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bump.y   2013/12/18掲載
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bump.y
“pinpoint”
 リリースは決して多くないものの、「Kiss!」など上質のポップスをリリースしてきたbump.y。そして、今年1月リリースの 「COSMOの瞳」 からはプロデュースにNONA REEVES西寺郷太が参加、その流れのまま、初のオリジナル・フル・アルバムとなる『pinpoint』も彼の全面プロデュースによって完成! グループの新たなキャリアの扉を開くこととなった。今回はアルバム・トークに加えて、彼女達の人となりも改めて伺ってみました。
――まずは1stフル・アルバム『pinpoint』完成おめでとうございます。その意味でも、改めてbump.yを知りたい読者もいるかと思いますので、自己紹介と他者紹介をお願い出来ればと思います。
松山メアリ
松山メアリ(以下、松山) 「リーダーの松山メアリです」
桜庭ななみ(以下、桜庭) 「メアリさんは……髪が綺麗」
宮武美桜(以下、美桜) 「髪が長い」
松山 「それじゃ全然私のことわかんないよ(笑)!」
桜庭 「いつも頭を痛がってますね。“今日も頭吊られてる……”って」
松山 「ポニーテールが多いんで、地肌がずっと持ち上げられるんですよね(笑)」
美桜 「あと、靴をギリギリまで履かないタイプです」
松山 「え、どういうこと?」
美桜 「イベントが始まるギリギリまで履かないんですよ」
桜庭 「美意識が高いから、むくみとかすごく気にしてるんだと思います。そういう美容系の長所もあるし、短所もあります」
松山 「……短所は?」
桜庭 「ポニーテールだから毛穴が上に向いてるところ(笑)」
松山 「ポニーテールの人に失礼でしょ!」
桜庭ななみ
――では桜庭さん。
桜庭 「はい、桜庭ななみです」
――桜庭さんはどんな人ですか?
美桜 「ななみさんは、プロ意識が高いです。レッスンのときと本番のときが違います」
桜庭 「……それ最低じゃん(笑)!」
――確かに、褒めてはない(笑)。
美桜 「なんか、本番の方が生き生きしてると思うんですよね。歌ってるときとか、目が違う感じがして、それを見ると“あ、本番なんだな”って」
高月彩良(以下、高月) 「オンとオフがハッキリしてますね」
桜庭 「ありがとうございます(笑)」
――自覚はありますか?
桜庭 「あまりないです。いつも同じテンションのはずなんですけどね……(美桜を凝視する桜庭)」
美桜 「やばい、私のときに大変かも(笑)。宮武美桜です。よろしくお願いします」
宮武美桜
――美桜さんはどんな人ですか?
松山 「声がめっちゃ大きい!」
桜庭 「歌のときは小さいのに(笑)!」
宮武 祭(以下、祭) 「一番女子力がない」
桜庭 「男っぽくてサバサバしてる」
松山 「あと、練習スタジオの荷物置き場を占領する。美桜の荷物が境界線を超えて私の方まで来るから困るんです」
美桜 「バッグが大きいんですよ〜」
桜庭 「じゃあ荷物置く場所替えましょう」
高月 「あ、それなら私、棚の上がいい」


(※しばし荷物の置き場所についての話)


