特別対談:ピエール中野(凛として時雨)×吉田豪

凛として時雨   2011/09/30掲載
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 先ごろ初のドラム教則DVD&BOOK「Chaotic Vibes Drumming入門編 / 実践編」をリリースした凛として時雨のドラマー・ピエール中野。ここ最近は、凛として時雨での活動に加え、自身のイベント<ピエールナイト>を開催し、ヒップホップ・ユニット“玉筋クールJ太郎”、即興ユニット“CHAOTIC SPEED KING”の一員としても活動するなど、カオティックな活動を展開! 今回の対談では、そんなピエール中野が今、気になっているというプロ・インタビュアー / プロ書評家・吉田豪をゲストに迎え、Perfumeから杉Jまで、カオティックに盛り上がってもらいました。


「Perfumeの凄さは、現場の面白さを広めたところだと僕は解釈してるんです」(中野)
吉田豪監修「ライブアイドル入門」
吉田「最近すっかり中野さん=アイドル好きってイメージになってますよね?」
中野「そうなんですよ。実はそんなに詳しくもないんですけど……」
吉田「じゃあ、さっそくお近づきの印にプレゼントです!(※自身が監修したアイドル・コンピ『ライブアイドル入門』を渡す)」
中野「おお、ありがとうございます! この“ライブアイドル”っていう呼び方はアイドル・ファンの間で普通に流通してる言葉なんですか?」
吉田「徐々に浸透してきた言い換え語ですね。“地下アイドル”は差別用語なので」
『Chaotic Vibes Drumming 入門編』
中野「え! 差別語なんですか!」
吉田「“私たちは地下アイドルじゃない!”って人は山ほどいますからね。“ライブアイドル”とか“リアル系アイドル”とか、いろんな言い換え語があって」
中野「“リアル系アイドル”ですか?」
吉田「会えるから“リアル”っていう。じゃあ普通のアイドルはリアルじゃないのかって言いたくなりますけど(笑)」
中野「へ〜。いろいろあるんスね」
吉田「こないだ『ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル』ってラジオ番組に出たときにも話したんですけど、今、アイドルの楽曲は裾野が異常な広がり方をしてて。会場限定のCD-Rなのに異常にクオリティが高かったり。iTunesにも登録されてない曲が名曲だったり」
『Chaotic Vibes Drumming 実践編』
中野「そんなことになってるんですか(笑)。でも、アイドルの曲って結構いいものが多いですよね」
吉田「そうなんです。でも、Perfumeみたいに曲が良くてキャラも良くてちゃんと売れるっていうことは、まずないんですよ」
中野「ああ、なるほど」
吉田「中野さんといえば、Perfumeのガチヲタとしても有名なわけですが最初の入り口はどういうところだったんですか?」
中野「僕はもともとcapsuleが好きで。capsuleの音楽性がガラっと変わった瞬間があったじゃないですか」
吉田「ああ、ありましたね。ボクはcapsuleだと2nd、3rdアルバムくらいが好きなんですよ。」
中野「トイポップっぽい時期の。<東京喫茶>とか?」
吉田「いや、<東京喫茶>は全然好きじゃないです(笑)。1stは正直ヒドいと思ってて。で、2nd、3rdくらいが大好きだったんですけど、フロア対応のクラブ・ミュージックみたいになりすぎちゃってからは、そんなに……」
中野「急にバッキバキなサウンドになりましたもんね。僕はそれでさらに好きになって。 “最近のcapsule変わってきたね”って話を友達としてたら、“今、こういう人たちをプロデュースしてるよ”って Perfumeを教えてもらったんです。で、<コンピューターシティ>を聴いて、ライヴを観にいきたいなと思って。そのときアイドルには握手会っていうものがあるんだということを知って、友達に連れていってもらったんです」
