2ndアルバム『My Lost City』から約1年、力強い一歩を踏み出したceroのニュー・シングル「Yellow Magus」が完成!

cero   2013/12/20掲載
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cero
“Yellow Magus”
 「夢を覚ますものってビートだったりする」と荒内佑(cero)は言った。ceroにとって2ndアルバム『My Lost City』以来、約1年ぶりのニュー・リリースとなるシングル「Yellow Magus」の、力強いリズムのイントロが流れた瞬間、確かに何かが変わったと思える。都市を洪水に見立てて変わりゆく時代の矛先を見つめた船旅から、自分の足で地面を踏みしめて踊るように前に進むことを選択したかのようなビート、メロディ、そして言葉。カップリング曲も含め、ニュー・シングルは新たな一歩の踏み出しを強く感じさせるものだ。「Yellow Magus」が指し示すその先には何が見えるのか? メンバー3人に聞く最新ロング・インタビュー。
――今日(12月3日)取材に来るまでに、ceroの新曲「Yellow Magus」を、すくなくとも2回はラジオで聴いたんですよ。もちろん今までもceroの曲をラジオで聴く機会はあったけど、今回は、イントロが流れ出した瞬間の名曲感というか、かける側の期待値も高いのが伝わってくるんです。
荒内 佑(以下、荒内) 「あのイントロはスライ&ザ・ファミリー・ストーンの〈サンキュー・フォー・トーキング・トゥ・ミー・アフリカ〉へのオマージュなんです」
――ドラムのブレイク、ベースのチョッパー、そして荒内くんのピアノのリフ。この畳み掛けからしてワクワクせずにはいられない感じで素晴らしいですよね。2nd アルバム『My Lost City』から1年を経て、ceroが前にぐっと踏み出した印象がある。こういうチャレンジができたのは、今年の秋から最大8人の新編成になったということも、当然大きいですよね。
高城晶平(以下、高城) 「去年の12月にあった〈とんちまつり〉(12月15日、東京 新代田 FEVER)で、ceroとあだち麗三郎クワルテッットが合体した“ceroあだちセクステッット”をやったんですよ」
――僕も見てました。リズム・セクションを“あだカル”の厚海義朗 + 光永 渉に変えて、あだちくんはサックスに専念。高城くんはフリー・ハンドで歌、もしくはフルートという編成になってました。
高城 「もともと、VIDEOくん(VIDEOTAPEMUSIC)が、そのふたつが合体したのを見たいって言ってたんですよ。それを〈とんちまつり〉で実現させてみたんです。そのあとに今年の〈下北沢インディーファンクラブ〉でも新しいリズム・セクションでやってみて。時間をかけながら試していった感じでしたね」
荒内 「2011年に柳(智之、初代ドラマー)が辞めたときに、チムニィってバンドのドラマー(光永)がすごくいいらしいから、あだれい(あだち麗三郎)とみっちゃん(光永)のどっちかにしたいという話はすでにあったんですよ。そんな話を高城くんにもしたと思う」
高城 「ああ、そうだったかもね」
荒内 「そのときはあだれいになったけど、結果的に今ではみっちゃんも、あだれいもいる編成になった」
――人数が増えることで実現できることが増えるというのはいいけど、今までの編成で工夫しながらやってきたバンド感みたいなものが薄れることを惜しむ人もいますよね。結局、そこを説得していくには、このあたらしい編成が必要な曲を作っていくことだと思うんです。でも、インディーファンクラブでは高城くんの作った〈我が名はスカラベ〉はやったけど、荒内くんの「Yellow Magus」は、まだ完成していなかった。
荒内 「作ってる途中だったかな」
高城 「そのあとのリキッドルームでのワンマン(9月8日)が迫ってきた時点でも、“あの新曲、どうする?”みたいな感じだったんですよ。“でも、やる!”と決めて完成させたんです」
――そして、まさに今回の「Yellow Magus」は、現在の編成がceroにとって必要なことを証明する最高の回答になってますよね。
荒内 「リズム・セクションの存在は大きかったですね。高城くんがベースを弾きながら歌うという前提での曲作りではなかったし」
高城 「そうだね。〈Yellow Magus〉も〈我が名はスカラベ〉も、もうベース弾きながらでは絶対に歌えない。〈我が名はスカラベ〉は自分の曲なのに、“これどうやって再現するんだろう?”って思いながら作ってるような感じがあって」
――自分でもやれるかどうかわからない曲ができてしまうってすごいですね。では、あたらしいリズム・セクションがceroにもたらした一番の変化は何だと思いますか?
