「今はぷかぷか浮いてる感じです」――2ndアルバム『E・I・E・N VOYAGE』発売記念・星野みちるロング・インタビュー

星野みちる   2014/07/23掲載
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 元AKB48のメンバーにして、グループ脱退後はシンガー・ソングライターとして活動を続けてきた星野みちる。2012年からは7inchシングル+CDという独自の形態でシングルをリリース、また2013年には名盤の誉れも高い1stアルバム『星がみちる』を発表するなど、DJ / サブカル界隈をも巻き込んで注目を集めている彼女にプロインタビュアー吉田 豪が直撃! 星野みちるのパーソナルな魅力にとことん迫ったロング・インタビューをお届けします。
「最初はシンガー・ソングライターって名乗ってたんですけど、見る人がアイドルだと思って見てるんだったら、それはそれでいいかなって」
2ndアルバム『E・I・E・N VOYAGE』通常盤
星野みちる(以下同) 「豪さん、これよかったら聴いてください(2ndアルバム『E・I・E・N VOYAGE』一式=通常盤&限定盤&アナログを渡す)」
――うわ、ありがとうございます! デビュー・アルバム『星がみちる』は限定盤が会場か通販でしか買えないって聞いて通販を申し込んだんですけど、名前を見てボクが頼んだことがすぐバレちゃったんですよね(笑)。
 「あはは!」
――それで、すぐ担当の人からFacebookで星野さんのライヴに誘われて、サリー久保田さんデザインのマフラータオルとか買って帰りました(笑)。
2ndアルバム『E・I・E・N VOYAGE』CD+DVD限定盤
メーカー担当者 「豪さんには7月27日の〈星野みちるの黄昏流星群〉のトークショーでもお世話になるんですよね。今、プロデューサーのはせはじむと話していて、当日は架空の制作会議みたいにしようと思ってるんですよ。“今後、星野みちるをどうやって売ろうか?”みたいな」
――それ、僕も一緒になって考えるんですか?
メーカー担当者 「むしろ豪さんの提案が欲しいっていう」
――でも、僕に話を振ったらデタラメでひどいアイディアしか出てこないですよ。星野さんをどんどん追い込んで、その裏側を撮るドキュメンタリーを撮りましょうとか(笑)。
2ndアルバム『E・I・E・N VOYAGE』LP限定盤
 「あははは! やー、恐い!」
――今回のアルバムが何枚売れなかったらペナルティだとか言って追い込んで、星野さんが過呼吸で倒れたりする様を撮る、ドキュメンタリー・オブ・元AKB48(笑)。そんなのでもいいんですか?
メーカー担当者 「はい(笑)。いちおう司会は入れますんで、自由に話していただけますと」
 「よろしくお願いします!」
――……という、今の打ち合わせ部分も原稿ではそのまま使いますけどね(笑)。
 「え! もうインタビュー始まってるんですか!」
――もちろんです! 早速ですけど、星野さんはどうすれば自分がもっと売れるのかとか考えることあるんですか?
 「いやぁ、私はもうなりゆき任せです。流れに身を任せてきちゃったんで」
――基本それですよね。もともとシンガー・ソングライターとして地道に活動してきて結果が出せなかったから、もう身を任せようってスタイルになって、今に至るっていう。
 「そうです。今はぷかぷか浮いてる感じです」
――でも、浮き心地はよさそうですよね?
 「はい。とても」
――自分のやりたいことと現状がどういうバランスになってるかっていうのは、ちょっと気になる部分なんですけどね。
 「でも、今は作ってもらってる曲とか音とか自分でも気に入ってるので、歌ってて楽しいです」
――ぷかぷか浮きながらも楽しんでる感じは伝わってくるというか。以前、ボクが杉作J太郎さんとやってるDOMMUNEの『JGO』という番組に出てもらったときも、通常だったらゲストの人は歌ってもらったらすぐハケてもらうんですけど、星野さんは最後までボクらの隣で楽しそうに番組に参加して(笑)。
 「ははは。すいません(笑)」
――でも、すごくやりやすかったんですよ。中学生とか高校生のアイドルが来ると、会話の内容を選ばなきゃいけなくなるんですけど、星野さんはあんまり気を使わなくていいんで。そこが楽なんですよ。大人だし。
 「はい。大人です!」
――〈やついフェスティバル〉でのボクと杉作さんのトークイベントも、ずっとご覧になってましたよね?
