ジャンル分け不可能な話題作を作り続けるアルゼンチン音響派の鬼才・アレハンドロ・フラノフ インタビュー

アレハンドロ・フラノフ   2013/08/16掲載
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 アレハンドロ・フラノフの音楽をどう形容すればいいのだろう。ふわふわとしたつかみどころのない音像から嗅ぎ取れるのは、ジャズやクラシックから フォルクローレやアンビエントまでさまざま。“アルゼンチン音響派”の鬼才としてフアナ・モリーナフェルナンド・カブサッキらと同時期に注目された10数年前から、コンスタントにジャンル分け不可能な話題作を作り続けている。来日ツアー中に、彼の不思議な音楽の秘密について聞いてみた。


――最初の音楽体験を教えてください。
「7歳年上の兄セサル(・フラノフ)がベース奏者なので、その影響がとても大きいね。彼がサポートしていたリト・ネビアフィト・パエスといったアルゼンチンのロックはもちろん、ビートルズウェザー・リポート、フランスの印象派までいろんな音楽を聴いていたよ」
――実際に音楽を演奏し始めたのはいつからですか。
「8歳くらいからピアノを習いはじめたら、自然に曲も作るようになった。14歳の時に、兄とギタリストのキケ・シネシが結成したソニドス・デ・アケル・ディアというグループに加入したんだ。最初にステージに立った時は緊張で気絶しそうになったけれど(笑)、プロとしての責任も感じたよ。その後、兄と二人でエルマノス・フラノフを結成したんだ」
――ソロ活動を始めたのはなぜですか。
「兄と音楽性が少しずつ違ってきたということもあって、自然な流れで独自の道を歩もうと思ったんだ。そして、90年代の終わりから最初のアルバム『アクセソリオン』(00年)を録音しはじめた。すでにある音楽にはまったく興味がなかったから、とにかくたくさんのミュージシャンといろんなやりたいこ とを徹底的に試して出来た作品だよ」
――その後、フアナ・モリーナの『セグンド』(02年)に参加しましたよね。
「当時、パーカッションのサンティアゴ・バスケスとギターのフェルナンド・カブサッキとのトリオで、サンティアゴの家に集まってよくセッションしていたんだ。そこにフアナが遊びに来て意気投合したのがきっかけかな。彼女の世界観はすでに確固たるものだったから、僕は少し手を貸しただけ。例えば、彼女が作ったメロディに、僕が新たに作ったメロディを重ねたり。あのアルバムは自分が関わった音楽の中で最も素晴らしいもののひとつだね」
――今回再発された2枚目のソロ・アルバム『ユスイ』(02年)も同じ時期に発表されています。
「ファースト・アルバムはものすごく時間をかけて丁寧に作ったけれど、この2作目の時はすでに自分のスタイルを確立していたから、そんなに時間をかけずに作ることが出来た。今聴くと、直接的でシンプルでソリッドな表現の曲が多いかなと思う」
――レコーディングの手順はどういうものなんですか。
「いろんなパターンがあるよ。何十曲もある中から選んでコツコツと録音していく場合もあるし、ミュージシャンたちとスタジオに入ってからセッションで作り上げていくこともある。ソロとバンドでも違うしね」
――ありとあらゆるいろんな楽器が弾けるのがすごいですよね。
「おもにピアノで作曲はするけれど、違う楽器を触っていると新しい音楽が生まれてくるんだ。ギター、フルート、シタール、ムビラと全部違うからね。30種類くらいは楽器を持っているかな。三線も山本精一からプレゼントしてもらったよ(笑)。今回のツアーでは、iPhoneの音楽アプリも使っている。楽器を通じてその国の文化を知ることができるし、新しい音楽を探し出していけるというのも、とても面白いことだと思う」
――これまでに、ヴォーカル曲もインスト曲もいろんなタイプの曲を作っていますね。
「20歳くらいから詩に興味が出てきて、歌える曲を作ることが多かったんだけれど、その後はインスト曲も増えてきた。今は、インスト曲ばかり作っていた翌日に、歌詞付きの曲が3曲も一気にできることもある。どちらも大事な音楽ということに変わりはないね」
――4作目の『オプシグノ』(04年)も今回再発されました。
「最初はマリンバ奏者のマルコス・カベサスと自分のピアノだけで作っていた。でも何か物足りないと思って、録音が終わってから慌てていろんな楽器を重ねていったんだ。だから最初のイメージとまったく違う(笑)。あと、アルゼンチン・ロックの神様ルイス・アルベルト・スピネッタ(12年没)に生前に参加してもらったのも、とても特別なことだね」
――その後の転機になった作品は。
「ピアノ・ソロで録音 した『メロディア』(04年)は挑戦だった。小さな教会で録音したんだけど、疲れ切って全然いいとは思えず、1ヵ月ほど聴き返せなかったんだ。でも結果はすごくよくて自分でもびっくりしたよ(笑)。それと、やはり『カーリ』(06年)の存在はとても大きいかな。ジンバブエの楽器ムビラを中心にいろんな楽器を駆使して、あれだけの作品を作れたのはマジックだね」
――最新作の『チャンパキ』(12年)は自然がテーマのアンビエントな作品でした。
「チャンパキとは山の名前なんだ。すでに絶滅してしまった先住民が住んでいた場所なんだけど、そこに行った時にちょっとスピリチュアルな何かを感じた。自然や先祖との精神の交感から生まれた作品なんだよ」
――今後共演してみたいミュージシャンはいますか。
「日本も含めてたくさんいるけれど、いちばんはチェコのイヴァ・ビトヴァかな。とても個性的で大好きなんだ。きっと面白いものが作れると思うよ」
――これからどういう作品を作っていきたいですか。
「実は今、ヴォーカル・アルバムを作っているんだ。それも声を素材にするということだけではなく、シンガー・ソングライターとして、シンプルにギターやピアノをバックにした歌の作品。やっぱり歌の力は特別だと思うからね」
取材・文/栗本斉(2013年7月)
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