シャープだけど薄くない、ただただカッコイイことだけをやりたいグループ――Cracks Brothers

Cracks Brothers   2018/05/29掲載
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 東京のヒップホップと一口に言ってもさまざまだが、Cracks Brothersの待望のフル・アルバム『03』もまた東京の最深部のシーンで熟成された音楽だ。そのことはこのインタビューを読んでもらえれば伝わるだろう。Cracks Brothersは、SPERBFEBB AS YOUNG MASON、C.J.CAL、DJ SCARFACEから成る。インタビュー中で3人のメンバーが語っているように、本作の制作は、今年2月に急逝したFEBBが中心的役割を果たした。アルバムは、C.J.CALが語る通りシャープで洒落ている。同時に力強い。Cracks Brothersとは一体どんなグループなのだろうか?
――Cracks Brothersはまず最初にどう始まったんですか?
DJ SCARFACE 「SPERBのソロ・アルバム『REPLACEMENT KILLA EP』(2011年)にレーベル名としてCracks Brothersが出たのが最初ですね。その頃まだ十代だったFEBBはクラブとかにも出入りしていて、TETRAD THE GANG OF FOURのパーティによく顔を出していた。同時期に中野のheavysick ZEROでイベントもオーガナイズしていて、そこにSPERBがゲストで呼ばれたんですよね。その時にFEBBがSPERBのバックDJをやったりして。FEBBがまだFla$hbackSをやる前ですね」
SPERB 「FEBBは人懐っこくて、かわいいとこもあって趣味も濃かったんです。俺がE-BLAZE(NYを拠点に活動するビートメイカー)のオケでラップしたときに、FEBBがすごく反応してきたんです。それでこいつ良いんじゃないかと思って、Cracks Brothersとしてやってみよう、というのがスタートですね」
DJ SCARFACE 「FEBBに出会った時は、彼はオーガナイザーでDJだった。ラップは練習していたとは思うんですけど、まだ人前ではやっていなかったんですよ。そんなFEBBに、SPERBが“FEBBは良い意味で生意気ところがあってラッパーに向いてるんじゃないか”って言ったんです。だから、FEBBがラップを始めるきっかけを与えたのはSPERBだったと思いますね。もちろんそれがなくてもFEBBはラップを始めていたとは思うけど、FEBBはSPERBのこと大好きだったと思います。FEBBって、自分がいま一番イケてると思うところに行く人だから」
SPERB 「だと嬉しいです。その流れで2011年に『Straight Rawlin'』を出したんです」
――C.J.CALさんはどのタイミングで合流しましたか?
C.J.CAL 「俺はTETRADやデミさん(NIPPS)にかわいがってもらっていて。デミさんから“SPERBがすごく良いラッパーを連れてきた”と聞いていたんです。それがFEBBで、『Straight Rawlin'』を聴かせてもらったんです。それから、デミさんにDJ SCARFACEを紹介されて、その流れで久々にSPERBとも会って、そのままCracks Brothersとしてラップするようになった感じですね」
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――やはり、Cracks Brothersの背景には、TETRAD THE GANG OF FOURがある、と。
DJ SCARFACE 「大きいですね。他にもFEBBはDJ Hellen KellerのミックスCDとかを聴いて、その影響で初めて自分でソウルのミックスを作ったりしてましたから」
――FEBBは、ファースト・アルバム『THE SEASON』を出した時のAmebreakのインタビューで「THE SEXORCISTのヤングって言われてる」と語っていますね。
DJ SCARFACE 「そういう意識はあったと思いますね」
――なるほど。SPERBさんはかつてNIPPSさんと同じ服屋で働いていたそうですね。
SPERB 「そうですね。自分は25歳ぐらいから本気でラップをやろうとしたんです。デミさんに“自分はラップをやろうと思ってるんです”と言ってそこから始まった。宇田川町近辺のラッパーってことでB.D.と出会って、VIKNは同じ出身だった。そして、TETRADでやることになったんです。だから、その流れの中にいますね」
C.J.CAL 「自分は名古屋から東京に出てきたのが23、4歳で、そこからちゃんとラップを始めた感じですね。その頃に、TETRADの『SPY GAME』(2010年)とSPERBの『REPLACEMENT KILLA EP』を聴いて、“ラップってこうすればいいんだ!”って一発で理解できた。そこからリリックを書き始めたら自分のラップも満足いくのができるようになって。周りのメンツはカッコイイ人が多くて、ヒップホップはこういうノリなんだなって全部吸収していった。Cracks Brothersに関して言えば、聴いてる音楽はそれぞれバラバラでも、カッコイイと思うラッパーが共通していたりするんですよ。例えばクイーンズだったらProdigyで、西海岸だったらKuraptだよね、とか。そういう音楽とかラップを聴いたりしながら、Cracks Brothersのノリが自然に身についていった」
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――『03』はいつ頃から作り始めたんですか?
DJ SCARFACE 「去年の7月ぐらいからですね。FEBBがSPERBにアルバムを作りたいと言っていたのもきっかけにあるんですけど、MANTLEさんが最近出したアナログ『MANTLE EP5“CORE OF THE UNDERGROUND XIII”』にROBERTA CRACK(NIPPS)と一緒にCracks Brothersがフィーチャリングされた〈BEAM ME UP SCHOTTY〉って曲があるんです。その曲のレコーディングで久しぶりにみんなで集まったのもきっかけでしたね」
SPERB 「そうですね。MANTLEさんがそういうきっかけを作ってくれた。FEBBが“じゃあ、自分作ります”ってトラックを作って、その中からみんなで選んで、レコーディングに入った。183rd(NYのブロンクスを拠点に活動する、SMOKE DZAなどにもビートを提供するビートメイカー)のトラックをゲットして持ってきたのもFEBBだった」
――ということは、FEBBが主導という感じでしたか?
