音楽に対してハングリーであるということ FEBB AS YOUNG MASON

FEBB   2017/04/14掲載
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 かのD.Lも「ここ10年でナンバーワンの日本語ラップ」と褒め称えたファースト・アルバム『THE SEASON』から3年。FEBB AS YOUNG MASONがついにセカンド・アルバム『So Sophisticated』を完成させた。JJJKID FRESINOとのFla$hBackSで名を上げ、近年はKNZZ、J-SCHEMEとのDOGGIESでも活動するFEBB。1994年生まれのアンファン・テリブルとしてヘッズたちから絶対的な信頼を獲得してきた彼は、急激な進化を遂げた新作で何を描き出そうとしているのだろうか。FEBBの地元である東京・東村山の古びた喫茶店で話を聞いた。
――育ちもずっとここ(東村山)なんですか?
 「高校生のときに一度近くの久米川に引っ越したんですけど、また戻ってきて。まあ、なんもないところすけど(笑)」
――わはは、そうですか。
 「都心のほうがそりゃ(活動は)楽ですけど、都内まで電車で30分ぐらいなんで、そんなに苦じゃないんです。実家だからここに住んでるだけで」
――東村山に対して愛着もあるんじゃないですか。
 「(即答して)ないですね(笑)。ここをレペゼンしようという気持ちもないし」
――じゃあ、リリックのなかでは“東京”という言葉が出てきますけど、東村山よりも都心のイメージだと。
 「俺も“03”って言ってますからね」
註: 東京都心部の市外局番。東村山市は“042”
――なるほど(笑)。では、活動当初の話を聞きたいんですけど、一番最初はDJとして活動を始めたんですよね。
 「そうすね。中学ぐらいにターンテーブルを買って、家でひとりでやってたんですけど、初めて人前でやったのは高校一年生のころ。渋谷のUNDERBARというところで、そのとき初めてDJとライヴをやったんですよ。その前からリリックも書いてたけど、ラップというラップはやってなかった」
――じゃあ、DJもラップも始めたのはほぼ同時期だったと。
 「最初はトラックメイカーになりたかったんですよ。ビートマイナーズが好きで、2人組のトラックメイカー・チームをやりたかった。同級生の佐々木(KID FRESINO)もヒップホップ好きだったので、一緒にネタを掘ったりしてたんですよ。同級生でヒップホップが好きなヤツは佐々木ぐらいしかいなかったし。陸上部の友達にCDを貸したらスミフン(・ウェッスン)を気に入ってくれたけど(笑)」
――そのころから友達に貸すCDもスミフンだったわけですか。年齢的には結構シブいですよね。
 「いろんな曲を入れたCDを貸したんですよ。(2008年当時流行っていた)キャシディのパーティ・チューンを入れつつ、ブラック・ムーンの〈Who Got The Props / 1993年〉を入れたり」
――中学生のころから日本語ラップよりもUSのほうが好みだった?
 「日本語ラップも聴いてましたよ。MSCSCARSとか。オタクっぽいものはあんまり聴いてなかったかな。そのへんは佐々木が聴いてましたね。オロカモノポテチとか」
――2011年にはフィジカルとしては初の作品であるリミックス集『3000 FEBB REMIXES VOLUME ONE』が出て、この年にはリミックスを手がけたADAMS CAMP『FLIPPED SHIT』、CRACKS BROTHERSのEP『Straight Rawlin'』と続けざまに作品が出たうえに、Fla$hBackSとしても活動を始めますよね。2011年にどっと動きが出たのは何かきっかけがあったんですか。
 「タイミングが重なった感じですよね。あと、当時カレンシーとアルケミストのEP(『Covert Coup』)をJJJと聴いてて、“Jがトラックを作って俺がラップするアルバムを作れたらいいっすね”という話をしてたんですよ。Jもラップすることになって、そこからFla$hBackSが始まった。それまでの繋がりが2011年にまとまって形になった感じすよね」
――リリースされた作品はいずれも高く評価されましたよね。そのことによってラッパーとしてのモチベーションも高まったんじゃないですか。
 「そうすね。ただ、当時はまだプロ意識もなかったと思うんですよ。『FL$8KS』(2013年)からですね、ちゃんとやるようになったのは。あのアルバムがたまたま売れたから、俺もちゃんとやらないとなと思うようになった。もちろん当時の俺らなりにしっかりとしたものを作ろうと思っていたから、それなりに時間もかけたけど、制作自体は遊びの延長でしたね」
