【チャリート】歌うことはすべてがヒューマン・コネクション――新作はパーソナルな思いに満ちたバラード / スタンダード集

チャリート   2012/12/05掲載
はてなブックマークに追加
 ここ2作がミシェル・ルグランとのコラボ作マイケル・ジャクソンカヴァー集だったのに対し、新作『アフェア・トゥ・リメンバー』はバラード / スタンダード集である。ジャズ・シンガー、チャリートにとって“ホーム”のアルバムといっていいだろう。パーソナルな思いで選んだ曲も多く、素顔のチャリートがのびのびと歌っている印象だ。そして、だからこそ、世界を舞台に活躍する本格派の底力がストレートに伝わってくる。


――ピアノ・トリオにシンセサイザーを加えたシンプルな編成なのに、ゴージャスな音という印象を受けました。アレンジや演奏の力とヴォーカルの力が高いレベルで調和しているからだと思います。
 「アルバムをつくるときはいつも、何が起きるかを楽しみたいので、びっくり箱のようにコンセプトを考えていますが、今回はノリキ(野力奏一)といっしょに作るということがコンセプトでした。デビュー・アルバム(1990年『ディス・ガール』)のアレンジャーがノリキなんですよね。ここ数年、またいっしょにライヴをやるようになって、“なんかやろうね”と話していました。彼のピアノは昔からすごく好きで、ただ好きというのではなく、笑顔が出るような親しい感じがあります。いっしょに音楽をやっているとベスト・オブ・イーチ・アザーみたいに良さを出し合えるから、すぐ会話できちゃう。同じ曲をやっても、違う音がちょっと来たら別の会話になる。ジャズの良さですね」
――オーケストラ・アレンジのシンセサイザーが効果的です。
 「当初、バックはピアノ・トリオだけのつもりでした。でも、レコーディングしたあと、オーケストラが聞こえてきたんですよね。ノリキは音のチョイスがすばらしい。シンセサイザーであれだけの音を出せる人はなかなかいないと思います」
――選曲はどのようにしたのですか?
 「長年、聴いてきた曲や私にとってエピソードのある曲を選びました。〈めぐり逢い〉や〈ティル・ジ・エンド・オブ・タイム〉は音楽好きのお父さんやお母さんが家でよく聴いていた曲です。〈セイ・イット〉はジャズ・シンガーになった頃、あるジャズ・クラブでお店が閉まる前に必ず流れていました。ジョン・コルトレーンのレコードでしたが、最近、歌詞を見つけて絶対に歌いたいと思ったんです」
――シンガーとして、楽器の奏者から影響を受けることはありますか?
 「古い人だとマイルスとかコルトレーンですね。新しい人ではトランペットで歌っている感じのファブリッツィオ・ボッソが好きです。日野(皓正)さんのグループで北アメリカやアジアをツアーしたときは、身近に聴いていて、日野さんからすごく影響を受けました。バラードがすてきですよ。間がすごくきれい」
――「セーブ・ユア・ラブ・フォー・ミー」はパワフルで、しっとりとしたバラードが多いなか、インパクトがあります。
 「“みんな行け!”って感じで、ワンテイクで録りました。この曲はナンシー・ウィルソンへのトリビュートの気持ちがあります。最初のアルバムを出す前、Body & Soul(ジャズ・クラブ)で歌っていたら、ナンシーが遊びに来たんです。“良かった”と言ってくれて、次の週に“あのときに歌っていた〈引き潮〉を録音したものがほしい”と伝言がありました。ふつうのバラードではなく、8フィールにヘッド・アレンジしたものです。それを録音して送ったら気に入ってくれて、自分のアルバム(1989年『Nancy Now!』)に入れてくれたんです。その後、五反田のゆうぽーとでのナンシーのコンサートを観に行ったら、“次の曲はあるシンガーにインスパイアされました。彼女の名はミス・チャリートです”とMCがあり、椅子から転げ落ちそうになりました。ほかのステージでも毎回、無名の私の名を言ってくださったそうです。本当にグレイトな人はすごいんだなあと思って、ちょっとでも近づきたいと思いました」
――今回のアルバムはパーソナルな思いに満ちていますね。
 「〈慕情〉もそうです。この曲は4〜5年前、旭川でダウン症の方たちのためにフリー・ライヴをやったときに歌いました。2000年から、ビコーズ・ウィ・ケアというボランティア・グループをつくり、孤児院や老人ホームなどで歌っています。施設のスタッフが“ふだんは何をやっても反応を示さない”と言う方が、私の歌を聴くと手を叩いたり、涙を流したりするんです。音楽の力はあります。私にとって、歌うことはすべてがヒューマン・コネクションですよ。それがエナジーになっています」
取材・文 / 浅羽 晃(2012年11月)
CHARITO
『Affair to Remember』 CD Release Live


