[特選ヘッドフォンガイド]山中千尋が聴くradiusW“ドブルベ”シリーズ

山中千尋   2011/12/16掲載
はてなブックマークに追加
今回は特別に曲にメッセージを託しました
 ピアニスト山中千尋が新作『レミニセンス』を発表した。インディ・レーベル、澤野工房から颯爽と登場したのが2001年のこと。つまり今年でデビュー10周年となる。月日が経つのは早いものだ。2005年からはユニバーサル ミュージックでの活動を開始。昨年発表した『フォーエヴァー・ビギンズ』では世界デビューも果たした。

 さて、『レミニセンス』は彼女ならではの広い視野からチョイスした、ジャズ、ポップス、ロック、ブラジリアン・ミュージックをトリオ編成で料理。リスナーにとってのご馳走が目白押しだ。たとえば、山中が「音楽のアイデアが非常に豊かで、音楽を全体で捉えるような視点を持っている」と評するホレス・シルヴァーの「ソウル・サーチン」。これはシルヴァーの諸作品の中ではあまり聴かれていない70年代の曲だ。それをブリリアントかつ、ソウルフルなタッチで描いてゆく。レオン・ラッセルの「マスカレード」では、ドラムに、バーナード・パーディーを迎えてのセッション。パーディーといえば、ソウルジャズの屋台骨を支えた名ドラマーである。「現代のドラマーのような派手さはないんですが、人間の脈拍のようなソリッドで淡々としていながら心に迫ってきます」。しっとりとした冒頭から、次第に大きなグルーヴが生まれてゆく、その情景に誰もが息をのむはずだ。オリジナル曲「レイン、レイン・アンド・レイン」は、3.11、そして福島の原発事故について想いを馳せたものだ。普段は曲に特定のメッセージを託すことはないそうだが、今回は特別だ。「雨が降って、たくさんのものを洗い流し、早く再生してほしいという願いを込めています」。また、東北で復興に尽力している人々の姿に接して、エネルギーをもらったともいう。「それがなかったら、このアルバムを完成させるのは難しかったと思います」。そして、最後に収められた「キャント・テイク・マイ・アイズ・オフ・オブ・ユー」には大胆なエディットが施されている。まるでラジオのチャンネルを切り替えたように、突如としてスクリャービンのソナタの4番が挟み込まれるのである。これは聴いてのお楽しみ。

 そんなエディットは、短波ラジオでロシアなどの世界中の放送、そして混線や放送事故なども聴くのが好き、という趣味(!?)から発想したもの。また、父親の影響で子供の頃からレコードプレーヤーなどのオーディオ機器が遊び道具だったとか。そんなわけで、実はオーディオにも造詣が深い。これは一部にはよく知られたことで、ツアー先でオーディオファンのリスニングルームに招待されることもあるそうだ。

イヤフォン特有の閉塞感がなくて聴きやすいですね
 そんな彼女に、ラディウスのインイヤーヘッドフォンを2種類用意した。ひとつは約2年前に発売されたradius proブランドとしての第一弾HP-TWF11である。最大の特徴は「DDM(Dual Diaphragm Matrix)」ドライバーを採用したことだ。中低域用と高域用に、それぞれ1枚ずつ振動板を配置するといった大胆な構造である。そこから「W」(“ドブルベ”とフランス語で発音する)という名称が誕生した。

 もうひとつは、今年発売された2号機「W n°2」(ドブルベ・ヌメロ・ドゥ)、品番はHP-TWF21である。これもDDMドライバーを採用。チューニングの追い込みや、ハウジングの構造の見直しが図られた。

バーガンディー HP-TWF11R
ノワール HP-TWF11K
W“ドブルベ”HP-TWF11

オープン価格(1万5,800円前後)
●ドライバー:φ15弌職7丱瀬ぅ淵潺奪型●再生周波数:10Hz〜18kHz●感度:105dB●インピーダンス:24Ω●ケーブル長:1.2m●重量:約5.5g(ケーブル除く)


W n°2“ドブルベ・ヌメロ・ドゥ”HP-TWF21
オープン価格(2万4,800円前後)
●型式:カナル型●ドライバー:φ15弌職7丱瀬ぅ淵潺奪型●再生周波数:10Hz〜20kHz●感度:107dB●インピーダンス:24Ω●ケーブル長:1.2m●重量:7.3g(ケーブル含まず)
※問い合わせ:ラディウステクニカルサポート
70120-09-5587
【ドブルベ紹介特設ページ】
http://www.radius.co.jp/Portals/0/twf21sp/


