ライヴ盤『疾風怒濤〜人間椅子ライブ!ライブ!!』発売記念対談 和嶋慎治(人間椅子)×みうらじゅん(イラストレーター)

人間椅子   2010/12/28掲載
はてなブックマークに追加
 バンド結成以来、芥川龍之介や江戸川乱歩の世界を彷彿とさせる禍々しくも重厚なロック・サウンドを長きにわたり追及してきた人間椅子。昨今は日本を代表するストーナー・ロック・バンドとしてヨーロッパを中心に海外からも高い評価を受けている彼らが活動21年目にして初のライヴ盤『疾風怒濤〜人間椅子ライブ!ライブ!!』を発表! それを祝して特別対談をセッティング。バンドの中核を担うギタリストの和嶋慎治氏と、『イカ天』時代からの盟友である、みうらじゅん氏(なお、人間椅子は、高田文夫、せんとくん、根本敬笑福亭鶴光と並び08年の『第11回みうらじゅん賞』も受賞!)との対談を通じて、日本のロック・シーンで唯一無二の存在感を放つ人間椅子のディープな魅力に迫ります。


「自分が書く歌詞の世界にどんどん和嶋くんが近づいてるよね。久々に会ったときに、根本敬さん言うところの“イイ顔オヤジ”になったなって」(みうら)
──おふたりの出会いは、やはり『イカ天』(※『三宅裕司のいかすバンド天国』。アマチュア・バンドが出場しバンド・ブームに火をつけた80年代後期の人気深夜番組)ですか。
 みうらじゅん(以下、みうら)「そうですね(※みうらは自身のバンド“大島渚”で出演)。じゃなきゃ、なかなか青森と京都の人が知り合わないでしょ(笑)」
 和嶋慎治(以下、和嶋)「毎週のチャンピオンとは別に人気投票があって、投票上位に入った人たちの特番があったんです。みうらさんのいらした“大島渚”とは、そこで一緒になったんですよ」
 みうら「あとTHE NEWSね……といってもジャニーズのNEWSとは違う、女性バンドだけど(笑)。僕、当時ヤマハの<イーストウェスト>って大会の審査員やってたんですよ。そこに結成して何ヵ月のTHE NEWSが出たんです。すごくカッコよくて自分の点を全部あげて、最終的に彼女たちは女子部門のグランプリを獲ったんだけど、受賞のトロフィーを渡そうと思ったらもう会場にいないんです。バイトがあるって(笑)」
──賞よりもバイト優先で帰っちゃったと(笑)。
 みうら「それ凄いでしょ(笑)。そのとき、僕は審査員やってる自分が嫌になってね。で、こっそりTHE NEWSのライヴを観にいったりしてたんです。そのうちに『イカ天』が始まったら第1回目にTHE NEWSも出てたし、生放送でいきなりパンツ脱ぐバンドの人もいてさ(笑)。それを見て、“ノー・フューチャーな道を選んでオレはこの道を選んだのに最近守りに入ってるな”って思ったんですよ。それで高校以来でしたが、バンド組んで『イカ天』に出たんです。そこで審査員じゃなく、和嶋くんたちと同じバンド側の人間という立場で知り合えたのがとてもうれしくてね」
 和嶋「同じような匂いの人たちは、自然と対バンしたり仲間になってましたね」
 みうら「一緒によくイベントやって、売り上げは全部飲んじゃったね(笑)。当時、僕が名古屋で生放送のテレビ番組やってたんで、和嶋くんやremote池田貴族にも出てもらったり、貴族と和嶋くんとオレとでシーモンキーズっていう、ストッキング被った覆面バンドやったり(笑)。よく家にも来てたよね」
──結構、密な付き合いだったんですね。
 和嶋「最初の数年間はかなり密でしたね。みうらさんを青森にご招待して、ねぷた祭り見にいったり、青森の大仏を見にいったり、夜の鍛冶町で朝まで飲みましたね」
 みうら「当時メチャ飲んでたよね。人間椅子にとって、ふさわしくない街もいったりさ(笑)」
 和嶋「六本木もよくいきましたね(笑)」
 みうら「それは当時つきあってたオネーチャンが店にいたから(笑)。あと、ぼったくりにもあったね(笑)。店の奥の方から“助けてください!”って和嶋くんの叫び声が聞こえてきたの覚えてるなー(笑)。あとさ……(あまりにもディープすぎる話題のため割愛)。まあゲイ・カップルみたいだったよね(笑)。今だから言えるけど、家から『イカ天』に、いたずらファックス送ったりもしたよね」
 和嶋「(笑)。もう時効ですよね(笑)」
──アハハハ、ヒドいですね(笑)。でも、『イカ天』はすごいパワーでしたよね。こんなバンドがいるんだって思いながら毎週観てましたよ。
