リトル・クリーチャーズ   2010/12/15掲載
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 4週連続でお届けしているリトル・クリーチャーズの20周年ヒストリー企画『The Story Of Little Creatures』。第3回目となる今回は、メンバーそれぞれの多岐にわたるソロ・ワークスについて。94年に結成されたダブル・フェイマス青柳栗原が参加)を筆頭に、多数のバンド、プロジェクトを立ち上げて活発な音楽活動を展開してきた彼ら。それら一連の動きがリトル・クリーチャーズにもたらした影響とは?



ダブル・フェイマスLIVE@下北沢ZOO(93年)
――リトル・クリーチャーズといえば、メンバーそれぞれのプロジェクトやソロが多岐にわたっていることでも知られていますが、最初にスタートしたのは、青柳さん、栗原さんが参加したエスペラント音楽集団、ダブル・フェイマスですよね。
 栗原 「そうですね。ダブル・フェイマスは93年3月から94年4月にかけて下北沢のクラブ、ZOO(※のちのスリッツ)でやっていたマンスリー・パーティ<Brilliant Colours>から始まったんです。最初は青柳と栗林(慧)の2人によるウクレレ・デュオだったんですけど、フェイマスっていうメーカーのウクレレを2本使ってたから、ダブル・フェイマスっていう名前を付けて、メンバーが増えていったっていう」
ダブル・フェイマス
(1stアルバム『Esperanto』発表時/98年)
――青柳さんは07年に脱退したものの、ダブル・フェイマスは現在までに5枚のアルバムをコンスタントにリリースしています。一方、同じく青柳さん、栗原さんは95年にMUSIC IN ELEVATORというユニットで『YELLOW SEEDS』というアルバムも発表されましたよね。
 栗原 「うちの母親は振り付け家なんですけど、そのモダン・バレエの作品にライヴで音を付けたんですね。で、せっかくライヴをやったので、それを作品にしたくなったんですよ。いってみれば、映画音楽的なニュアンスというか、音を聴いて視覚イメージが浮かんでくるものを作ろうよってことで、『YELLOW SEEDS』では録音機材を持って教会でアコーディオンとギターを録ったり、スタジオに運んでいってパーカッションを録ったしながら作り込んでいきましたね」
リトル・クリーチャーズ ベスト・アルバム
『Radio Collective』(99年)
――そして、99年にリトル・クリーチャーズがベスト・アルバム『Radio Collective』リリース後、2000年に自身のレーベル、CHORDIARY設立の前後から3人の個人活動が活発化していきます。
 栗原 「CHORDIARY設立がひとつのきっかけになって、いろんなプロジェクトが動き出せるようになったんだと思います。正人もPort Of Notesのサポートが結構忙しくなっていったんじゃない?」
 鈴木 「だったんだっけ? UAと仕事をするようになったのも2000年だもんね」
青柳拓次
(ソロ・アルバム『たであい』発表時/07年)
――栗原さんはロック色の強いトリオ・グループ、ノイズ・オン・トラッシュ、青柳さんはドラムを担当した3人組のPONOIにランチ・フォー・イヤー、ソロ・プロジェクトのKAMA AINA、正人さんはUAPort Of Notesのサポートなど、実に精力的な活動でしたよね。
 青柳 「思いつきやちょっとしたアイディアを膨らませてCDが出せるようになった頃というか、ソリッドなスタンスの活動だったんで、動きやすかったんですよね」
青柳拓次 1stソロ・アルバム
『たであい』(07年)
――そして99年以降は3人それぞれが活動しながら、何年かおきにリトル・クリーチャーズの作品がリリースされるというスタイルの活動に移行していくわけですが、3人のなかで個々でやりたいこととLittle Creaturesの活動はなるべく分けようと思っていたんですか?
