【結城安浩】ESCOLTAでの活動で培われた“自分なりの”クラシカルなアプローチ

結城安浩   2013/08/22掲載
はてなブックマークに追加
クラシカル・クロスオーヴァーのヴォーカル・グループESCOLTAのリーダー結城安浩が、実質的なソロ・デビュー・アルバム『月の海』をリリースした。クラシカル・クロスオーヴァーというと、クラシック歌手がポップス・ナンバーを歌ったり、逆にポップス・シンガーがクラシック楽曲を歌うイメージが強いが、もともとポピュラー・ジャンル出身の結城が歌うのはオリジナル曲が中心だ。では、J-POPとどう違うのだろう。「誰も寝てはならぬ」「蘇州夜曲」も含む全6曲のこのアルバムからは、彼ならではの“クラシカル”なアプローチもきこえてくる。
――まずは、作詞も手がけた4曲のオリジナル曲について教えてください。
 「4曲とも、メロディを先に書いてもらって、あとから詞をつけています。でもタイトル曲の〈月の海〉だけは、もともと自分の中にちょっとモチーフがあって、船に乗って海を行くような雰囲気で、少し切ない、もの悲しいイメージで曲を書いてもらいました。〈Signal Bird〉という言葉は、ぼくの造語で、日々の何気ない生活の中にある、自分が変われるチャンスを、奇妙な飛び方をする2羽の鳥の姿に重ねて詞をつけました。いつでも自分を変えることができる、求めてさえいれば、そのきっかけはどこにでもあるんだという内容です。このアルバムの“ウラのタイトル曲”と思っているのが〈夜の太陽〉です。あがってきたメロディを聴いたら、ゴッホの〈ひまわり〉がばーっと頭に浮かんで、彼のことを書いた詞です。あの絵に込めた情熱や、苦悩の中でガシガシ前へ進んでいったゴッホの勇気を書ければと思いました。ゴッホが亡くなったのが37歳。僕も来年、その年齢になります。最後の〈Oh Happy Birthday〉は、すごく明るい曲ですが、実は、作曲者の飯田俊明さんが、身近な親戚の方が亡くなった直後に書いてくれた曲です。もし死後の世界があるのだとしたら、この世で亡くなるということは、向こうでは生まれるということだという気持ちで詞を書きました。でも内容としては、宇宙が生まれたことに“おめでとう”という、ちょっと大きなバースデー・ソングになっています」
――「蘇州夜曲」は戦前の歌謡曲ですが、好きな曲ですか?
 「ライヴではずっと歌っています。メロディがきれいですよね。30代半ばを過ぎて、若い頃は全然鳴らなかった低い音域でも余裕をもって歌えるようになってきたので、低めのキーで、耳元で歌うような、ほっとできる歌も残しておきたくて選びました。歌の技術ではなく、言葉をちゃんと伝えることができる歌だと思います」
――「誰も寝てはならぬ」のアレンジは、聴いたことのない斬新さです。
 「最初の語るような部分をポップに、サビをクラシカルに歌ったら、アンバランスで面白いんじゃないかと。クラシック出身じゃないぼくが、自分らしく歌うにはどうすればよいか、相談しながら作っていきました。最後の高音で、テノールの方たちはここぞとばかりに美声を披露しますが、そこをすかすのも、ちょっとくすぐったい感じでぼくらしいかなと、あえてファルセットで歌いました。賛否両論をいただこうと思います(笑)」
――アルバム全体にはテーマみたいなものがありますか?
 「それはあまり考えずに、たくさんの候補の中から選んだのが、たまたまこの6曲という感じなのですが、意外とうまい具合に、“夜”がテーマになりました。これから秋にかけて、夜、ゆっくり聴いていただければと思います。音質にもこだわっているので、音楽を楽しむためだけの時間を作ってもらえればうれしいですね。昔、レコードを聴いたときみたいに」
――CDパッケージには、“クラシカル・クロスオーヴァー・ワールド”という言葉が明示されています。
 「ぼくがクラシックとしっかり向き合ったのはESCOLTAが初めてです。それまでクラシックのことは何も知らなかったのですが、結成して6年、自分でも気づいていなかった、クラシカルな旋律だったり、声の使い方だったりが、自分の中に育ってきているように思います。それをオリジナル曲で表現できないかなと。ぼくの中のクラシカルな部分を初めて、そして最大限に出したアルバムになったかなと思います」
――クラシックの発声のレッスンを受けているのですか?
 「受けていません。ぼくはもともと、モノマネというか、他人の声を聴いて、見て、自分なりに工夫して考えながら歌ってきました。だから、本当に好きになって、日々チャンレジしていたら、それが自分のオリジナルになった、というのがぼくには向いているのかなと。自分で何かをつかんだあとで、答え合わせ的に教えてもらうのはいいと思いますが、最初からお勉強的なスタイルでレッスンを受けるのはもったいない気がします。好きなクラシック歌手ですか? 身体が全然違うので参考にはできないんですけど、パヴァロッティですね。ハンカチ持って歌うぐらいしか真似はできませんけど(笑)、すごく自由で、楽しんで歌っている感じが大好きで、よく聴いています」
――11月にはソロ・ツアーも待っています。
 「アルバム収録曲を中心に、未発表のオリジナル曲も歌う予定です。飯田さんのピアノと二人でのツアーですが、最後のTOKYO FMホールの公演は、パーカッションにオルケスタ・デ・ラ・ルスの鈴木喜鏤さんを始め、ヴァイオリンとベースも加わった豪華ゲストでお届けしますのでお楽しみに。ESCOLTAのコンサートでは他の二人のメンバーにまかせてあまりしゃべりませんが、しゃべること自体は好きなので、普段見せていない部分も楽しんでいただけると思います」
取材・文 / 宮本 明(2013年8月)
結城安浩
live schedule