C.J.CAL 「役割はそれぞれあったと思います。FEBBは、トラックとビートを投げてきましたね」
DJ SCARFACE 「レコーディング始めたのは去年の7月ぐらいからだったんですが、みんなのスケジュールがなかなか合わないこともあり、1人でスタジオに入ることもあれば、2人の時もあったりで、入れる人からヴォーカル録りを進めていった」
SPERB 「アルバムを作っていくなかで、こういうトラックやビートが必要だとか、こうしたら全体のイメージやバランスが良くなるんじゃないか?などは自分が伝えて、それに対してFEBBは積極的にやってくれました」
――なるほど。FEBBのビートが大半を占める中、1曲目のビートはDJ SCARFACEさんが制作しています。グループ内でのDJ SCARFACEの役割はどういうところにありますか?
DJ SCARFACE 「でもあのトラックのドラムの部分は、〈DANCE IN AN ANGEL〉からサンプリングして作りました」
C.J.CAL 「俺とかはラップを書いて録ることしかできないですけど、DJ SCARFACEは根回しとか……」
DJ SCARFACE 「根回しって!(笑)」
SPERB 「こういう言葉を使うところがCracks Brothersっぽさです(笑)」
C.J.CAL 「今回のジャケットのディレクションもDJ SCARFACEだったし」
SPERB 「DJ SCARFACEはCracks Brothersの代表ですね。トップです。DJ SCARFACEがいなかったら、俺はもう……」
DJ SCARFACE 「考えがまとまってねえじゃねえか!(笑)」
C.J.CAL 「CRACKS BORTHERSの4人が2年間ぐらい会わなかった時も、その間をつないどいてくれたのは、DJ SCARFACEなのは間違いないです」
DJ SCARFACE 「誰も言うこと聞かないですけどね(笑)」
SPERB 「一番年上でみんなDJ SCARFACEに甘えちゃうんですよ」
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――それは間違いなく代表ですね(笑)。アルバムに関して言うと、トラックのヴァリエーションが豊富で面白いですよね。「U OUGHTA FUCKIN KNOW」のようなちょっとロックっぽいサンプリングを基調としたトラックがあったり、「DANCE IN AN ANGEL」みたいなアーバンでメロウな曲もあります。全体の流れ、構成も考え抜かれていると感じました。
DJ SCARFACE 「そうですね。アルバムとして飛ばさずに聴けるようになっているはずです。そこはSPERBが決めました」
――たしかに。例えば「SILENT TREATMENT」には驚きました。ディアンジェロのある曲のワン・ループですね。
DJ SCARFACE 「あの曲は自分も元々DJで良くかけていた曲で、このアルバムの中で唯一すごくブラック・ミュージックですよね。FEBBが持ってきた中であの手のトラックはあの曲だけだった」
SPERB 「そう、だから、いろんな挑戦をしたかったんですよね。普段ハウスとかのクラブ・ミュージックも聴いたりしてるし、そういう感覚も取り入れたかった。2曲目の〈DOWN WIT US〉とかは、そういう新しい挑戦をしたくて作った曲ですね」
――新しい挑戦という意味では、個人的には「NICE TIME」のFEBBのトラップ・ビートを聴くと、FEBBが常に変化して新しい挑戦をしようとしていたのが伝わってきました。すごくカッコイイですよね。
C.J.CAL 「たしか俺がトラップやりたいって言ったら、〈NICE TIME〉のビートを投げてきたんですよね。FEBBの新しいビートがきた!って俺はうれしくてモチベーションがあがりました。だから、FEBBにもっといろいろ作ってもらって聴きたかったなあって」
DJ SCARFACE 「FEBBが亡くなってしまったのはホント制作の途中だったんで。特別なアルバムになってしまいました。一度はもうアルバムどころの話じゃないだろうってなったんです。でも、FEBBが引っ張るぐらいの勢いで始まったことだし、FEBBがやりたかったことだから形にしよう、と。周りからもやった方がいいよって言われましたしね」
C.J.CAL 「だから、形にできて良かったです。FEBBのモチベーションと行動力がなかったらこのアルバムはできなかったんですよ。作り始めて10ヶ月ぐらいで出せることになりましたから。そういう作品ですね」
SPERB 「タイトルの『03』は、アルバムにそういう名前の曲名があるんですけど、FEBBが仮タイトルとして付けていたんですよ。それがそのままタイトルになった感じですね」
――なるほど。それこそ、リリックに関して言うと、「03」、それと「NATION IS LINK」にCracks Brothersとはなんぞや?!という主張が特に出ているのかなと聴きました。どうでしょうか?
C.J.CAL 「たしかに俺に関して言えば、“Cracks Brothersだー!”って全面に出しているのはその2曲かもしれないです。〈NATION IS LINK〉はFEBBがラップをするはずだったんですけど、スタジオで寝ちゃったから入ってない(笑)」
――ははは。C.J.CALさんが考える“Cracks Brothersっぽさ”ってなんだと思いますか?
C.J.CAL 「オシャレっす。シャープだけど薄くない。東京のヒップホップには黒さだったりハードさだったりを強調するものもあると思うんですけど、Cracks Brothersはそういう部分を特に強調するよりも、ただただカッコイイことだけをやりたいグループだと思いますね。余計な飾りをつけたくないってのがあると思うんです。そういう意味でシャープでオシャレなのかなって」
SPERB 「上手くまとめてくれてますね(笑)」
DJ SCARFACE 「Cracks Brothersはまだまだコアな人しか知らないと思うから、広まるといいなって」
取材・文 / 二木 信(2018年5月)
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