 みうら「人間椅子は、ネズミ男のカッコのメンバーがいたりさ(※ベースの鈴木研一)。当時、僕は30歳くらいだったけど、もう一度ノー・フューチャー気分に戻れたのはとてもよかった。でも、あの番組は賛否両論あったけど、やっぱり両方ないとブームにならないですからね。それに、若いバンド・マンの人生をとことん狂わせた番組でしたから」
 和嶋「狂いましたね(笑)。どんなバンドも人気出ちゃって、みんな会社辞めてましたもん。でもあの番組出てよかったと思うんです。あんな経験できなかったと思うから。人生変わるって誰でも経験できることではないし」
 みうら「いきなり武道館出たり、それは狂いますよ(笑)。で、ブーム去るときはすーっと去ったもんね」
──ただ、『イカ天』は、人間椅子をはじめ、BEGINや、リトル・クリーチャーズブランキー・ジェット・シティとか、いいバンドもたくさん輩出しましたね。で、みうらさんと人間椅子の繋がりはその後も続いたと。
 みうら「そうですね。人間椅子のライヴにも何度かゲストで出してもらったり、あと『とんまつりJAPAN』って本を出したときに作曲してもらったり、<君は千手観音>って曲も一緒に作ったよね」
 和嶋「はい。途切れることなく付き合いはありましたね」
──では、21年の活動を経て、初のライヴ盤+DVD『疾風怒濤〜人間椅子ライブ!ライブ!!』を発表した経緯を聞かせてください。
 和嶋「僕らオールド・ロック好きだから、レッド・ツェッペリンディープ・パープルのライヴ盤を聴くとあまりに凄すぎて、よほどいい演奏じゃないとライヴ盤が出せなかったんです。そんなこんなで、かれこれ20年過ぎちゃって。数年ほど前からライヴのクオリティが上がってきた手応えもあったんで、ボチボチ録れるかなって。音もあまり現代風にしたくなくて、オールド・ロックの手触りを残すために、ほとんど差し替えもしてないんです」
 みうら「DVD付きなんて、人間椅子からしたら、ものすごく新しいことしてるじゃないですか(笑)」
 和嶋「はい(笑)」
──みうらさんから見た、人間椅子の魅力って何だと思います?
 みうら「やっぱり人間椅子は、昔からブレがないよね。世界観がずっとひとつだし。でも、サウンドには変遷があるじゃない。T.レックス入ってた時代とかさ。宇宙人のカッコしてた時代も面白かったな」
 和嶋「若干迷走しつつも、それが僕らの歩みなんだろうなと思います。20年やってる中では、いろいろありましたよ」
 みうら「人間椅子って、進歩はガンコなほどしてないけど、進化はしてるんだよね。ギターも断然うまくなってるもんね」
 和嶋「表現の幅は広がってますね」
 みうら「でも、ブレがないのはいいですよ。ベースのケンちゃんに“いつも一緒だよね”って言ったら“うれしいっす!”って。普通怒るとこだよね(笑)。でも、それが人間椅子なんだ」
 和嶋「このライヴ・アルバムには、デビュー前の曲から去年の曲まで入ってるけど全然違和感がないんです。<鉄格子黙示録>なんか10代の頃に作った曲だし。だからほんと変わってないんだなって自分でも思いました」
 みうら「自分が書く歌詞の世界にどんどん和嶋くんが近づいてる。根本敬さんも描いてるマンガに自分が近づいてるでしょ。同じですよ。和嶋くんも久々に会ったときに、イイ顔オヤジになったなって。この風貌がいいもんね」
──作品とご自身が近づいている感覚はありますか?
 和嶋「それはありますね。暗い曲も書きつつ、シビアなメッセージも書くんですけど、それは本当に思ってることだし、そうありたいと思って書くから、曲に自分が近づいていくんです」
 みうら「ロックの理想系だよね。生活も近づいてますよ。ほら、アパートで下の部屋の人が死んでるのを発見したりさ」
──えええ! そんなことがあったんですか?
 和嶋「はい」
 みうら「ね、ちゃんと選ばれた道を行くんですよ。宝くじ1,000万は当たらないけど、死体は発見するから(笑)」
 和嶋「神の采配っていうか、こういう立場に置かれるんだなって思うときはありますね。“まだまだ貧乏しなさい”っていわれてるような(笑)」
 みうら「人間椅子は本気ですから。一昨年、勝手に観光協会で、ご当地ソングを作って渋谷AXで2日間ライヴをやったんですけど、そのとき青森の曲を人間椅子に演奏してもらったんです。そうしたら演奏が本気すぎて、お客さんがビックリしてるんですよ。いや、カッコいい。ふざけたイベントだから出る側も観る側もふざけて来てるのに。本気だったのは、ジャガーさんと人間椅子だけだったね(笑)」
──千葉の英雄と青森の代表だけだったと(笑)。
 和嶋「いやー、オレら本気ですね(笑)」


