思い出すのは些細なこと――新しい「美女と野獣」とアラン・メンケン30年の想い

アラン・メンケン   2017/05/18掲載
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1991年に公開されたディズニーの名作長編アニメーション映画『美女と野獣』が、実写映画「美女と野獣」としてカムバック。現代フェミニズムのニュー・アイコンとしても注目を浴びるエマ・ワトソンが演じるヒロイン“ベル”、VFXを駆使した壮麗な映像、アニメーション版ではセリーヌ・ディオンピーボ・ブライソンがデュエットした主題歌「ビューティー・アンド・ザ・ビースト〜美女と野獣」のアリアナ・グランデジョン・レジェンドによるカヴァーなど、現代的に生まれ変わった同作。オリジナル・スコアを手がけるのは、アニメーション版で〈アカデミー賞〉作曲賞と歌曲賞をダブル受賞している名匠アラン・メンケン。実写版のために、「ひそかな夢(For Evermore)」「デイズ・イン・ザ・サン 〜日差しをあびて〜(Days In The Sun)」、そしてセリーヌ・ディオンが歌う「時は永遠に(Our Song Lives On)」の3曲を新たに書き下ろしています。今回の“新しい”「美女と野獣」と、盟友にして稀代の作詞家、ハワード・アシュマンと共に作り上げた楽曲群の思い出について、メンケン氏に語っていただきました。
――ディズニーの「美女と野獣」はこれまで、オリジナルのアニメーション映画やミュージカルとして上映・上演されてきましたが、今回は実写の映画、しかも3Dの技術を用いていて、アニメーションとミュージカル、実写の境界線が薄く見える新しい作品になっています。上映環境のサウンドシステムも、オリジナルのアニメーションの時代と比べるとずっと音が良くなっていますよね。それによってメンケンさんの音楽もより煌びやかに聴けるようになったわけです。
 「より良い音質で届けられるのは嬉しいことですね!特にこの作品の場合は音のパニングを多用しているので、セパレーションが素晴らしく感じられるんですよ。そのお陰で、映画を観ていると音の中に自分が入り込んだような体験ができるようになりました。ただ、オーディオ技術は僕が向上させたわけではないから(笑)。僕の役割は曲を書くこと。皆さんに届けられるサウンドはスタッフの手によって作られているんです。だから、音響面に関して僕は得をしているということですね(笑)」
――今回、メンケンさんがご自身の“役割”として注力したのはどのような点でしょうか。
 「まず、ビル・コンドン監督にとって良いものを提供すること。新曲3曲がアニメーションよりも実写向きの曲であるということですね。物語の中の時代背景にしっかりと沿ったものとして感じられる音楽を作ることに力を注ぎました」
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――今回の「美女と野獣」は、エマ・ワトソンさんの演じるベルをはじめ、“現代”という時代も反映させた内容になっていると思います。そのあたりも意識した曲作りでもあるように感じました。
 「たしかに、ル・フウのキャラクターをはじめ、現代的と受け取れる要素が盛り込まれた作品になっていますよね。でも、音楽的な面でそこは全く意識しませんでした。努力したのは、18世紀のフランスを、よりリアルに感じさせること。もしかしたら、リアルだからこそ現代的だと思われたのかもしれないですね。常に考えているのは、現代的であるかどうかではなく、いかにタイムレスであるか、ということです」
――たしかに、すべてが新しくなっているからこそ、アニメーションの時代から変わらない、音楽の普遍的な魅力が際立っているとも感じました。
 「ありがとうございます!」
――しかし、変わった部分もいくつかあると思います。オリジナルのアニメーションと最も異なるのは、作詞家のハワード・アシュマンさんが音楽に携わっていらっしゃらないことです。
 「(言葉に詰まって)そうですね……。ご存知のように、彼はアニメーション版の制作の途中で立つこともままならなくなり、作品のヒットを知らないまま亡くなってしまいました。でも彼のことは、記憶として、大切な曲として、常に僕の心の中にあります」
――もしかしたらお話されたくないかもしれませんが、差し支えなければアシュマンさんとの「美女と野獣」について、思い出を聞かせてください。
 「……思い出すのはちょっとした瞬間ですね。ベルが“New, and a bit alarming”と歌う〈Something There〉で、彼は“alarming”のフレーズの歌い方にとても拘っていて、僕が当時アニメーション版の声優を務めたペイジ・オハラさんに“こういう風に歌って”と伝えたのを、今回の『美女と野獣』を手がけるにあたって思い出しました。彼はすでに咽喉周りの神経が侵されてしまっていたので、声があまり出せなかったんです。それで僕に擦れた声で“(バーブラ・)ストライサンド風だよ、ってペイジに伝えてね”って」
――今回、アニメーション版では使われなかった「強いぞガストン」の歌詞がフル・ヴァージョンになっているんですよね。
 「そうなんですよ。30年の時を経ても素晴らしい歌詞です。彼が作詞家としていかに優れていたかを、改めて非常に強く感じました」
――それはメンケンさんにとって、とても嬉しいことですね。
 「本当にそう思います」
取材・文・撮影 / 久保田千史(2017年3月)
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[あらすじ]
魔女によって野獣の姿に変えられた美しい王子。呪いを解く鍵は、魔法のバラの花びらが全て散る前に誰かを心から愛し、そして愛されること―。絶望のなか、彼はベルという女性に出会う。自分らしく生きながらも心に孤独を抱えるベル。はたして、その王子の運命を変えることができるか?

監督: ビル・コンドン
製作: デビッド・ホバーマン / トッド・リーバーマン
製作総指揮: ジェフリー・シルバー / トーマス・シューマッハ / ドン・ハーン
出演: エマ・ワトソン / ダン・スティーヴンス / ルーク・エヴァンズ / ケヴィン・クライン / ジョシュ・ギャッド / ユアン・マクレガー / スタンリー・トゥッチ / オードラ・マクドナルド / ググ・バサ=ロー / イアン・マッケラン / エマ・トンプソン ほか
音楽: アラン・メンケン


原題: Beauty and the Beast
製作年: 2017年
製作国: アメリカ
配給: ディズニー
上映時間: 130分
映倫区分: G

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