ブロークン・ソーシャル・シーン 5年ぶりの傑作『フォギブネス・ロック・レコード』 ジョン・マッケンタイアとの初タッグが生み出した新境地とは?

ブロークン・ソーシャル・シーン   2010/05/26掲載
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 カナダ・ロック・シーンの顔役ブロークン・ソーシャル・シーン(Broken Social Scene)が、じつに5年ぶりとなるニュー・アルバム『フォギブネス・ロック・レコード』をリリース。プロデューサーにシカゴ音響派を代表するジョン・マッケンタイアトータス)を起用した本作は、躍動感あふれるサウンドはそのままに、空間を有機的に活かしたまばゆい音世界を作り上げ、みごとに新境地を開拓。2010年のベスト・アルバム候補間違いなしの傑作に仕上がっています。ここでは、中心人物ブレンダン・カニングのインタビューとともに、そんな『フォギブネス・ロック・レコード』の魅力に迫ってみましょう。また後半では、BSSファミリーの作品も一挙にご紹介。こちらも合わせてお楽しみに。



【Interview】ブレンダン・カニング



フォギブネス・ロック・レコード 個々のアーティストが自立し、自発的に自由な表現を求めていく……。そんな現在のクリエイティヴなカナダのインディ・ロック・シーンの核と言えば、やはりブロークン・ソーシャル・シーン(以下、BSS)に他ならない。ファイストをはじめ、幾多もの才能あふれるアーティストを輩出してきたこの音楽共同体が5年ぶりに待望のニュー・アルバム『フォギブネス・ロック・レコード』を発表。すでに世界中で大好評を博している。そんなBSSの中心人物のひとり、ブレンダン・カニングに直撃し新作について聞いた。


――今回のニュー・アルバム、調子がいいみたいですね。カナダで1位、アメリカでもトップ40に入りました。
ブレンダン・カニング(以下、同) 「ありがとう。そこまで気にはしないけどね」
――でも、あなたのバンドの取っているアプローチがシーンに浸透している証拠だと思うんですよ。ひとつのバンドに縛られない自由な共同体みたいな団体。それはインディ・ロックのポジティヴな側面を表わしてると思うんです。


 「そう言ってくれるのは嬉しいけど、でも、アーティストのクリエイティヴィティを考えると、そもそもそうあるべきなんだ。“バンド”より先にそれぞれが“個”を持ったミュージシャンであるべきで。インディで活動してきたアーティストなら誰でも経験してることだよ」
――そんな中からファイストみたいな成功例も出たわけですね。今回の新作では、忙しい最中、そのファイストメトリックのエミリー(・ハインズ)、スターズのエイミー(・ミラン)といった、あなたが輩出したカナダの才女たちが参加しています。ファンとしてもさすがに参加を期待するのが難しくなった状態での今回の実現はやはり嬉しいです。
 「おかげさまでね。それは僕らも光栄なんだよ。決して約束はできないけど、可能ならツアーでだって実現させたいんだよ、本当はね」
――そんな中、今回はあなたたちの現在のディーヴァ、リサ・ロブシンガー(Reverie Sound Revue)をうまくフィーチャーしてますよね。カナダを代表する錚々たる女性シンガーを数々生んできたBSSでのプレイだけに、歴代のディーヴァとの比較が避けられない中、リサも奮闘したと思います。
 「そうやって比較されるんだろうけど、彼女は彼女の切り口を存分に発揮してくれれば、僕たち的には充分満足なんだよ。僕らも今回、彼女がもたらした“声”にはすごく刺激を受けた」


