想像の余白を大事に――牧野由依、矢野博康を再びプロデューサーに迎えた新曲発表

牧野由依   2016/10/19掲載
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 2015年に迎えたデビュー10周年のアニバーサリー・イヤーの後も国内外でコンサート活動を展開するなど、アーティストとしてのキャリアを着実に重ねている牧野由依からニュー・シングルが届けられた。最新アルバム『タビノオト』にも参加した矢野博康を再びプロデューサーに迎えた本作は、壮大かつ神聖なイメージのバラード「What A Beautiful World」、ロマンティックな雰囲気が印象的なポップチューン「ウィークエンド・ランデヴー」の両A面。牧野由依の幅広い表現力が際立つ、充実のシングルに仕上がっている。
初回生産限定盤A
初回生産限定盤A
初回生産限定盤B
初回生産限定盤B
通常盤
通常盤
――ニュー・シングル「What A Beautiful World / ウィークエンド・ランデヴー」は矢野博康さんのプロデュース。矢野さんとタッグを組むのは『タビノオト』に続き2回目ですね。
 「はい。いまだから言える話ですけど、アルバムのときは若干、バタバタしていたところもあって。矢野さんからも“じっくり曲を作りたいね”と言ってもらっていたし、私としても“新しい曲、楽しみにしています!”という感じだったんですよね。矢野さんからデモ音源をいただくところから制作はスタートしたんですが、最初に聴かせていただいたのが〈What A Beautiful World〉だったんです。壮大さといい、煌びやかな雰囲気といい“これはメインを張れる楽曲だな”と思って。次に〈ウィークエンド・ランデヴー〉のもとになるデモを送っていただいて“ブラッシュアップしたら、更にすごい化け方をしそうだな”ということになり、最終的に両A面シングルになりました。これだけ対極にある2曲がシングルに入っているって、なかなかないなって思いますね」
――まず「What A Beautiful World」の制作に関して、矢野さんとはどんなやりとりがあったんですか?
 「矢野さんがおっしゃっていたのは、『ARIA』の世界観が合ってると思うよ、ということだったんですよね。あのイメージと踏襲しながら、いまの牧野由依が歌うとどうなるか?というところで作っていただいたのが〈What A Beautiful World〉じゃないかなって。テクニカル的にも難しい楽曲ですし、表現という点でもいろいろと考える必要がある楽曲で……言い方が正しいかわからないですけど、矢野さんから挑戦状をもらったような気持ちだったんですよ。“どうです? この曲、できます?”って(笑)。もちろん矢野さんはそんな言い方はしないですが、どう表現するかはすごく考えたし、私の中では挑むような気持ちがありましたね」
――確かに音域が広い曲ですよね。
 「そうなんです。矢野さんも“作ってるうちにこれくらいはイケるかなって、音域のレンジを広くしちゃった。はは”と仰っていて(笑)。しっかり声を張れば出る音だし、高いわけではないんですが、曲のイメージを考えると“歌い上げる楽曲ではないな”と思って。やわらかい雰囲気を持たせつつ、芯のある声であの高さを出すということですよね。その風みたいに心地よく聴いてもらえるように歌うことも意識して。ヴォーカルのディレクションも矢野さんにお願いしたんですけど、こんな私の話も親身になって聞いてくださって。制作の時間も長めに取ることが出来ましたし、細かくケアしていただきながら作れた楽曲ですね」
――「君といっしょなら / きっと 素敵なこと起きそう」というピュアな歌詞も、このメロディによく合ってますよね。
