ハナレグミ   2009/06/23掲載
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 シングル「光と影」に続き、ハナレグミが約4年半ぶりとなるニュー・アルバム『あいのわ』を発表! 盟友・オオヤユウスケをプロデューサーに迎え、東京スカパラダイスオーケストラBOSEスチャダラパー)、AFRA、マダムギター長見順といった個性豊かなミュージシャンとともに作り上げられた今作は、聴き手の琴線を優しく揺さぶるメロウネス、メラメラと燃え上がるようなソウルネス、そして小学生顔負けの無邪気ネスといった、ハナレグミ=永積 崇の内面が濃厚なるままに封じ込められた“入魂”の一枚に。今回の『CDJournal.com』SPECIALでは、アルバム・インタビュー、本人のコメントを交えた全曲解説、ルーツ・ディスク紹介という3本の企画を通じて、ハナレグミの魅力をたっぷりとお届けします!


聴いた人が、“この人、めちゃめちゃ、もがいてるな”って
思うような作品を作らなくちゃダメだと思った


――ついにアルバムが完成しました。
永積 「いや〜、長かったね。今回は、なんだかんだで1年ぐらいかけて作ったから。作業が終わったあとは完全に抜け殻みたいな状態になっちゃって。しばらくボーッとした状態が続いてたからね。こないだも川に落っこっちゃったし(笑)」

――えー!? なんでまた川に……。
永積 「気持ちを鎮めようと思って、車を飛ばして、多摩川にあるお気に入りの河川敷に行ったの。そこで顔を洗おうと思って、ふら〜って川に近づいたら、足を滑らせてドボーンって(笑)。真夜中だし、周りに人もいないし、あれは、めちゃめちゃ焦りましたよ(笑)。携帯が無事でよかった(笑)」

――ダハハハ。それぐらいレコーディングの余波を強烈に引きずっていたと(笑)。
永積 「そうそう(笑)。今回のレコーディングでは、体力、気力ともに使い果たした気がするね」

――1年前に制作を始めたってことは、ちょうどSUPER BUTTER DOGの解散を決意した時期に重なるのかな?
永積 「そうだね。バンドの解散に関してはスパーンと割り切れていたところがあったんだけど……今、思うとやっぱり自分の中で、複雑な気持ちがあったのかも。ポジティヴな解散だって頭では理解できてるはずなのに、車を運転してる最中、突然、号泣しちゃったり。すごく自分の気持ちが揺れてる時期だったんだよ。あとは、世の中的にも、秋葉原の事件があったりだとか、自分を取り巻く世界が急激に変化している気がしたんだよね。どこか大きな渦の中に巻き込まれようとしている感覚というか。だから今回のレコーディングはパッと録って、“いいね、いいね”っていうものにはならないような気がした。自分の弱い部分も自然と出てくるだろうし、むしろ、そういう部分にこそ、しっかり向き合わなくちゃいけないなと思って。聴いた人が、“なんか、この人、めちゃめちゃ、もがいてるな”って思うような作品を作らなくちゃダメだと思ったんだよ」

――オオヤユウスケくんにプロデュースを頼んだのも、そういう理由から?
永積 「とにかく泥臭いレコーディングになると思ったから、徹底的に付き合ってくれる人と一緒にやりたいなと思った。そこで真っ先に思い浮かんだのがオオヤくんだったんだよ。付き合いも長いし、自分の強い部分も弱い部分も思い切り出せるんじゃないかと思って」

――実際、一緒に作業してみてどうだった?
永積 「オオヤくんは俺のやりたいことを最初からすごく理解してくれて。だから、そのぶん、めちゃくちゃ厳しかったよ(笑)。“この曲で誰かに打ち込みをお願いしようよ”って提案したら、“だったら自分たちでやってみたほうが面白いんじゃない?”とか言われたり(笑)。今回のレコーディングでは、簡単に手に入れられるようなものをそうやって全部、排除していったんだ。綺麗にまとまった感じよりも、いっそ0点を叩き出そうって(笑)」