ブロークン・ソーシャル・シーン


――今回のアルバムはジョン・マッケンタイアのプロデュースですよね。彼とのつきあいは長いんですか。
 「いや、知り合ったのは2008年の夏にシカゴのスタジオで。そこで数日一緒にいたら、今やもう家族同然(笑)。こないだもTVショウでセカンド・ドラムを担当してくれてね」
――ジョン・マッケンタイアというと、シカゴのポスト・ロックの象徴的人物ですよね。あなたも、とくにデビュー当時、ポスト・ロック的な見られ方をされることが多かったと思うのですが、ポスト・ロック的ルーツに戻ろうという意図はあったのですか?
 「僕の気持ちの中では、僕たちはいつもポスト・ロックだよ。普通のロックでも、ましてやポップでもない。僕らはそういうカテゴリーにストレートに対応するバンドではなく、ひねくれた表現をする存在だと思ってるから」
――ただ、ポスト・ロックというと、インストゥルメンタル・パートの部分で聴かれがちな側面がありますよね。そう考えると、今回のニュー・アルバムは“うた”に比重を置いた作品のように思うのですが。
 「たしかに“新しいことを表現しよう”と思ってはいたけど、曲をそこまでしっかり(うたモノとして)書こうと意識したわけじゃないんだ。多分それは僕らの経験がこなれてきた結果なんだと思うな」
――ジョン・マッケンタイアが今回のアルバムにもたらしたものは何だと思います?
 「僕が90年代に夢中になった彼が関わった作品(トータス、シー&ケイク、ステレオラブetc)で鳴ってた、彼のスタジオ内でしか鳴り得ない“あの音”を体得できたのは素直に嬉しかったよ。あと、もちろんそれだけでなくソウル(魂)の部分でも共鳴しあえたこともね」
――ズバリ、今回のアルバムの聴き所は?
 「このご時世に、10年もバンドをやってこれてることを証明できたことだね。創造性の継続というのが一番難しいことだからね」
取材・文/沢田太陽(2010年5月)



新作『フォギブネス・ロック・レコード』と合わせて楽しみたい
個性あふれる才人が集った、BSSファミリーの作品群



 ブロークン・ソーシャル・シーンには、前述のようにファイストやスターズ、メトリックにゼウスなど、数々の人気アーティストが参加しています。ここでは、そんな“BSSファミリー”の個性あふれる面々を、彼らの代表作とともにご紹介。それぞれの作品を聴くことで、BSSとは別の一面が楽しめます。


『サムシング・フォー・オール・オブ・アス…』
2008年のソロ・デビュー作。グランジ風のギターあり、作り込まれたインドア・ポップありと、彼らしいひねりの効いたサウンドを展開している。プロデュースは自身に加え、ライアン・コンドラット、ジョン・ラ・マグナが担当。
ブレンダン・カニング
Brendan Canning
1969年生まれ。ケヴィン・ドリューとともにBSSの中心を担い、ヴォーカル、ギター、ベース、ピアノなどマルチに活躍している。92年、彼がベーシストとして参加したロック・バンド、hHeadのアルバム『Fireman』でデビュー。その後、同じくカナダのロック・バンドであるBy Divine Rightに参加した後、BSSを結成。2008年には、ソロ・デビュー・アルバム『サムシング・フォー・オール・オブ・アス…』をリリースした。
http://www.brendancanning.com/


『スピリット・イフ』
2007年のソロ・デビュー作。フレーミング・リップスらとも共振するメランコリック・ポップといった作風で、自身が“ファック、闘争、恐怖、希望”がテーマと語るような、どこかカオティックな世界観に魅せられる。
ケヴィン・ドリュー
Kevin Drew
1976年生まれ。ブレンダン・カニングとともにBSSの中心を担い、ヴォーカル、ギター、ベース、ピアノなどマルチに活躍。98年、後に同じくBSSのメンバーになるチャールズ・スペアリンとともに、KC Accidentalを結成し、同年アルバム『Captured Anthems for an Empty Bathtub』をリリース。2007年、アルバム『スピリット・イフ』でソロ・デビュー。2009年には、ザ・ナショナルがオーガナイズしたチャリティ・コンピ『ダーク・ワズ・ザ・ナイト』にもソロ名義で参加している。
http://www.arts-crafts.ca/kevindrew/