吉田「ボクがPerfumeを好きになったのは、もっとピコピコしてた時代なんですよ。インディーズ1stシングルの<スウィートドーナッツ>でハマって。“この曲作ってるのは誰だろう?”って、中田ヤスタカを知って、capsule聴いて、“ヤベえ!”って」
中野「Perfumeからcapsuleを知ったんですね」
吉田「そうです。だからPerfumeには<スウィートドーナッツ>感を求めてたっていう(笑)。で、<モノクロームエフェクト>をリリースしたときに、TSUTAYAでお渡し会があったんですよ」
中野「お渡し会ですか?」
吉田「メンバーがCDを渡すだけの会です(笑)」
中野「はははは」
吉田「ボクのPerfume初現場はそれで。TSUTAYA新宿店だったんですけど、行ったら客が10人もいないぐらいで“うわ、どうしよう!”って。すごい居心地が悪くて」
中野「その時代のイベントって、たまに動画で上がってますよね」
吉田「お客さんいなくて困ってる感じの(笑)。地下系アイドルは基本そんな感じですよね。こないだツイッターでも動画を貼ったんですけど、下呂温泉アイドル、麻友美さんの<下呂っ娘☆きゅるん>っていうシングルがあって」
中野「下呂っ娘って(笑)。すごい響きですね」
吉田「その<下呂っ娘☆きゅるん>って曲を下呂市の下呂祭りで披露する動画があって。明らかに下呂重ねすぎだろっていう(笑)」
中野「それは狙ってやってるんですか?」
吉田「事務所は狙ってやってるんでしょうけど、本人は出身地だしプライドがあると思うんです」
中野「下呂市出身だから」
吉田「曲は意外とちゃんとしてるんですけど、明らかにふざけてるとしか思えない歌詞が付いてて。客がガラガラの中で、“♪ゲロゲロゲロ”とか客にコール&レスポンスを要求してるから、観てる方がツラくなっちゃう感じで(笑)。しかも、その動画をアップしてるのが本人だっていう」
「下呂っ娘☆きゅるん」麻友美
中野「しかし豪さんはよく見つけますね、そういうものを(笑)」
吉田「掘り出すとキリがない世界ですよ。さっきの話に戻りますけど、たしかにアイドルのイベントに行くのも最初は恥ずかしいですよね」
中野「どうしていいか分かんなくて、“なんて言ったらいいの?”って、思わず友達に聞きましたもん」
吉田「その瞬間に、いかにガッつけるかがテーマだったりもするんですけどね」
中野「慣れてるファンの方とか見てると面白いんですよね。何周もするし。それが最初は衝撃で。“え、あれCD買ってんの!?”って」
吉田「CDを買い足して何度も列に並ぶっていう」
中野「それで、“またお会いしましたね”とか喋ってて」
吉田「そうやって印象を強めることが重要ですからね」
中野「結構、衝撃の世界でした。僕は緊張して話せなかったですけど」
吉田「分かります。ボクも握手しない派なんですよ」
中野「握手しない派って、どういうことですか?」
吉田「インストア・イベントとかはしょっちゅう行くんですけど、ライヴを見るだけで握手はしないっていう」
中野「ああ、並ばないで。握手会に並んでる人を見てるのも楽しいですよね」
吉田東京女子流ってアイドル・ユニットがまだ小学生ぐらいだったころ、掟ポルシェが握手会にいくと、メンバーが握手しながら身体を半分引いてたんですよ(笑)。“なんか怖そうな人が来た!”って」
中野「掟さんは認知されてなかったんですか?」
吉田「そもそも、40過ぎの長髪の男がアイドルの握手会に来たら、確かに子供からしてみれば不安になりますよね(笑)。メンバーみんな半身なんですよ(笑)。掟さんからなるべく離れようとしてて。そういう光景を見てると楽しいですよ。子供は正直だなって(笑)」
中野「はははは」
吉田「東京女子流は、ボクも司会者として1回、野音で共演したことあるんですけど、そのときに“CD全部持ってて、イベントも何度も行ってますよ”って言ったら、まあ怪訝そうな顔されて(笑)」
中野「喜ばないんですか?」
吉田「“お父さんと同じくらいの年の仕事相手が何を言ってるの?”みたいな」
中野「“この人、油断できない!”って(笑)」
吉田「でも、2度目に会ったときには、ちょっとフレンドリーになって。バックステージで会ったら、シールをくれたんですよ」
中野「シール(笑)」
吉田「子供がシールくれたら、認められた感じがするっていう(笑)」
