待望の3rd『ボーン・ディス・ウェイ』徹底分析とゲイ・カルチャーとの親密性にみる独自の魅力

レディー・ガガ   2011/05/26掲載
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 デビュー・アルバム『ザ・フェイム』とともに一大センセーションを巻き起こし、いまや世界でもっとも人気と影響力を兼ね備えたアーティストとなったレディー・ガガ。世界同時でリリースされた3rdアルバム『ボーン・ディス・ウェイ』も5月23日の発売直後より当然のように大ヒットを記録しています。ここでは、2011年最大の話題作になるであろう本作『ボーン・ディス・ウェイ』を徹底分析。また、彼女を語る上で欠かせないゲイ・カルチャーとのかかわり合いにもスポットを当てます。
新作『ボーン・ディス・ウェイ』徹底分析
文/妹沢奈美
 東日本大震災支援としてレディー・ガガが日本へ寄付した金額は、例の“Pray for Japan”のブレスレットの売り上げ150万ドルに個人としての150万ドルを加え、合計300万ドルにもおよんだという。それに先立って、2010年9月には米軍の同性愛者差別政策への反対をウェブなどを使って大掛かりに訴えたこともニュースになった。ガガは本当に“まっとう”な人だと、これらのエピソードを聞いて思う。

 思えば彼女はライヴで何度も人間の自由を祝福し、この空間でリトル・モンスター(※レディー・ガガのファンの呼称)は何にも制限されていないことを話していた。常識や制限の枠にとらわれることなく、他者の自由に敬意を払いながら自分らしさをまっとうするさまこそが、あのファッションだったりもする。『ボーン・ディス・ウェイ』(=これがあたしなんだから)というこの3rdも、1st『ザ・フェイム』と2nd『ザ・モンスター』で自分の欲望と欲求を突き詰めた彼女が、次はその先にある“だからあなたも自由なのよ”というブレのないメッセージと姿勢を伝えるような一枚だ。そしてこの人の一貫性は、戦略どうこうで可能なタイプのものじゃないとつくづく思う。

 全体を通して聴くと、過去2枚よりも“歌モノ”としてのメロディ・ラインが際立っている。それを畳みかけるような高揚感とともに形にしているからこそ、80年代のエピックな曲たちが持っていたヴァイブレーションをふと思い出す。とはいえ、そこはさすがガガ。リズムの刻み方やエレクトロニックな音色の使い方はむしろ現在の流行に左右されるというより、不思議な近未来感を漂わせる。一方で、「バッド・キッズ」の冒頭の歪んだギター・ラインをはじめ、随所にロック(しかも80年代のハード・ロック+ヘヴィ・メタルのごとき音色)とまでシンクロしてみせる箇所があるかと思えば、「ユー・アンド・アイ」のヴォーカルには、現在のソウル・シンガーとしてエイミー・ワインハウスと肩を並べる人はガガしかいない、と痛感する凄みも。アルバムのテーマ同様に、自己について再考し確立していく時期が1stと2ndだったとすれば、ここにいるガガは、聴く人のそれぞれの趣味がどうであれ、誰もが共通して求める音楽ならではの“エネルギー”の部分に焦点を当てたかのよう。しかも、聴く人を飲み込む自画自賛系パワーではなく、ここにあるのは背中を押し、それぞれが自分の足で立つための光を注ぎ込むようなエネルギーだ。