――2014年にはファースト・ソロ『THE SEASON』が出て、こちらもすごく評価されましたよね。あのアルバムでやろうとしたものはどういうことだったんですか。
 「特にヴィジョンみたいなものはなかったんですよ。いいビートを選んで、いいラップをする。それだけというか。全体像も見えてないまま作ってた感覚はありますね。ただ、Fla$hBackSよりもさらに自分の好きなことをできたし、Fla$hBackSで自分のことを知ってくれた人が“FEBBはこういうトラックでもラップするんだ”というところを見せられたと思うんですよ」
――さっきも挙げた『3000 FEBB REMIXES VOLUME ONE』が90年代音源のリミックス集だったり、90年代のUSの音に対する愛着が『THE SEASON』にも出てたと思うんですけど、そのあたりはいかがですか。
 「あのころは90年代のレコードをよく買ってたんですよ。その影響が出てるんでしょうね。CDでは以前から新譜を買ってたんですけど、レコードは90年代のものを買ってた。もちろん、スミフンやブート・キャンプ・クリックは俺のアイドルだったんで、そういう趣味も出てるとは思いますけど、(90年代の継承者ともされる)ジョーイ・バッドアス的な立ち位置で語られることはなかったんで、そのへんは良かったと思います。ああいう風にキャリアをスタートさせちゃうと、それ以降なかなか広がっていかないと思うので」
――現行のものも聴いてたけど、当時はまだその影響が今ほど出てなかったと。
 「現行の雰囲気を出せるトラックメイカーもあまりいなかった。日本人で現行感を出せる人って今もそんなにいないと思うんですよ。CHAKI ZULUとかYENTOWN周りぐらいというか。それもあって、『THE SEASON』はああいうアルバムになった。でも、今回は違うと思うんですよ」
――では、今回の『So Sophisticated』はどういうものを作ろうと?
 「まずあったのは、もうちょい現行寄りのものを作ろうと。構想自体は去年の夏ぐらいにあって、今回は構想から完成まで6ヶ月。『THE SEASON』は時間をかけて作ったので、今回はもう少しスピーディにやろうと。現行ものをやる以上はある程度フレッシュなうちに出したほうがいいし、以前よりはラフに作るようになったすね」
――今回のアルバムでいう“現行”というのはどのへんをイメージしてますか。
 「トラップすね。周りの人がトラップを聴くようになって、俺も自然に聴くようになった。トラップのノリが好きなんすよ」
――DOGGIESのトラックはトラップが中心ですよね。あちらでの活動のフィードバックもあるんじゃないですか。
 「それはありますね、もちろん。ラフなノリだったりトラック選び、あとはリリックで言う内容も影響してると思う。自分たちの日常を曝け出すというか、地に足の着いたことを歌うという。DOGGIESは結構評判もいいので、いまアルバムも作ってるところなんですよ。お互いがお互いのファンなので、和気あいあいとしてて楽しいんすよ」
――Vドン(エイサップ・ロッキーほか)やルカ・ヴィアリ(チーフ・キーフほか)、チャドG(チャンス・ザ・ラッパーほか)、NYバンガーズ(ヤングMA“OOOUUU”)などUSのビートメイカーが多数参加してますが、コンタクトはどうやって?
 「Instagramっすね。メッセージを送って直接オファーしました。あと、Twitterでトラップのビートを公募したことがあって、チャドGはそれでメッセージをくれたんですよ。いつでも現行のビートが手元にあって、すぐにラップをできる環境をようやく作れた。前のアルバムのときもそういうことをやろうと思えばできたんでしょうけど、俺自身がそこまでハングリーじゃなかった。今はやりたいと思う人には自分からどんどん声をかけるようにしてます」
――そもそも現行のビートを自分で作ろうという方向には向かわなかったんですか。
 「うーん、自分のビートはまだブラッシュアップが必要ですね。もっとノリを出したいし、そのへんはUSのほうが格好いいと思う。聴いてる絶対量が多いし、ビジネスとしても大きい。層自体が厚いんでしょうね」
――それぞれの曲にも触れたいんですが、やっぱり1曲目の「ANGEL」。FEBBさんのドラマチックなビートの上で、ナズとの「Life's A Bitch」などでも知られるAZがフィーチャーされてて驚いたのですが、AZの参加はどういう経緯で?