――……その話はまた別の機会にお願いします(笑)。
松山 「でも、デビューして3年で一番大人になったかもしれない」
高月彩良
――では高月さん。
高月 「高月彩良です」
 「彩良は……」
全員 「う〜ん……」
高月 「特にないの(笑)?」
 「すぐにモノを忘れる」
松山 「ひとつのことに集中すると、他のことを忘れちゃうね」
美桜 「自分の世界観があるから、自分の世界に入っちゃうんですよね」
桜庭 「ダンスとかも自分独特の世界があるよね」
松山 「それをハッキリ言うと……」
美桜 「ナルシストなんです(笑)」
高月 「違いますよ〜(笑)」
桜庭 「ブログもちょっとナルシストだよね」
 「キメ顔も角度決まってる」
高月 「もうやだ〜。なんでこうなったの?」
松山 「いや、でも大事だと思うよ」
――人前に出る人はちょっとぐらいナルシストじゃないと。
高月 「……ツラい(笑)」
宮武 祭
――フォロー失敗してしまった(笑)。最後は祭さん。
 「宮武 祭です」
桜庭 「真のナルシストだよね、祭は。だって、彩良をすごいリスペクトしてるよね」
 「違いますよ! 尊敬してるけど、ナルシストな部分は尊敬してない」
高月 「もうナルシストはいいから(笑)!」
――どんなところを尊敬してるの?
 「彩良は帽子とかの扱いもスゴく上手で格好良かったんで、私も帽子が自分の衣装になったとき嬉しかったんです。でも、彩良がスゴく上手に使いこなしてるのに、私は上手くいかなくて。だから彩良はすごいなって」
美桜 「あと、話したがりなのに話にオチがないよね」
 「だって、bump.yで揃っても、誰も話さないときとかあるんですよ」
松山 「そこで“話さなきゃっ”て思うんだよね」
 「そうそう! 私、頑張ってるんです」
美桜 「でも、みんなに話さないで一人に話すよね。“メアリさん、今日学校で!”とか」
 「だって、メアリさんしか聞いてくれないから(笑)」
松山 「あと、レッスン中に、“bump.yを一番愛してるのは私だ!”って言い出して」
 「bump.yのバッグ持って学校行ってるし!」
桜庭 「bump.yのメンバーでメールアプリをやっているんですけど、そこにbump.yのPVのYouTubeアドレス貼ってたり(笑)」
 「愛情表現ですよ!」
松山 「5人しか見れないのに(笑)。でも、ホントに一番bump.y愛は強いかもね」
――ちなみに、それぞれ個人的に今興味のある音楽を教えてもらえますか?
美桜 「学校で劇団四季を観にいったんですね。そこで初めて観て、ハマってしまって。ホントにすごかったんですよ! ライヴとも、お芝居の舞台とも違うし、歌い方や表現で、こんなに歌の響き方って変わるんだなって驚いたし、プライベートでも観にいきたいなって」
――ミュージカル女優にちょっと憧れます?
美桜 「そうですね。(隣の桜庭に向かって)行くべきですよ!」
桜庭 「あ、ハイ(笑)。でも、私もブロードウェイでライオン・キングを観ました。英語はわからなかったけど、歌もダンスもあったので、言葉が分からなくても楽しかったですね。あと、私はHYさんが好きです。小学生の頃からずっと聴いてて、実家の車の中でもHYさんの曲がずっとかかってたんですね。それで、今でもHYさんの曲を聴くと、昔の気持ちを思い出したり、その時の感情に浸れるんです」
 「私もHYさんが好きです。HYさんは、ななみさんと美桜の出てた『赤い糸』ってドラマで初めて曲を知って、そこから聴くようになって。あと、SEKAI NO OWARIさんは友達がすごく好きで、勧められて聴くようになったんですけど、最近ずっと聴いてます」
松山 「私は、洋楽が好きで今の曲も聴くんですけど、ABBAさんとか、昔の曲を最近はよく聴いてますね。最近、素敵だなと思ったのはボブ・ディランさんです」
――それはまた渋いですね!
高月 「私は山口百恵さんが好きです。あの雰囲気、声質、目の使い方とか、全部が格好良くて、憧れるモノばっかり持ってるなって。昔の音楽番組をYouTubeとかで見てます。私の憧れの存在です」
――みんな結構バラバラなんですね。
桜庭 「レッスンのストレッチのときとか、メンバーそれぞれの携帯プレーヤーで曲をかけてるんですけど、ホントにバラバラですね」
松山 「だから、アップ・テンポな曲の次に、ななみちゃんが、そのときちょうど『タイタニック』の気分だったらしくて、セリーヌ・ディオンさんの〈My Heart will go on〉をかけたり。統一感は全然ないですね」
美桜 「最近、ななみさん『タイタニック』のサントラかけるの多いですよね?」
桜庭 「『タイタニック 3D』がすごく面白くて」
高月 「だから『タイタニック』のサントラをかけながら腹筋したりしてます」
――あの壮大な音楽で筋トレを。
松山 「あれはちょっとツラいものがある(笑)」
――楽曲的な部分では、シングル「VOICE」でのデビューから3年が経つわけですが、この3年間はどんな時間でしたか?
高月 「あっという間でしたね」