『リマインダー』
2007年の3rdアルバム。透明感とハスキーさを併せ持つミステリアスなヴォーカルで、トラディショナル調のフォークからロックまでを幅広く披露。大ヒット曲「1234」をはじめ、温もりあるサウンドに繊細な表現を掛け合わせる度量に心酔。
ファイスト
Feist
1976年生まれ。BSSの準メンバーでヴォーカリストとして活躍。10代の頃にギタリストとして音楽活動をスタートし、99年にはトラジカリー・ヒップのサポート・メンバーとしてツアーを経験。同年、ソロ・アルバム『Monarch(Lay Your Jewelled Head Down)』でデビューを果たす。2004年の2ndアルバム『レット・ダイ』はカナダでプラチナム・ディスクを獲得。2007年、iPodのTV-CMに使用された「1234」が大ヒットし、同曲を収録した3rdアルバム『リマインダー』は、ジュノ・アワードほか数々の音楽賞に輝いた。
http://www.listentofeist.com/


『ハート・ザッツ・パウンディング』
本名名義としては初となるアルバム。メランコリックかつハート・ウォーミングなヴォーカルを温もりあふれるアコギやピアノが彩り、その柔らかなサウンドが幸福感をもたらす。オーケストラやコーラスを効果的に配したアレンジもいい。
サリー・セルトマン
Sally Seltmann
1975年、メルボルン生まれの女性シンガー・ソングライター。Lustre 4やSpdfghといったバンドで活動した後、ニュー・バッファロー名義でソロ活動を開始。2001年にミニ・アルバム『About Last Night』でソロ・デビューを果たし、2004年にはベス・オートンやジム・ホワイトらを招いた1stフル・アルバム『ザ・ラスト・ビューティフル・デイ』を発表。2007年には、ファイストのヒット曲「1234」のソングライターとしても脚光を浴びた。2010年6月23日、本名名義によるアルバム『ハート・ザッツ・パウンディング』をリリース。
http://www.sallyseltmann.com/


『ヒアズ・トゥ・ビーイング・ヒア』
2008年にリリースされた4thソロ・アルバム。アコースティック・ギターを中心にしたフォーキーで内省的なサウンドのなか、ボブ・ディランやマーク・ノップラーを彷彿とさせる味わい深いヴォーカルが踊る。
ジェイソン・コレット
Jason Collett
BSSの準メンバーでギタリストとして活躍。幼少より退屈しのぎとして作曲活動を開始。大工として生計を立てる傍ら、ボブ・ディラン、ニック・ロウらに影響を受け、80年代より本格的な音楽活動をスタート。オルタナ・カントリー・バンド、Birdに参加し、2000年にアルバム『Chrome Reflection』をリリース。その後、The Weakerthansをはじめ、アーツ&クラフツ周辺のアーティストとの親交を深め、2000年にソロ・デビュー・アルバム『Bitter Beauty』を発表。2010年、ニュー・アルバム『Rat a Tat Tat』をリリース。
http://www.arts-crafts.ca/jasoncollett/


『セイ・アス』
2010年4月にリリースされたデビュー・フル・アルバム。ビートルズをはじめとしたブリティッシュ・ポップ・ロックに例えられることの多い、キャッチーなメロディと上質なハーモニーが有無を言わさぬ秀逸な仕上がりとなっている。
ゼウス
Zeus
幼馴染だったカーリン・ニコルソンとマイク・オブライエンを中心に結成された4人組バンド。カナダの名プロデューサー、ハウィー・ベックにより、ジェイソン・コレットのバック・バンドに抜擢される(当時のバンド名は、ダーク・ホース)。2009年に、ゼウス名義によるミニ・アルバム『Sounds Like Zeus』でデビュー。2010年にはフル・アルバム『セイ・アス』を発表。本国のキャンパス・ラジオ・チャートで1位を獲得するなどスマッシュ・ヒットを記録している。
http://www.myspace.com/themusicofzeus


『イン・アワ・ベッド・ルーム・アフター・ザ・ウォー』
2007年リリースの4作目。男女ツイン・ヴォーカルが奏でる、甘くロマンティックなムードに覆われたポップ・ソング集。洗練されたメロディとドラマティックな構成により、親しみやすくも飽きのこないギター・ポップとなっている。
スターズ
Stars
BSSの準メンバーでヴォーカリストのエイミー・ミラン、同じく準メンバーでマルチ・インストゥルメンタリストのエヴァン・クランリーらが在籍する4人組。2001年にアルバム『Nightsongs』でデビュー。2007年の4thアルバム『イン・アワ・ベッド・ルーム・アフター・ザ・ウォー』は、ポラリス・プライズにノミネート。その後、人気TVドラマ『セックス・アンド・ザ・シティ』に出演したり、コールドプレイのオープニング・アクトを務めたりと、幅広く活躍する。2010年6月に新作『ザ・ファイヴ・ゴースツ』をリリース。
http://www.arts-crafts.ca/stars/