■ 2012年12月21日(金) 東京 南青山 Body & Soul
〒107-0062 東京都港区南青山6-13-9
03-5466-3348 (17:00以降)

※お問い合わせ: Body & Soul http://www.bodyandsoul.co.jp/

■ 2012年12月22日(土) / 23日(日) 愛知 名古屋 jazz inn LOVELY
〒461-0005 愛知県名古屋市東区東桜1-10-15
052-951-6085

※お問い合わせ: jazz inn LOVELY http://www.jazzinnlovely.com/

■ 2013年2月6日(水) 東京 六本木 STB139
〒106-0032 東京都港区六本木6-7-11
03-5474-0139

※お問い合わせ: STB139 http://stb139.co.jp/
最新 CDJ PUSH
※ 掲載情報に間違い、不足がございますか?
└ 間違い、不足等がございましたら、こちらからお知らせください。
※ 当サイトに掲載している記事や情報はご提供可能です。
└ ニュースやレビュー等の記事、あるいはCD・DVD等のカタログ情報、いずれもご提供可能です。
   詳しくはこちらをご覧ください。
[インタビュー] ジャック・アントノフ   テイラー・スウィフト、サブリナ・カーペンターらを手がける人気プロデューサーに訊く[インタビュー] 松井秀太郎  トランペットで歌うニューヨーク録音のアルバムが完成! 2025年にはホール・ツアーも
[インタビュー] 90年代愛がとまらない! 平成リバイバルアーティストTnaka×短冊CD専門DJディスク百合おん[インタビュー] ろう者の両親と、コーダの一人息子— 呉美保監督×吉沢亮のタッグによる “普遍的な家族の物語”
[インタビュー] 田中彩子  デビュー10周年を迎え「これまでの私のベスト」な選曲のリサイタルを開催[インタビュー] 宮本笑里  “ヴァイオリンで愛を奏でる”11年ぶりのベスト・アルバムを発表
[インタビュー] YOYOKA    世界が注目する14歳のドラマーが語る、アメリカでの音楽活動と「Layfic Tone®」のヘッドフォン[インタビュー] 松尾清憲 ソロ・デビュー40周年 めくるめくポップ・ワールド全開の新作
[インタビュー] AATA  過去と現在の自分を全肯定してあげたい 10年間の集大成となる自信の一枚が完成[インタビュー] ソウル&ファンク・ユニットMen Spyder 初のEPを発表
[インタビュー] KMC 全曲O.N.Oによるビート THA BLUE HERBプロデュースの新作[インタビュー] 魚返明未 日本の新世代ジャズを牽引するピアニストが、新たなトリオでアルバムを発表
https://www.cdjournal.com/main/cdjpush/tamagawa-daifuku/2000000812
https://www.cdjournal.com/main/special/showa_shonen/798/f
e-onkyo musicではじめる ハイカラ ハイレゾ生活
Kaede 深夜のつぶやき
弊社サイトでは、CD、DVD、楽曲ダウンロード、グッズの販売は行っておりません。
JASRAC許諾番号:9009376005Y31015