 「〈VOICE〉の頃の写真を見ても、全部が思い出せるし、ひとつひとつの思い出が濃くて、それがギュッと集まってる3年間なんで、あっという間だったのかなって。気がついたらこのアルバムって感じでした。でも、成長も積み重ねられたと思いますね」
――3年経って、変わったところと変わらないところは?
松山 「最初は、レコーディングもどうしたら良いのか分からなかったし、グループとしても“楽しければいいな”みたいな気持ちだったんですけど、今は曲を通して、曲の意味を伝えたいとか、どうやったら伝えられるかなってことを考えられるようになったのが変わった部分ですね。変わらない部分は……(メンバーに) なんだろう?」
美桜 「一人一人のキャラクターじゃないですか? 最初は衣装だったり髪型だったりで、キャラクターみたいなモノを考えてたけど、シングル・リリースやライヴという経験を重ねることで、もっと“あ、本当はこういうキャラクターなんだ”“bump.yの中で私はこういう立ち位置なんだ”っていうのが自然に分かっていって。しかも、そのキャラクターが5人とも全然違うから、自分のままで進んでいける感じがあるんですよね。だから、bump.yは曲ごとにいろんなカラーがあるけど、そのカラーにふさわしい子がいるし、そこでより、そのキャラクターを強く出せるんですよね」
桜庭 「自分がそのまま自分のキャラクターになっていった感じがありますよね」
松山 「結成したとき“あなたがリーダーです”って言われて、“しっかりしなきゃ、みんなを引っ張らなきゃ!”ってそのときは思ったんですね。でも、みんなそれぞれ、キャラクターがあるし、自分の意志で進んでいくから、いわゆるリーダーらしく“こうしよう!”みたいに、指揮を執らなくて大丈夫なんだっていうことに気付いて」
――でも、ライヴのMCを見るとその感じがよくわかりますね。MCがガチガチに決まってるっていうよりは、それぞれの醸し出すそのときの雰囲気で、話す内容が決まっていく感じが。ライヴで、桜庭さんを誰かが「先輩」って呼んで、そのまま桜庭さんを先輩キャラとして扱うっていうミニ・コントみたいなのを見たときに、自由だし面白いなって。
美桜 「アハハ。ありましたね。それもbump.yのカラーなのかも」
――では、アルバム『pinpoint』を完成させての心境は?
松山 「ファンの人も待っててくれたし、私たちとしても3年目でのフル・アルバムで、すごく大切な一枚になったなって。カラフルなbump.yが見せられるアルバムになったなと思いますね」
桜庭 「アルバムって、たくさんの曲が入ってるじゃないですか。そうやって、いろんなカラーで、聴く人のいろんな気持ちに応えてくれる作品になったらいいなと思ったんですね。今回は10曲ともカラーが違うから、自分のいろんな気持ちをそこで表現できたし、聴いてくれる方にとっても、そういう作品になったら嬉しいなって」
高月 「ファンの方やいろんな方のお陰で、3年目にして出せたアルバムだから、本当に感謝の気持ちが強いですね。それから……あ、言うこと忘れちゃった(笑)」
松山 「うそー(笑)!」
――すごくスムーズだと思ったのに、その後に言うこと忘れてたんですね(笑)。
高月 「えっと……そうだ! 西寺郷太さんがアルバムをオール・プロデュースして作って下さったのが本当に嬉しいなって。西寺さんもアイドルのアルバムをフル・プロデュースするのは初めてだって仰ってて、新曲も6曲作っていただいて、嬉しかったです」
 「今までのシングルに加えて、新曲も新しい曲調の曲が多いんで、音楽ってこんなにもいろんなパターンがあるんだって驚きました。本当に、このアルバムは、曲順も飽きないし、最後の〈CRY〉でしみじみして終わるっていうのも本当に良いなって。今回のアルバムのジャケットもすごく可愛いですよね」
美桜 「私はレコーディングがちょっと苦手な方なんですけど、西寺さんがアルバムを全部プロデュースして下さるっていうのを聞いて、すごく安心したんですね。だからレコーディングのときも西寺さんにいろいろ相談させてもらって。振り付けも、先生とbump.yでディスカッションして決めたり、自分たちの思いもしっかり込められたので、それがすごく良かったなって」
――西寺さんからのディレクションはどんな感じでしたか?
 「〈恋は pinpoint〉は“ファンの皆さんと一緒に盛り上がるように歌って”とか、〈CRY〉は“しっとり、みんなで体育館で合唱してるように歌って”とか、わかりやすいイメージを与えてくれました」
高月 「西寺さんって“デートするならどこ?”とか“メールアドレスってどうやって決めるの?”とか、私たちにリサーチされるんですよ。それをもとにその場で歌詞を書いて下さる時もあり、その場で“じゃあ歌ってみて”って。だから、西寺さんと私たちでコミュニケーションを取りながら、組み立てていった部分もあったのが面白かったですね」
――では、個人的に気に入ってる曲はなんですか?
松山 「(クスクス笑う)」
――あれ、なんか変なこと言いました?