 「瑞々しいですよね。歌詞をまっすぐに捉えたら、男性と女性が思い出を振り返っているような内容だと思うんですが、“男性”“女性”というところで括ってしまったら、純粋なイメージに持っていけない気がして。だから、あえて中性的に捉えて歌ってるんですよ。ひとつのストーリーを語るような表現というか」
――歌うときに視点の置き方も大事なポイントだったと。
 「そうですね。歌詞を読んでみて、どういうふうに表現するのがいちばんいいのか考えて。そこはじっくり時間をかけました。逆に〈ウィークエンド・ランデヴー〉はどちらかというと直感的に歌って、それがすごく楽しかったんですよ」
――「ウィークエンド・ランデヴー」は矢野さんの個性が発揮されたポップ・チューンですよね。
 「矢野さんの楽曲をすべて知っているわけではないですが、私も“矢野さんの世界観が炸裂してるな!”って思いました。安直な言い方かもしれないですけど、聴いてるととっても元気になるんですよ。ウキウキするような感じもすごくあるし、歌うときも“このメロディと歌詞に素直に乗っかろう”と思って。その結果がこの曲です(笑)」
――この曲も恋愛がテーマだと思うんですが、具体的なことは描かれていなくて。だから余計にロマンティックに感じるのかもしれないですね。
 「うん、そうですね。80年代の音楽を彷彿とさせるのも、そういうところだと思うんですよ。リアリティのある言葉が並んでいるわけではなくて、わからない部分もあるんだけど、そこが聴いている人を惹きつけるというか。自分の経験に当てはめるというより、余白の部分にワクワクするという感じですよね」
――いまのJ-POPはリアルな状況を細かく説明するタイプの曲が多いから、「ウィークエンド・ランデヴー」のような楽曲はすごく際立って聴こえます。
 「私自身“まわりの人と一緒じゃつまらない”という育てられ方をした部分もありますからね(笑)。細かく決められるとイヤだなと思ってしまうし、歌詞に関しても説明的なものはあまり好きではないんです。いろいろ想像できたほうが楽しいというか……。そういう意味では、今回のシングルは2曲ともすごくいいなって思います。〈What A Beautiful World〉は“牧野由依というアーティストはこういう人です”ということを表していて、〈ウィークエンド・ランデヴー〉は矢野博康さんというアーティストに牧野由依が乗っかったらこうなりますという曲かなって」
――初回生産限定盤Aには、今年8月10日に行なわれた恵比寿ザ・ガーデンホールのピアノ弾き語り公演から「アムリタ」が収録されています。
 「2012年の春に〈ゆらり弾き語りの旅〉という弾き語りのツアーをやらせてもらったことがあって。比較的コンパクトなサイズの会場で5都市を回ったんですが、そのときにいらしてくれたお客様から“また弾き語りが聴きたいです”という声をいただいていたので、今年の夏の公演は弾き語りにしてみようと思って」
――以前「デビュー当初は“私がピアノを弾いてもいいんだろうか?”という葛藤があった」というコメントもされていましたが、最近はどうですか?
 「そうですね……。確かにデビューした頃は弾き語りが苦手だったんですよ(笑)。でも、それから10年の中でいろいろな場面でピアノを弾かせてもらう機会があって。ピアノだけのコンサートだったり、岩井俊二さんの映画(『Love Letter』)の劇伴といった経験から、いま“ピアノと私”ということを考えてみると“いてくれて安心できる存在だな”と思うんですよね。弾き語りのコンサートはもちろん緊張感もあるし、準備も大変なんですけど、やってみるとやっぱり楽しいので。夏のコンサートのときは弾き語りだけじゃなくて、ギター、ストリングス、ベースのみなさんにも参加してもらったんです。そのときは“仲間がいるっていいな”と思いましたけどね(笑)」
――デビュー曲の「アムリタ」を映像を収録したのはどうしてなんですか?
