【アルディッティ弦楽四重奏団 interview】来日公演への期待高まる 現代音楽の“大使”たち

アルディッティ弦楽四重奏団   2010/04/27掲載
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 今年6月のツアーで来日13回目となるアルディッティ弦楽四重奏団(Arditti String Quartet)は、まさに現代音楽の“大使”的存在。「演奏に不可能ということはない」と断言するメンバーたち。どんな難曲も彼らの手にかかれば魔法にかかったように“音楽”になってしまう。

 中学生のころから現代音楽に夢中だったアーヴィン・アルディッティが思い描いた“現代音楽を演奏する弦楽四重奏団”は、今年で結成36年。録音もすでに170枚を超え、そのレパートリーの多さには圧倒される。

 今回の日本公演でも、Aeonから最近リリースされたパスカル・デュサパン作品集から、2005年にアルディッティ弦楽四重奏団によって初演された弦楽四重奏曲第5番が演奏される。サミュエル・ベケットの『メルシエとカミエ』に触発されて書かれたというこの作品。難解と言われるベケットも、デュサパンの明快な筆致と彼らの深い理解、優れた演奏によって、面白く聴くことができる。

 外国語に通訳がいるのと同じように、現代音楽に彼らがある、といっても過言ではないと思う。


(C)P.Gontier
――CDをすでに170枚以上も録音されていますね。録音にもスタジオとライヴとがありますが、どちらがお好きでしょうか?
アーヴィン・アルディッティ(第1ヴァイオリン/以下、アーヴィン) 「両方好きですね。でもどちらかと言うと、僕はスタジオ録音の方が好きかもしれない。コンサートの時と同じような緊張感、エネルギー感、そして情熱を持って、スタジオ録音でも演奏する方法を研究したから。それができるうえ、スタジオ録音だと自分を最大限コントロールできるし、細かなニュアンスも思い通りにつけることができます」
――最近リリースされたCD、デュサパン作品集のレコーディングはいかがでしたか?
アーヴィン 「この録音は、ドイツ・バーデンバーデンのHans Rosbaud-Studioにてラジオとのコラボレーションで行なわれました。この時、ジョナサン・ハーヴィ作品集も録音したのですが、両作曲家と5日間、仕事も食事もともにするという理想的な環境の中で進めることができました。ハーヴィは、僕たちのために初めて作品を書いてくれた作曲家でもあり、それからというもの、彼の作品はすべて僕たちのために書かれています。デュサパンとの出会いは80年代の初め頃から。作曲家と長期にわたってともに仕事をし、彼らの音楽に影響を受けたり、また、彼らの弦楽四重奏についての考え方が僕たちの演奏によって影響を受ける。それはすばらしいことだと思います」
――ところで、初めて現代音楽に興味を持つきっかけとなったのは、どの作品か憶えていますか? そしていつ頃だったのでしょうか。リーダーのアーヴィンさんは12〜3歳とおっしゃっていますが。
アショット・サルキシャン(第2ヴァイオリン) 「僕もその頃かな。初めて聴いたのはシュニトケだったかも。その後モスクワで勉強していた時に、アンサンブル・アンテルコンタンポランによるブーレーズヴァレーズの演奏に衝撃を受けて、2002年にアルディッティ弦楽四重奏団に入るまで、そのグループに所属していました」
ラルフ・エーラース(ヴィオラ) 「僕も12歳くらい。たぶんリゲティのオーケストラ作品だったと思う。初めて聴いた時のドキドキ感はまだ憶えています」
ルーカス・フェルス(チェロ) 「僕の生まれ育ったバーゼルでは、現代音楽に触れる機会が多かったですね。子供の頃からよく聴いていました。とくにシェーンベルクウェーベルンベルクなど」
――来日中、マスタークラスを開かれますね。教えることについてどう思われますか?
アーヴィン 「世界各地でマスタークラスをしています。教えることも好きですし、若い世代の作曲家や演奏家と出会うことができる。これは僕にとっても彼らにとっても、すごく大切なことだと思います。新人作曲家の作品を演奏するのも好きですね。受講した生徒が何年かした後、「レッスンがすごく衝撃的で、自分の音楽に対する考え方、そして方向性が変わったくらい重要なものだった」と言ってくれた。こういうコメントを聞くとうれしいし、教えることを続けていきたいと思いますね」
――ときにベートーヴェンをプログラムに入れることもありますね。なぜベートーヴェンなのでしょう?
アーヴィン 「私が長年興味を持ってやまない作曲家の一人がベートーヴェン。とくに後期の弦楽四重奏曲は、クラシックの傑作です。今回日本で演奏する〈大フーガ〉は時を超越した“現代的”な作品だと思うので、僕がこの作品を演奏する時は、その現代性を強調します」