『ファンタジーズ』
2009年にリリースされた、4年ぶりの4作目。伸びのあるエミリーのヴォーカルを、エッジィなギター・サウンドでコーティング。パワー・ポップ風の曲調の中にも、キャッチーな歌心を忍ばせるセンスが魅力だ。
メトリック
Metric
BSSの準メンバーでヴォーカリストとして活躍するエミリー・ハインズと、同じく準メンバーでギタリストのジミー・ショウを含む4人組。98年、ミニ・アルバム『Mainstream EP』でデビュー。2001年には初のフル・アルバム『Grow Up and Blow Away』を発表。その後、ジュノ・アワードやポラリス・プライズを獲得したほか、2006年にはローリング・ストーンズのオープニング・アクトに抜擢され、一躍注目を浴びる。2009年、通算4枚目のフル・アルバム『ファンタジーズ』をリリースし、日本公演も行なった。
http://www.ilovemetric.com/


『ナショナル・アンセム・オブ・ノーホエア』
2007年リリースの2作目。作品タイトルからも伺えるように、各地の民族音楽から影響を受けた無国籍性が特徴。ラテン・フレイヴァーを主にしながらも、骨太なギター・サウンドを用いて広くロック・ファンにアピールする作品にしている。
アポッスル・オブ・ハッスル
Apostle of Hustle
BSSの準メンバーでギタリストのアンドリュー・ホワイトマンを中心に、2001年より始動したプロジェクト。ブラジル音楽やキューバの民謡を取り入れたエキゾティックなポスト・ロックを展開し、その個性的なスタイルで注目を集める。2004年にアルバム『Folkloric Feel』でデビュー。2009年にヘイデンやサラ・ハーマーらの作品でも知られる、マーティ・キナックをプロデューサーに迎え、通算3枚目のアルバム『Eats Darkness』をリリースした。
http://www.apostleofhustle.com/





『OTHER TRUTHS』
2009年の通算6作目。全4曲中、3曲が10分超えの大作という渾身作で、実験的なアレンジを織り込んだり、エキセントリックな展開を盛り込んだりしながらも、色彩豊かで不思議と胸に沁み込む音楽に仕上げている。その傑出した音楽センスに脱帽。
Do Make Say Think
BSSの準メンバーでマルチ・インストゥルメンタリストである、チャールズ・スペアリン、ジュリー・ぺナー、オハド・ベンチェトリットが在籍する、9人組のインストゥルメンタル・ポスト・ロック・バンド。1995年に結成され、99年にデビュー・アルバム『Do Make Say Think』をリリース。サックスやバイオリン、ツインドラムを要する個性的な編成により独自のサウンドを開拓。2009年に通算6枚目となるニュー・アルバム『OTHER TRUTHS』を発表し(日本盤は2010年リリース)、2010年1月には日本ツアーを開催した。
http://www.domakesaythink.com/


『Reverie Sound Revue』
カナダの良質インディ・レーベルとして人気のboompaからリリースされたデビュー・フル・アルバム。躍動感あふれるリズム隊に支えられ、リサ・ロブシンガーのメランコリックなヴォーカルが冴える。洗練された落ち着きのあるアレンジも上手い。
Reverie Sound Revue
BSSのヴォーカリスト、リサ・ロブシンガーを含む5人組ロック・バンド。2003年にデビュー・ミニ・アルバム『Reverie Sound Revue EP』をリリース。清涼感あふれるヴォーカルとジャズの風味をまぶしたドリーム・ポップ・サウンドで人気を得る。2004年に解散し、BSSでの活動を始めたリサほか、メンバー個々の活動にいそしむが、2007年に再結成。2009年に待望の1stフル・アルバム『Reverie Sound Revue』をリリースした。
http://reveriesoundrevue.net/



選・文/房賀辰男
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