中野「でも、アイドルの現場って意外と知られてないじゃないですか」
吉田「行く人と行かない人ではっきり分かれてますからね」
中野「Perfumeの凄さは、現場の面白さを広めたところだと僕は解釈してるんですね」
吉田「それを行きやすい世界にしたというか」
中野「そうですね。行きやすいけど、結構ディープな人もいて。その世界を知れたっていうのは大きかったですね」
吉田「Perfumeの現場はカオスな時期がありましたからね。古参のヲタとお洒落な層が入り混じって」
中野「僕が最初に握手会に行ったときもそうでしたからね。ガチヲタの人もいれば、マキシマム ザ ホルモンとかライムスターのTシャツ着てる人とか、あとは中田さん流れで来たお洒落な女の子がいたり。“なんだ、ここは!?”って」
吉田「で、お洒落な人が古いヲタを差別してたりして(笑)」
中野「モメたりしてるところも何度か見ましたね。“なんだよ! 見てんじゃねえ”とか言って」
吉田「そういうカオスな時期を経てブレイクしていったわけですけど、今、ももいろクローバーZの現場も古参と新しい層が混ざっていて」
中野「ももクロも気になってるけど、まだライヴに行ったことなくて」
吉田「ももクロはまだ握手できるから、一回、握手会にいってみたらいいですよ」
中野「ちょっと行ってみます、ももクロ(笑)。……今日はこういう話でいいんですか?」
吉田「どんな話題でも大丈夫みたいです(笑)。X-JAPANおもしろ話でもなんでも付き合いますよ!」
「GACKTさんは自宅の地下に道場があって、吉田秀彦にも負けないって豪語してる人ですからね」(吉田)
中野「じゃあ、せっかくなんで、今、豪さんの中で一番喧嘩が強いバンドマンって誰になってるんですか? X-JAPAN でいえばYOSHIKIさんが有名ですけど」
吉田「毎回、聞かれるたびに違うことを答えるようにしてるんですよ。GACKTって答えることもあれば、大物デュオの●●●●●●●●●って答えるときもあったりで」
中野「●●●●●●●●●ですか!」
吉田「●●●●●●●●●最強説があるんですよ。ある筋から聞いたんですけど、広島出身なだけあって二人ともすごく強いらしいんですよね」
中野「意外ですね。GACKTさんは有名ですけど」
吉田「GACKTさんの噂は裏も取ってて。YOSHIKI最強説とGACKT最強説があったから、ふたりがユニット組むって聞いたときはテンションがすごい上がって。最強タッグじゃないですか」
中野「そうですね」
吉田「だから、GACKTさんに直接話を聞いたら、打ち合わせでも常に喧嘩腰らしくて。YOSHIKIさんがもう食事を済ませたっていうんで、GACKTさんだけ食べてたら、YOSHIKIさんも“ムカついた! 俺も食う! 負けたくない!”ってガンガン食い始めるっていう」
中野「お互い負けず嫌いで(笑)」
吉田「食う量でも負けたくないっていう(笑)。必ず戦いが始まるみたいで。ただ、喧嘩っ早いふたりだけど、ひとりが暴れるとひとりが止めるっていうシステムになってるから、いいらしいんですよね」
中野小室哲哉さんとYOSHIKIさんが一緒に買い物に行ったときも、“棚のここからここまで全部ちょうだい”って競い合ってたらしいですね」
吉田「ああ、アントニオ猪木方式で(笑)」
中野「で、支払いをするときに小室さんがブラックカードだったから、YOSHIKIさんがマネージャーに電話して“早くブラックカードに切り替えてよ!”って言ったっていう」
吉田「そういうエピソードを聞くと幻想が高まりますよね」
中野「いいですよね。いちいち負けず嫌いな感じとか」
吉田「いわゆる昔ながらのロック幻想みたいなものをちゃんと守ろうとしてるのってYOSHIKI、GACKTぐらいで止まってる気がして」
中野「すごく魅力的なんですけどね」
吉田「『HEY!HEY!HEY!』で控室の映像が映ったときに、GACKTさんがテーブル叩いて拳を鍛えてたりとか(笑)。シビれますよ」
中野「実際、GACKTさんがブレてる話とか聞いたことないですから」
吉田「裏話を聞いても全部キャラどおりなんですよね。バンドの合宿を沖縄でやって、毎回、走りこみとスパーリングをやるのは有名ですけど」