アルディッティ弦楽四重奏団



――今回の日本公演のプログラミングについてお話を聞かせてください。
アーヴィン 「まず名古屋の電気文化会館と東京の津田ホールでの公演について。今まで日本人作曲家の作品も多く演奏してきましたが、今回取り上げる湯浅譲二の作品は初めてで、今から楽しみにしています。石井眞木、バートウィスル、デュサパンはすべて僕たちが初演しました。どれも色彩豊かな作品で、これらが一緒に演奏される面白いプログラミングだと思いますね。

 また東京の武蔵野市民文化会館では、ベートーヴェンから始まり、印象派のラヴェルを経て現代に入るプログラム。クラシックから現代音楽へのつながりを感じてもらえたら嬉しいです。

 水戸芸術館でのリゲティの弦楽四重奏曲2曲は、すでに100回以上演奏していますが、毎回が新鮮。彼の作品は、まさに彼の性格と同じようにキャラクターの強い作風です。僕にとってリゲティは作曲家、友だちとしても特別な人でした」
――何度も来日していらっしゃいますが、日本での演奏はいかがですか?
アーヴィン 「僕たち皆、日本で演奏することが大好きです。日本のホールはどこも音響がよくて弾きやすいし、聴衆の皆さんは僕たちの演奏にすごく興味を示してくれていると感じます。謙虚で、新しい文化(芸術)に目を向ける姿勢が本当に素晴らしいと思いますね。じつは僕たち全員、日本料理のファンなのです。コンサート後の食事も、いつも楽しみなんですよ」
 「お寿司が大好き!」と盛り上がるメンバーたち。5ヵ国語を流暢に話すアショットは「日本語を覚えたい」、ルーカスは「日本の伝統文化、とくに陶芸に興味があるので、お寺や日本庭園を見に行きたい」と話す。

 年々注目を集めているベルギーの現代音楽祭ARS MUSICAのリハーサル後、快くインタビューに応じてくれた彼ら。前日までは、ロンドンBBCのコンサートとマスタークラスをしてきたばかりなのにもかかわらず、疲れた様子はまったく見せない。演奏することが、彼らの人生そのものであることを、しみじみと感じた一夜だった。


取材・文/平出七菜(2010年3月)
【Profile】
ロイヤル・フランダース・フィルハーモニー管弦楽団ヴァイオリン奏者。96年、桐朋学園大学音楽学部卒業。同年ドイツのザールブリュッケン音楽大学に入学し、ソリスト・コースを最高点にて卒業。98年、DAADスカラシップを受賞する。2002年にベルギーのロイヤル・フランダース・フィルハーモニー管弦楽団に入団。ヨーロッパ各地で演奏活動を展開している。



【日本公演スケジュール】
■アルディッティ弦楽四重奏団 2010
6月25日(金) 19:00開演 東京・津田ホール

[プログラム]
湯浅譲ニ:弦楽四重奏のためのプロジェクション
石井眞木:弦楽四重奏曲−「西・金・秋」op.96
パスカル・デュサパン:弦楽四重奏曲第5番
ハリソン・バートウィスル:弦楽四重奏曲 「The Tree of Strings」

全席指定:一般5,000円 学生2,500円

※問合せ・チケット取扱い
津田ホール
[Tel]03-3402-1851 [Fax]03-3402-7901
[e-mail]ticket@tsudahall.com
[インターネット・チケットオーダーフォーム]
http://tsudahall.com/ticket/ticketorder.htm


■来日ツアー日程
6月18日(金) 名古屋・電気文化会館
6月20日(日) 水戸・水戸芸術館 コンサートホールATM
6月22日(火) 東京・武蔵野市民文化会館
6月25日(金) 東京・津田ホール
問合せ:コンサートイマジン [TEL]03-3235-7772
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