あれもこれも、やつらの仕事。天才クリエイター集団の実態に迫る、DRAWING AND MANUAL(後編)

2021/09/29掲載
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飯野圭子
「グラフィックデザインと映像の融合」をコンセプトにして、1997年に設立されたDRAWING AND MANUAL。そのオリジナル・メンバーであり、現在は取締役副社長 / プロデューサーとして会社を支えているのが飯野圭子だ。DRAWING AND MANUALを動物園にたとえた鈴木友唯に、飯野を動物にたとえてもらうと「少し高いところから、みんなを見守っているキリン」と答えてくれた。個性豊かなクリエイターたちをマネジメントしながら、会社の舵取りをしてきた飯野に、DRAWING AND MANUALの“これまで”と“これから”を訊いた。
――DRAWING AND MANUALはどういった経緯で設立されたのでしょうか。
「ナガオカケンメイ、菱川勢一が中心になって97年に立ち上げたんです。その頃、みんな20代から30代くらい。“とにかくかっこいいものが作りたい!”っていう血気盛んなころで、自分たちが作ったものをどんどん世に出していきたい、メディアも作っていきたい、と思ってDRAWING AND MANUALをスタートさせたんです。その頃、私はソニーミュージックにいてイベントの仕事をしていたんですけど、面白い人たちが面白いことをしようとしている手伝いができるんだったら、と軽い気持ちで一緒にやり始めたんです。それが20年以上も続くとは思ってもいませんでした」
――DRAWING AND MANUALは自由にものづくりができる場所としてスタートしたんですね。
「そうですね。会社を作ってしまえば企業から協賛金をもらって展覧会もできるので。当時、インターネットも発達してきて小さな会社がいっぱい生まれてたんですよね」
――今ではDRAWING AND MANUALはさまざまなクリエイターが集まる場所になりましたが、会社の方向性に変化はあるのでしょうか。
「時代によって変わってきていますね。最近では会社も私たちも大人になってきて、“社会に貢献できることはないかな?”って考えるようになってきました。デザインを通じて何かできることがあるんじゃないかって。昔は尖ってたほうがかっこいいと思っていたんですけど、最近は“ちゃんと人のためになっているかな?”って考えるようになってきましたね」
――過度期なんですね。
「いまメインで働いている人たちは、ここに入って7〜8年の中堅なんです。菱川から叩き込まれたDRAWING AND MANUALの精神を受け継ぎながら、自分たちが抱えている問題。たとえば“仕事を通じて社会とどう関わっていくか”ということを考えながら頑張っていますね」
――『u&i』をはじめNHKの教育番組をいろいろやられているのも、そういった問題意識と通じるところがありますね。そういえば、NHKの大河ドラマや朝ドラ(連続テレビ小説)のオープニング・タイトルを手がけられているのは驚きました。NHKがすべて作っているわけではないんですね。
「最初にやったのは大河ドラマの『功名が辻』(2006年)でした。NHKの演出の方が菱川の作品を見て声をかけてくださったんです。そこで菱川が作った映像が評判になって、それからNHKさんの作品をいろいろやらせてもらうようになったんです」
――今、放送されている連続テレビ小説『おかえりモネ』のタイトルバックも手がけられていますね。担当している林(響太朗)さんは、星野源、Mr.Children、米津玄師などさまざまなアーティストのミュージック・ビデオを撮って活躍されています。
「林は大学卒業してうちに来たんですけど、最初の半年くらいは何をやってるのかよくわからなかったんですよ(笑)。展示映像やCGができる人で、平日は普通に業務をして土日に自主制作で映像を作っていたんです。それを知った菱川が“じゃあ、こういう仕事やってみる?”っていろいろやらせてみた結果、今の仕事に繋がっていきました。」
――DRAWING AND MANUALは作品を製作する以外に、いろんなワークショップをやられています。そこも特色ですね。
「最近では中谷(公祐)という若手が、北海道の白老町で映像のワークショップを開いたんです。スマホが一台あれば町の観光案内を動画で簡単に作れる、という内容だったんですけど、年配の方から若者まで殺到しました。あと、うちの代表の唐津(宏治)が徳島県から頼まれて脚本の書き方を教えるワークショップをやったり。私たちは映像やデザインのプロとして活動する一方で、そういうものを作る楽しさを伝えるワークショップもどんどんやっていきたいと思ってます」
DAM
北海道白老郡白老町で開催された映像制作のワークショップ
――それは、仕事を通じて社会に貢献する、ということにも繋がりますよね。いま会社が過度期を迎えているということですが、飯野さんは創立以来、会社を見守ってきて、デザインに対する向き合い方や考え方に変化はありましたか?
「最近はコロナの影響で“デザインって本当に必要なの?”と考えたりすることもあったんです。でも、これからこの業界で生き残っていく人たちって、社会にとって重要だから生き残っていくんだと思うんですよね。だから、DRAWING AND MANUALが発信するものの重要さを、今一度考える時期に来ているんじゃないかと思います」
――たしかにこういう時期だからこそ、あらためてデザインの重要さが問われるのかもしれないですね。
「鈴木がインタビューで答えていたように、うちは動物園みたいな場所でいろんな動物が集まっている。それぞれやりたいことはバラバラなんですけど、それをなんとか繋げて、結果的に私たちの仕事を通じて社会が少しでも良くなればいいな、と思っています」
取材・文/村尾泰郎


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