 「去年の夏、WDsoundsのMERCYくんと遊んでたとき、“アルバムの1曲目にAZがフィーチャーされてたら凄いものになるな”という草案が突然浮かんできたんですよ。そのタイミングでメールを送ってみたら、速攻OKが出て」
――あ、その前からAZとは繋がってたんですね。
 「いやいや、違うっす。YouTubeにアップされてたAZのあるPVのインフォメーション欄にメアドが載ってて、そこにコンタクトを取ったんですよ。そうしたら“やるよ”って」
――すごいカジュアル(笑)。FEBBさんにとってもAZはかなり思い入れのあるラッパーなんじゃないですか。
 「そうすね、感慨もひとしおというか。AZからタイトルやコンセプトを聞かれたので、“自分にとってのエンジェルとは何か?”というコンセプトを向こうに伝えたんですよ。そうしたらあのヴァースが返ってきた。“本物だ!”と感動しましたね(笑)」
――B.D.との「DON」やKNZZをフィーチャーした「HUSSLE 4 HUSSLE」、A-THUGとの「THE GAME IZ STILL COLD」、敵刺との「ON FIRE」というドープな曲が続いたあと、「AESTHETIC」「OPERATION SURVIVE」で「ANGEL」のソウルフルなムードが戻ってくる流れもいいですよね。特にチャドGのビートもメロウな「OPERATION SURVIVE」はこのアルバムのハイライトのひとつじゃないかと思うんですが、この曲ではどういうことをラップしようと?
 「“このヒップホップ・ゲームをどうサヴァイヴしていくか”ということですね。そこに成長していく自分の姿と理想の姿を重ね合わせようと」
――この曲では理想と現実の狭間でもがいているような感覚も強く感じたんですよ。「好きに描いてた未来絵図 / 徐々に大人になってく / 理想と現実の狭間で生きる / 生きるとは死んでく事と知る」というラインがあったり。
 「年を取ってそういうことも考えるようになったんでしょうね。ま、年を取ったといってもまだ若いすけど(笑)」
――前作のときはあまり考えなかった?
 「ラップのことはずっと考えてたけど、人生のことは考えてなかった」
――「OPERATION SURVIVE」のなかには「誰にも真似できないことがしたい / 見えない未来が見たい」というリリックもありますけど、前のアルバムではここまでストレートな表現はなかったと思うんですよ。
 「それは自分でも思います。前のアルバムよりも制作時間が短かったので、深く考えてひねり出したリリックというより、自分の気持ちを素直かつストレートに出す方向にいったんだと思う。そういうリアルな部分も出せるようになったというか」
――なるほどね。そういえば、Twitterでサード・アルバムのことをツイートしてましたよね。「3rdアルバムはセカンドよりもドープでダークでクリスピーで浮遊系で冷たくてナイスになる」と。もう動いてるんですか?
 「こないだ始めたばかりですけど。俺の場合、まずはトラックなんですよね。次のアルバムはダークで妖しいトラックを集めていこうと思っていて。あと、ソウルとスムース・ジャズのミックスを作ろうと思ってて、選曲自体はだいたい終わってます」
――しかし、サードがあってミックスがあって、さらにはDOGGIESのアルバムも作ってるわけで、今年もかなり忙しくなりそうですね。
 「でも、いいことだと思うんですよ。ディールにしても自分で動いたほうがいいし、自分でやる方法がようやく分かってきたので」
取材・文 / 大石 始(2017年4月)
Febb As Young Mason“So Sophisticated”Release Party at FUKUOKA
STAND-BOP 9th Anniversary

CURRY RICE vol.45

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2017年4月15日(土)
福岡 STAND-BOP
開場 22:00

[出演]
GUEST: FEBB AS YOUNG MASON / DJ J-SCHEME
DJ: HRDB / TAKA / KEN BEAT / GLUE / KUDOS / Paulos
LIVE: DIOUF / 色 / ら不 / DOBER / CHOPPIE / NUSANCE / SC HIRO

[料金]
前売 2,000円 / 当日 2,500円(+ 1Drink)

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