鈴木祥子 2枚組ベスト・アルバム『SHO-CO-JOURNEY』を語る(前編)

鈴木祥子   2007/06/08掲載
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 2月に始まったライヴ・シリーズ2007“sho-co-motion”も好評のなか、『SHO-CO-JOURNEY』と付けられた鈴木祥子の最新ベスト盤がソニー・ミュージック ダイレクトから発売される。これまでに『Harvest』(92年)、『あたしの旅路』(99年)、 『friends,lovers,my journey home―鈴木祥子ベスト―』(2002年)、『Shoko Suzuki Best Collection』(2005年)と計4枚のベスト盤があるが、『SHO-CO-JOURNEY』は、デビュー・アルバム『VIRIDIAN』(88年)から最新作『鈴木祥子』(2006年)まで、エピック〜ワーナー〜ワンダーグラウンドという3レーベルの全アルバムから彼女自身が選曲した2枚組のベスト・アルバムだ。といっても、内容は、いわゆるシングル・ヒット曲を集めたものではない。アルバム初収録となる「モノクロームの夏」や、「Get Back」と「どこにもかえらない」の“2007 edit version”、「言葉」「Swallow」「道」のライヴ・ヴァージョン、さらに新曲「東京で生まれた女」のライヴ・ヴァージョンなどのレア音源もまじえ、鈴木祥子の約20年の音楽活動をゆるやかにたどることができる全28曲が、最新デジタル・マスタリングで収録されている。
(2回に分けて掲載します。後編はこちら



身近な人の意見と“ウキウキ感”で選んだ[DISC 1]


――まず、今回のベスト盤の選曲は、どんな感じで決めていったんですか。
「友人や母親の意見を聞いて決めたんです。特に母はデビュー当時からわたしのアルバムを聴いてくれているので、そういう身近でずっと見てくれているような人たちが“わかりやすい”とか“つかみやすい”と言ってくれた曲を中心に収録しました。自分で選ぶと主観的で重い方向に行きがちなので(笑)、とにかくわかりやすいところに主眼を置いて選びました」

――そうやって他人の意見を求めながらも、自分なりに納得した選曲になったと。
「そうですね。でも3曲目の〈Get Back〉は最初は入れようとは思っていなかったけど、あらためて聴いたら爽やかでいいなあって。自分では未熟だと思っていたんですよ、今までは。でも、こんなに年数が経っちゃうと、“未熟”もかわいいな、みたいな気持ちにだんだんなってきて、受け入れられるというか……。若かったなとか未熟だったなという気持ちはあるけど、でも曲として楽しいとかウキウキするとか――そうですね、今回のディスク1は、そのウキウキ感を特に大事にして選んだような感じです。ロマンチックでウキウキするっていう」


ちょうどいい距離をとれるような曲を


――エピック、ワーナー、ワンダーグラウンドという3つのレーベルを横断して、これまでのすべてのキャリアをこうしてまとめるには2枚組でも明らかに足りないと思いますが、各アルバムからの選曲のバランスは難しかったんじゃないですか。
「あんまり内面的にしたくなかったんですよ。去年出したアルバム(『鈴木祥子』)は、内面的でストイックなところにいちばん針が振れてた時期の作品だったので、このベストには1曲しか入っていないんです。ワーナーのときの曲も内面的なんだけど、そのなかでもロマンチックだったり、ちょっと元気が出るとか、曲としてストーリー性があってつかみやすいとか、そういう基準で選びました。〈恋は夢の花〉とかもそうですし、自分のことを書くよりは、ある情景とか、あるラヴ・ストーリーみたいな曲を主体に。軽く聴けるほうがいいなと思ったんですよ。あんまり深刻にならずに通して聴けて、だけど“読後感”のようなものが残る。そのぐらいの距離感がいいなと。そう、距離感の問題ですね。距離がちょうどいいという感じ。人間関係もそうなんですけど、音楽でも、突き詰めすぎたり掘り下げすぎたりすることが多いので、このベスト盤にはちょうどいい距離をとれるような曲が入ってるんじゃないかと思うんですよね」

