マンチェスターから世界へ羽ばたいた“2010年代UKジャズの先駆者” ゴーゴー・ペンギンのサウンド方法論

ゴーゴー・ペンギン   2018/08/15掲載
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 ブルーノートからデビューして2作目の『ア・ハムドラム・スター』では、また最高到達点を更新していたゴーゴー・ペンギン。エレクトロニック・ミュージックをピアノ・トリオで具現化するサウンドは、さらに完成度を増してアイディアも多彩になり、それらがよりデザインされていたのが印象的だった。
 今、UKではサウス・ロンドンを中心としたアシッド・ジャズ〜クラブ・ジャズ系譜のシーンが話題だが、シーンやコミュニティではなく、マンチェスターから突如出てきて真っ先に世界へと羽ばたいたゴーゴー・ペンギンは、2010年代のUKジャズの先駆者であり象徴と言ってもいいだろう。
 今回のインタビューでは演奏やパフォーマンスというより、彼らの作曲や録音における現在の方法論を聞き出した。クラシック音楽の影響など興味深いエピソードもあり。10月には来日公演としては初となるライヴハウス・ツアー、そして〈朝霧JAM 2018〉出演のために再来日する彼ら、あの緻密なサウンドはどうやって生まれてくるのだろう。
――以前、プログラミングでデモを用意してから曲を作り始めるって聞いたけど、『ア・ハムドラム・スター』でもそうですか?
ロブ・ターナー(ds)「今作は半分くらいがそのやり方かな」
クリス・アイリングワース(p)「メロディを考えるにはピアノのほうが楽だけど、曲のアイディアはプログラムして二人に渡したほうが便利だね」
――ライヴを観ていて、プログラミングで曲を作っているのに、サウンドはピアニスティックだし、ウッド・ベースらしいフレーズだし、その関係性が知りたいんです。
ロブ「たとえばコンピュータでピアノ、ベース、ドラムって感じで作ってしまうこともできるけど、その瞬間からみずから制約を設けてしまって、エキサイティングなものにならないんだ。だから、コンピュータにシンセでもアルペジオでもディレイでも、なんでも作ったものをブチこんで、音のパレットみたいにして描いていく。コンピュータはあくまでもイメージを入れたものなんだ。それが最終的にモノトーンの墨絵が出来上がることもあるよ」
GOGO PENGUIN
©Yvonne Schmedemann
――最初からそれぞれの楽器に振り分けられているわけではないんですね。
クリス「曲によって、かな。すべてヴォーカル・サンプルで、あとはベースを入れるだけってものもあるしね」
ロブ「いろんなパターンがあって、アプリから生まれるものもあれば、クリスのピアノを譜面に書いておいたものから生まれるものもある。ニックのベースをiPhoneに録音しておいたり、朝の2時に思いついて、とりあえずコンピュータに書き留めたりしたものもあるし。たくさんあるアイディアから、どれがエッセンスなのか曲を一旦"裸"にする作業が始まって、そこから生まれる場合もある。でも結局はそれを3人が一緒に演奏してひとつのものにするんだ」
クリス「たとえば〈ウィンドウ〉って曲は最初から自分のなかではオーガニックな曲で、エレクトリックな要素が少なめで、割とアコースティックになるってわかってたんだけど、あえてコンピュータで書いた。それはどの音を空間のどこに置くか頭の中のアイディアを具現化しやすいからなんだ。そこから出来た曲を生演奏で形にしていく。〈バルドー〉だったら、もっとヘヴィでエレクトリックなプロデュースされたサウンドにしたかったから、最初からコンピュータを使った。結果的には同じ作業なんだけど、曲を作る志向のプロセスは違う。スタートはすべて頭の中にあって、必要に応じてなにをどう使うかなんだよ」
――ところでゴーゴー・ペンギンの曲は誰がどの曲を作ったかわからない、すべてがゴーゴー・ペンギンの曲って感じですよね。
ロブ「自分たちでも誰が書いたか忘れちゃうんだよね(笑)」
クリス「自分が書いたものがそのまま曲になるっていうより、それぞれがプレイすることで曲が変わっていくんだ。たとえば〈リアクター〉では、ピアノとベースが同じラインを弾いてるんだけど、それぞれの演奏者の音色やアーティキュレーションによって音符としては同じなんだけど、別のものとして響くようになっている」
ニック・ブラッカ(b)「そうそう、みんなの手と頭で変えていくんだ。曲ってどんどん変わってくるし、今の曲も1年後には変わってるよ」
クリス「ひさしぶりにやる曲ってリミックスするみたいにゼロから作る感覚もあるしね。今作はそうでもないけど、前の2枚はすごく短い時間で作ったから、曲が出来たらその翌日にはスタジオに入って録音して、そしてすぐツアーに出てた。だから、ツアーで1年半くらいかけていろんなところを回っていると、曲がようやく“本来こうしたかった”って形になったりするんだよ」
ロブ「アルバムを作るときは完璧を目指さないといけない。でもライヴ・パフォーマンスはライヴならではのエネルギーにフォーカスできるし、ちょっとリスクを取れるから、どんどん変えていけるっていうのもあるよね」
――ところで、ライヴなんですが、1曲の中に何曲も入っているように曲が切り替わったり、即興演奏が入ったりするのに、きれいにバチっと決まってるんですけど、あれは曲を全部覚えているんですか? あるいは合図になるフレーズやアイコンタクトがあるんですか?
