【The Orb interview】型にとらわれない、自由な表現を目指して――会話をするように、ふたりだけが作ることのできるハッピーな“音のゴッタ煮”

ジ・オーブ   2009/12/15掲載
はてなブックマークに追加
【The Orb interview】型にとらわれない、自由な表現を目指して――会話をするように、ふたりだけが作ることのできるハッピーな“音のゴッタ煮”
  英国のエレクトロニク・ミュージックの重鎮であり、アンビエント・テクノという概念を作り出したデュオ、ジ・オーブ(The Orb)が新作『バグダット・バッテリーズ』を引っさげ、来日を果たした。音楽の楽しさ、自由さをたっぷりと詰め込んだショウの素晴らしさは、今年度屈指の内容だった。従って彼らのやる音楽に禁忌は一切ない。多種多様な音楽の断片をサンプルしたりループしたり、時には現実音なども交え、さながら音のゴッタ煮状態。なにが飛び出してくるかわからないお祭り状態だ。だが最高に心地よくハッピーで、難解なところなどまるでないのである。ベテランらしい余裕たっぷりのプレイは、テクノやアンビエント、エレクトロニク・ミュージックといった枠組みを超える、真にヴァーサタイルでエクレクティックな、つまりは音楽そのもの可能性の提示だったとも言えるだろう。インタビューに応じてくれたリーダーのアレックス・パターソンと相棒のトーマス・フェルマンは、ともに80年代ニューウェイヴの時代から活躍する強者だ。


――素晴らしいライヴでした。ライヴをやる際に心がけていることは?
アレックス・パターソン(以下、アレックス)「ぼくらのライヴに、これといって決めごとはない。トーマスがテーマとなるビートやフレーズを奏でて、ぼくがその場のノリで即興的にさまざまな音を加えていく。ふたりでキャッチボールをしているようなものなんだ。そういう“音による会話”を楽しむのが、唯一心がけていることかな」
――長いこと一緒にやって、マンネリ感などを感じたことはありませんか。
トーマス・フェルマン(以下トーマス)「長いこと一緒にやってるからお互いの性格や好みは熟知している。でもだからといって飽きたりマンネリになることはないよ。昨日のライヴでもお互いの出す音に驚かされた。ぼくらはオーブのほかにそれぞれ別のプロジェクトを運営している。そうしてお互いの活動の自由を認め合うと同時に、そこで得られた成果をオーブに還元するように心がけているんだ。組む相手によって違う自分が出てくるしね。そのコンビネーションがうまくいっているということだろうね」
――曲を作る際に、オーブとそれ以外を分けて考えるんですか。
アレックス「曲を作る段階でも、オーブとそれ以外を区別することはないね。なんでもありの姿勢でやってるから、このふたりが曲を作れば、それがオーブになるんだよ」






――なにより素晴らしいのが、音楽からふたりのフレンドリーで懐の深い人間性がうかがえることでした。茶目っ気たっぷりなステージでの振る舞いも含め、ただの無機的な電子音の順列組み合わせではない、血の通った温かい人間性を感じました。
トーマス「それはライヴの醍醐味だろうね。正直な話、ぼくらのパーソナリティやキャラクターが音楽をやる上で重要かどうかはわからない。でもぼくがステージでテーマを出して、それに対してアレックスが答えて……という会話から観客が何かを感じてくれるなら、それは喜ばしいことだ」
アレックス「そうしたふたりのコンビネーションは、レコーディングでも同じだよ。ぼくらの目指しているものはそこなんだ。意識はしないけど、ふたりのフィーリングが混ざり合って、化学反応がおきて新しいものが生まれる。実験的なんだけど、実験にとどまらないエモーショナルな境地を実現したいと常々思ってる。昨日のライヴではそれができたという手応えがあったんだ」
――あなた方の音楽は実験的な要素もあり、またエンタテインメントとしても成立する親しみやすさもある。あなた方にとって音楽は自己表現なのか、それともエンタテインメントなんでしょうか。
アレックス「それはどちらとも言えないし、どちらかに決めたくもないな。音のやりとりのような実験に没頭してしまうこともあるし、お客が盛り上がってくれれば、もっと楽しんでほしいとも思う。ぼくらはなにか特定の目的や、音のカタチを目指して音楽をやってるんじゃない。ぼくらは今オペラ風の音楽に挑戦しようとしてるけど、それが目標とか理想の音楽というわけじゃない。ぼくはクラフトワークキャプテン・ビーフハートが大好きだけど、彼らのような音楽をやりたいわけじゃない。彼らみたいに型にとらわれない自由な表現を目指しているということなんだ」




取材・文/小野島 大(2009年11月)
最新 CDJ PUSH
※ 掲載情報に間違い、不足がございますか?
└ 間違い、不足等がございましたら、こちらからお知らせください。
※ 当サイトに掲載している記事や情報はご提供可能です。
└ ニュースやレビュー等の記事、あるいはCD・DVD等のカタログ情報、いずれもご提供可能です。
   詳しくはこちらをご覧ください。
[インタビュー] さらに成長をとげた2nd EPをリリース、鞘師里保[インタビュー] 和田彩花、全作詞とアートワークを手掛けたアルバム完成
[特集] 『マッカートニー 3,2,1』ポール・マッカートニーがこれまでの音楽活動をリック・ルービンと語るドキュメンタリー[インタビュー] デビュー20周年のジャズ・ヴォーカリスト、待望の新曲をリリース Shiho
[インタビュー] BeatleDNA、ビートルズへの思いがあふれる人気シリーズが完結 制作担当者が語る実現までの笑いと涙[インタビュー] 西から上がるロックンロール新時代の狼煙、THE PERRY
[インタビュー] 山中千尋、レコード・デビュー20周年を記念して、新録を含むバラード・ベスト・アルバムを発表[インタビュー] 佐藤浩市、キャリア初のヴォーカル・アルバムは豪華ゲストを迎えた無観客ライヴ
[インタビュー] 連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」のサントラを音楽担当の金子隆博が語る[インタビュー] こだわりがつまった完全セルフプロデュースEP、山村 響
[特集] ドキュメンタリー作品『ザ・ビートルズ:Get Back』を観た![インタビュー] ILL-BOSSTINO(THA BLUE HERB)、dj hondaとのジョイント・フルアルバムを発表
https://www.cdjournal.com/main/cdjpush/tamagawa-daifuku/2000000812
https://www.cdjournal.com/main/special/showa_shonen/798/f
e-onkyo musicではじめる ハイカラ ハイレゾ生活
Kaede 深夜のつぶやき
弊社サイトでは、CD、DVD、楽曲ダウンロード、グッズの販売は行っておりません。
JASRAC許諾番号:9009376005Y31015