どこかで“つながっている”3人 ゆるふわギャングが描く、未来の自分たち

ゆるふわギャング   2017/04/11掲載
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 ゆるふわギャング。ユーモラスな名前のこのユニットは、Ryugo IshidaとSophieeの男女2MCとプロデューサーのAutomaticの3人組である。結成して半年ちょっとしか経っていないが、昨秋YouTubeにアップした「Fuckin' Car」と「Dippin' Shake」のMVで注目され、アルバム制作資金をクラウドファンディングで募るなど話題も提供、一気に2017年のブレイク候補に躍り出た。期待を集めたデビュー・アルバム『Mars Ice House』は想像を大きく上回る、愛と夢と笑いと涙の感動作。トラップからメロウさを抽出して清潔感を加味したようなAutomaticのビートに乗る二人の声質のバランスが絶妙で、リリックのドラマにぐいぐい引き込まれる。ポップでキュートなたたずまいに鋭さを隠し持ったナイス・カップル、RyugoとSophieeに初めてインタビューした。
Ryugo Ishida / Sophiee
――二人はそれぞれソロのMCとして活動していたんですよね。ラップを始めたきっかけは何ですか?
Sophiee 「まわりにラッパーの友達が多くて、ノリで始めた感じです。遊びの延長線上で、ふざけて入ったりしてて。でもやってるうちに真剣にやりたくなって、自分ひとりでやるようになりました」
Ryugo 「自分は中2か中3のときヒップホップに興味を持って、クラブに遊びに行ったとき、地元のDEAR'BROさんっていうラッパーがCDをくれたんです。それを聴いて“自分もやりたいんですけど”って連絡したのがきっかけですね。自分、小学校のときにお父さんが死んでるんです。それがずっと頭の中に残ってて、ラップ始めたときもそのことしか歌ってなかったぐらい。だからヒップホップの“ゲットーから抜け出す”っていうカルチャーに惹かれたんです。自分の環境もそれに近かったから、過去を全部プラスに変えて抜け出すためにできるのはこれしかないと思って」
――ゆるふわギャングの結成は去年。どういうふうに出会ったんですか?
Ryugo 「5月にソロ・アルバム(『EverydayIsFlyday』)を出した後に東京のイベントに呼ばれるようになって、アルバムでフィーチャリングもしてる秋田のLUNV LOYAL(ルナ・ロイヤル)ってやつと二人で遊びに行ったときに、初めてSophieeと会いました。タトゥーの感じが似てるってところから話が始まって、一緒に曲作ろうよって」
――最初からお互いにカチッとはまった感じ?
Sophiee 「しゃべりやすかったんです。でもお互いのこと全然知らなかったから、いったん帰って家で検索しました(笑)。それで〈YRB〉のPVを見たら、自分がやりたかったことが詰まってたっていうか、“わーすご!”と思っちゃって、“一緒に曲やりたい”って自分から声をかけたんです」
Ryugo 「一緒にやり出したらどんどん曲ができるんですよ。二人で遊びに行ったりすると言いたいことが次々に出てきて。最初は車で海を見にお台場に行ったときに、〈Dippin' Shake〉のPVで見れますけど、ポケモンGOやってる人がたくさんいたんです(笑)。みんな同じことしてるし、ゴミもバンバン捨てていくし。なんか気持ち悪くなっちゃって、無理だなって思って、このことを曲にしようって思ったのが始まりです。SoundCloudに上げてるやつとかは、だいたい遊びに行ったときに思ったことから作りました。最近はいろんな人に出会ったりして、いい意味で自分たちの本当の気持ちを言えるようになって、曲作りも変わってきてますね」
――二人でいるとリラックスしてるから曲も生まれやすいみたいな?
Sophiee 「曲を作ろうってなるヴァイブスが一緒なんです」
Ryugo 「車移動が多いのもありますね。車内ではだいたいいつもビートしか流してないんですよ(笑)。基本的に全部車の中で作ってます」
Sophiee 「鼻唄を歌いながらね」
Ryugo 「“あ、今のいいじゃん”っつって、そっから作ってく感じですかね」
Sophiee 「なんか作りやすいんですよね。景色も変わるし」