 まずドブルベでキース・ジャレット『スタンダーズ・ライヴ』から「星影のステラ」を聴く。「イヤフォンって、鼓膜の近くで鳴るせいか、耳の中が真空になったように感じることが多いんです。だけど、これは適度に空気が入ったようで、すごくいいですね。マスタリングエンジニアも、よく“エアを入れる”なんて言い方をしますが、それと同じです。耳と音楽との間に空気があるようで聴きやすいと思います。スピーカーで聴いているような感覚ですね。素直な音で好感が持てます」
 続いてドブルベ・ヌメロ・ドゥ。「こちらのほうが音の中心がニュートラルですね。リヴァーブのかかり方も自然で、奥行きが出ていました。ピアノのリヴァーブって難しいんですけど。ドラムのブラシワークはすごくクリアに聴こえます」。一見、大ぶりに見える本体だが「でも、軽いから、長時間付けていても耳が痛くならないと思います」。

 では、『レミニセンス』からもそれぞれ2機種、聴いていただきましょう。「やはり、こちら(ドブルベ・ヌメロ・ドゥ)のほうが、音の深みがありますね。陰翳がはっきりしていてドラマティック」。そして「スタジオで録音したときの音のようです。生音に近いかな」という、オーディオ製品にとっては至上の賛辞が。「イヤフォンというと、どうしても閉塞された場所にいるという感じがしていました。でも、こういうふうに自然な音で聴ければ、オーディオを楽しんでいるんだ、という感覚になりますね」
 こんなふうにドブルベシリーズは「音楽」と「音」にアグレッシブに向かい合う彼女の耳を満足させていた。

取材・文 / 取材・文:中林直樹
撮影 / 高木あつ子
【NEW ALBUM】
山中千尋 featuring Bernard Purdie, Larry Grenadier/Reminiscence(レミニセンス)(UC・ヴァーヴ●UCCJ-2090)
限定版SHM-CD仕様/UCCJ-9124
【NEW DVD】
ライヴ・イン・ニューヨーク(UCBJ-1006)
【オフィシャル・サイト】
http://www.chihiroyamanaka.com/
オール・ジャンル 最新CDJ PUSH
※ 掲載情報に間違い、不足がございますか?
└ 間違い、不足等がございましたら、こちらからお知らせください。
※ 当サイトに掲載している記事や情報はご提供可能です。
└ ニュースやレビュー等の記事、あるいはCD・DVD等のカタログ情報、いずれもご提供可能です。
   詳しくはこちらをご覧ください。
[インタビュー] 一言で言うと、青春――DÉ DÉ MOUSEが“アガる”もの『be yourself』[インタビュー] マンチェスターから世界へ羽ばたいた“2010年代UKジャズの先駆者” ゴーゴー・ペンギンのサウンド方法論
[インタビュー] chelmicoのマイペースな“無敵感”が詰まったメジャー・デビュー・アルバム『POWER』[インタビュー] “いつ聴いてもハッピーになれる曲”を目指して 京都在住シンガー・ソングライター、竹内アンナのデビュー作『at ONE』
[インタビュー] 南 佳孝が語る、ショーボート・レーベル第1弾作品『摩天楼のヒロイン』[インタビュー] 熟成とフレッシュネス BTB改め“BTB特効”初のオリジナル・アルバム『SWEET MACHINE』
[インタビュー] 素晴らしい演奏家のみなさんと出会い、サントラを作れたのは本当に幸せ――作曲家、富貴晴美が語る『西郷どん』の音楽[インタビュー] 絶望を掻き消す――“今やりたいこと”を追求してきたLM.Cが導き出す未来とは
[インタビュー] 楽器と理解し合って音楽を作っていく――東儀秀樹、“篳篥で歌う”映画音楽集をリリース[インタビュー] 自分なりの“B面的世界” 大西ユカリによるソウル・カヴァー作『BLACK BOX』
[インタビュー] 私が全て入ってるもの――声優・尾崎由香、ソロ・デビュー・シングル「LET[インタビュー] 何かの拍子に全米が泣いてくれたらいいなって(笑)――Calmが活動21年目の新作『by Your Side』をリリース
新譜情報
e-onkyo musicではじめる ハイカラ ハイレゾ生活
データ提供サービス
弊社サイトでは、CD、DVD、楽曲ダウンロード、グッズの販売は行っておりません。
JASRAC許諾番号:9009376005Y31015