――“0点を叩き出す”って(笑)。
永積 「凄いっしょ(笑)。あのね、技術的に優れたミュージシャンに頼めば、“100点”って、案外、簡単に取れちゃうんだよ。でも、“0点”を叩き出すのって、実はめちゃくちゃシンドイんだよね。今回のレコーディングで目指した“0点”っていうのは、自分の底のほうにある、まだ見たこともないような答えだから。それを見つけることって、自分と徹底的に向き合う作業でもあって。気力も体力も、すごく消耗されるんだよ」

――そうなってくると、一緒に演奏するミュージシャンも“0点”を面白がってくれる人たちじゃないとレコーディングそのものが成立しないよね。
永積 「無理、無理。でも、スカパラだったり、順ちゃん(長見順)だったり、BOSEさんやAFRAだったり、今回、参加してくれたミュージシャンは、みんな、感覚的な部分を共有できる人たちばかりだから。そういう意味でも、これまでの4年半は大きかったね。このアルバムは、4年半の間に関係を深めたアーティストに支えられた作品でもあるんだよ」


痛みや苦しみを越えていかないと、
本当の感動には巡りあえないような気がするんだよね


――ハナレグミを“癒し系”みたいなイメージだけで捉えてる人って結構、多いと思うんだけど、そういう人たちが今回のアルバムを聴いたら、相当びっくりすると思う。あまりの濃さに(笑)。
永積 「そうかもね(笑)。今までで一番、いろんな表情が出ているアルバムだと思うし」

――楽曲のバリエーションも幅広いし、いわゆる“フォーキー”なアルバムではないよね。
永積 「全然、違うと思う。イメージとしては、マイケル・ジャクソンの『スリラー』みたいな感じを目指したんだよ」

――『スリラー』!?
永積 「うん。トータルの収録時間は短いんだけど、めちゃめちゃ濃いアルバムにしようって。実は今回、曲のストックが結構たくさんあったから最初は2枚組にする案もあったんだけど、1枚に猛烈に濃い曲を思い切りぶちこめる機会なんて、そうそうあるもんじゃないし、この際、めちゃくちゃ凝縮してやろうと思って。でもね、このサイズ(9曲入り/約50分)にして本当に良かったと思う。これ以上、長かったらたぶん濃すぎて聴けなかったと思う(笑)」

――確かに(笑)。ただでさえハナレグミの曲って、聴いてるうちに、ぐーって曲の世界に入り込んじゃうから。
永積 「そうなんだよ(笑)。だから、これくらいがちょうどいい。特に自分が書くような歌詞は何度も聴いてもらうことで、徐々に意味が伝わるようなところがあると思うのね。そういう意味でも、何度も繰り返し聴いてもらえるような作品にしたくて」

――あと今回、ヴィジュアル面での変貌にも、びっくりしてる人が多いと思うんだけど(笑)。前は、こう、もうちょっと渋かったというか(笑)。
永積 「はははは。そうだね。今回のレコーディングでは自分の感覚だけを頼りに、すべてを進めてきたところがあったんだけど、衣装に関しても、まったく同じことが言えて。なんかね……あるとき、突然、“めちゃくちゃド派手な衣装を着たい!!”って思ったんだよ(笑)。誰にも真似できないようなブッ飛んだ衣装を。それで仲のいいデザイナーのコに自分のイメージを伝えて作ってもらったんだけど、いざできあがってきたものを見たときに、“派手すぎたかな……”って、一瞬、ビビっちゃってさ(笑)」