 「はい。結構過激でした。でも、すごいおもしろくて手を叩いて笑っちゃいました!」
『NO MUSIC, NO IDOL』ポスター
――あれを楽しめるのは大人です! ちなみに最近、星野さんがタワレコの『NO MUSIC, NO IDOL』のポスターになって“アイドル?サブカル?私は私です。”っていうコピーを付けられてましたけど、肩書き的には今、自分ではどんな認識なんですか?
 「なんですかね? 最初はシンガー・ソングライターって名乗ってたんですけど、周りからは“アイドル”って、いまだに言われるので、見る人がアイドルだと思って見てるんだったら、それはそれでいいかなって」
――“私のこの年齢でもいいのであれば、乗ってみましょうか”って。
 「(ポスターを指して)28歳であれができるとは思わなかったです(笑)」
――でしょうね。同じ時期、同じグループにいた人たちは、アイドル的な世界からどんどん脱却しつつある中、ひとりだけあえてアイドルのド真ん中にもう一度突っ込んでく感じがして(笑)。
 「離れたと思いきや、また戻ってきて(笑)」
――でも、そんなに違和感ないじゃないですか。
 「ホントですか? 大丈夫ですか?」
――大丈夫です! それこそTIFとか出ても全然おかしくないぐらいで。
 「たぶん出てたら最年長です(笑)。今はどこにいっても最年長で。対バンでいろんなアイドルの方々と会うと、みんな10代とかなので。下手したら10歳ぐらい違うんですよ」
――10歳ぐらい違うアイドルの人たちと会話の接点はありますか?
 「ないです(あっさりと)。みんなグループなのでメンバー同士ワイワイしていて、わたしはひとりで、年も上だし、だからずっと椅子にうつむいて座ってるんです。そしたらNegiccoさんやEspeciaさんがお菓子の交換を始めて、私のところにも“食べますか?”ってポッキーを持って来てくれて」
――ささやかな交流が(笑)。声をかけてきたのが、いい人感の強いその2組なのが納得できますね。
 「嬉しかったです(笑)」
――年齢って気になります?
 「気にしてないです。年齢を重ねたほうが、歌詞だったり歌い方に深みが出たりするのかなって思って。見た目は落ちてく一方ですけど(笑)」
――ダハハハハ! 落ちてますか?
 「落ちてます、いろいろ」
――いや頑張ってますよ。全然、戦えてますよ!
 「戦えてないです(笑)」
――じゃあ、そのぶん歌なりなんなりで補おう、と。
 「はい」
――でも、本当にいい感じの流れだと思いますよ。どうですか? ニューアルバムができてみて。
 「宇宙っぽい感じで仕上がったんですけど、“星”野なので、そこを絡めていって。新しい曲も4曲入ったので、そこらへんも聴いてほしいです」
1stアルバム発表時のアーティスト写真
――1stアルバムのときの宇宙服みたいな衣装はあからさまに暑そうでしたけど、今回のはあれよりはマシな感じで?
 「あの衣装は暑かったです! 今回は半袖なので、夏も乗り切れそうです(笑)」
――前回の衣装でのライヴを見て、これは地獄だろうなと思いました。
 「ほんとに地獄でした(笑)」
――ライヴ中に暑そうな衣装を突然脱いで、そのまま面倒くさそうに放り投げて歌ってたから、“ああ、こういう感じの人なんだ”とも思って(笑)。
 「暑すぎて“やってらんないよ!”って(笑)。今回は大丈夫です!」
――素朴な疑問ですけど、宇宙は好きなんですか?