「東京に恨みはないですけど(笑)、現実ってこんなもんじゃないだろうっていうことを言いたくて。それを言えるのがロックだと思ってたんです」(和嶋)




 みうら「やっぱりね、いい歳こいた人が本気出してると怖いんだよ。それに、ケンちゃんも、今は丸坊主で白塗りとかわけ分からないのもスゴイ」
 和嶋「オレもよく分からないです(笑)。でも、オレら基本、気味悪いっていうのはありますね」
 みうら「やりすぎなんだよね、いつも。自分たちで気がついてないんだと思うよ、変だってことに(笑)」
──ブックレットの写真を見ても、確実に普通のロック・バンドではないですよね。
 みうら「(ブックレットをめくりながら)これなんて、葬式で坊主が酔ってる絵ですよ(笑)。紆余曲折あった末、今はバンドの描き出す世界観が故郷の青森に戻ってる気がするんだ。やっぱり中央に対する恨みつらみがあるんですよ、津軽の人って(笑)。怨霊ですよ。それを人間椅子には感じるな。『東日流外三郡誌(つがるそとさんぐんし)』じゃないけどさ、大和王朝以前に青森ありきって言い張ってる感じがするんだよね(笑)」
 和嶋「東京に恨みはないですけど(笑)、現実ってこんなもんじゃないだろうっていうことを言いたくて。それを言えるのがロックだと思ってたんです。その切り口がオレらにとっては津軽だったんです。音楽を作るのも、決して世の中と迎合するためにやってるわけじゃないから。普段、生活してて、どこかおかしい、自分はどうも上手くいかないと思ったことを表現してるんで」
 みうら「若い頃からこういうこと言ってるんだよ。おかしいでしょ(笑)。でも、そこがいいんだよね。このライヴ盤の曲タイトルでも、“天国”って言葉が出てくるの1曲だけで、あと全部、“地獄”だからね(笑)」
 和嶋「歌詞は、今の生活を反映させると、あまりに生々しくてリアリティが強すぎるから、地獄とかあの世の世界に落としこんで書いてるんです」
 みうら「昔の日本のロックにはこういう世界観があったよね。まだ寺山修司や江戸川乱歩の匂いがあった頃、土着ロックにグッときたけど、今のロックにはそういう世界観が全然なくなって。だから、人間椅子の作り出す世界観は、今となっては貴重だし、若い人にはソースがまったく分からないんじゃない(笑)」
 和嶋「若い人には全然分からないでしょうね(笑)」
──その得体の知れないパワーは、音楽から見事に伝わりますよ。
 みうら「曲のコンセプトにしても、人間椅子のメンバーは地獄にいる獄卒じゃなくて、むしろ地獄に落とされる側の人間だよね(笑)。教えてくれるんだよね、そういう世界があると」
 和嶋「自分たちは、“外国人から見た日本のロック・バンド”みたいなことをやりたいんですよ。だから外国人の格好はしたくないんですよ。外国人が見て“OH、オリエンタル!”ってことをやりたいんですよ」
 みうら「“OH、オリエンタル!”っていうより、“OH、アオモリ!”だね(笑)」
 和嶋「今YouTubeで僕らの映像を世界中で観ることができるみたいで、最近は外国人もライヴを観にくるんですよ。この間もドイツからニーナって女性がはるばる見にきてくれて。やっててよかったです」
 みうら「そりゃ当然、興味あるでしょ。自分が外国人なら見たいと思うよ。でも人間椅子って、いつか真の日本のロックとして注目を浴びる日がくると思うんだ。今の音楽シーンの中で、ものすごく浮いてるから」
 和嶋「ありがとうございます」
──今後も人間椅子をやり続けるしかないですね(笑)。
 和嶋「もちろん続けますよ。ここまで来ましたから」
 みうら「やめるときは死ぬときだよね。辞める理由がないでしょ」
 和嶋「ないです(キッパリ)」
 みうら「迷いがないよ(笑)。この人たち、続けるしか選択肢がないもん」
 和嶋「明らかにバンドをやってた方が楽しいんですよね。生き甲斐を感じます」
 みうら「活き活きしてるよね。困ったことになればなるほどいいと自分たちで思ってるんだもん(笑)。それに本人たちが、世の中的な“いいこと”を“いいこと”と思ってないしね」
 和嶋「思ってないですね(笑)。だから、そんなに売れなくてよかったなって思ってるんですよ」
 みうら「世の中の悪いこととか、ツイてないことが、いいことだと思ってる人たちだから、怖いもんなしなんだよね。不況になればなるほど強いと思う」
 和嶋「あ、不況ってまったく気にならないんです」
 みうら「ね(笑)。ちゃんと上手いことなってる、順風満帆ですよ(笑)。やっぱり自分がそういう運命を望んでるんだよね。じゃなきゃ、本気とか迫力とか出ないもん。だからって、オジー・オズボーンみたいにステージでコウモリ食ったりしないじゃん。演出をしない。それは自分たちそのものが演出だから(笑)。それがまた長いことやってる強さだよ。来てるお客は洗脳じゃなく汚染されてるよ、人間椅子に(笑)」
 和嶋「えー、そこまでじゃないでしょう!」
──(笑)。いやー、人間椅子の凄さが今日の対談で改めて分かりましたよ。
 みうら「和嶋くんは恐山がある本場の人だから。和嶋くんは自分を掘ってる感じがするな。どんどん下に掘って、カンって当たると地獄なんだよ(笑)。しかも西洋の地獄じゃなく、『往生要集』の地獄だからね。その世界観を音楽を通じて残していくのが人間椅子だから。ロックフェスとか出て、地獄を見せてやってよ」
 和嶋「実は、来年こそは出たいと思って頑張ってるんです」
 みうら「“こっちに本物がいるぞ!”って外タレをビビらせてやってよ。本当、こんなバンド世界にたった一組なんだからさ」
取材・文/土屋恵介(2010年12月)
撮影/相澤心也