荒内 「あだカルで練習してるときに、みっちゃんが“ここは二拍三連で、あらぴー(荒内)は1.5で弾いてくれ”ってワケのわからないことを言いはじめたときがあって(笑)。説明を聞くとわかるんですけど、みっちゃんってもともとジャズをやってた人だから、譜面的にノリを解析できるんですよ。リズムに対する解像度が高い」
高城 「それって、〈8points〉でもやってるやつ?」
荒内 「あれは、俺が三連で、みっちゃんが16分。それがズレながら重なっていく。今回は全曲そういうのを取り入れてます」
高城 「みっちゃんがいろいろ教えてくれたリズムの話のおかげで、ブラック・ミュージックのおもしろさがぐっとわかってきた」
荒内 「そうそう。光永家で勉強会が開かれて、いろんな音源を聴いて、こうやってリズムの拍子を取るんだ、みたいなことを教わった。ブラック・ミュージックに限らず、レイハラカミとかも拍子を取り方のバリエーションで曲を構成してるんだって教えてもらって。リズムに対する理解が深まることでブラック・ミュージックを聴くのがよりいっそう楽しくなったんです。それぞれ別々に流れてるリズムが同期して一緒になることで生まれるおもしろさは、今のみっちゃんと義朗さんをバンドに入れないとできなかったことですね」
高城 「こないだ藤井洋平の『Banana Games』を聴いてても思ったんですけど、あのアルバムにもみっちゃん、義朗、あらぴーが入ってるんですよ。あだカルしかり、ceroしかり、そのチームでいろんな楽曲をやってる感じが、かつての細野さんたちのティン・パン・アレーとか、クエストラブを中心にしたソウル・クエリアンズとかにも近付いてきてる気がしてて、もうすぐそういうシンジケートというかコミュニティみたいなのが僕らの周りから生まれるんじゃないかなとちょっと思ったりしますね。そこに荒井由実とか吉田美奈子みたいな女性シンガーが現れたりしたら、さらにいろんなことが始まるんじゃないかな?」
荒内 「今までも、とんちれこーど周辺での人材の交流はあったけど、みっちゃんと義朗さんが良かったのは、プレイヤー然としてるところですよね。あの2人が今の東京のインディ・シーンに足りなかった黒さを持ち込んできたところがある」
高城 「藤井洋平のアルバムも、ceroの今回のシングルと表裏一体みたいなところがあるよね。日本においてのR&Bとかの良い位置というか、岡村靖幸以降、黒人音楽と僕らをつないでくれるような媒介があんまりなかった。R&Bと言えば、いきなりオーヴァーグラウンドでメガヒット狙いみたいな感じだし」
――そこに必要なあたらしい媒介を藤井洋平とceroが担おうとしてる?
荒内 「そうですね、藤井洋平の場合はソウルやR&Bで歌われるエロティックな歌詞を日本語にしたようなところがある。ただ、ceroがそういう場合に作るのが物語なんですよ。それは〈Yellow Magus〉を作ってるときにも考えてた。言葉数が多くて、しかもそれが物語になってて、音楽性はブラック・ミュージックというのは、ceroしかできないバランスなんだなと思う」
――確かに、初期にも「exotic penguin night」とか、ハウスっぽいグルーヴの曲はあったけど、あそこにあったのは黒っぽさというより、都市の空虚さとか、そういう意識を反映させた脳内のダンス・ミュージックだった気がします。それが、今回は明らかに“踊れる”という意味での身体的なダンス・ミュージックになっていて。
高城 「ceroのライヴの出囃子は、“やらせろ”の“せろ”がシャレになってるという意味もあってJAGATARAの〈クニナマシェ〉を使ってきたけど、はからずもJAGATARA的なインディ・ファンクというか、ああいう音楽そのものに近付いてきてる感じはある」
――ミキシングを担当してる橋本くんとしては、今回のceroの変化をどう受け止めてます?