 「私はそんなに好きじゃないです(あっさりと)」
――やっぱり(笑)。70〜80年代のSF的な感じとかはカッコいいなと思います?
 「はい。最初は全然ピンとこなかったんですけど」
――“なんで、こんな宇宙服みたいなの着て歌わされるの?”って。
 「プロデューサーさんたちが宇宙好きなんで」
――それで宇宙とシンセサイザーが好きな人っぽいジャケになって。
 「実際、宇宙っぽいのを見たりすると“あ、宇宙っていいんだな”って思います」
――ホントそういうコメントもフワフワ浮いてますよね(笑)。
 「こういう曲もいいなーって」
――シティポップ風の曲とか大瀧詠一風の曲とか。
 「いろいろあって楽しいです」
――そういうのを自分でも聴いてみたりしますか?
 「そうですね。サンバとかシティポップとかやることになって、自分でもいろいろ聴いてみたりしました」
――どうでしたか?
 「……………………うん」
――って感じですか(笑)。
 「いろんな音楽があるんだなって」
――やっぱりフワフワした感想じゃないですか(笑)。
 「最初のシングルの〈いじわるダーリン〉のときもエレポップって言葉を知らなくて、“エレポップってなんですか?”って誰かに聞いたときに、“ピコピコした感じの音楽だよ”って言われて」
――そのとき自分の中でどういうものが思い浮かんだんですか?
 「Perfumeが思い浮かびました」
――でも、彼女たちは“エレポップ”じゃなくて“テクノ”と呼ばれてる感じがするじゃないですか。
 「そうです。で、エレポップのオススメの曲をプロデューサーさんからたくさん渡されて」
――どんなのを渡されたか覚えてます?
 「……なんだろう」
――全然覚えてないんですね(笑)。外人でした? 日本人でした?
 「外人でした。……音楽の詳しいことは……触れないでください(笑)」
――ダハハハハ! 全然大丈夫ですよ! 基本、アコースティックの弾き語りの人だったわけですもんね。
 「そうなんです。ピアノの音しか知らなかったんで、ギターひとつでもいろんな音が出るんだとか」
――まだその段階なんですか(笑)。
 「そうなんです。ベースのリズムもドーンドドーンだけじゃないんだなとか。……この話、やめましょうか(笑)」
――フワフワしてて最高に面白いじゃないですか(笑)。じゃあ、今やってるような音楽って本当に未知の世界なんですね。
 「毎回、未知です」
――自分で曲を作ってピアノを弾いて演奏していた人が、音楽的な接点のまったくない人たちの中に入れられて、ぷかぷかと流れに身を任せてみたら意外と反応が良かった、と。
 「はい。嬉しいです、そこは」
――何か目に見えて反応の違いとか感じました?
 「ツイッターでの反応がいちばんわかりやすいですね。自分で“星野みちる”で検索して。全然知らない人が“星野みちるの曲いい”とか、“あの曲のオマージュだ”みたいなことを書いてくれていて」
――“あの曲のオマージュ”っていう言葉の意味が、そもそもわかってなさそうな気がしますけど(笑)。
 「“オマージュ”って言葉は最近知りました! “お手本”みたいな意味ですよね?」
――……微妙に違う気もしますけど、だいたいそんな感じです(笑)。
 「そんな感じで、ツイッターを見てると、いろんな意見が出てくるので、全然知らない人も反応してくれるんだなって、すごく嬉しい気分になります」
――自分でエゴサーチとかしてみて、まだそんなに恐い反応とかはないですよね。
 「こないだツイッター見てたら、“星野みちるの楽曲はA級だけど、ルックスはC級だ”みたいなことが書いてあって。でも、わたし、悪口とかあんまり気にしないので」
――ああ、気にしなそうですよね。
 「はい。逆に“星野みちる、クソババア”とか、そういうのを見ると嬉しくなります」
――なんですか、それ(笑)。
 「“言われてる、言われてる”って。AKBにいたときからそうなんですけど、2ちゃんねるとか見て、他の子は“悪口を言われてる”とか泣いたりしてたんですけど、私は“なんで、あんなババアがいるんだ”とか書いてあると、なんか嬉しくなっちゃって、お母さんに“見て! 見て!”って教えたりして」
――なんでお母さんにまで見せるんですか(笑)。お母さん、ヘコみますよ!
