矢川 葵、「昭和歌謡を歌い継ぐ」ソロとして再始動

矢川葵   2022/03/23掲載
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 元Maison book girlの矢川葵がソロ活動をスタート。1st EP「See the Light」をリリースした。堂島孝平の作詞・作曲によるオリジナル曲「ほんとはThink Of You」のほか、「スローモーション」(中森明菜)、「瞳はダイアモンド」(松田聖子)のカヴァーを収録した本作は、彼女のルーツである80年代アイドル・ソングを現代的なポップ・ミュージックへとアップデートさせた作品。憂いと可愛さがナチュラルに混じる歌声、楽曲に描かれた情景と心情を繊細に紡ぎ出す表現力を含め、シンガーとしての彼女の魅力がたっぷり感じられるのも本作の聴きどころだ。
――まずは矢川さんの音楽のルーツを教えてもらえますか?80年代アイドルに興味を持ったきっかけは?
 「松田聖子さんです。祖母の家が実家の近くで、母の学生時代のお部屋がそのまま残ってたんです。昭和特有の丸文字で書いたノートとか(笑)、当時のものを見るのが小さい頃から好きだったんですけど、その部屋にレコードがあって。母は松田聖子さんのファンで、よく口ずさんでたんですけど、テレビの歌番組などで改めて聞いた時に“この曲だ”って。そこから自分でもいろいろと調べるようになったのがきっかけです」
――ネットの情報よりも先に、当時の“モノ”に触れたわけですね。
 「そうですね。母の卒業アルバムを見ると、女の子はみんな聖子ちゃんカットなんです。なんなら先生も聖子ちゃんカットだったりしてすごいです(笑)。その後はYouTubeで80年代の歌番組を見るようになって、好きな曲が増えていきました。そして、私の好きな曲はほとんど松本隆さんの歌詞ということにも気づきました」
――矢川さんはグループのときから、80年代のアイドル・ソングをライヴでカヴァーしていました。ソロ活動もやはりその路線しかなかった?
 「それ以外思いつきませんでした。“どういう曲を歌いたいですか?”と聞かれたときも、すぐに“80年代のアイドルみたいな曲がいいです”と答えたぐらいで。実際、今、やりたいことしかやってないんです(笑)。ソロなので、私が“こうしたい”とか“これでOKです”と言わないと、話が進まないこともいっぱいあって。やることがたくさんあるんだなと実感しています」
――矢川さん自身がどうしたいか?が大事だし、それを求められているわけですよね。
 「そうですね。今まではプロデューサーのサクライケンタさんに曲を作っていただいて、それを受け取って、自分たちなりに解釈して歌うというスタイルだったんですが、今は自分がどういうものを作りたいかを考えて、人に伝えるという形で。すごく楽しいんですけど、慣れてないから伝え方がわからないんです(笑)。たとえばデモ音源を聴いたときも、“もうちょっとキラキラした音がほしいです”とか、そういう擬音でしか言えなくて。どうしたら汲み取ってもらえるんだろう?と思ってるんですけど……もっと勉強しないとダメですね」
――写真やビジュアルに関しても、矢川さんがジャッジしてるんですか?
 「意見は言わせてもらっているんですが、私が好きなものだけを選ぶと、似たようなものばかりになってしまいそうで、スタッフのみなさんの意見も取り入れるようにしています。衣装に関しても、まずはスタイリストの方に用意していただいて、そのなかから選ばせてもらったりとか」
矢川 葵
矢川 葵
――では、1st EP「See the Light」について聞かせてください。ソロ・アーティストとしての最初の作品となるわけですが、全体的なテーマはあったのでしょうか?
 「いちばん初めに出すものなので、これから何をやっていく人なのかがわかりやすく伝わる作品がいいなと思いました。中森明菜さんの〈スローモーション〉と松田聖子さんの〈瞳はダイアモンド〉をカヴァーさせていただいていますが、もちろんほかにも好きな曲はたくさんあるんですが、みんなが知ってる曲がいいなと思って超有名な曲を選ばせてもらいました」
――オリジナル曲「ほんとはThink Of You」も、80年代のアイドル・ポップを想起させる楽曲。作詞・作曲は堂島孝平さんですが、堂島さんにオファーしたのは?