Ryugo 「最近はたまに高速に乗るようになりましたけど、前はずっと下道を使ってたんですよ。何時間もかかるから、ゆっくり帰りながら二人でしゃべって、それがどんどん曲に変わっていくっていう感じです。あとラジオも好きで、ラジオ聴いてるか自分たちの曲聴いてるか。ラジオを聴いてるような感覚で曲を作ってるかもしれないです」
――リリックに映画のタイトルや登場人物が出てきますが、二人でよく映画を見ているんですか?
Ryugo 「ずっと見てました」
Sophiee 「大好きなんです」
Ryugo 「初めて二人で見たのが『トゥルー・ロマンス』」
――いいの見ましたね(笑)。
Ryugo 「そっからタランティーノのやつはほぼ見たし、『ストレンジャー・シングス』も見たし、あとは……Netflixに上がってるやつはけっこう見ましたね」
Sophiee 「見尽くしちゃったよね(笑)」
Ryugo 「最終的に好きになるのは自分たちが生まれた年くらいの映画だなと思って」
Sophiee 「93〜94年くらい」
Ryugo 「『EverydayIsFlyday』は『KIDS』っていう映画から来てるんですけど、90年代というか自分たちの生まれた年代が好きなのかなぁと思って」
――「パイレーツ」で《うばいに来た》《むかえに来た》と歌っているのが「Escape To The Paradise」につながったんです。二人は正解を手にしたというか、パラダイスを見つけてしまって、そこから手招きをしているようなイメージを抱きました。
Ryugo 「〈パイレーツ〉を書いたときは、やっぱり奪いに行きたかったというか、“早く俺たちに全部くれよ”って気分でした(笑)。〈Escape〜〉は最後にできた曲なんですけど、このアルバムを通してそういうシリアスな環境から抜け出したいなと思って。二人の将来的なイメージができたっていうのかな。自分たちがスターになってるイメージが頭の中にあるから、そこにたどり着くためにというか」
Sophiee 「基本レコーディングは家でやってるんですけど、〈Escape〜〉は厚木のスタジオ別館っていうところで作ったんです。そこの空間がもうパラダイスみたいな(笑)、自分たちにとっては最高の場所で、音が一個ずつちゃんと聞こえて、覚醒できる場所だったんですよ。スタジオの形もロケットみたいで、ロケットに乗ってるようなすごい幸せな気分でした。もちろん強い思いもあったけど、自分たちがもうパラダイスにいたからこういう歌詞を書けたのかもしれない」
――今の世の中、迷っている人が多かったり、閉塞感があったりすると思うんですけど、そういう時代にすごくパワーのある表現だと思いました。確信に満ちた二人がいて、とにかくキラキラしているみたいな。
Ryugo 「自分たちが生まれたころの年代のものが好きでできたってところもあると思うんです。自分のありのままなのかなって。生まれたころに戻っていくじゃないけど、大事なのはルーツというか。小さいときに好きだったものが、もしかしたらいつまでも好きなのかなって。きっとそれなんじゃないかと思うんですけど」
――重い曲もあるけど、アルバム全体としては幸せなヴァイブスをすごく感じました。
Ryugo 「基本的に二人でいると幸せだからっていうのはあると思います」
Sophiee 「うん」
Ryugo 「前は本当にスレてたというか……ね」
Sophiee 「ね。ひとりでいると考えちゃったりするけど、二人でいるとどうでもいいやって気持ちになれるっていうか。そんな悩まなくてよかったのにな、って昔の自分には言いたい(笑)。ネガティヴなことは歌いたくないんです、なるべく」
Ryugo 「ポジティヴでありたいなと思いますね、やっぱり。自分、弟がいるんですけど、自分がしてきた経験を弟にはさせたくないって思ったら、悪いことをポジティヴに変えていかないとやっていけないんじゃないかと。今の子たちって、寂しいのかよくわかんないけど、ちょっと変な子が多いと思うんですよね。いじめたりとかもすぐするし。でも、そうじゃないということを伝えたいんです」
――それがアルバムの流れに表れているわけですね。序盤は楽しい曲が続いて、後半どんどんエモーショナルになっていって、最後の2曲くらいでパーンと弾けて。アルバムを意識して曲を作っていったわけではないですよね?
Sophiee 「全然。あとからパズルみたいに並べていきました」
Ryugo 「なんか、つながってくなぁ……みたいな」
Sophiee 「アルバムを作りながら現実のストーリーも進んでたから。別にその状況に応じてでもないけど、リアルなことを歌ってます」