 「でも、お母さんも楽しそうでした。“あら、言われてる。やだ〜!”とか言って」
――届いてることに対する喜びなんですかね?
 「そうですね。反応がないよりあったほうがいいし、あんまり気にしないです」
――その頃から“ババア”って言われてるんだったら、もう慣れてますよね。
 「“もう知ってますよ”って(笑)」
――“何年言われてると思ってるんですか?”ぐらいの感じで。何かシンドイなと思うこととかあります? 体力的に落ちてきたとか。
 「体力は昔からなかったので」
――じゃあ大丈夫ですね。
 「いやいや(笑)。新しいアルバムができてツアーが決まって、体力がないからちょっと心配なんですけど」
――心配するだけですか?
 「いやいや、走ってます。一番嫌いなランニングをやったり、一人でスタジオに行って歌いこみをしたり。そういうのは地道にやってます」
――ちゃんとやってるじゃないですか!
 「でも、不安です」
――そんなに長いライヴとかやったことないんですか?
 「ないです。特に27日の東京のイベントはすごく長丁場なんで」
「(AKB48に残っていたら)酒が進んでしょうがない! 絶対にやさぐれちゃいますね。だから抜けてよかったです」
――7インチ連続リリースもすごくよかったですよ。
 「ありがとうございます。みなさんのおかげです」
――念のために聞いときますけど、レコードプレイヤーは持ってないですよね?
 「……もうすぐ買うところです」
――買う気はある(笑)。
 「はい。いい加減買いなさいって、いろんな方に言われていて」
――普段はどんな音楽を聴いてるんですか?
 「最近、全然CDを買わなくなってしまって、私のiPodに入ってる曲って、昔誰かが“いいよ”って言ってくれて、借りた曲しか入ってないんですよ」
――ひどいですね、それ(笑)。
 「それをずっと聴いてます」
――主にどのへんですか?
 「ウルフルズが好きです、今は」
――今(笑)。昔、借りたウルフルズの曲を今聴いてるんですね。
 「はい。あとはミスチルとか」
――15年ぐらい時間が止まってる感じがしますね。
 「自分で買ったのはMISIAさん……」
――それも15年ぐらい時間が止まってる感じがしますね。
 「あと、宇多田ヒカルさん」
――やっぱり15年(笑)。
 「でも、一番新しいのはJUJUさんの、なんか2個あったやつ。それは自分で買いました」
――すごいですね。シンガー・ソングライターとは思えない、ぼんやりトークで(笑)。
 「ダメダメなんですよ」
――でも、グループを抜けてシンガー・ソングライターとしてソロでやっていこうと思ったときは、志とか相当高かったんじゃないですか?