 「私が“堂島さんがいいです”とお願いしました。堂島さんが〈君を天然色〉(大瀧詠一)をカヴァーしているのを聴いて、“きっと堂島さんだったら、かわいいけど切なくて、あの頃の感じがする曲を作ってくれるはず”と思って。実際、“80年代アイドルっぽい、春っぽい曲がいいです”とオーダーさせていただいたんです。堂島さんもしっかり汲み取ってくださって、送っていただいたデモ音源を聴いた瞬間に“まさにこれです!”という感じでした」
――思い描いた通りの楽曲だった、と。
 「かわいすぎる!って思いました(笑)。グループのときに歌っていた曲とはかなり違うから、“ファンのみなさんはどういう反応するだろう?”ってドキドキしてます(笑)」
――歌詞については?
 「これもかわいすぎる!って思いました(笑)。“ここの歌詞が好きです”って堂島さんにご連絡したら、“気づきましたか!じつはそこから書き始めました”と返事をいただいたんです。それは、サビの“門限を聞かれて 止まったティースプーン”というフレーズなんですけど、堂島さんには“駆け引きとかうまくできなさそうな感じが矢川さんっぽいかなと思って”とおっしゃっていただきました」
――当たってます?
 「当たってます(笑)。(楽曲を制作する前に)堂島さんとたくさん話したわけではないんですけど、しっかり見ていただいてるんだなと思ってうれしかったです」
矢川 葵
――かわいさと切なさが入り混じったヴォーカルが素晴らしいですね。
 「ありがとうございます。堂島さんからは“歌詞や曲はかわいいいけど、矢川さんが歌ったら、切なさとの化学反応が起きると思います”と言われていたんです。もともと私の声は、どんなに明るく歌ってもちょっと低めに聴こえるみたいで。ボイストレーナーの先生からも、“どれだけ明るくかわいく歌っても、葵ちゃんの声ならキラキラしすぎないから安心して歌って”と言われてたんです。少し影のある感じというか」
――レコーディングでもナチュラルに歌えた?
 「がんばりました(笑)。普段の感じで歌うと、淡々とした感じになる気がしたので。レコーディングブースのなかではずっとニコニコしながら歌ってました。表情をしっかり作ることで、それが声にも表れると思って。堂島さんにも“よかったです”と言っていただいたのでうれしかったです」
――MVにも、矢川さんのアイディアが反映されているんですか?
 「そこは監督さんにお任せしています。〈スローモーション〉〈瞳はダイヤモンド〉のMVのときもそうだったんですが、MVの撮影のたびに“こんなにたくさんの方が関わってくれるんだ”ってビックリしちゃうんです。私一人のために……って感動するし、“いいのかな”とも思っちゃって。ありがたいし、もっとがんばらないとなと思います」
――一人で撮影することには慣れました?
 「まだ慣れないです(笑)。歌に関しても、1曲を一人で歌うって、こんなに難しいんだなと実感しています。グループのときは歌割りが決まっていて、ほかのメンバーと一緒に考えながら、合わせながら歌っていたんですけど、ソロになったら全部自分で考えて、全部一人でやり切らなくちゃいけないので。ライヴも大変そうだなって」
――カヴァー曲についても聞かせてください。まずは「スローモーション」。中森明菜さんの1982年のデビュー曲ですね。
 「以前から好きな曲なんですが、今回カヴァーさせてもらうことになって、あらためて原曲を聴いてみたんです。キラキラしたかわいい歌詞なのに、どこか切ない感じがあって、それは明菜さんの歌い方や声によるものなんだろうなと。当時の衣装は白くてすごくかわいいドレスだけど、歌い出すと大人の雰囲気も感じられますよね。歌い出しから女の子が浜辺を歩いてるところが思い浮かぶし、本当に色褪せない曲だなと思います」
――矢川さんの声質にもよく似合ってますね。
 「ありがとうございます。素のままというか、自然に歌ってしっくりくる感じもありました」
――そして「瞳はダイアモンド」は松田聖子さんの1983年のヒット曲。この曲を選んだのはどうしてですか?