橋本 翼(以下、橋本) 「いや、変化したんで、勉強しましたね。低音の出し方とかもエンジニアの得能(直也)さんに教えてもらって」
高城 「低音を出すというのをひとつのスローガンとして掲げたところはありましたね。今までのceroはそこまで低音が強くなかったから、そこをぐっと出す。ビート、ドライヴ感を強く出そうというのを中心にして動いてました。そこでわかったのは、今まで通りの音の詰め込み方じゃ低音のマジックを生み出すのが難しいということ。そのためにどんな音を引いていかないといけないのかを知るという勉強でした。そのいっぽうで、家でめちゃめちゃ声を重ねまくった素材を音源に活かすというのも今回初めてやりました。ディアンジェロのアルバムとかもそうなんですけど、叫び声とか囁き声とかを鳴らしたり、左右でリンクしてメロディになったり、いろんなランダムな声をたくさん入れる。そうすることで、ある意味統合失調症状態のような、幻聴感や、マトモでない感覚を演出するというか。そういうのを日本語で活かしてるのはあんまり周りではないなと思って、とにかくやってみました」
――あと、「Yellow Magus」を聴いて一番の発見は、複雑な要素が詰まった曲であるにもかかわらず、曲の構成がすごくベタにできてるってことでした。ギターやサックスのソロがここまで前面に出てる曲はなかったですよね。
高城 「そうですね。ソロはほとんどやってこなかったですね」
荒内 「あるとおもしろいなと今回は単純に思ったんですよ。結局、ceroにとって新鮮かどうかが重要で、そういう予想のできないものを取り入れたかった」
――橋本くんの、あんなアグレッシヴなギター・ソロが聴ける日がくるなんて。
橋本 「あれも半分くらいのフレーズは、あらぴーのデモにあったアイデアなんですよ。僕はああいう感じが本当に苦手だったから、どうやって弾こうかなって思ってました(笑)」
高城 「あらぴー、最近、デモでよくギター弾いてるもんね」
荒内 「プリンスとかディアンジェロとかって、ライヴだとメタルみたいなギター弾くんですよ。ああいうのがかっこいいなと思えるようになってきたんで、そのへんを意識してギター・ソロを入れてみたんですよ。そのもとをたどれば、たぶん、ファンカデリックとかなんでしょうけど」
――そこも含めて、今回はブラック・ミュージック発信なんですね。
高城 「たとえば前作だと、表題曲の〈マイ・ロスト・シティー〉にあったのは、やっぱりトーキング・ヘッズ経由の黒人音楽だったんです。R&B的なものじゃなくて、もっとアフリカっぽいものとかが頭にあった。今回は、また違う回路を通ってきた黒人音楽なんですけど、次のアルバムではまた〈My Lost City〉的なエッセンスと合流したりするのかもしれない」
――『My Lost City』のアルバムには大きなコンセプトとして、大洪水の海の上をゆく舟みたいな揺れる感じがあったと思うんですけど、今回のシングルでは、砂漠というキーワードもあるけれど、地面の上で踊るというか、一歩先に自分の足で地面を踏みしめながら進むという覚悟を感じます。それは歌詞にも色濃く出てますよね。3曲目の「ship scrapper」は、まさにその船を鉄くずにしてしまうお話だし。
高城 「昔の曲だった〈8points〉を除けば、今回の新曲としては、〈ship scrapper〉が一番最初にできていたんですよ。バングラデシュのチッタゴンという港町で、世界の大型の船が解体されているというニュースを新聞で読んだんですよ。その8割は日本の廃船なんです。アスベストとかいっぱい使ってる時代の船だから作業員たちはみんな命にかかわる状態で、いろんな団体から作業を止めるように言われてるんだけど、明日食うお金がないから“大丈夫だ”って言い張ってそこで働き続けてるという現状を知って。それと、あの曲でもうひとつ重要なのは、凶器の継承というか、『My Lost City』の〈船上パーティー〉で出てきたぎらぎら光るナイフが、〈ship scrapper〉で造船解体をしてる少年の手に渡るという、物語のつなぎの意味も持たせたかったんです。2人にはこの曲のデモを送ったときに、チッタゴンの現状を報道するニュースのリンクも貼って。その次に作った〈我が名はスカラベ〉も同じようにニュースを見ていて思ったことからできた曲です」
――歌詞とメロディでは、言葉のほうから作っていくタイプですか?