 「高かったですね。絶対に売れてやるとか思ってたし。AKBより評価されたいとか」
――そこと比較って結構キツいですよね。セールスでは負けるだろうけど、内容で勝負だ、みたいなことなのか。あ、でも星野さんが辞めた頃って、まだギリギリ勝負できるぐらいの時期だったんですね。
 「そうですね。まだ爆発的に売れる前だったので。絶対に見返してやりたいとか思ってたんですけど、あっという間に国民的アイドルになって」
――あっさり返り討ちにあって(笑)。
 「すごいなーって見上げちゃいました(笑)」
――ただ、前もおっしゃってましたけど、グループを辞めたことは後悔してないんですよね。
 「ないです」
――もうちょっと在籍しても良かったかな、とか。
 「いやぁ、ないですね。もうちょっといたら水着のPVとか出なきゃいけなかったので。あと総選挙とか始まるんで」
――つまり、おもしろくなってくる時期じゃないですか。
 「いやいや(笑)。私は絶対に呼ばれない組なので」
――アイドル・イベントのときの控室みたいに、ただうつむいて。
 「最初から呼ばれないってわかってるから、堂々としてると思います(笑)。あんな世間に自分の順位があからさまにされるのは、私は無理です」
――新しいAKBのドキュメント映画でも、大組閣で同じチームだった人たちがまた同じになれて喜んでいるとき、唯一呼ばれない人がプルプル震えて倒れていく様子とかが映ってて、恐くなりましたよ。
 「えー! 倒れちゃうんだ!」
――星野さんがそこに入ってたら、どうなってたんだろう?って。
 「いやぁ。酒が進んでしょうがない!」
――ダハハハハ! それはそれで楽しそうじゃないですか! 2ちゃんでも見ながら、“酒が進むわ〜”って(笑)。
 「絶対にやさぐれちゃいますね。だから抜けてよかったです。今は一人なんで、比べられる対象がいないし。グループだと2人でも比べられるじゃないですか」
――握手会とか顕著ですよね。一人だけ握手が先に終わって暇そうにしてるアイドル・グループの子とか見ると切なくて。
 「わたし、ホントそうでしたもん。今は一人なんで、ファンの方もスタッフさんも私だけを見てくれるので、とても気持ちがいいです!」
――なるほど(笑)。
 「気持ちいいっていうかヤル気になります。誰かいると頼っちゃうところもあるし、“どうせ私は……”みたいなやさぐれ感も出てしまうので」
――でも、こういう活動をしてると何が起こるかわからないじゃないですか。突然“やっぱりコンビにするぞ”とか言われて、若くて音楽知識もある子と組まされるかもしれないし。
 「そしたら負けます(笑)。ユニットとかはもういいです。一人がいいです」
――でも、今は楽しくやってる感じが伝わってきますよね。お酒は進みますか?
 「今は楽しくて進みます。楽しい酔っ払い方です」
――一時期はAKBの映像を見るのもしんどいっていう時期があったみたいですけど。そういうときは、お酒も悪いほうに進む感じだったんですか?
 「はい。友達に会っても“今、AKB凄いよね”とか“なんで、もうちょっといなかったの?”とか、そういう話になったりして」
――まあ、そういういじり方になるでしょうね。
 「親戚と会っても、そういう話になったんで。“もったいないな、みちるは。なぁ”とか言われて(笑)。そういうのはイヤでした」
――“あのままいてくれたら紅白とか出れたんじゃないの?”って。
 「出れたとしても、マイクとか持たしてもらえなかったでしょうし。だから、いいんです」
――現状ストレスなくやれてる感じですからね。
 「ただ、やっぱり作詞が難しいです。自分でも歌詞を書いてるんですけど、プロデューサーさんから“全然ダメ”って言われてしまって。それで、うーってなったり」
――ちなみに、どういう作詞家が好きとか、どういう本が好きで作詞に影響を受けたとか、そういうの何かありますか?
 「歌詞の書き方が全然わからないので、いろいろ調べたり、本をなるべく読むようにしてるんです。今まで全然読まなかったので」
――全然ですか?
 「小説だとか、感情を掻き立てられるような本を読んだりしてるんですけど、最後まで読めないんです」
――つまり、文字だけの本を最後まで読むのはしんどい(笑)。
 「小説って最初の数ページで景色の描写とか細かかったりするんで、そこでまず疲れちゃうんですよ。で、登場人物がごちゃごちゃになってきて、あと漢字が読めなくて飛ばしてたりすると、内容がわかんなくなって、いつも諦めちゃうんです」
――最後まで読みきった本はありますか?
 「全然覚えてないです」
――ひどい(笑)。
 「たくさん読んだんですけど。あ! さくらももこさんの本は最後まで読めました」
――ただのおもしろエッセイじゃないですか!
 「あの本は最後まで読めました」
――小学生でも読めますよ(笑)。作詞する上で影響を受けた部分はありますか?