Ryugo 「知り合って半年ぐらいしか経ってないのに、本当にいろんなことが起きて、それが一個ずつ歌詞になっていったんです。自分たちでも〈Escape〜〉でやっと、これが正解なんだなってところにたどり着いたっていうか」
Sophiee 「正解だし、ネクスト・レヴェルに行ったみたいな」
Ryugo 「いい意味で、この曲で完結したっていうのがあります」
――ストーリーというのは、環境が急変してきたみたいなことも含めて?
Ryugo 「です。アルバムの最初のほうの曲は東京に来たときの感じだから、すごいブンブンでいってる感じなんですけど、そこからどんどん変わっていって、いろんな人にも会ったし。そうするとまたいろんな曲ができるんです」
――出会ってから半年の二人のドキュメントみたいなアルバムなんですね。
Ryugo 「まさにドキュメントです。それに映画を当てはめていったりしてるのかもしれないですね。置かれてる状況で映画のシーンを思い出すことがすごく多いので」
――最初に「Fuckin' Car」を公開して評判になってから、大人たちからのアプローチもかなりあったでしょう。
Ryugo 「ありましたね。変な人が多かったです(笑)」
Sophiee 「“ほんと楽し〜!”みたいなヴァイブスで作っただけで、こうなるとはまったく思ってなかったんです。遊びで出したら注目されて、いい人もたくさんいたけど変な人も混じってて、人間センサーってあるじゃないですか。ちょっとしゃべっただけで苦手な人だなって思ったりとか。そのセンサーが(二人は)一緒なんです」
Ryugo 「もともとしがらみが多いところにいたんで、悪い人たちもたくさん見てきたし。そういう人たちに自分たちから寄っていかなくなったら、いい人たちに会えるようになっていったというか。最初は自分たちもそういう現場にいたりしたから」
Sophiee 「自ら行ってたから。あんまり行きたくないようなところに」
Ryugo 「そうすると見えてきちゃうんですよね。向こうの世界の汚さみたいなものが。それがどんどん怖く、イヤになってきて。自分から切り開いていかないとなって」
――危ない人たちと縁ができちゃうのは、今にして思うと自分たちのやりたいことがわからなかったりして迷ってたからなのかもしれませんね。いい人に出会うことが増えてきたのは、やりたいことや行きたい場所が明確になってきたからみたいな。
Ryugo 「それはありますね。人を傷つけたりしたこともたくさんあったけど、全部自分に返ってきたし、やっぱり傷つけちゃいけないなって思って。音楽だけまじめにやろうっていうふうに変わったんですよ、二人が出会ってから」
Sophiee 「ね」
Ryugo 「そうなったら音がわかるようになったし、ちゃんと歌詞が書けるようになったし。音楽だけまじめに取り組んでたら、よくなっていったんです」
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――出会ってからいちばん変わったと思うところは?
Ryugo 「優しくなれたかなって思いますね。優しくなれたし、明るくなれた気がします。(Sophieeは)パワーがすごいじゃないですか。それは俺も会った瞬間に感じて、一気に元気がもらえたというか。すごい考えてたことも“大丈夫だよ”って言われれば大丈夫だって思えるっていうか。そういうとこが変わったですね。気持ち的に強くなれた」
Sophiee 「パワーはわかんないんですけど……Sophieeはただ明るいだけっていうか、ほんとパッパラパーだったから。音楽もノリでやってた部分もあるし、これで食べていくみたいな強い思いはまだなかったし。けどRyugoくんに会って、背負ってるものをすごく感じて、自分はもっとまじめにならなきゃいけないって思えたんですよね。二人で絶対スーパースターになりたいって思った。この出会いは自分の中では本当に大きいです」
――パッパラパーというのはどういう意味で?
Sophiee 「つるんでる友達も悪い人が多かったし、常にそういう環境に自分から突っ込んでいって、ただ毎日遊んで“疲れたわ……”みたいな。それしかやることがなくて、明るさでなんとか自分を保ってるみたいな状態がずっと続いてました。ちょっと病んでる部分もあったし。明るさで無視してたけど。でも、彼はしっかり向き合うんですよね。だから自分もちゃんと向き合わなきゃいけないって思えたんです」
――Sophieeさんのやり場のないパワーが、Ryugoさんに出会ったことによって向けるところが決まったみたいな?
