昨年3月に起こったベルギー・ブリュッセルでの地下鉄テロで亡くなった、ある男性による初監督作品にして遺作、福島県に住む3組の家族に寄り添い記録した映画「残されし大地」が3月より東京・渋谷 シアター・イメージフォーラムなどで公開されます。
本作の監督としてクレジットされているジル・ローランは、祖国であるベルギーを拠点に主に欧州で活躍するサウンドエンジニアでしたが、2013年に妻の母国である日本へ家族と共に来日。3.11以後の“福島”について調べる中で、福島県双葉郡富岡町で動物保護活動を続ける松村直登さんの存在を知り、映画製作をスタート。編集作業のために一時帰国した際、地下鉄テロに巻き込まれ命を落としています。
ジル監督の想いを受け継いだ、プロデューサーや同僚らの手によって完成へと至ったという本作は、福島で生活する3組の家族を追いかけ、日常としての福島、故郷を愛する思いを通して“土地と寄り添いながら生きる人たちの力強さ”を描いたドキュメンタリーとなっています。
©CVB / WIP / TAKE FIVE-2016-Tous droits reserves 2016
■「残されし大地」
2017年3月シアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードショー
[あらすじ]
福島第一原発から約12キロ離れた、福島県双葉郡富岡町。3.11以後、町に残された動
物を保護し育てる為、自分の故郷・富岡町に残る事を決めた松村直登。寡黙な父とふたり、いまも避難指示解除準備区域の自宅に留まっている。
「水と土で生きてるんだ」と穏やかに語る農作業中の半谷さんの背後にはフレコンバックが積まれ、除染作業が淡々と行われている。故郷で生きる事を決意した彼らは、自分達、そして故郷に突きつけられた現実の中、たくましく笑顔で日常を送っていた。
お彼岸の墓参りで“来年こそ”は故郷への帰還を先祖に誓う佐藤夫妻の手には、放射能測定器があった。南相馬市の自宅の庭に実った、自然の再生、生命力の象徴と言われるイチジクを食べながら、かつてこの町に暮らしていた友人たちと語らう時間。各々が家族の事情を抱え、3.11以後の国や行政、そして故郷に戻る者、戻らない者の間に生まれる葛藤に揺れ動いていた。
淡々と進んでいく日常生活の中で、彼らが自然体で紡ぐ言葉の中に“ある日”を境に、かつての故郷を失った人間たちの今とこれからが見えてくる。
監督: ジル・ローラン
プロデューサー: シリル・ビバス
出演: 松村直登 ほか
制作: CVB Brussels
配給プロデューサー: 奥山和由(チームオクヤマ)
配給協力: 太秦
提供: 祇園会館
後援: ベルギー王国大使館 / ベルギー観光局ワロン・ブリュッセル