 「いや、笑って終わっちゃいました。“読めた〜”って」
――ダハハハハ! でも、そういう話を聞いてると、星野さんって性質的にはやっぱりアイドルですよ。
 「そうなんですか?」
――たまに10代のアイドルとかと話してると“縦書きの本って読めないんです”とか、“読みがなをふってない本を初めて読めました!”とか普通に言われるんですよ。音楽的な“やらされてる感”も含めて、この感じはかなりアイドル性が高いと思います。
 「中身は10代です(笑)」
――だからこそ星野さんの文化的な部分を掘り下げていくのは面白いですね。
 「一番掘り下げてほしくないところなんですけど(笑)」
――じゃあ、どこを掘り下げてほしいですか?
 「なんだろう。なんにもオモシロ話がないんですけど」
――でも、ライヴのMCはおもしろいですよ。
 「いやぁ。喋るのが一番苦手なんですけど、なぜかおもしろいって言われるんですよ」
――なんか投げやりな感じが漂ってきて笑えました。
 「ステージに出る前はすごい緊張するんですけどね」
――最近、ラジオも始めましたけど、やってみてどうでした?
 「ラジオは20分なんですけど、普段の喋りじゃ絶対にダメなんだろうなって。たぶんそれだと聞こえないだろうし」
――声を張らなきゃいけないし。
 「すごく頑張ってます。めいっぱいテンションを上げて」
――内容を事前に考えたりするんですか?
 「一応台本があるんですけど、喋る内容を事前にノートに書いたりしてます」
――ネタ帳に。もしかして、目の前に置いてあるそのノートですか?
 「これは違います。これは絵とか書いてあるんですけど」
――そこに“今回のアルバムは”とか書いてあるんですか?
 「はい(笑)。取材で話そうと思ったことが書いてあるんですけど、さっきから全然聞かれないんで」
――そういう取材は基本やらないんで。
 「そうなんですね」
――(突然)それ、読んでくださいよ。
 「えっ!」
――せっかくですから。どうぞ。
 「じゃあ……はい。“昨年の1stアルバム『星がみちる』同様、宇宙、旅、旅行がコンセプト。今年いろいろなジャンルの曲に挑戦して、昨年からの集大成みたいになったアルバム。聴いてどこかに行きたくなるようなアルバム”」
――……という内容をうまいこと発言に入れようとしてるんですね。ご自分では、アルバムを聴いて、実際どこかに行きたくなったりしました?
 「はい……そうです……ね」
――なってないですね(笑)。
 「いやいや(笑)。最近は旅行に行ってないので、どこかに行きたいなとは思ってます」
――どこに行きたいですか?
 「そうですねえ、温泉とか」
――年齢を感じさせる発言ですね(笑)。
 「露天風呂とか。美味しいものを食べて、あとはマッサージを呼んじゃったりして」
――ファンの人と行く温泉ツアーとか。
 「えっ……なんで?」
――ダハハハハ! “なんで?”(笑)。
 「すいません。ひどいですよね(笑)」
――まあ、確かにイヤですよね。息抜きしたいのに、ファンの人がいたら全然息抜きできないですから。
 「仕事ではちょっと(笑)」
――最高の答えですよ、“なんで?”は(笑)。
 「やぁ、恥ずかしい……」
――いい具合にポンコツですよね。
 「ポンコツすぎますね。同年代の友達とかと会っても、恥ずかしくて喋れないです。久しぶりに中学の同級生とかに会ったりすると、みんな立派に働いてるし、結婚したりしてて。“今度、店舗を任されて店長やるんだ”とか、そういう話ばっかで、しょぼんとしちゃいます」
――そういう話してる横で、“さくらももこの本を最後まで読めた!”とか、レベルが違いすぎますよね(笑)。
 「ちゃんとしなきゃなって思います。料理とか」
――ニコ生で特訓してるんですよね。料理はできるようになってきたんですか?
