【CDJournal.com 10th 特別企画】“10周年”をキーワードに読み解く クラシカル・クロスオーヴァー発展史

サラ・ブライトマン   2010/06/23掲載
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Interview
10周年を迎えた『image』誕生の舞台裏
株式会社 EPICレコードジャパン
青木 聡氏


 2000年8月に第1作目を発売して以来、リラクシング系コンピの代名詞として、累計350万枚以上のセールスを記録している『image』シリーズ。今年1月に10周年記念盤にして最新作の『image 10(dix)』をリリースし、今なお音楽ファンに支持され続けているこのシリーズも、クラシカル・クロスオーヴァー・シーンを牽引する大きな役割を果たしてきた。ここでは、オリジナル企画者である青木聡氏に、『image』誕生にまつわる秘密や裏話を語ってもらった。




【青木聡/Profile】
1966年生まれ。ワーナーミュージック・ジャパン勤務を経て、95年にソニー・ミュージックエンタテインメントに入社。EPICレコードジャパンでゴンチチ、葉加瀬太郎などを担当後、ソニー・クラシカルで『image』を手掛ける。2001年秋より再びEPICレコード勤務となり、元ちとせを担当。現在、同社執行役員。
――『image』といえば、クラシカル・クロスオーヴァーを代表するヴァイオリニスト&作曲家である葉加瀬太郎さんの楽曲がまず思い浮かびます。TV番組『情熱大陸』の有名なオープニングとエンディングのテーマ曲は、『image』シリーズの第1作目に収録されていますが、青木さんはもともとEPICレコードで葉加瀬さんの担当だったそうですね。
青木聡(以下、同) 「はい。〈エトピリカ〉は葉加瀬さんの『情熱大陸』出演(1998年9月)がきっかけで、番組のプロデューサーが気に入って、エンディング曲に起用してくれたんです。その後、今度はオープニング曲を書いてくださいと言っていただいたのですが、スケジュール的にかなり厳しい依頼で……。ただその時、僕の頭の中には、葉加瀬さんが作っていたデモ曲が2つ思い浮かんでいました。その2つをくっつけたら、番組のオープニングにふさわしいアップテンポでスピーディな35秒の楽曲ができるんじゃないかなって考えがあって。それを実際にやってみたら、けっこううまくいったんですね(笑)。で、そのまま同番組の“顔”として現在まで至っているわけですが。このオープニング曲の間奏にバンドネオン奏者の小松亮太さんをフィーチャーして、5分間の完全な楽曲として完成させ、初収録したのが『image』の第1弾であり、このコンピのその後の方向性を決定する楽曲になりました」



『image』シリーズの第1作目
――そもそも『image』の企画が生まれたきっかけは?
 「僕は2000年に、ソニー・グループの中で、EPICレコードからクラシックの部署であるソニー・クラシカルに異動したのですが、その当初からクロスオーヴァーものを手掛けたいと思っていました。その理由の一つは、当時アメリカのソニー・クラシカルにはピーター・ゲルブ(現メトロポリタン歌劇場総裁)という名プロデューサーがいて、映画『タイタニック』のサントラを仕掛けたり、クロスオーヴァー企画にも積極的だったのですが、そんな仕事をしてみたいなと感じていたから。そしてもう一つは、葉加瀬さんの〈エトピリカ〉のような楽曲が、インストゥルメンタルということもあって、CDショップで目立たない場所に埋もれてしまっているんじゃないかという危惧があったからです。で、考えてみたらTV番組やCM、映画などで人々の耳に強く残っていながら、商品として入手しづらくなっている楽曲がほかにもいっぱいあるような気がして、そういうのをコンパイルしたアルバムを作ったら、レジ横とかで大々的に展開してくれるんじゃないだろうかって(笑)」
――リリースまでにはどのような苦労がありましたか?
 「とにかくクラシックの部署にとっては異例の企画だったようで、まずは周りの人間を説得することから始めました。ただ、たとえば葉加瀬さんと小松さんの異色コラボにしても、音楽的に何かいい科学反応が起きるはずだっていう確信みたいなものはありました。それと、当時EMIさんから出ていた『feel』というインスト中心の癒し系コンピの売れ行きが好調で、うちの社内でも『image』に対する期待が高まってきていました。とくに営業部署の30代女性を中心としたチームから意見をもらうことができて、ジャケット写真のデザインなどは、いろんな案があって難航していたのですが、彼女たちにおおいに助けられましたね」



“live image 10”の模様



『live image -10th Anniversary Book-』
――アルバムのコンセプトそのままに全国ツアーを展開する“live image”も今年10周年を迎えました。こちらも人気のアーティストがジャンルを超えてステージに一堂に会するというすごい企画です。
 「最初は単純に、CDを作ったときに協力してくださったアーティストの皆さんに、何か恩返しができたらいいなと思って始めたんです。おかげさまで彼らからは“こんなライヴに参加できてよかった”って言ってもらえて、またそれを聴きたいと思ってくださるお客さんにも支えられてここまでこられました」
――ずばり、何が『image』シリーズのロングラン・ヒットに繋がったのだと思いますか?
 「僕が携わったのは最初の3作までですが、その後も“気になるあの映像の音楽”をコンパイルするという基本コンセプトは不変です。結局、みんなが聴きたいのは楽曲そのものであって、それはクラシックでもJ-POPでも同じことだと思うんですね。もちろん、聴いたことのない未知の楽曲でも『image』で聴いて発見して、好きになってもらえたら嬉しいですが」
――青木さんはその後も、EPICレコードで“のだめオーケストラ”を手掛けて、漫画・アニメ・TVドラマをクロスオーヴァーした新しいクラシックのブームを生みました。
 「クラシックでもインストゥルメンタルであっても、J-POPを売る時と同じ発想と方法論で、リスナーに音楽と出逢える場所を提供したいというのが常に僕の立ち位置なんです。要するに、その楽曲自体が持っている世界観や本質の部分を理解して好きになってもらえたら、あとは自然と熱心に追いかけてくれる。もちろんそれだけの魅力を備えた音楽じゃないと、伝わらないわけですけれど」
取材・文/東端哲也(2010年5月)


【ライヴ情報】
live image Nouveau
9月25日(土) 18:00 東京・Bunkamuraオーチャードホール
出演:ウェイウェイ・ウー、木村大、NAOTO、羽毛田丈史、松下奈緒、松谷卓 他
問:キョードー東京 [Tel]03-3498-9999
http://www.liveimage.jp/


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