【トロンボーン・ショーティ interview】ニューオーリンズからトロンボーンの使者現る!―ロックやファンクをのみ込んだ“ガンボ”な世界デビュー作

トロンボーン・ショーティ   2010/08/13掲載
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【トロンボーン・ショーティ interview】ニューオーリンズからトロンボーンの使者現る!―ロックやファンクをのみ込んだ“ガンボ”な世界デビュー作
 管楽器奏者の宝庫たるニューオーリンズが生んだ、怪傑かっとびトロンボーン奏者がトロンボーン・ショーティ(本名:トロイ・アンドリュース)だ。1986年生まれ、誰もがブライテスト・ホープと認める彼は、ついにメジャーからワールドワイドな新作『バッカタウン』をリリース。そして、その新作を携え、フジロックフェスティバルに出演(門外漢からも大好評であったよう)をした。以下は、フェス現地で行なった質疑応答である。



――今もニューオーリンズに住んでいるんですか?
 トロンボーン・ショーティ(以下、同)「うん。でも、ツアーが多いので、“ツアーに住んでいる”と言ったほうがいいかもね(笑)。だけど、俺のココロはいつもニューオーリンズにある。ニューオーリンズがなかったら、今の俺はないしね」
――どうして、トロンボーンを吹くようになったんでしょう? ウィントン・マルサリステレンス・ブランチャードニコラス・ペイトンクリスチャン・スコットといった秀でたトランペット奏者を送り出しているように、ニューオーリンズの花形楽器はまずトランペットであるように思えます。
 「俺は音楽に満ちあふれたトレメ地区で生まれ、小さい頃からコミュニティの中で楽器を教わって、現在があるんだ。それで、俺の場合は兄がすでにトランペットを吹いていた。だから、一緒にバンドをやるためには、別の楽器を吹くしかなかったわけさ。トロンボーンを手にしたのは4歳のとき。それ以降、俺はブラス・バンドで吹き続けてきている。もう生演奏とセカンド・ライン(注1)は生活の横にあるものさ」
――2007年にニューオーリンズに行っていろいろなライヴを観たことがあったんですが、そのとき感じたのは、“より派手でデカい音を出せる管楽器奏者が偉い”みたいな価値観がニューオーリンズにはあると感じたんですが。
 「まさしく、その通り!」
――それで、日本は今回が初めてになるんですか?
 「ああ、これまでも何度か話はあったんだけど、今回が初来日。バンドの面々ともども、とっても高揚しているよ」
――日本初の実演の場がフジロックという大きなロック・フェスなんですが、米英でもそういうフェス出演はしているんですか?
 「たくさん出ているよ。でも、観客の数なんか関係ない。とにかく、人の前で演奏するということに価値があるのであって、それを通して聴き手が俺の音楽に興味を持ってくれたなら最高さ」
――やはり、ライヴが自分の持ち味を出せる一番の場であると考えていますか?
 「うん。でも、ライヴだけではなく、テレビやラジオも重視している。まあ、ライヴは聴き手を魅了するにはてっとり早い手段だけど、CDだって負けちゃいないと思う」






――では、新作のことをお聞きします。ジェームス・ブラウンっぽいファンクもあればロックっぽいものもあるなど、とても幅の広い仕上がりになっていると思います。ながら、随所にニューオーリンズっぽさも息づいています。あなたとしては、あなたなりのニューオーリンズ・ミュージックを作っているという気持ちなんでしょうか。
 「自分の色が出た、ニューオーリンズで育った“俺の音楽”になっていると思う。まあ、“ガンボ”(同地周辺で愛されるごった煮スープ)だな。いろんなものが入っているけど、それは俺というフィルターを通した末のガンボなんだ」
――今作はメジャーからの発売ということで、より広い層に届くものにしたいと思ったりはしました?
 「そりゃあ、ね。ニューオーリンズの音楽にこだわっていない人でも、気分よく聴くことができるようなものにしたかった。でも、そうであっても、自分はなくさずきっちり残したつもりさ」
――アルバムの参加者と今回の来日メンバーは重なりますが、彼らはニューオーリンズの仲間なんですか。
 「うん、地元のアート・スクールがあって、そこで知り合った仲間たちさ」
――あなたは歌も歌っています。歌うこととトロンボーンを吹くことは、あなたの中では等価値にあるものなんでしょうか?
 「歌うというのは、昔から俺のパフォーマンスにあるもの。ルイ・アームストロングがそうであるようにね。僕はずっと歌ってもきているよ」
――アルバムにおけるゲストが興味深かったです。ある曲ではニューオーリンズの大御所アラン・トゥーサンを入れ、もう一方では広がりを代表させるかのようにレニー・クラヴィッツを迎えています。これは、あなたの音楽に対する姿勢を表わしていると思いました。
 「ありがとう。俺がレニーのバンドに入っているときにハリケーン・カトリーナ被災があった。だけど、俺は彼から得たギャラで家族の面倒を見ることができたわけで、彼に入ってもらうのは自然な流れだった。これからもいろんな人と絡んでみたい、スティーヴィー・ワンダーとかジェイ・Zとできたらいいな」
注1)ブラス・バンドを伴ったニューオーリンズの伝統的なパレード


取材・文/佐藤英輔(2010年7月)
トロンボーン・ショーティの紹介フィルム『Trombone Shorty reel 2010』
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