 「……はい」
――力のない答えですけど(笑)。
 「たまたまできるときがありますね。作ったことのない料理ばかり作るんですけど、わかんなくて毎回めちゃくちゃに作ってたら、まぐれで美味しくできたりして。上手くいったのは……なんだっけ?」
――知らないですよ(笑)。
 「ハンバーグが美味しかった。……あ、肉じゃがだ」
――全然違うじゃないですか(笑)。でも、肉じゃがとかカレーって料理の範疇に入らないぐらい簡単に作れるものじゃないですか。
 「そうなんですか? えー! 男の胃袋の三大アレですよ」
――三大アレって。言えてないですよ(笑)。
 「肉じゃがが美味しくできて嬉しかったです。ちょっとずつ、できてきます」
――いろんなことが。本もちょっとずつ読めるようになってきて。
 「はい。……こういうこと原稿に書かないでくださいね(笑)」
――こういうことこそ書きたいんですよ! こういうことを書くのがボクの仕事です(笑)。
 「読んだ人が、どんだけひどい子なんだって思いますよね(笑)」
「(あまり音楽を知らないことを)プロデューサーさんは薄々感づいてたみたいです。今はバレバレで、“みちるちゃん!”って言われます(笑)」
――ちゃんとしたところも出しましょうよ。ピアノの話とかしますか?
 「ピアノ……」
――アピールしたいポイントとかないんですか?
 「いやぁ、ないんですよね」
――昔から特技を聞かれたら、どんなふうに答えてたんですか?
 「絵を描くとか」
――さっきのノートに描いてましたね。見せてくださいよ。
 「(ノートを見せながら)これ今度のライヴのバックで流すVJで使われる絵なんですけど。それの下書きです。可愛い感じに描いていて。でも最後、化け物みたい」
――ですよね、完全に(笑)。化け物がふわーっと浮いてるような。
 「これはライヴで流します」
――特技は“絵”。影響を受けた人はいますか?
 「さくらももこさん」
――ダハハハハ! また、さくらももこ!
 「『ちびまる子ちゃん』がホントに好きで、唯一単行本を集めた漫画なんです」
――唯一。ほんとに文化的な部分が弱そうですね。
 「漫画とかも読まなかったので。唯一、『ちびまる子ちゃん』にハマっちゃって」
――漫画は読まない、音楽もそんなに聴かない。
 「なんなんですかね、わたし(笑)」
――他に何か文化的な部分はありますか?
 「映画も頑張って観るようにしてます」
――どういう映画が好きなんですか?
 「恋愛モノが好きです。こないだ『ロボコップ』を観ました」
――恋愛モノから話が飛びましたけど(笑)。『ロボコップ』はどうでした?
 「興奮しました。その前は、藤原竜也さんの『藁の楯』っていう映画を観て。パンパンパンみたいな。すごい殺人な感じで」
――殺人な感じ(笑)。
 「……なんか変な汗かいてきました(笑)」
――ちなみに今まで演技の経験は?
 「1回だけあります。AKBにいたとき『伝染歌』っていう映画があって」
――ああ、主題歌も担当してましたよね。
 「そのときにたまたま、オバケの五井道子役の人が急遽出られなくなって、急に私に“主題歌を歌ってくれ”って話が来て。映画もちょっと出てほしいってなって。それで1回だけ出ました」
――普通に考えたら、めちゃくちゃいい流れじゃないですか。
 「一言だけセリフがありました。“ありがとうございました”って」
――え? それだけですか?