 青柳 「そこは分けてましたね。あと、僕がやってたKAMA AINAは、高田漣くんや伊藤ゴローさんだったり、その時々で共演者が変わりつつ、『タイムレス・メロディ』と『海から見たニッポン』という2本の映画でサウンド・トラックを担当したり、仕事が来たら作っていたところはあるんですけど(笑)、作品はその時に思っていたことを記録した日記的なところがありますね」
青柳拓次 2ndソロ・アルバム
『まわし飲み』(10年)
――KAMA AINAとして活動しながら、青柳さんは07年の『たであい』、そして今年リリースの『まわしのみ』と、2枚のソロ・アルバムをリリースされていますが、日本語で歌詞を書くなど、日本的だったり、アジア的な音楽世界へ向かっていますよね。
 青柳 「そうですね。正人がアメリカで大リーガー級のミュージシャンと出会ったように、僕もいろんな音楽を聴いたり、いろんな国へ行ったりするなかで、そういう凄い音楽家と出会って、そこで自分なりに何ができるんだろうなって考えるようになったんです。そういう経験を通じて、器であったり、民謡であったり、日本的なものが粋に見えてきたこともあるし、朗読だったり、歌詞とは別の流れで言葉に向かう表現のベクトルも生まれて。日本の音楽で自分にフィットするものがなかなか見つからなかったので、音楽が好きな人のための邦楽、西洋のものとは少し距離を置いた音楽も作りたくなったんです」
 栗原 「あと、ソロだけじゃなく、ダブル・フェイマスも継続的に活動していたしね。ダブル・フェイマスでも作品を残していくとなったら、当然練習も必要になってくるので、リトル・クリーチャーズと取り組み方は違えど、がっつり向き合っていたし」
ノイズ・オン・トラッシュ
(アルバム『FIN』発表時/99年)
――ダブル・フェイマスとしても活動しつつ、栗原さんはノイズ・オン・トラッシュとして、99年に『FIN』『LAUGH』を2枚リリースしているほか、1年に複数枚の作品を発表されることが多いですよね。
 栗原 「もともと、ノイズ・オン・トラッシュは路上から出てきたバンドなんですよ。電池で動くアンプを使って、音質も気にせず、どこででも演奏できる機動力をフルに活用して。作品に関しては、まとめて録ったものを振り分けて、一気に出すことが多かったですし、毎月連続リリースしたり、動く時期は一気に忙しくなるっていう(笑)」
 青柳 「僕の場合も思いついたときの瞬発力が大事というか。だから、1枚だけで終わったユニットも多かったし、ある時期にぎゅっと作品を作っていた印象はありますね」
ノイズ・オン・トラッシュ
アルバム『FIN』(99年)
ノイズ・オン・トラッシュ
アルバム『LAUGH』(99年)
――そして、栗原さんはJUJU KNEIPPやSpiral Experienceといったプロジェクトでブレイク前のEGO-WRAPPIN'中納良恵さんといち早くコラボレーションを行なっていますが、彼女と出会ったきっかけは?
 栗原 「大阪でやったPort Of Notesのライヴにドラムで付いていったとき、『His choice of shoes is ill!』を出したばかりだったEGO-WRAPPIN'の2人が遊びにきてくれて。アルバム聴いたら、すごくいい声だったし、その後、連絡を取るようになったら、“今度、ソロを作りたいので、ドラムやってくれませんか”ってことで、それが発展して3人編成のJUJU KNEIPPになったんです。まぁ、その後、良恵はEGO-WRAPPIN'が忙しくなったんで、何本かライヴをやったままになっちゃったんですけど、2007年に彼女が『ソレイユ』っていうソロ・アルバムを作るにあたって、俺と青柳に声がかかって、2人で参加したんですけどね」