中野「こないだGACKTさんのバンドでドラムを担当されてる淳士さんと対談させていただいたんですけど、やっぱりその話は本当だって言ってました。それまで運動とか全然してこなかったガリガリのバンドマンがツアーが終わるころには何度も懸垂できるようになるって(笑)」
吉田「地元の人が大学の空手部の合宿かと思うくらいハードらしいですからね」
中野「普通の人じゃ付いてけないようなメニューをやるみたいですから。筋トレとか」
吉田「GACKTさんは自宅の地下に道場があって、吉田秀彦にも負けないって豪語してる人ですからね。“普通のルールでは負けるかもしれないけど、ルールなしなら勝てる”って(笑)」
中野「僕もそういう話を聞くのが好きで、各方面に聞いたりしてるんですけど、いろんな話を総合するとダイナマイト・トミーさんが最強らしいですね」
吉田「そうなんですよ。ボクもトミーさんにそのへんの話を聞いたら、“YOSHIKI最強説やGACKT最強説があるの? それって結局、草食動物の中の話でしょ”って言ってて(笑)。感動しましたよ、そのフレーズ」
中野「実際、その世代でデンジャラスな現場とか見てる人がいるわけじゃないですか。その人たちに話を聞くと、やっぱりトミーさんは最強だってみんな言ってて」
吉田「トミーさんから詳しく話は聞きましたけど、使えない話ばかりで(笑)。でも、やっぱり憧れますよね。まあ、そもそも自分が強くないからそういう話が好きだっていうのもあるんですけど」
中野「ああ、それはありますね」
吉田「中野さんも喧嘩とか全然しないタイプですよね?」
中野「しないです、しないです!」
吉田「中野さんの周辺で喧嘩が強い人とかいないんですか?」
中野「僕の周りではいないですねえ。共演した人でいえば、BRAHMANのTOSHI-LOWさんはめちゃくちゃ強いって噂ですよね」
吉田「ああ、実際に格闘技やってる人ですからね」
中野「フェスのバックヤードで棒術やってたんですよ、上半身裸で(笑)。TOSHI-LOWさんは見るからに強そうだなと思いましたけど」
吉田「バンドマン最強、調べてくださいよ」
中野「まずは●●●●●●●●●から(笑)」
吉田「本人に“喧嘩強いんですか?”って聞いて下さい(笑)」
中野「ヤですよ、そんな直球に(笑)。喧嘩売ってると思われるじゃないですか!」
吉田「“俺より強いんスか?”って(笑)」
中野「絶対アウトじゃないですか(笑)。無理です! そういえば、僕の周りでいうと、怒髪天増子直純さんも昔は相当怖かったみたいですね」
吉田「有名ですよね。地元の北海道時代はヤバい話しかないですから。町を歩いてて、すれ違う人を次から次に殴ってたとか(笑)」
中野「ああ、そんな感じの話を聞きました(笑)。『爆裂エレキングダム!!』って番組でご一緒させてもらってたんですけど、スポーツチャンバラをする回があって、ミュージシャン全員入り乱れてチャンバラをしようって流れになったんですけど、増子さんはスタートした瞬間にササッて下がって壁に背中を付けて戦い始めたんですよ」
吉田「ああ、背後に回られないために(笑)」
中野「この人、明らかに喧嘩慣れしてるなと思って(笑)。最後はきっちり優勝してたし」
吉田「実戦経験があると違いますね(笑)」
中野「そういうところを普段見せないんで、ゾッとしました」
吉田「普段は腰の低い人ですもんね。ボク、初めて会ったとき“『人間コク宝』読んだよ! ファンの人から貰ったんだけど、これは俺のためみたいな本だよ!”って大絶賛してくれて」
中野「いい人ですよね。でも酒は死ぬほど弱い(笑)。ビール一杯飲んだだけでベロベロになっちゃうっていう」
吉田「そういう人を見てるとどう思います?」
中野「羨ましいしかないですよ(笑)。ただただ憧れます。絶対に自分はなれないんで。そういう人をいっぱい知ったりとか見たりして、こうやって話したりしてると面白いじゃないですか」
吉田「それを仕事にしてるのがボクみたいな人間なんですけど(笑)」
中野「めちゃくちゃ羨ましいです」
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