【和嶋慎治・ナカジマノブ参加ライヴ情報】
<K.O.G.A COVER NIGHT 2010>

2010年12月29日(水)@下北沢clubQUE
Open 18:00/Start 18:30
前売¥2,500/当日¥2,800(1Drink別)
出演:華吹雪 ...and more

華吹雪 are
●水戸華之介(vo、3-10chain/アンジー)
●和嶋慎治(g、人間椅子)、
●内田雄一郎(b、3-10chain/筋肉少女帯)
●ナカジマノブ(ds、人間椅子)

※お問い合せ:下北沢clubQUE 03-3412-9979

■人間椅子 オフィシャル・ブログ http://ningenisu.exblog.jp/

■人間椅子 オフィシャル・サイト http://ningen-isu.com/
※ 掲載情報に間違い、不足がございますか?
└ 間違い、不足等がございましたら、こちらからお知らせください。
※ 当サイトに掲載している記事や情報はご提供可能です。
└ ニュースやレビュー等の記事、あるいはCD・DVD等のカタログ情報、いずれもご提供可能です。
   詳しくはこちらをご覧ください。
[インタビュー] akiko 間や響きの美学に満ちた静寂の世界――ピアニスト林正樹とのコラボ・アルバム『spectrum』[インタビュー] エレクトリック・マイルスの現代版を標榜するSelim Slive Elementzがライヴ録音の新作『VOICE』を発表
[インタビュー] 不安や焦りや苦しみをポジティヴに変換していく 杏沙子、初のシングルを発表[インタビュー] 赤頬思春期 アコースティックでファッショナブル 噂の2人組が日本デビュー
[インタビュー] 聴く人を架空のリゾートにご案内――Pictured Resortの新作が誘う日常からのエスケープ[インタビュー] THA BLUE HERB、全30曲入り2枚組の大作でたどり着いた孤高の境地
[インタビュー] Moonの待望の新作『Tenderly』は、スタンダードからグリーン・デイまで歌うカヴァー集[インタビュー] 小坂忠、再発された70年代のアルバム『CHEW KOSAKA SINGS』と『モーニング』を語る
[インタビュー] Suchmos、WONKなどのコーラスを手がけてきた大坂朋子がSolmana名義でデビュー[インタビュー] 話題の公演“100チェロ”を東京で行なうジョヴァンニ・ソッリマが代表作を語る
[インタビュー] 山中千尋、ブルーノートとペトルチアーニへの思いを胸に、新作でジャズのキラキラした魅力を伝える[インタビュー] ハロプロ スッペシャ〜ル特別版 卒業直前! 宮崎由加(Juice=Juice)ロング・インタビュー
https://www.cdjournal.com/main/special/showa_shonen/798/f
e-onkyo musicではじめる ハイカラ ハイレゾ生活
Kaede 深夜のつぶやき
新譜情報
弊社サイトでは、CD、DVD、楽曲ダウンロード、グッズの販売は行っておりません。
JASRAC許諾番号:9009376005Y31015