――頼んだはいいけど(笑)。
永積 「そう(笑)。でも、時間が経つにつれて、どうして自分がそういう衣装を身につけたかったのかが段々分かってきたんだ」

――それって具体的に言うと?
永積 「たぶん何かからハミ出したかったんだろうね。それによってビビッたり、“やっぱりオッケーだ!”とか、1個1個、自分の気持ちを確認したかったんだと思う。で、そういう過程を経る中で見えてくるものって、自分にとって、すごく揺ぎないものだったりして。たとえば、〈光と影〉のプロモーション・ビデオを作るとき、最初、映像監督からは、暗いところと明るいところの両方で歌うっていうイメージを伝えられたんだけど、俺はそれだと言いきれてないような気がしたんだよ。“陰と陽”とかっていうけど、人の喜びとか悲しみって、決して白黒だけでは表現できないと思う。すごく喜んだり、悲しんだりする感情って、“感じ、動く”ってことだから、俺は全部、感動だと思う。要するに感動っていうのは、いろんな感情の色が混ざり合って、すごくカラフルなんじゃないかな。このアルバムでは、そういうことを表現したかったし、今回、俺が突然、ド派手な衣装を着たいと思ったのも、実はそういう意識の表われだったのかなって。それが、あとになって徐々に分かってきて、めちゃめちゃ感動したんだよね」

――無意識にすべてが繋がっていたっていう。
永積 「自分がギリギリのところから発したことっていうのは最終的に全部、繋がってるんだなっていうことが分かった。それって、ひとつの形の中に収まってたら、絶対に分からなかったことだと思うし、だからこそ、これまでのイメージなんて、むしろ、どんどん、ぶっ壊れてくほうがいいなと思って。過去の自分と今の自分とが、一瞬かけ離れているように見えても、その間には、きちんと両方を繋げる線があると思うから。それが実感として分かったからこそ、今は“何をやっても大丈夫だ”って思えるんだ」

――今後、さらに自由な感性で音楽に向き合えそうな気がする?
永積 「そうだね。“ナシ”だったものが“アリ”になる瞬間って、すごく楽しいし、感動的なものだから、これからも自分が知らない自分を探っていきたいなと思う。それって自分の弱さだったり嫌な部分を直視することにも繋がってくるから、決して楽な作業ではないんだけど。でも、痛みや苦しみを越えていかないと、俺は本当の感動には巡りあえないような気がするんだよね」



取材・文/望月哲(2009年5月)






ハナレグミ全国ツアー〈TOURあいのわ〉
●9月10日(木)
●石川県・金沢市文化ホール
●開場18:30/開演19:00
●料金:5,775円
●問い合わせ:FOB金沢 [Tel]076-232-2424

●9月12日(土)
●香川県・アルファあなぶきホール・小ホール
●開場17:30/開演18:00
●料金:5,775円
●DUKE高松 [Tel]087-822-2520

●9月16日(水)
●愛知県・愛知勤労会館
●開場18:30/開演19:00
●料金:5,775円
●サンデーフォークプロモーション [Tel]052-320-9100

●9月17日(木)
●広島県・アステールプラザ大ホール
●開場18:30/開演19:00
●料金:5,775円
●夢番地(広島) [Tel]082-249-3571

●9月19日(土)
●福岡県・福岡国際会議場メインホール
●開場17:30/開演18:00
●料金:5,775円
●キョードー西日本 [Tel]092-714-0159

●9月24日(木)
●大阪府・大阪厚生年金会館
●開場18:30/開演19:00
●料金:5,775円
●SOGO OSAKA [Tel]06-6344-3326

●9月25日(金)
●大阪府・大阪厚生年金会館
●開場18:30/開演19:00
●料金:5,775円
●SOGO OSAKA [Tel]06-6344-3326

●9月27日(日)
●新潟県・新潟市民芸術文化会館 劇場
●開場17:30/開演18:00
●料金:5,775円
●FOB新潟 [Tel]025-229-5000

●9月30日(水)
●宮城県・仙台電力ホール
●開場18:30/開演19:00
●料金:5,775円
●ノースロードミュージック [Tel]022-256-1000

●10月4日(日)
●沖縄県・沖縄ミュージックタウン音市場
●開場17:00/開演18:00
●料金:5,775円
●ピーエムエージェンシー [Tel]098-898-1331

TOURあいのわ
「タカシにはその器はないんじゃないかしら・・・」
と母は言ったのであった。
●10月28日(水)
●東京・日本武道館
●開場17:30/開演18:30
●料金:6,300円
●ディスクガレージ [Tel]03-5436-9600
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