■ 「月の海」インストアイベント
2013年9月1日(日)
東京 タワーレコード渋谷店 7F
15:00〜


■ 結城安浩 TOUR 2013
11月10日(日)東京 art cafe Friends
開場 18:00 / 開演 19:30
[出演] 飯田俊明(pf)

11月16日(土)福岡 Gate's7
開場 18:00 / 開演 19:00
[出演] 飯田俊明(pf)

11月17日(日)福岡 白いギター
ギター弾き語りLIVE
開場13:30 / 開演14:00

11月22日(金)名古屋 DOXY
開場 18:00 / 開演 19:00
[出演] 飯田俊明(pf)

11月23日(土)大阪 ROYAL HORSE
開場 17:00 / 開演 19:00
[出演] 飯田俊明(pf)

11月24日(日)大阪 ROYAL HORSE
ギター弾き語りLIVE  
開場 12:00 / 開演 13:00

11月29日(金)東京 TOKYO FM HALL
Final
開場18:00 / 開演19:00
[出演] 飯田俊明(pf) / 鈴木ヨシロー(perc) / 土屋雄作(vn) / 清水昭好(b)
※ 掲載情報に間違い、不足がございますか?
└ 間違い、不足等がございましたら、こちらからお知らせください。
※ 当サイトに掲載している記事や情報はご提供可能です。
└ ニュースやレビュー等の記事、あるいはCD・DVD等のカタログ情報、いずれもご提供可能です。
   詳しくはこちらをご覧ください。
[インタビュー] アイドルやめた――“渋谷系ガールズロックユニット”に転身したCANDY GO!GO!のリアル[インタビュー] KANDYTOWNの新たな方向性も感じさせるソロ・アルバム、MUD『Make U Dirty』
[インタビュー] 音楽にとどまらない、発想としての面白さ――ジェフ・パーカーがゆっくり語る『The New Breed』[インタビュー] 良い意味で遠回りをしてきた――20周年を前に、韻シストが開けた次への扉
[インタビュー] 過去を否定せず、未来を大切にする 渡瀬マキが語る“Fresh”なLINDBERG[インタビュー] トロピカルハウスを取り入れても、最後は自分たちの曲になる ココロオークションの自信と革新性
[インタビュー] ファースト・キスは1回しかないのがいい メンバーの“リアル”を大声で歌うロック・バンド、The MANJI[インタビュー] “熱さ”が戻ってきた――ユニットとしての自覚が芽生えた“今のChu-Z”
[インタビュー] 便利で何でも手に入る時代だからこそ必要なこと――須永辰緒が導くジャズ最前線[インタビュー] ふっと飛び込んでくるワンフレーズ “現場の音楽”HIT『Be!!』
[インタビュー] 深くて豊かな音楽を目指した“名盤” 石橋 凌『may Burn!』[インタビュー] 私は変わり続ける。それは“出会い”を意味しているから――コリーヌ・ベイリー・レイ
弊社サイトでは、CD、DVD、楽曲ダウンロード、グッズの販売は行っておりません。
JASRAC許諾番号:9009376005Y31015