音楽が生まれてくる瞬間に立ち会っているかのような、生々しい感動を感じさせてくれるシンガー、松倉如子の歌世界

2009/06/16掲載
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 2007年に自主制作で1stアルバム『星』を発表し、表情豊かな歌声と独創性に満ちあふれた曲世界で注目を集めてきたシンガー・ソングライター、松倉如子。大学時代の講師である、劇作家・宮沢章夫に見いだされ、歌を歌うことの魅力に目覚めたという一風変わった経歴を持つ彼女に、これまでの道筋と新作『パンパラハラッパ』について話を訊いた。


 その童女のような歌声には、ぱっと聴き、“無邪気”や“天真爛漫”という言葉が似合うように思えるけれど、ちょっと違う。松倉如子の歌には、聴き手を自らの歌世界に半ば強引に引きずり込んでしまう、ある種の色気や凄みのようなものがある(音楽性や声質は異なれど、個人的には小島麻由美を初めて聴いたときと同じような衝撃を受けた)。そんな彼女の稀有なる歌声を最初に“発見”したのは、誰あろう、大学時代に師事していた劇作家・宮沢章夫だったのだという。
 「大学1年生のとき、宮沢さんの授業で自己紹介をする機会があったんですけど、そのときにビル・ウィザースの〈JUST THE TWO OF US〉を歌ったんです。それを聴いた宮沢さんの中で何か思うところがあったみたいで、芝居の授業で、突然、“お前、歌えよ”って言われたんです。そしたら、とても評判が良く、そのまま調子に乗ってしまって(笑)。それまでは鼻歌ぐらいしか、歌ったことなかったんですけど」
 大学卒業後は宮沢の勧めにより京都から上京。吉祥寺を拠点に歌手としての活動をスタートさせた。
 「最初の頃は、知り合いが誰もいないから、一緒に音楽をやってくれる人をネットで手当たり次第に探して、何人かに会いにいったりしていたんです。それを友達に話したら、めちゃめちゃ心配されて。それで友達の友達でギターを弾ける人を紹介してもらったり、そうやって徐々に東京でライヴをやるようになったんです」


 上京から1年を経た2006年の5月、彼女はある人物と運命的な出逢いを果たすこととなる。現在、ライヴ時の演奏はもとより、創作面でも彼女をバックアップしているシンガー・ソングライター、渡辺勝との出逢いだ。
 「勝さんと一緒にやったときのライヴがものすごく良くて、“うち、この人の弟子になるわ!”って思ったんです。それを勝さんに話したら、“音楽をやる上では対等だから、相棒としてやっていこうよ”って言ってくれて。勝さんの出す音って胸にグッとくるんです。綺麗な音を出すとかそういうことじゃなくて、呼吸そのものが音楽というか。一緒にやるようになって私の歌も伸びていったような気がします」
 最新作『パンパラハラッパ』には、渡辺勝(g、p etc.)をはじめ、渋谷毅(p)、船戸博史(cb)、川下直広(ts)といった腕利きのミュージシャンが参加。シンプルながらも味わい深い演奏で、表情豊かな彼女の歌声にさりげない彩を添えている。
 「今回のアルバムは完全に“作るぞ!”と思って作ったアルバムなんです。(前作の)『星』っていうアルバムは割りと成りゆきにまかせて作ってしまったところがあったんやけど、今は“音楽を生業にして食べていきたい”っていう気持ちが自分の中で強くなっていて。そのためにも今、自分が一緒に演奏して音を残しておきたい人たちに集まってもらったんです」
 音楽が生まれてくる瞬間に立ち会っているかのような、生々しい感動すらも感じさせてくれる松倉如子の歌世界。最後にシンガーとしての目標を訊ねたところ、こんな答えが返ってきた。
 「動物とか鳥とかが求愛のダンスをしながら、鳴き声を出したりするじゃないですか。上手く言えへんけど、言葉を超えて感動できるような、ああいう歌が歌えたらいいなと思う。もともと浅く広くいろんなことができるようなタイプじゃないし、自分そのものをいちばん自由に表現できるのが、うちにとっての“歌”なんです」


取材・文/望月哲(2009年5月)
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