松山 「全然! 素敵な質問だと思います」
――ハハハ。ありがとうございます(笑)。
松山 「いえ、その質問をよくされるんですけど、インタビューごとに毎度メンバーが違う曲を言ったりするんですよ」
桜庭 「“この歌は苦手だな”っていうのがアルバムに1曲もないんです。この5人は、バランスを考えて“この曲を好きって言わなきゃいけないかな……”とか、そういうことができないんで、そのときの気持ちで曲が変わっちゃう(笑)」
美桜 「だから、全曲好きなんですよ」
松山 「ファンの方にも、このアルバムで今までのbump.yの曲の中での好きなランキングがガラッと変わりそうって言ってもらえたりもして」
――じゃあ、ちょっと質問をちょっと変えて「気持ちが乗せられる」「自分自身にフィットした」曲や部分はなんですか?
松山 「迷うな〜」
全員 「ハイっハイ!(一斉に手をあげるメンバー)」
松山 「私は〈硝子の MAGIC〉!」
桜庭 「おーい! 取られた(笑)!」
――ハハハ。でもこれは曲が被ってもいいから、焦らなくていいですよ。
松山 「あ、そうか(笑)。〈硝子のMAGIC〉は、歌詞に校舎のことが出てくるから、西寺さんからは、“リアルに感じるのは年下のメンバー3人かもね”って言われたんですね。でも、私も純粋な思いを伝えるこの曲はイメージがしやすかったし、すごく好きな曲ですね」
桜庭 「私も〈硝子のMAGIC〉なんですけど、“恋をすれば孤独な日には戻れない”とか、なんかわかるなって。切なさもあるんだけど、キラキラ、ウキウキする気分になる曲ですね」
美桜 「私は〈ロマンティック MAYBE〉。二番の“新しいメール・アドレス ふたりのイニシャル 混ぜた”っていうのが、友達にリアルにあって。女の子の友達がアドレス変えたと思ったら、男の子の友達もアドレスを変えたんですね。で、その両方をよく見たら、お互いのイニシャルが入ってて。それを見て“今だから味わえるんだな〜”って(笑)。女子は特に共感できる曲だと思うんです」
桜庭 「そういう人って、すぐアドレス変えない?」
美桜 「そういう人ってすぐ別れたりくっついたりするんですよ」
高月 「私は〈SAVAGE HEAVEN〉」
桜庭 「絶対そうだと思った! 彩良の格好良い感じがあの曲は出るよね」
松山 「でも“朽ち果てた愛に怯えているだけ”とか、どう感情移入すればいいかわからなかった(笑)」
高月 「そう、始めは何を意味しているのかわからなかったんですけど、考えれば考えるほど、すごく深くて。それでボイトレで鏡に向かってこの曲を歌ってたら感情が昂ぶって大泣きしちゃって」
美桜 「メッチャ号泣でしたよ」
高月 「そのときは暗闇で歌ったんで、メッチャ入り込んじゃって(笑)。だって“消えてゆくYour Face”ですよ。あなたの顔が消えていくんですよ! もう、ツラくて仕方なくて……。そうやって気持ちが入り込みやすい曲でした(笑)」
 「私は〈CRY〉です。“また歩き出せるさ”とか、この曲の言葉はすごく沁みるし、伝わってくるんですよね。恋の曲と違って、世界共通の感情がある曲だと思うんですね。そういう部分が好きです」
――では、アルバムというステップを昇った、次のbump.yはどうなっていきたいですか?
 「8月に初めてワンマンコンサートをやらせていただいたんで、またbump.yだけでライヴができればいいなと思います。新曲6曲ができたことで、構成や盛り上がり方も変わると思うので、それが楽しみですね。以前は彩良がワイヤーで飛びながら登場したいと言っていたんですが、私もそれがやってみたい」
高月 「えー、パクらないでよ(笑)」
 「あと、床がガッと上がって飛び出たり、そういうアクロバティックなのがやってみたいです」
松山 「やっぱり、コンサートを通して、ライヴに対する姿勢も変わったし、自分たちだけじゃなくて、ファンの皆さんをどう楽しませられるかなってことも考えられるようになって。だから、bump.yならではの空間が、そこで作れるようになれれば嬉しいですね」
桜庭 「このアルバムを通して、もっと多くの人にbump.yを知ってもらえるようになりたいです。本当に良い曲を作っていただいているので、もっとたくさんの人に聴いてもらえればなって」
高月 「いろんな気持ちになってもらえるグループになりたいなと思います。イベントやライヴという限られた時間の中で、お客さんのいろんな感情を刺激して、観た人にいろんな気持ちになってほしい。盛り上がったり、楽しんだり、沁みたりさせたいし、このアルバムはそれができると思うし、歌い手としても、それをもっと表現できるようになりたいなと思います」
美桜 「来年は、ファンの方と会う機会やコミュニケーションを取る機会が増やせればなって。ファンの人からの意見でいろんなことに気付かされるし、教えてもらうことも多いから、それを教えてほしいし、ファンの方が思ってる気持ちとか、もっと知りたいなって思いますね」
取材・文 / 高木“JET”晋一郎(2013年12月)