 「いちばん長く歌っている楽曲ですからね。ずっと聴いてくださってる方には“いまのコンサートではこういうふうに表現してます”ということを感じてもらえると思うし、最近、私の曲を聴き始めてくれた方には“コンサートではこんな感じでパフォーマンスしてます”ということを伝えられるかなって」
――10年以上経っても、まったく違和感なく歌えるのも素晴らしいことですよね。デビューから現在に至るまで、一貫した音楽性があるというか。
 「デビューのときから何となく意識していたのは、クラシカルな要素を残すこと、ピアノ、弦を入れること、あとは“恋愛の方向ばかりに行かない”ということだったんです。あまり生々しい恋愛ソングはやらないというか……。逆に〈ふわふわ♪〉という曲は、リアルで痛々しい恋愛をポップなサウンドの中で表現するというコンセプトだったんですけどね。基本的には先ほども言ったように、説明し過ぎるよりも余白がある曲のほうが好きなんですよ」
――いろんな解釈、捉え方ができる楽曲ということですよね。
 「そうですね。ただ、“自分の楽曲を純粋に聴けるときが来るんだろうか?”とも思うんです。タイアップのアニメ作品のイメージもありますからね。〈アムリタ〉も“ツバサ”(〈アムリタ〉は映画『劇場版ツバサ・クロニクル 鳥カゴの国の姫君』エンディング主題歌)の映像がすごく印象に残ってるし」
――なるほど。そして初回生産限定盤BのDVDには海外イベントの映像も。今年も広州、台湾(雲林)、成都、シンガポール、アメリカ(ボルチモア)でイベントに出演するなど、海外での活動もコンスタントに継続してますね。
 「ここ数年、アジアでのイベント出演は確かに増えてますね。広州は3回目だったし、お客様もすごくウェルカムなんです。みなさん日本語がお上手で、私の楽曲も一緒に口ずさんでくださるし。最初のMCは現地の言葉で話しますが、海外でコンサートをやっているという緊張感はなくなってきましたね。国内とそれほど変わらないかも」
――12月には今回のシングルの購入者を対象としたプレミアム・イベントも。活動のバリエーションが広がってますよね。
 「そうですね。今年は楽しくやらせてもらっています(笑)。ただ、私の場合は“自分がやりたいことはコレです。見てください”という感じとはちょっと違うと思うんですよ。コンサートのときにアンケートを書いてもらうんですけど、“この曲が聴きたかったです”という楽曲が重なっていると、次のコンサートでは必ず反映させるようにしているんです。もちろん全部が全部は難しいですけど、できるだけ要望にはお応えしたいなって。グッズもそうですね。基本的には“こういうグッズがほしい”という意見を参考にしているので。牧野由依は牧野由依が作っているのではなくて、みなさんが作ってくださってるんだと思いますね」
――オーディエンス、ファンの人たちが求める“牧野由依”が自分のアーティスト像である、と。
 「楽曲に関しては譲れない部分があるというか、“これを歌ってください”“それは違うと思います”ということもあるんですけどね(笑)。きれいな言い方になっちゃいますけど、お客様がいないと成立しないコンテンツじゃないですか。そう思うと独善的になるのは違うかなって。私のコンサートに来てくださる方は本当に素晴らしいんですよ。会場のスタッフに“ありがとうございました”って声をかけてくださったり、ゴミなんかも一切残ってないし。あと、ちゃんと最後の音まで聴いてくださるんですよね。歌が終わったら拍手がなりがちな場合もあると思いますけど、みなさん、最後の1音までしっかり聴いてくれて。日本だけではなくて、海外でもそう。コンサートをやるたびに“こういう方々を大事にしないといけないな”って思いますね」
取材・文 / 森 朋之(2016年10月)
牧野由依
「What A Beautiful World / ウイークエンド・ランデヴー」発売記念イベント
www.teichiku.co.jp/artist/makino-yui/
2016年10月22日(土)
兵庫 阪急西宮ガーデンズ 4階スカイガーデン・木の葉のステージ
nishinomiya-gardens.com/
13:00〜 / 15:00〜
※ミニ・ライヴ / 握手会(1枚の握手券で1回握手 / 1回参加につき1枚の握手券が必要)
※観覧自由(握手会は参加券が必要)


2016年10月23日(日)
神奈川 ららぽーと横浜 1Fセントラルガーデン
yokohama.lalaport.jp/
13:00〜 / 15:00〜
※ミニ・ライヴ / 握手会(1枚の握手券で1回握手 / 1回参加につき1枚の握手券が必要)
※観覧自由(握手会は参加券が必要)

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