――一方の正人さんはベース・プレイヤーとして、UA、Port Of Notes以外でも、高橋幸宏さんに大貫妙子さん、原田知世さん、小泉今日子さん、安藤裕子さん、大橋トリオなどなど、手がけたアーティストは相当な数ですよ。
 鈴木 「自分の場合、腰が重いので、曲提供もせず、気楽に呼ばれたところで演奏していた感じですよね(笑)」
――といいつつ、BONNIE PINKのライヴではバンマスを務めていらっしゃいますし、何千人かのオーディエンスを前にひとつひとつのお仕事が濃厚ですよね。
 鈴木 「そうやって、いろんな方とお仕事させていただいているので、みんないろんな考えで音楽をやってるんだなって、音楽を幅広く見られるようになったところはあると思います」
鈴木正人ソロ・アルバム
『UNFIXED MUSIC』(06年)
sighboat
(アルバム『marvel』発表時/10年)
――さらに正人さんは2006年の初ソロ作『UNFIXED MUSIC』と菊地成孔ダブ・セクステットへの参加でジャズ寄りの活動をしながら、内田也哉子さん、渡邊琢磨さんとのユニット、sighboatでは今年、2枚目のアルバム『marvel』をリリースされましたよね。
 鈴木 「ソロはせっかくだから自分の好きな音楽をやってみようと思って作ったんですけど、芳垣安洋さんや外山明さんだったり、ちょうどその頃、知り合ったミュージシャンの方々がエクスペリメンタルなことをずっとやってきた人たちで、自分にとって新鮮だったこともありますね。あと、リトル・クリーチャーズの中では僕が一番プレイヤー志向なんですよ。そういう意味ではベーシストっていう意識はありますけど、ここ最近はそこまでプレイヤー然とせずにトータルで音楽を考えたいなと思っていて」


sighboat
1stアルバム『sighboat』(05年)
sighboat
2ndアルバム『marvel』(10年)
 栗原 「そういう意味でいえば、sighboatは正人にとってリトル・クリーチャーズ以外で初めて組んだバンドだもんね」
 鈴木 「そうだね。でも、sighboatは最初、也哉子ちゃんのソロを作るつもりで集まって。でも、彼女がバンドをやりたいってことでバンドになったんですけど、やってみたら面白かったんで、じゃあ、2枚目を作ろうかってことになったんですよ。sighboatに関しては、(渡邊)琢磨とも付き合いが長いし、気楽に取り組みつつ、意識してポップスを作っている感じですね」
――そうした多岐にわたる個々の活動を行なう中で得たことは何だったと思いますか?
 栗原 「それこそ、00年以前だったと思うんですけど、青柳と“これからはライヴが重要になってくる”って話をしていたんですけど、CDが売れなくなってきている今の状況を思えば、まさにその通りだったなって。だから、それぞれの活動を通じて、いいライヴができるようにしたいっていう意識は強くなったんじゃないかなって」
――リトル・クリーチャーズのようなメジャー・レコード会社での活動を行なう一方で、それぞれの活動を通じてフットワークの軽さと現場のライヴ感を吸収している、と。
 栗原 「そうですね。リトル・クリーチャーズがやってる900人、1000人くらいのライヴと、すぐ目の前に聴衆がいるライヴは状況とか空気感が違うんですよね。だから、2000年以降、特に『Night People』以降のリトル・クリーチャーズはそういうライヴ感をどう体感してもらうかを考えるようになったんですけど、それは個々の活動を経たひとつの成果だと思いますね」
取材・文/小野田雄(2010年11月)
※最終回となる次回は12月22日更新予定です。




<LITTLE CREATURES 20th Anniversary LIVE>
●日時:2010年12月17日(金)
●会場:ラフォーレミュージアム六本木
●開場 / 開演 18:00 / 19:00
●料金:¥3,900【サンキュー!!】(前売/自由席/整理番号付)
【チケット取扱】
チケットぴあ 0570-02-9999(P:117-084)
ローソンチケット 0570-08-4003(L:77334) 
イープラス
※客席が出演者を360°囲むセンターステージで実施
※お問い合せ:SMASH 03-3444-6751

■リトル・クリーチャーズ オフィシャル・サイト
http://www.tone.jp/artists/littlecreatures/


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