高城 「僕は結構同時ですけどね。歌は歌で、文字は文字で、思いついたときに携帯に入れて置いて、あとでドッキングする作業みたいな感じです。容れ物はすでにあって、あとはおもしろいニュースが舞い込む偶然を待つ、みたいな。〈ship scrapper〉もそんな感じでしたね」
――でも、ニュースを見たのは偶然だったかもしれないけど、「My Lost City」の船を廃船にしたところから次に進むというのは、むしろ必然に思えますよね。
高城 「そうですね。ナイフも少年に渡してるし」
――そこから「我が名はスカラベ」で地面を前に進んで、砂漠にたどりついて、「Yellow Magus」を荒内くんが作って。
高城 「チッタゴンのニュースを僕とあらぴーとそれぞれ別のかたちで昇華したのが〈ship scrapper〉であり、〈Yellow Magus〉だったんです。で、その中間に〈我が名はスカラベ〉が入ることで、“砂漠”というテーマがでてきて、そこにお互いが寄っていってたんです。旧約聖書でいう『出エジプト記』みたいになってきてる。大洪水があって、バベルの塔の崩壊があって、今は『出エジプト記』に差し掛かってて。旧約聖書の話の流れとかまったく知らないでいたんですけど、人間の神話的な想像力って結局そういう流れになっていくのかなと思うと、おもしろいですね。思い出したんですけど、高校時代に予備校に通ってたときに芸術系小論文ってクラスを受けてて。そこに謎のおじいさん先生がいて、その人がよく“旧約聖書を読みなさい。人間の想像力はぜんぶ旧約聖書に集約されてるから”って言ってたんですよ。当時は“うるせえじじいだな”って思ってたけど(笑)。あながち嘘でもなかったというか、確かに旧約聖書には神話的想像力の根本的なところがあるし、デフォルメされた歴史の話でもあるし。そういうことが今になってわかってきた気がしてます」
――荒内くんはどうなんですか? 「Yellow Magus」の物語の着想はどこから出て来たの? そもそも「メイガス(Magus)」って、新約聖書に出てくる、イエス・キリストの誕生を見届ける「東方の三博士」のことですよね。
荒内 「エレクトリック時代のマイルス・デイヴィスに『ダーク・メイガス』ってアルバムがありますよね。マイルスは白人に対する黒人文化の提示を“ダーク・メイガス”って言葉でやったわけなんですけど、それに対する黄色人種のceroの宣言っていう意味で〈Yellow Magus〉なんですよ。サウンドもブラック・ミュージック志向だし。でも、もっと単純には、『My Lost City』で作ったあの船の名前って何だったんだろうなっていう思いがあって、結構いろいろ船の名前を書いてたんですよ。結局、そのなかで〈Yellow Magus〉が一番しっくり来たんです」
高城 「まあ、“イエロー・マジック”という言葉もあるしね」
荒内 「細野さんが“ブラック・マジック”に対する“イエロー・マジック”を宣言したのと同じ行程ですけどね」
――でも、「Yellow Magus」ってつけたことで「東方の三博士」と3人の日本人であるceroも重なり合うという。
荒内 「そうなんですよ。新約聖書で東方の三博士はキリストの生誕を知らせる星を見て、ベツレヘムに来ますよね。歌詞にも“星が動けば これから起こることがわかるだろう”って書いたけど、『My Lost City』が出て、サードに向かうこれからに対しての預言者という意味でもあるから。次のアルバムに至る道しるべという意味での“Magus”でもあるんです」
高城 「ヴィジュアル系みたいだな(笑)。シングルのことを“新しい預言書です”とか言ったりする(笑)。でも、本当にもう、音楽を作ってるというより、脚本とかお話を作ってるような感じでやってますね。そうそう、〈ship scrapper〉が終わってから、最後の〈8points〉までの間にSEを入れてるんですよ。“カンパーイ”って声が聞こえて、しばらくしてそこから遠のいてゆく足音を入れてるんですけど、それを知り合いに聞かせたら“おお怖! 誰かが見てたんだ”っていう反応だったんです。そういう視点があるのかって驚きました。僕はどっちかと言ったら、ナイフをくすねた主人公の男の子が乾杯をよそに去ってゆくというイメージだったんで」
荒内 「いや、俺も、誰か別の人が見てた的なイメージだったな」
高城 「カメラを回してる的な視点ってことだよね」
荒内 「今回の新曲は全部、歌詞がカメラ・アイで、一人称の主語がないんですよ。ただ、〈8points〉だけ、昔に作った曲なんで、そこにカメラ・アイ的な音を入れられたら全部がうまくつながるだろうと思って、“ああいう音を入れたい”って言ったんです」
――「8points」が、ここに入ってきたのはなぜなんですか?
高城 「もともとあの曲は亡くなったゲーム・クリエイターの飯野賢治さんの『きみとぼくと立体。』ってゲームに絡んだ曲だったんですよ」
橋本 「Wiiで、オンラインでダウンロードできるゲームじゃなかったかな」
高城 「そのテーマ曲というわけじゃないんだけど、ゲームの世界観を音楽とかいろいろなものにフィードバックしていきたいという意向が飯野さんにあったらしくて、その話がデビュー前のceroに来たことがあるんです。僕はそのときに〈バードコール〉という曲を書き、あらぴーが〈8points〉を書き。でも、その企画は結局ぽしゃってしまい、曲だけが残ったんですよ」
――なぜ、その曲が復活したんですか?
