ヴィユー・ファルカ・トゥーレ×クルアンビン、アフリカ、マリの伝説のギタリストをその息子とクルアンビンがオマージュ

ヴィユー・ファルカ・トゥーレ   2022/09/22掲載
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――今回のコラボ・アルバム『アリ』は、ヴィユーがクルアンビンにオファーするかたちで始まったと聞きました。
ヴィユー・ファルカ・トゥーレ「最初にクルアンビンの音楽を聴いたとき、非常にオリジナルな音楽を生み出す素晴らしいバンドだと思った。そのあとすぐロンドンで彼らのライヴを観て、一緒に何かやりたくなったんだ。アフリカでは誰かと音楽を作るなら、楽曲だけでなくその人たち自身を気に入り、同じフィーリングを持っていることが大切だ」
――ヴィユーからオファーを受けて、おふたりはどう思いましたか?
ローラ・リー「私たちにはルールがあって、何か物事を決めるときに何かしら迷いがある場合は“ノー”と答えることにしていて、100%やるべきだと断言できるものだけ“イエス”と答えているの。そしてもちろん、ヴィユーからもらったオファーに関して迷う余地などまったくなかった」
ドナルド“DJ”ジョンソン「マーク(・スピア)とローラは僕よりもヴィユーとアリの作品に馴染みがあったようだけど、僕はあまり彼らの音楽のことは知らなかったんだ。でも、ロンドンで初めてヴィユーに会ったとき、あっという間に気持ちが通じ合った。彼はとても温かく愛情深い人で、それがすぐに伝わってきたんだよね。音楽にもそれが表れていると思う。彼とのレコーディングセッションは、僕らにとって非常に貴重な体験となった」
――マリのトラディショナル・ミュージックについてはどんな印象を持っていましたか?
ローラ「マリの音楽はカウントの取り方が違うのよね。会話でも言語でも、人や国によって独自のペースみたいなものがあるじゃない? それが音楽にも反映されているというか。だからこそ、自分たちとは違う言語を操り違う思考回路を持っている人とのコラボレーションはとても勉強になるの」
――なるほど、とても興味深いです。ヴィユーはお父さん以外ではどんなことから影響を受けて今の音楽性が確立されたのでしょうか。
ヴィユー「古今東西、さまざまな音楽を聴いて影響を受けてきたよ。ジェイ・Zのようなヒップホップや、リアーナのようなR&Bも大好きだし、マリやナイジェリア、ブルキナファソの古い伝統音楽も聴いてきた。自分で曲を作るなら、できるだけたくさんの音楽に耳を傾け、そこから学び、使いこなすことでオリジナリティを獲得しないとね」
――今回、取り上げた楽曲はどうやって決めたのですか?
ローラ「それがわかるのはヴィユーだけ(笑)。私たちは、スタジオに入るまで何をプレイするのかさえ知らされていなかったから」
ヴィユー「みんなのためにシンプルな曲を選んだつもりだよ。スタジオでいきなり演奏する音楽が、情報量の多いコテコテのマリ・ミュージックだと戸惑ってしまうと思ったからね(笑)。3人とも、自分たちが何をやっているのかつねに把握しながら演奏できたはず」
ローラ「どうだったかな(笑)」
DJ「あははは、怪しいよね」
ヴィユー・ファルカ・トゥーレ×クルアンビン
ローラ「実際、最初はすごく緊張したよ。スタジオに入ったとき、私の頭の中は真っ白だったし、マークとDJも同じだったんじゃないかな。でも実際に演奏を始めたら、そこで生まれているエナジーをすぐにとらえることができたんだよね。あれは素晴らしい体験だった。まるで魔法のようで、それこそが音楽をコラボレートする意味だと実感したの」
DJ「まずヴィユーが何らかの楽器を弾きながら、“こんな感じでやりたいんだ”と伝えてくれて、それを俺たちなりに解釈しながら演奏してみた。一度やり終えたら、“オーケー、じゃあ次の曲に移ろう”みたいな(笑)。実際のところ僕らのふだんのレコーディングよりも断然早く進められたね。クルアンビンではついいろいろ考えすぎてしまうのだけど、ヴィユーは本当にフィーリング重視なんだ」
ヴィユー「音楽は戦いじゃないからね。全員がリラックスしている必要があるし、自分自身の中から出てくるものでなければいけない。このアルバムには、それが反映されているんだ」
――リオン・ブリッジスとのコラボ作品『テキサス・サン』の時もそうでしたが、ヴォーカル入りの楽曲と普段のインスト曲とでは作り方にどのような違いがありますか?
ローラ「クルアンビンではまず楽器だけでアレンジを構築して、その後にコーラスなどの声を足していくからつねに楽曲の中心は楽器ということになる。でも、今回やリオンとのコラボでは楽曲の中心にヴォーカルがあって、それを支えるようにアレンジを組み立てていく。その違いはかなり大きいね」
DJ「インスト曲は、お互いのプレイに刺激されながら音が広がっていくジャム・セッションのようなもの。たとえば相手が演奏したプレイに対して何かしらリアクションを返したり、同じフレーズをリピートしたりすると、手にしている楽器がそれぞれ違うのでコール&レスポンスみたいになるんだ」
ローラ「インストの場合は言葉がないぶん普遍性を持ちやすいし、相手の言語を理解する力がなくとも演奏を通じて心のやり取りができる。それって素晴らしいことだと思うな」
――アルバムが完成し、お互いの音楽性についてどんな印象を持ちましたか?
ローラ「この作品のレコーディングを終えて、初めて演奏した曲のオリジナルをじっくり聴くことができたのだけど、自分たちがどれだけ素晴らしいプロジェクトに誘ってもらえたのかをようやく実感して心から感謝している」
DJ「今回のコラボは、すべてのプロセスが学校のようだった。マリの偉大な文化を生徒として学ばせてもらったような気持ちでいるよ。本当にラッキーだよね」
ヴィユー「俺も3人から本当にたくさんのことを学んだよ。たとえばマリの音楽って大抵はアコースティック楽器を用いるのだけど、今回エレキ・ギターを使うことで今までにない仕上がりとなった。そういう想定外の出来事が、かならず起きるのがコラボの楽しいところなんだよね」
――ところで、ポール・マッカートニーとのコラボはいかがでしたか?
ローラ「私はビートルズの音楽を聴いて育ってきたからとても嬉しかった。ポールとは少しだけ話す機会があって、その時に日本の話が出てきたよ。ちょうど日本に滞在しているときにポールの奥さんの誕生日があって、パーティの席で日本のビートルズ・カヴァー・バンドを雇ったんだって。その演奏が完璧だったと言ってたわ(笑)」
――もうすぐ3度目の来日公演が行なわれます。最後に日本の印象を聞かせてください。
DJ「日本はもちろん大好き。すべてにおいて細部まで細やかな配慮が行き届いているし、食事が最高に美味しい」
ローラ「食事は楽しみだね。あと、日本ってすごくカラフルだけど控えめでもあって。どこへ行っても他者へのリスペクトを感じる。几帳面で親切なところが大好き!」
取材・文/黒田隆憲
Information
クルアンビン来日公演〈First Class Tour 2022〉

11月15日(火)東京 豊洲PIT
11月16日(水)東京 ZEPP Haneda
11月17日(木)大阪 Namba HATCH

詳細はSMASHのウェブサイトを御覧下さい。
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