bump.y
1stアルバム 『pinpoint』


■ 初回スペシャル盤
CD + DVD + 卓上カレンダー
PCCA-03954 税込6,300円

■ 通常盤
CD
PCCA-03955 税込3,150円



 あまちゃんブームの影響もあって、2013年は“歌謡曲”や“80年代”というキーワードからポップスが語られることが多かった。実はこのふたつのキーワードほど、曖昧なものはない。そもそも“歌謡曲”という言葉からイメージする音楽は世代によってそれぞれだし、“80年代”のサウンドも前期・中期・後期と切り取ってみてもわかるように、録音技術や楽器の進化でドラスティックに変化していった時代でもあった。しかし、バラバラなキャラクターを持つ歌手たちが鏡張りの回転扉から飛び出してきては、バラバラなサウンドに飾られた楽曲がひとつの歌番組の中で目まぐるしく歌い繋がれていく、あの雑多な魅力を楽しむ感覚こそが“歌謡曲”の本質だったように思うのだ。

 西寺郷太は、その“曖昧”で“雑多”な歌謡曲のイメージを逆手に取って、bump.yの1stアルバム『pinpoint』を作り上げた。bump.yは、松山メアリ・桜庭ななみ・宮武美桜・高月彩良・宮武 祭という年齢も個性も声質も(身長も)バラバラなメンバーたちが集まったグループだ。そんな彼女たちが、ひとつの楽曲を多彩なキャラクターを演じ分けるように歌い継いでいく。かと思えば、5人それぞれの個性を際立たせることで、目まぐるしく移りゆく女の子の心情を多面的に描いていく。

 ストック・エイトキン・ウォーターマンのダンス・ポップを彷彿とさせる大人びた味わいの「孤独にVIVID」から、モータウンの香りが漂うキャンディ・ポップ「恋はpinpoint」、デストピアを舞台にしたSF作品のようなハードな肌触りを持つ「傷痕 HEAVY SOUL」と、冒頭の3曲を取り上げてみてもビター=スウィートの振り幅は激しい。が、その変化にもしっかりと対応している歌唱には、メンバーが個々に女優としても活躍するbump.yだからこその表現力の高さが窺える。

 旬なヒット曲がぎっしりと詰めこまれたかつての歌番組のように、キャッチーでありながら、それぞれにドラマを感じさせる楽曲が並ぶ『pinpoint』。アルバムのラストに収められたのは、一変してシンプルなアレンジのミディアムテンポのバラード「CRY」。湯川れい子が「上を向いて歩こう」のアンサーソングとして書いたという歌詞を、5人は飾り気のないユニゾンで歌っていく。その歌声は、bump.yのメンバーたちがふと見せた素顔のようでもあり、舞台を演じきった女優たちのカーテンコールの清々しい笑顔のようでもあった。
文 / 宮内 健
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