【アラベラ・美歩・シュタインバッハー interview】もっとも期待される新世代ヴァイオリニスト コンチェルト・アルバムを2枚リリース

アラベラ・美歩・シュタインバッハー   2009/12/17掲載
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シマノフスキ&ドヴォルザーク:
ヴァイオリン協奏曲
(TMP・RPTC-5186353)
 現在、ヴァイオリン界では1980年代生まれのヴァイオリニスト、それも女性の活躍が華々しい。五嶋みどりイザベル・ファウスト諏訪内晶子パトリシア・コパチンスカヤジャニーヌ・ヤンセンヒラリー・ハーンリサ・バティアシヴィリ、リザ・フェルシュトマンといった70年代生まれ組が安定した今、次の世代として脚光を浴びるようになったわけだ。そんな伸び盛りの彼女らの中でも、とくに注目されているのが、アナ・チュマチェンコ(現ミュンヘン音大教授)門下の面々である(詳しくは雑誌『CDジャーナル』2009年4月号を参照)。


ベルク&ベートーヴェン:
ヴァイオリン協奏曲
(Orfeo・ORFEO778091/輸入盤)
 本稿では、その中でももっとも期待される一人であり、すでにファンも多いアラベラ・美歩・シュタインバッハー(Arabella Miho Steinbacher)をフィーチャー。2009年には、10月のリッカルド・シャイー指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団とのツアーに同行して来日、その後12月にもNHK交響楽団に来演したばかりである。

 2003年のライヴ録音によるハチャトゥリアンをはじめ、これまでにミヨーショスタコーヴィチのコンチェルトにラテン作品、フランス・ソナタ集などの優れたアルバムを発表して来た彼女。2009年には最新アルバムとして、『シマノフスキ&ドヴォルザーク:ヴァイオリン協奏曲』、そして『ベルク&ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲』の2枚のアルバムを立て続けにリリースした。



――これまではOrfeoからのリリースでしたが、『シマノフスキ&ドヴォルザーク』はPentaToneからですね。今回の『ベルク&ベートーヴェン』を最後にPentaToneに完全移籍ということなのでしょうか?
 アラベラ・美歩・シュタインバッハー(以下、同) 「Orfeoと専属契約したことは、これまでに一度もないんですよ。PentaToneとは2011年までの契約を結んだので、たしかに何枚かはこちらでレコードを作ってゆきますが、Orfeoとこれで完全に関係がなくなったというわけではありません」
――まず『シマノフスキ&ドヴォルザーク』盤ですが、民俗的な観点からのカップリングでもありますね。シマノフスキの第1協奏曲は3管編成にピアノ、それにハープが2台と巨大なオーケストラ編成ですが、近年録音が増えてきています。
 「企画自体は、指揮のマレク・ヤノフスキさんやPentaToneからの提案です。シマノフスキはオケの編成が巨大なので、実演ではなかなかソロ・パートが聞こえにくい曲ですよね。その点、録音ならソロ・パートもよく聞こえます。全曲の最後が、まったく突然にふっと消えてしまうようなユニークな作品ですが、とても美しい録音に仕上がったと思います」
――ヤノフスキとのレコーディングはいかがでした?
 「ヤノフスキさんのことは以前からとても好きで、何度も共演しています。彼はとてもドイツ的で、考えがとても明晰ではっきりしています。何がしたいか、どういう音楽が欲しいかということを、自分でとてもわかっていらっしゃる人。だからオケに対してもあまり多くを語らずに、本当に2、3を言うだけでも、オケが彼の要求通りに完璧に変わってしまう。ですからレコーディングでは、無駄な時間がまったくありませんでした」
――一方、『ベルク&ベートーヴェン』盤の指揮者には、2006年のショスタコーヴィチ盤の時と同じアンドリス・ネルソンスが起用されていますね。
 「ネルソンスさんは、ヤノフスキさんとはとても違ったタイプで、お腹から音楽が湧き出てくる感じですね。とてもスウィングするし、一緒に演奏していてとても情熱的に感じます。あまり話さなくても感じ取れる人です。最初からすぐにわかり合えたので、あまり音楽について話すことはありませんでした。音楽家には2種類の人がいると思うんです。とても知的でアナリーゼなどを好むタイプと、もう一方は頭は使うんだけど、基本的に感情に任せていくタイプ。私はお腹からのタイプ(笑)」
――なぜ、ベルクベートーヴェンを組み合わせたんでしょう?
[*註:このカップリングにはかつてギドン・クレーメル盤があった]
 「2曲とも、現世的ではなく天上の世界のような要素があるように思うからです。ベルクのコンチェルトはレクイエムですよね。もちろんマノン・グロピウスのためのレクイエムでしたが、同時にベルク自身のためのものでもありました。なぜなら、彼は生前にこのコンチェルトを聴いていないからです [*註:初演は作曲者の亡くなった翌年]。ベートーヴェンの方はそういう背景はないですが、弾いているとその音楽が現世的でなく、まるで天上からこの世を俯瞰しているように聞こえてくる。そういう意味で“天上的な音楽”だと思うんです」


(C)Thomas Rabsch


――少し楽器のこともお伺いしましょう。現在は1716年製のストラディヴァリウス“ブース(Booth)”をお使いですよね。使い心地は?
 「暗めで美しい音色が気に入っています。弾くにもしっくりきますし」
――弓は、アンネ=ゾフィー・ムターからもらったというブノワ・ロラン(Benoit Rolland)を使っているのですか?
 「今はドイツの製作家のものをメインに使っています。とても使い勝手がよくて、音もエレガントに鳴ります。ブノワもいつも持っていて、曲によって使い分けています」
――ちなみに、ブノワを使った録音はどれなんですか?
 「たしか、ミヨー・アルバムとハチャトゥリアンのコンチェルトだったかな」
――今後のレコーディング・プランを教えてください。
 「バルトークのコンチェルト盤が、2010年3月頃にリリースされることになっています。指揮はヤノフスキさんでオケはスイス・ロマンド管弦楽団。その次もいろいろ決まってるけど、まだ内緒(笑)。コンチェルトの録音にあたっては、基本的にはミヨーの時のように、あまり録音がない曲にしたいと思ってるんです。リサイタル・アルバムも考えていますよ」
――さて、最後に気になる次回の来日予定だが、現在のところ2011年で調整中とのこと。まだ実現するかははっきりしない。決定した時点で当ウェブサイトでもご報告する予定である。



取材・文/松本 學(2009年10月)
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