 常識や制限や枠があるからその中で何かをやる、というのがこれまでの社会通念だったとすれば、ガガの登場はまさしく“やりたいからやる”の真骨頂だった。そこには、自分がやりたいことはポップ・スターとして人々を元気づけること、という原点がある。だからこそ支持された。新作でも彼女は、あらためて自分が手本になるかのように、まっとうに、やりたいことを貫徹している。何かを否定したり、誰かと比べて自分を確立するのではなく、やりたいことへと一直線へ向かっている。そのまっとうさは、さまざまな価値観が崩壊した先でどう生きるかまで体現しているかのよう。スターの強さが、まぶしい。
ゲイ・カルチャーとの親密性にみる独自の魅力
 レディー・ガガの人気の一要素である奇抜なファッション性。誰にもマネできないそのファッションは、どこかドラァグ・クイーンを彷彿とさせる。かねてからゲイおよびそのカルチャーへの共感を表明し、同性愛者の人権擁護活動に熱心な彼女は、ゲイからも熱狂的な人気を呼んでいる。ここでは、“レディー・ガガとゲイ・カルチャーのかかわり合い”という視点で、アメリカのポップ・カルチャーへの造詣が深い長谷川町蔵さんと山崎まどかさんにガガの人気の秘密を語ってもらいました。
男と女をすっ飛ばしていきなりゲイまっしぐら!
長谷川町蔵 「レディー・ガガが何でゲイ・コミュニティで絶大な人気を誇っているのかっていうテーマで何か話してみろってことなんだけど……本当は当事者に語ってもらった方がいいと思うんだよね」
山崎まどか 「まあ、シーンの部外者の方がわかりやすく説明できるってところもあるんじゃないかしら。ガガ子の人気には私も興味津々ですよ!」
町蔵 「ガガ子って、何も呼び方を無理矢理ゲイ風にしなくても……。音楽面で言うと、ハイエナジーやハード・ハウスといったゲイ・クラブで昔から流行っていたダンス・ミュージックをうまく歌謡曲化している。ファッションも女性ファッションというより、ドラァグ・クイーンっぽい」
まどか 「でもそれはガガ子がパイオニアってわけじゃないでしょ? 彼女はニューヨーク育ちだけど、あそこ出身のポップ・アイドルって昔からアンダーグラウンドのゲイ・カルチャーにすごく影響を受けているから」
町蔵 「ブロンディデボラ・ハリーマドンナだね。ガガは彼女たちの正統な後継者なんだな」
まどか 「そう、だから本作のリード曲〈ボーン・ディス・ウェイ〉がマドンナの〈エクスプレス・ユアセルフ〉にそっくりなのには目をつぶらないと……!」
町蔵 「でもマドンナは〈ライク・ア・ヴァージン〉あたりまでは男子人気も高かった。〈パパ・ドント・プリーチ〉あたりで同性人気が強くなって、ゲイ人気が確立したのは〈ヴォーグ〉から。デビューからゲイ・アイコンになるまで7〜8年かかっている。彼女をお手本にしているブリトニー・スピアーズクリスティーナ・アギレラだって初期は男子ファンが多かった」
まどか 「ガガ子の場合、男と女をすっ飛ばしていきなりゲイまっしぐらだから。プロ・デビュー後の初お披露目ライヴは、LGBTマーケティング会社の会議室だったらしいよ」
町蔵 「ゲイの地位向上に関する運動にもかかわっている。米軍はゲイであることを公言すると入隊できないって法律があったんだけど、2010年12月に法律が改正されて入隊オッケーになった。あれは彼女の働きかけが大きい」
マイノリティへの共感は過去のイジメ体験も影響?
まどか 「マイノリティへの共感は、過去のイジメ体験にも原因があるのかもね」
町蔵 「彼女の父親はニュージャージー出身のブルーカラーで、一代で大金持ちになった叩き上げ。ブルース・スプリングスティーンの大ファンなんだ。だから本作でEストリート・バンドクラレンス・クレモンズがサックスを吹いているのは親孝行なんだよね」
まどか 「あの曲、歌い方までちょっとスプリングスティーンっぽい! 父親は娘のガガ子をパリス・ヒルトンと同じ名門私立校の聖心女子学院に善かれと思って入れたんだけど、案の定ものすごくいじめられたらしい。それで彼女は芸術系の高校に転校して、シンガー・ソングライターへの道を歩んでいくのよね」
町蔵 「その頃のライヴのビデオがネットで出回っているんだけど、ローラ・ニーロみたいなピアノ弾き語りの古典的なシンガー・ソングライターなんだよね」
まどか 「今のガガ子じゃない。ゲイに共感しようとする気持ちが強いあまり、変身していったのね」
町蔵 「マドンナは自分が気持ちいいからゲイ受けする音楽をやっているけど、ガガは必死。その生き急いでいるトゥーマッチな感じがゲイのみならず万人にウケてる。リスナーを共感ではなく圧倒させる。自然体のロックばかりが増えている今、彼女こそが真のロックンローラーだよ」
まどか 「“わたしは愛の意味を知らないからパーティとダンスについてしか歌わない”とか“わたしが十分に眠るのは死んだとき”とか名言も多い」
町蔵 「レディー・ガガの語源はクイーンのヒット曲〈レディオ・ガ・ガ〉だけど、フロントマンのフレディ・マーキュリーは、アフリカ生まれのインド人でゾロアスター教徒という誰も共感できない境遇に生まれたのを逆手にとって、全世界を圧倒しまくった人だった」
まどか 「彼もゲイよね。〈ユー・アンド・アイ〉ではクイーンのブライアン・メイがギターを弾いているけど、天国のフレディも本作を聴いたら“ガガ子、最高よ!”って喜んでくれるかもね」
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