Sophiee 「“あった! ここか!”みたいな。化学反応的な感じなのかな」
――Sophieeさんのリリックにもパワーを感じますよ。思い切りよく言い切ってる。
Sophiee 「ハチャメチャだった自分にかけたい言葉でもあるし、今、悩んでいる人たちに言ってあげたいことでもあるし。やっぱ未来の自分たちを歌いたいから。未来の自分たちはスーパースターでありたいし、そういうことばっか歌いたいなと思ってます、いつも」
――Automaticさんは今日はいませんけど、メンバーではないんですか?
Sophiee 「いや、メンバーです」
Ryugo 「チームなんですよ」
Sophiee 「リーダーです」
Ryugo 「俺たちがアクセルで、Automaticさんがブレーキみたいな(笑)」
――世代も違いますよね。彼は二人にとってどういう存在ですか?
Ryugo 「仙人みたいな感じです(笑)。二人で話してるときはいつもここらへん(二人の間の少し後方)にいるような。けっこう考えてることも一緒で、俺たちが前日に見てた映画をAutomaticさん次の日に見てたりして。何もしゃべってないのに。二人で満月を見てるときにキャンプしてたりとか。だからつながってるなって思います」
Sophiee 「かなり不思議です。わたし、ずっと会ってなかったんですけど、なんかつながってる感じがしてたんです。Automaticさんもそう感じてくれてたみたいで、だから会うのはタイミングの合うときでいいやって思ってたら初対面の日が来て。いざ会ったら“おう”みたいな、前から知ってたような感じでした(笑)」
Ryugo 「アルバム作ってた間、Automaticさんとは3回くらいしか会ってないんですよ。タイトルを決めたときも、火星移住計画の展示を見に行ったら最後に“Mars Ice House”っていう模型があって、チームが夫婦と博士二人の4人だったんです。それが俺たち二人とAutomaticさんと肥後さん(Mary Joy Recordings)みたいで面白いな、これしかないっしょ、みたいになって。そういうイメージですね」
Sophiee 「氷のテントみたいな建物で、そこで火星に人が住めるように研究するんです。その模型がめちゃくちゃかっこよかったんですよ。二人で見入っちゃって、すぐにタイトルにしようって決めました」
Ryugo 「そのときSophieeは初めてAutomaticさんに会ったんです」
――二人がスーパースターになってやってみたいことは何ですか?
Sophiee 「世界規模で音楽がやりたいです」
Ryugo 「グラミー獲りたいですね。夢はやっぱそこかな」
Sophiee 「グラミー最優秀チーム賞(笑)」
取材・文 / 高岡洋詞(2017年3月)
ゆるふわギャング『Mars Ice House』Live Schedule
www.maryjoy.net/artists/yurufuwagang.html
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2017年4月22日(土)
Mars Ice House Release Party

茨城 土浦 club GOLD
Live: ゆるふわギャング(Release Live) / GRIFFIN / SAINT MELO & LIL MANY / TOOR / GODSUN / HAYATO
DJs:DRAMATIKS / LICC / SPITE / KILLA WEAPON / BARBIE / MINAKAWA

開場 / 開演 23:00
前売 2,500円 / 当日 3,000円(税込 / ドリンク代込み / オールスタンディング)
チケットぴあ(P 328-303) / ローソンチケット(L 70104) / e+

お問い合わせ: Mary Joy Recordings yurufuwa@maryjoy.net

2017年4月28日(金)
Mars Ice House Release Live

東京 渋谷 WWW
出演: ゆるふわギャング
開場 19:00 / 開演 20:00
前売 2,000円(税込 / ドリンク代別 / オールスタンディング)
チケットぴあ(P 328-243) / ローソンチケット(L 71315) / e+ / WWW店頭

お問い合わせ: WWW 03-5458-7685
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