荒内 「角張社長から“いい曲だから入れたい”って言われたのもあるんですけど」
高城 「星巡りって意味もあるというか、星の動きを見てこれから起きることを預言するという意味が〈Yellow Magus〉とも符合するところがあるんです」
荒内 「ジョン・ケージの“星座の楽譜”ってあるじゃないですか。星を結んで楽譜を作る音楽。これはもっと簡易化していて、“8”って“ドレミファソラシド”の8音ってことで、その8音を単純に結んで曲にした唱歌というか童謡っぽい作りなんですよ。でも、〈Yellow Magus〉と一緒のアプローチで、声を重ねまくって、しかも低域はしっかり出したミックスにしていて」
高城 「そうだね。こういう静かな曲で、リズムも低域もばっちりあるっていうのは今までのceroにはなかったことがやれたという気がする」
――いろんな意味で、「Yellow Magus」のシングルって、今までのceroより、もっと現実に接近した寓話を語りはじめた気がします。
荒内 「前のアルバムは最後の〈わたしのすがた〉で夢から目覚めるという設定になっていたけど、夢を覚ますものってビートだったりすると思うんです。今までは頭で考えた世界だったけど、よりフィジカルになってきてて、肉体性が出てきたかなというのはありますね」
高城 「いよいよ“contemporary exiotica rock orchestra”で“cero”だっていうシリアルを変えないといけないかもですね。インディーファンクラブのときは“contemporary eclectic replica ocean”って言ったけど。」
橋本 「TAICOCLUB(10月4日)でそのタイトルの曲もやったしね」
――次のアルバムに向けての最高のバネというか、ここから始まるものは最高に興味深いです。ラジオから「Yellow Magus」が流れてきたときのあの高揚感ってファンにとって「ceroが変わった」というだけでなく、知らない人の世界の見え方を変えて動かす何らかの力があると思うし。今、日本はいろいろ問題があるけど、ぶっちゃけた話、東京オリンピックが決まってるから、表面上の街はどんどん浮かれていくと思うんですよ。そのときにceroには、浮かれたふりをして踊りながら時代に対してクサビを打つバンドでいてほしいと思います。3・11のあと廃墟のように思えた東京のこともやがてみんな忘れてしまうだろうし、価値観が変化してゆくこれからの時代に、ceroが語ろうとする物語って重要になってくると確信してます。
高城 「これは余談になるかもしれないけど、カニエ・ウェストの新曲(「Bound 2」)のPVあったでしょ? あれ、本当にラッセンみたいな大自然+コラージュで、悪趣味の極みみたいなものになってるじゃないですか。でも、それが大林宣彦の映画みたいな世界観とも通じ合ってるようにも思えたんですよ。プリンスやマイケルもそういうところあるじゃないですか。ブラック・マニエリスムっていうのかな。この価値観って何なんだろうって思うときがあるんですよ」
荒内 「ああいう名前のつけようがない感覚を提示して賛否両論まっぷたつになるのって、芸術が何かを更新するときだと思うから、惹かれるものはありますよね。新しい価値を提示するって、こういうことなのかなと思っちゃいましたね。単に悪趣味なだけかもしれないけど」
高城 「きもちわるいがきもちいいに変わっていく瞬間ってありますからね」
――最終的な音作りを担う橋本くんの役割も増していくよね。橋本くんがラーメン二郎好きだってことが、むしろこれから重要になっていくのかもしれない(笑)。
高城 「きもちわるいがきもちいいに変わっていくのが二郎っぽい、ってこと(笑)?」
荒内 「二郎にたとえると、今回はどうなの?」
橋本 「色が一緒」
高城 「黄色(笑)」
橋本 「でも、すごい優等生な二郎だよ。きれいな二郎で、ぶれが少ない。店で言うと、神保町店かな……」
荒内 「神保町の二郎は、どういうところなの?」
橋本 「まず人気がある。味は王道なんだよね。なるべくして人気店になってる。リズムのイメージなのかもしれないけど、今回のceroのシングルは堅実なイメージが僕にはあって。リズムがかっちりとあるのが、足跡をしっかり残しながら進んでゆく感じがする。ミックスをやってると、そのリズムをぐしゃっといじりたくなるときがあるんだけど、これからはそういう気持ち良さじゃないんだということを最近みんなから教えてもらったかな。ビートが鳴ってるなかでだんだんあがってく、みたいな」
高城 「そこが神保町店に通じるんだ(笑)」
――ラーメン二郎のたとえ話が、思いがけず、いいオチになってしまった(笑)。


取材・文 / 松永良平(2013年11月)
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