――通して聴くと、サウンドはエピック初期の佐橋佳幸さんからエピック後期〜ワーナー時代の菅原弘明さんへと流れていき、その後もどんどん変わっていってますね。
「あたし、ほんと他力本願な人間で(笑)、人にすごく影響されるんですよね。そのときにいっしょにやってる人にいつもものすごく影響されてやっているんですけど、でも、なんて言うのかな、どんどん骨組みだけになっていくというか、どんどんシンプルに、全部作りこまないというか、構築しない方向にいってるとは思いましたね。時が経つにしたがって、何か足りない、ぐらいの音のほうが自分としては面白いと感じるようになっていったんですよ。すべてを言わないほうが伝わるときもある、というか」

――ディスク2の最後にはライヴ・ヴァージョンがまとまって入っていますが。
「新曲の〈東京で生まれた女〉とか、歌がすごく気に入っているテイクとかを、主観的に選びました。〈言葉〉と〈Swallow〉はカーネーションとやった2005年のときのテイクで、〈東京で生まれた女〉と〈道〉は去年ソロでやった渋谷のO-EASTでの演奏です」


理解と共感がいちばん大事


――「Swallow」はスタジオ版とあわせて2ヴァージョン入っていますね。
「23歳ぐらいのときに歌っているものと、いま40代になって歌っているものとを比較して聴いたときに、相変わらずおんなじ歌を歌っているけど、自分の受け止め方がぜんぜん違っているんですよ。恋人同士が4月に別れて違う道を歩んでいく、みたいな内容なんですが、23歳のときのテイクは、完成されたオケがあって、完成された美しい歌詞をもらって、その“お話”を自分がどこまで表現できるか、ということがテーマだったんです。でも今は、そういう歌詞の内容が実感としてすごくわかるというか、もっと自分に引きつけて歌っているんですよね。旅する、ってこととか、別れる、こととか、ひとつひとつが自分のなかでより生々しくなってる。そういうことを知らないでやってた良さもあるので、どっちがいいってことじゃないけど、その比較が面白いなと思ったんです」

――自分で作詞していない曲をいま歌うっていうことについて何か思うことはありますか。
「カヴァーをやるときも、歌詞の内容がいちばん大事なんです。曲調より歌詞。大塚愛でもニール・ヤングでもなんでもそうなんですけど、歌詞がいま自分の思っていることにぴったり合ってたり、経験してきたことと照らし合わせたときに“あ、この気持ちすごくわかる”っていうような理解と共感があったりとか、そういうところが大事だと思っています。でも、思い返すと、一時期は、昔の歌は恥ずかしいと思っていたんですよね。なんか幼いし、自分で歌詞を書いてないし、完成された世界に自分がパッとはまっただけで、ほんとうに自分の表現になってなかったんじゃないかとか、そういうコムズカしいことを考えて……(笑)。でも、今はどれも“自分”ですね。誰の歌詞であったとしても、歌ってたときのテイクが未熟で幼かったとしても、どれも共感できる。それはやっぱり年数が経ったから、客観的に見れるようになったっていうことと、ちょっとだけですけど、懐が、器が、でかくなって(笑)……は、いないんですけど、ゆるす、受け入れるっていうことができるようになったってことかもしれません」
(後編はこちら))


取材・文/藤本国彦(2007年5月)



鈴木祥子 LIVE SCHEDULE
6月10日 京都磔磔 
 鈴木祥子×山本精一
6月17日 京都磔磔 
 鈴木祥子×豊田道倫
お問い合わせ : 磔磔(075)351-1321

7月14日 京都拾得 
鈴木祥子×JB (渕上純子(ふちがみとふなと& bikke(ラブジョイ))
7月21日 京都拾得 
鈴木祥子×勝井祐二@浴衣de♪デュオ
(問:拾得[Tel]075-841-1691)

8月16日 南青山MANDA-LA
“SHO-CO-JOURNEYへの道@A,B面でたしかめて”
(問:[Tel]03-5474-0411)

11月11日 東京・品川ステラボール
鈴木祥子ライヴシリーズ2007 EX "SHO-CO-JOURNEY" 〜20周年への道〜
(問:ディスクガレージ[Tel]03-5436-9600)
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