ストリート・ロックの発信地 〜 ライヴ・ハウス“CBGB”とは?

2007/10/31掲載
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胸に輝く“CBGB OMFUG”。 極めて印象的なロゴ・マークは知っていても、その現状となると……? ニューヨークから世界へ新しい才能を発信し続けるライヴ・ハウス、CBGBの歴史について学びましょう!
 2007年8月28日。世界のロック・ファンが一度は感謝を捧げた経験を持つに違いない、ヒリー・クリスタル(Hilly Kristal)が肺ガンによる合併症により75歳で亡くなりました。
 ジャズ・クラブ“Village Vanguard”のマネジャーを経て、1973年にニューヨーク市/313 Boweryに彼が開いたライヴ・ハウスこそ、かの有名な“CBGB”。日本でも大きく話題となった“SAVE CBGB”でも報告されているとおり、CBGBが入居していたビルの賃貸主であるBowery Residents Comitteeとの裁判の結果、賃貸契約は2006年10月31日までということに決着。大規模なクロージング・パーティの余韻もひと段落し、移転場所を探している矢先の訃報となってしまいました。

 30年以上に渡り、ニューヨークを震源地として、鋭敏なアーティスト/バンドを多数輩出してきたCBGB。その影響を受けたレコード・レーベル/ファッション・ブランドが、トリビュート的な意味でのパロディを発表。街を歩けば、胸にしっかりと正規のロゴが刻まれたマーチャンダイズを着こなす人も。今や日本のカルチャー・シーンにしっかりと定着した“CBGB”とは? その歴史を紐解いていきましょう。




 「カントリー(Country) ブルーグラス(BlueGrass) ブルース(Blues)」と、CBGBはオーセンティックなバンドの演奏を主とするライヴ・ハウスとして1973年12月にオープン。しかし“新たな才能”を求めるCBGBは、トム・ヴァーレイン率いるテレヴィジョンとの出会いをきっかけに、ロックへとそのコンセプトを変化させ、地元のインディ・バンドの間にその存在が浸透していくこととなります。ヒリー・クリスタルが当時のテレヴィジョンやラモーンズの出現について語るには、「私がこれを通して学んだのは、新しいバンドにはもっと寛大でなくてはいけないし、もっとよく聴かなくてはいけない、ということだ」とのこと。音楽性については必ずしも理解できなくても、バンドの持つひたむきな情熱/衝動、そしてホンモノの才能を見抜く、確かな目がCBGBにはあったのです。




 「CBGBで演奏したければ自分のオリジナルの曲だけを演奏する事」、テクニックよりもオリジナリティを第一に考えたこのルール。1975年当初には、毎週月曜日にオーディション/またはテープでバンドを選考する、というスタイルとなって確立することになる。パティ・スミストーキング・ヘッズハートブレイカーズリチャード・ヘル在籍時)、当時“ストリート・ロック”と呼ばれていたアンダーグラウンドな顔ぶれをさらにプッシュするべく、CBGBは“Festival of the top 40 New York Rock Bands”というイベントを開催。厳選された40組が出演を果たし、CBGBの名前とともにそのムーヴメントは加熱。いつしか“パンク・ロック”と冠せられ、世界へ余波が広がっていったのでした。

 1976年にリリースされたV.A.『Live At CBGB Vol.1』では、パンク・シーンの“秘密兵器(秘密のまま)”とも賞されるタフ・ダーツ「All For The Love Of Rock 'N' Roll」を皮切りに、CBGBのサウンド・エンジニアも務めたRon Arditoが在籍のThe Shirts、ルーツ・ミュージックの風薫るMink DeVille、パブ・ロックなThe Laughing Dogs……パンク/NO WAVEが盛り上がっていくなか、さらなるアンダーグラウンドで巻き起こっていた新しい息吹きを垣間見ることができます。

 それからおよそ30年後にリリースされた『CBGB 最強のパンク野郎ども 〜CBGB 30thアニバーサリー〜』を観るに、ROIRの傑作V.A.『NEW YORK THRASH』(バッド・ブレインズビースティ・ボーイズ、HEART ATTACKなどが収録)に参加しているADRENALINE O.D.クラウト、『NEW YORK〜』ではSTIMULATORSとして思春期前の喉を震わせたハーレー・フラナガン率いるHARLEY'S WARをはじめとするNYHC勢、ジョーイディー・ディーとの共演経験も持つラモーン・パンクス、FURIOUS GEORGE、かつてはソニック・ユースサーストン・ムーアも在籍していたEVEN WORSE、UKからはUKサブスTHE VARUKERSカオスU.K.ザ・ヴァイブレーターズらも登場。一貫してオリジナリティを求めてきたCBGBを出発点とする音楽が、しっかりとシーンを形作っていることに気付かされるでしょう。




 次なる新天地へと向けて、現在着々と準備を進めているというCBGB。たとえトイレにドアが付いたとしても(CBGBのトイレはドアなし!)、これまでの価値観をひっくり返すような“新たな才能”を再び私たちに紹介してくれるに違いありません。その偉大なる歩みにリスペクトを込めて、CBGB OMFUG(Other Music For Uplifting Gormandizers)を掲げましょう。

※資料提供 :
トライネットエンタテインメント / http://www.trinet-ent.com/
モリソン商会 / http://www.morrison.co.jp/

■ CBGB 正規マーチャンダイズ(トライネット) : http://www.trinet-ent.com/md/cbgb.html
■ Project Save CBGB & OMFUG : http://cbgb.exblog.jp/
■ CBGB 公式サイト : http://www.cbgb.com/
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