 「ほかにもいくつか候補曲があったんです。グループのときのイベントで〈天国のキッス〉をカヴァーさせてもらっていて、ファンのみなさんにもなじみがある曲なんですけど、あれから数年経って、今の自分に合うのは〈瞳はダイアモンド〉だなって。このカヴァーが再出発の1曲目になりました。あらためて歌詞を読んでみると、“ダイアモンド”が3回出てくるんですけど、それぞれが主人公の心の移り変わりを表現していて、ボイストレーナーの先生と“いい曲だね〜。泣いちゃうね”って話してました。キラキラしたイントロがあって、聖子さんがゆっくり出てきて……理想のアイドルです」
――天性のアイドルとしか言いようないですよね。
 「そうだと思います。当時はすごく忙しかったから、スタジオに行って、“はい、この曲を歌って”と言われて、歌い終わったら“はいOK。次は歌番組です”という感じだったみたいで。インタビューでも“どうやって歌おうとか考えてなかった”とおっしゃってるんですけど、それはつまり、普段からずっとアイドルだってことなんですよね。“アイドルをやるぞ”ではなくて、自然だったんだろうなって」
――やっぱり目標は聖子さんですか?
 「そんな!おこがましいです。去年、初めてライヴに行ったんですけど、肉眼で見るだけで感動しました。お客さんが好きな曲名を紙に書いて、それを見ながらワンフレーズずつ歌うコーナーがあったんですけど、歌詞をすべて覚えているのもすごいし、歌声がCDとまったく変わらなくて、本当にすごい方なんだなってあらためて思いました」
矢川 葵
――「See the Light」というタイトルについても聞かせてください。グループ時代に発表した写真集の題名だったそうですね。
 「はい。イベントのグッズとして作ったんですけど、写真を撮ってくれた友達と一緒にタイトルを考えて。解散することは決まっていたんだけど、その子が“(矢川が)アイドルだったこと、キラキラしていた時間はなくならない。これからも光は見つけられるよという意味を込めたらどう?”と言ってくれたんです。EPのタイトルを考えているときに、“戻ってこれたよ”という意味も含めて、〈See the Light〉がピッタリだなって思ってこれにしました」
――ブクガ解散前の気持ちとつながっているんですね。
 「そうですね。グループがずっと続けばいいなと思ってたんですけど、なくなってしまって。そのときは“これからどうしたらいいんだろう?”と思ってたんです。こういう活動をやめて別の仕事しようかなと思ったこともあるし、“やりたい”と“やめよう”を何度も行き来して……。でも、最後のライヴが終わったときに“もう一度、ファンの人たちに会いたいな”と思って、スタッフのみなさんに“手伝っていただけますか?”と話して。今は少しでも長く、ファンのみなさんの前で歌い続けられたらいいなと思ってます」
――矢川さんご自身には“理想のアイドル像を追求したい”という気持ちはあったんですか?
 「どうだろう……?小さい頃から80年代のアイドルの曲を聴いたり映像を観て、“こういう衣装を着て歌ってみたい”とは思っていました。その夢を少しずつ叶えているところなんです。堂島さんに曲を書いていただいたこともそうだし、ファンの方からも“葵ちゃんは夢を叶えるのが上手だね”って言われるんです(笑)。私が楽しんで夢に向かってる姿を見て、ファンのみなさんにも楽しんでもらえたらなって。そういう存在になれたら嬉しいです。あと、私は運がいいんですよ。グループに入って2年目くらいに受けたショート・フィルムのオーディションで出会った鈴木健太さん(映像作家/クリエイティブ・ディレクター)が今こうしてソロ活動を手伝ってくれたり、偶然堂島さんと出会えて曲を作っていただけたり、すごい人に巡り合える運があると思ってます」
――それも才能の一つだと思います。3月27日にはソロとして初のワンマンライヴを開催。ソロ活動、さらに広がりそうですね。
 「ワンマンライヴが近づくにつれて緊張が増してます。でも歌を聴いてもらえる場所は作っていきたいと思ってますし、うれしいです。好きな曲のカヴァーも続けたいし、オリジナル曲も増やしたい。作家の方によって私のイメージは違うだろうし、それぞれの“矢川葵”を表現していただけたらと思っています。たとえば先日、YouTubeチャンネルでゆっきゅんと対談したんですけど、“いつでも歌詞を書くよ”って言ってくれているので、いいタイミングでお願いしたいですね」
取材・文/森 朋之
Live Information
〈矢川葵 コンサート 2022『See the Light』〉

2022年3月27日(日)東京 キネマ倶楽部
[昼公演]開場14:00 / 開演15:00
[夜公演] 開場18:00 / 開演19:00
チケット:4,000(ドリンク代別)
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