ロブ「リハのときにある程度決めて、あとはライヴで。その先はどうするかわからないままライヴに臨んだこともあるし、あるフレーズがキューになってるときもあるよ。一人だけ勝手にいっちゃって、二人で慌てたこともあるよね(笑)」
クリス「アイコンタクトやアクション、言葉できっかけを伝えることもあるけど、全員が音楽的に同じところに行くことが理想だよね。たどり着くこともあるし、いけないこともある。まだまだ100%ではないけど、そんなランダム性もいいと思う。即興の場合、限られた瞬間に3人が同じ思いでそこにいるわけで、ランダムだけど予定調和でもあるのがいいんじゃいかな」
――ライヴではディレイもあれば、人力ディレイのような演奏もありますよね。
ロブ「フィジカルに弾いて効果を出してるときもあれば、4人目のメンバーでもあるエンジニアのジョー・ライザーが調整してるくれてるときもある。彼がフロントの音をやってくれてるんだけど、ステージ上の自分たちはそのミックスが聴けないんだよね」
クリス「ちなみに〈レイヴン〉の冒頭のところは実際に弾いている。でも、ドラムのブレイクビーツ的なところのエフェクトはジョーがやってる。だいたい両方をミックスしてるよ」
――たとえば、そういう人力ディレイやプリペアード・ピアノは作曲の時点で曲に入ってるんですか?
クリス「〈バルドー〉はそうだね。〈プレイヤー〉もそう。これらはスタジオでのいろんな実験を経て生まれてる。ライヴでは、ピアノ弦にガムテープを貼ってミュートしてるんだ。以前、〈SMARRA〉のとき、手で押さえてたんだけど、それだと片手しか使えなくてね。本当はエイフェックス・ツインみたいなことをやりたいんだけど、セッティングに30分くらいかかるんだよ(笑)。だから今はガムテだね」
――最後に、これまでにジャズやロックやエレクトリック・ミュージックのことはよく聞かれると思いますが、クラシックの話を聞いてもいいですか?
ロブ「僕らの音楽は最初の頃のほうがジャズ・サウンドというか基本的にコードの数が多かったんだよね。それをどんどん削ぎ落としていったところがあるんだ」
クリス「クラシックってことになれば、1stアルバムの『FANFARES』。あのタイトル曲はリゲティからインスパイアされた部分が大きいんだ。僕はもともとクラシックを学んでいたからね。とくにリゲティの〈エチュード〉からは大きな影響を受けているよ。あの曲はなかなかうまく演奏できないクレイジーなリズムとタイム感なんだ」
――なるほど。
クリス「ピアニストとしては、ピアノにはせっかく88鍵あるし、クローズドに弾くよりオープンにパワー・コードを弾く演奏もしたくなるんだよね。音楽大学の先生に言われて興味深かったのは、ベートーヴェンを弾くときは、自分がオーケストラになったつもりで弾けってこと。ここはストリングスのパート、ここはブラスなんだって想像しながら弾くんだ。ピアノは管楽器と違って息を吹き込まない楽器だから、身体的にコネクトしてないので、気持ちのうえでオーケストラになるように演奏するというか。ゴーゴー・ペンギンでは、みんなが書いてきた曲をどう演奏するべきか、誰がどう弾くべきかを頭の中でオーケストラに置き換えるように考えるんだ」
GOGO PENGUIN
©Yvonne Schmedemann
――その流れでクラシックからの影響についても教えてください。
ロブ「僕はベンジャミン・ブリテンサティドビュッシーかな。あとは映画音楽の作曲家だと、ビル・ラッセルジョン・アダムスだね。彼らに共通してるものがあるとすればバイトーナル(復調)ってことかな」
――バイトーナルっていうのはすごくよくわかりますね。
クリス「僕もロブとかなり近いんだけど、彼があげてないものだと、ジェイムス・マクミラン、それからリゲティはもちろんだけど、武満徹からも影響を受けたね。武満は不協和音でありながらアグレッシヴじゃないというか、自然から影響を受けてクレヨン画のように鳥の声や寺院の鐘の音を表現していて、とてもナチュラルだよね。そこから影響を受けているんだ」
取材・文/柳樂光隆(2018年2月)
Live Schedule
■ゴーゴー・ペンギン ジャパン・ツアー
2018年10月3日(水)
東京 渋谷 CLUB QUATTRO
開場18:00 / 開演19:00
前売 6,800円(スタンディング / 税込 / 1ドリンク代別途)
※お問い合わせ: SMASH 03-3444-6751

2018年10月5日(金)
大阪 梅田 CLUB QUATTRO
開場18:00 / 開演19:00
前売 6,800円(スタンディング / 税込 / 1ドリンク代別途)
※お問い合わせ: SMASH WEST 06-6535-5569

■It's a beautiful day〜Camp in 朝霧JAM 2018
2018年10月6日(土) / 7日(日)
静岡 富士宮 富士山麓 朝霧アリーナ・ふもとっぱら
開場 10:00 / 開演 14:00
2日通し券 15,000円(税込 / キャンプ利用込み)
※お問い合わせ: asagirijam.jp
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