【ウーター・ヘメル】初セルフ・プロデュースで挑んだワールドワイド・デビュー作『ローエングリン』

ウーター・ヘメル   2011/11/22掲載
はてなブックマークに追加
【ウーター・ヘメル】初セルフ・プロデュースで挑んだワールドワイド・デビュー作『ローエングリン』
 オランダ出身のウーター・ヘメル。ジャズをベースにしたポップな音楽で日本でも人気が高い。2007年のデビュー以来、プロデューサーのベニー・シングスと組んでいたが、3枚目となる新作『ローエングリン』で初めて自身でプロデュース。さらにデッカとワールドワイドの契約を交わしたことで、初めて全世界でアルバムがリリースされることになった。音楽的にもすべてが生演奏と、さまざまな変化がある。そんな意欲作について聞いた。
――新作にはさまざまな変化が見られますよね。まずはデッカとの契約。
 ウーター・ヘメル(以下同)「2009年にデッカのスタッフがオランダでのライヴを観に来てくれて、それで契約することになったんだ。メジャーのいい点は全世界で発売してもらえること。国ごとにレーベルを探すことは容易いことではないから。でも、オランダでは今まで通りにDOXと契約している。それがデッカとの契約条件だった」
――さらに初めてベニー・シングスがアルバムに関わっていない。これはどうして?
 「ベニーから“そろそろ自分でアルバムを作る時期がやってきたのでは?”と提案されたのが最初だった。僕らは一緒に仕事をしてきて本当に楽しかった。ベニーの提案に最初こそ戸惑いを覚えたけれど、でも、自分でもひとり歩きすべき時期がやってきたと思えたので、セルフ・プロデュースすることにしたんだ」
――実際に自分でプロデュースしてみていかがでしたか?
 「不安はあった。スタジオでは常に選択を迫られるから。ここではどの楽器を使うのか、とかね。曲作りをしている時もベニーの意見が聞きたいと思うことはあった。でも、気分は高揚したし、スタジオでバンドが演奏した1stテイクを聴いた時に“これはいける!!”という確信が持てたので、それからは自分がプロデュースする作品に誇りを持って邁進することができた」
――変化で言えば、もうひとつ。ピアニストがティエリー・カステルに変わりましたね。
 「彼のピアノはストーリーテリングで、繊細だけれど、表情豊かでいいですね。前任者のピーター(・デ・グラーフ)の脱退は、少なからずショックだったけれど、ティエリーとの出会いに救われた。彼はジャズの教育を受けているけれど、ショパンエディット・ピアフなども好きで、ミニマリストでもあり、繊細な感情表現ができるピアニスト。加えて曲も書けるので、実際に〈ローエングリン〉と〈リトル・ボーイ・ロスト〉の2曲を共作している。新しいメンバーの加入は、バンドに新鮮なエネルギーをもたらしてくれるから、さまざま面でいい効果があったと思う」
――すべてが生演奏。それは最初から意図したことですか。
 「ライヴ感覚をアルバムにもっと持ち込みたいとは思っていた。でも、それは結果そうなっただけで、僕の場合はとにかく曲作りを一番大切にしている。サウンドは後からついてくるもの。今回は、フランスにある両親の農場に向かい、敷地内にあるバンにこもって曲作りをしたんだ」
――ディキシーランド・ジャズ風の「タッチ・ザ・スターズ」から始まり、ケルティック風とか、サントラ風とか、すごく楽曲が多彩。これらすべてがそのバンで生まれたの?
 「そうなんだ。ピアノを持ち込み、歌詞とメロディができると、曲のタイトルを壁に貼り、その紙にトロンボーンとか、ルシンダ・ベル(back Vocal)のヴォーカルとか、浮かんできたアイディアを書き込み、作り上げていったんだ」
――前2作以上にバンドで作った作品という感じがします。それはすべてが生演奏ということもあると思いますが、レコーディングではどんな工夫があったのでしょうか。
 「過去2作では僕とベニーで完成させたデモ音源をバンドに聴かせて、こんな風に演奏して欲しいと指示していた。でも、今回は最初から“ここはどんな風に演奏したらいいと思うか”とバンドに意見を求めながら進めた。そこが大きな違いだと思う」
――最後にアルバム・タイトルの『ローエングリン』について教えてください。
 「もともとは僕が12歳まで過ごした街の通りの名前なんだ。“境界線はもうすぐ、瞬きすれば僕は消えてしまう〜”なんて歌詞を書いた後にネットで“ローエングリン(LOHENGRIN)”を検索していると、ワーグナーのオペラに同じタイトルの作品があり、しかも物語が僕の歌詞と重なる部分があった。偶然の一致であると同時に、僕の中で消えていくことは終わりではなく、新たな出発というイメージが強かったので、今回のアルバムにふさわしいタイトルだと思ったんだ。『ローエングリン』は、僕にとって新たな章の幕開けとなった作品だと思う」
取材・文/服部のり子(2011年11月)
最新 CDJ PUSH
※ 掲載情報に間違い、不足がございますか?
└ 間違い、不足等がございましたら、こちらからお知らせください。
※ 当サイトに掲載している記事や情報はご提供可能です。
└ ニュースやレビュー等の記事、あるいはCD・DVD等のカタログ情報、いずれもご提供可能です。
   詳しくはこちらをご覧ください。
[インタビュー] さらに成長をとげた2nd EPをリリース、鞘師里保[インタビュー] 和田彩花、全作詞とアートワークを手掛けたアルバム完成
[特集] 『マッカートニー 3,2,1』ポール・マッカートニーがこれまでの音楽活動をリック・ルービンと語るドキュメンタリー[インタビュー] デビュー20周年のジャズ・ヴォーカリスト、待望の新曲をリリース Shiho
[インタビュー] BeatleDNA、ビートルズへの思いがあふれる人気シリーズが完結 制作担当者が語る実現までの笑いと涙[インタビュー] 西から上がるロックンロール新時代の狼煙、THE PERRY
[インタビュー] 山中千尋、レコード・デビュー20周年を記念して、新録を含むバラード・ベスト・アルバムを発表[インタビュー] 佐藤浩市、キャリア初のヴォーカル・アルバムは豪華ゲストを迎えた無観客ライヴ
[インタビュー] 連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」のサントラを音楽担当の金子隆博が語る[インタビュー] こだわりがつまった完全セルフプロデュースEP、山村 響
[特集] ドキュメンタリー作品『ザ・ビートルズ:Get Back』を観た![インタビュー] ILL-BOSSTINO(THA BLUE HERB)、dj hondaとのジョイント・フルアルバムを発表
https://www.cdjournal.com/main/cdjpush/tamagawa-daifuku/2000000812
https://www.cdjournal.com/main/special/showa_shonen/798/f
e-onkyo musicではじめる ハイカラ ハイレゾ生活
Kaede 深夜のつぶやき
弊社サイトでは、CD、DVD、楽曲ダウンロード、グッズの販売は行っておりません。
JASRAC許諾番号:9009376005Y31015