのような素晴らしいソングライターの影響も出ている。最大のポイントは、自分ってこんなにイギリス人なんだって、音楽を通してあらためて気づいたってことかな。それはアメリカ的でないという意味なんだ。最近のポップ・ミュージックはブルースやジャズをルーツに持つ音楽が多いけど、この音楽に関してはそういう要素はほとんどない」
――ポール・サイモンの影響は?
コミックを手がけた息子のベン・シングルトンと
 「たしかにポール・サイモンはアメリカ人だ(笑)。でも彼は最高のソングライターだから(笑)。作曲家としてマッカートニーとサイモン、ふたりのポールにすごく影響を受けたんだけど、ふたりは対極にあると思う。マッカートニーはたぶん夢の中でも曲が書けちゃう天才。でもサイモンはもう少し職人的というか。ある意味建築家的というか、練って練って考えぬいて素晴らしい曲を書いてくる。自分はソングライターとしてポール・サイモン的だと思うので、音楽性というよりは方法論として共感できるんだと思う」
――本作付属のDVDには5.1チャンネル・ヴァージョンも収められていますが、ロック / ポップ系のサラウンド・ミックスとしては、際立って音が良いと思いました。
 「ロバートに強くサラウンド化を勧められたんだ。ドルビーの人にも、これまでのベストと褒められたから、うまくいったんだろう。普通のヴォーカル + バンドという編成では、前からしか音が聞こえないから、そもそもサラウンド化することに無理がある。でも今回はチェロだのホーンだのがいて、四方八方から音が聴こえても不思議じゃない楽器編成だから、そういう意味で向いていたんだろうね」
取材・文 / 小野島 大(2013年6月)
※ 掲載情報に間違い、不足がございますか?
└ 間違い、不足等がございましたら、こちらからお知らせください。
※ 当サイトに掲載している記事や情報はご提供可能です。
└ ニュースやレビュー等の記事、あるいはCD・DVD等のカタログ情報、いずれもご提供可能です。
   詳しくはこちらをご覧ください。
[インタビュー] “グレート・アメリカン・ソングブック + スパイス・ガールズ” ローレン・デスバーグの普遍的魅力[インタビュー] “豊かさ”を思い出させる音楽 児玉奈央『IN YOUR BOX』
[インタビュー] ジャズ・ギタリスト小沼ようすけが追求する、生き方とマッチした音楽“Jam Ka”[インタビュー] どんどん上がっていくイメージをキープしていたい――ラフィンノーズが“ニュー・アルバム”『NEGATIVE』を2作同時リリース
[インタビュー] 最新の挑発――Ramza『sabo』[インタビュー] “知らない土地でノーバディになれた” 解き放たれたインプロヴィゼーション――ハクエイ・キム『カンヴァセーションズ・イン・パリ』
[インタビュー] フレッシュな気持ちとユーモアをもって音楽に接する 高田 漣『FRESH』[特集] 働く女性を応援!ラフィネの新CMは「職業、セラピスト。」
[インタビュー] 遊佐未森、デビュー30周年記念作品第2弾はライヴ音源+映像のメモリアル作品[インタビュー] CAPTAIN TRIP RECORDS&MARBLE SHEEPのKEN MATSUTANI率いる“KEN & THE STRANGE MOON”が1stアルバムをリリース
[インタビュー] ピアノ演奏の基礎の部分をショパンで構築してきた――牛田智大、10代最後に取り組んだショパン・アルバム[インタビュー] ホセ・ジェイムズが新レーベル「レインボー・ブロンド」を始動――第一弾アーティスト・ターリがデビュー・アルバムをリリース
https://www.cdjournal.com/main/special/showa_shonen/798/f
e-onkyo musicではじめる ハイカラ ハイレゾ生活
新譜情報
データ提供サービス
弊社サイトでは、CD、DVD、楽曲ダウンロード、グッズの販売は行っておりません。
JASRAC許諾番号:9009376005Y31015