 「最後、成仏して“ありがとうございました”って。すごい棒読みなんですけど(笑)。あと、後ろ姿で歩いていくシーンだったんですけど、おしりのデカさが気になって。友達も笑ってました」
――これは水着にはなりたくないって。
 「人様には見せられないです!」
――そして演技もやらないほうがよさそうだって。
 「演技は危険です! 難しいですよね、演技って。セリフも覚えなきゃいけないし、立ち位置も決められたとおりにやらなきゃいけないし」
――実はボク、映画に10本くらい出てるんですよ。
 「すごい!」
――ひどいですけどね。カンニングとかして。
 「カンニング?」
――事務所で取材を受けてる設定の撮影だと、パソコンの画面にセリフを打ち込んでおいて(笑)。記者の役だと、手帳の中に全部セリフを書き込んだり。プロじゃないから、ひどいことやってますよ。
 「役に入り込むにはどうしたらいいんですか?」
――ボクに聞くのは間違ってますよ(笑)。ボクがコツを話せるのはインタビューのことぐらいだと思うんですけど。
 「インタビューのコツはなんですか?」
――相手を緊張させないってことですね。雑談っぽい雰囲気を作るっていう。基本“こう聞かれたら、こう答えよう”みたいなビジネストークになりがちじゃないですか。あと、取材慣れしてる人はすぐそのモードに入っちゃうから、いつも喋ってる話を入れてくるんで、いかにそうさせないかっていう。
 「すごい」
――そういう流れになりそうになったら、“知ってます、その話。面白いですよね!”って言って、次の話題に行く。あとは、取材っぽい雰囲気にしないことですね。今日みたいな雑談っぽい感じで。
 「いきなり始まってましたもんね。びっくりしました」
――インタビュー相手の素の部分が出たほうが楽しいですから。
 「たとえばラジオとかで今後ゲストの方が来たりしたら、どうしようってなると思うんですよ。あんまり人に興味がないから」
――人に興味がないって、今、ハッキリ言っちゃいましたけど(笑)。
 「どんな人なのかなとか、なかなか……」
――ボクは逆なんですよ。人に対する興味だけはすごいあって、調べると聞きたいことがどんどん出てくる。それをどのタイミングで切り出すかしか考えてないですよね。
 「やっぱり興味ですね」
――“この人にこの話を聞きたい!”ってことがあれば、取材に関係ない話も普通にしますから。この前も哀川翔さんにVシネマをテーマにインタビューしたんですけど、“Vシネマと全然関係ないですけど”って言って、矢沢永吉さんと哀川 翔さんが初めて会ったとき、永ちゃんから握手を求めてきたんだけど、哀川翔さんが手を出したら、20分無言で握手したままお互いにらみ合ってたっていう(笑)。その件について詳しく聞いていいですか?って。
 「気になる!」
――そういう気になる話があったら詳しく聞きたくなるし、聞いた話は言いふらしたくなる。それがボクの仕事なんです。
 「素敵ですね」
――だから星野さんのポンコツな部分を聞き出したほうが、より多くの人に興味を持ってもらえるんじゃないかと思って。
 「伝わってくれるとうれしいです(笑)」
――曲もいいし、人間的にもおもしろいし、みたいな感じで。
 「そうなったらいいですね」
――でも、大丈夫ですか? 27日のイベントのトークコーナー。
 「不安です!」
――このインタビューを踏まえて、また音楽話を掘り下げますよ。みんなの前で。
 「ダメです、ダメです!」
――まずは今日の共演者の方々について詳しく聞いてみましょうって。
メーカー担当者 「ほぼ話せないと思います(笑)」
――演奏を担当してくれるワックワックリズムバンドさんには好きな曲がありますよね?
 「もちろん(笑)」
――この前のラジオが初めての共演だったんですよね。
 「そうです。ギターの山下(洋)さん」
――どうでしたか?
 「すごく素敵な方でした。ギターも素敵で」
――もしかして、そのときに思ったんですか? “ギターって、こんなにいろんな音が出るんだ!”って。
 「もうちょっと前です(笑)。ギター1本で〈楽園と季節風〉を歌ったんですけど、サンバの曲なのに、ギター1本でもこうやって、ちょっとしっとり歌えるんだと思って。楽しかったです」
――最近徐々にそういう交流が芽生えてきた感じですよね。ちゃんとわかるのはミッツイー申し訳さんぐらいですか?
 「ミッツイーさんは、すごく優しい方です」
――『タマフル』に呼んでくれたのもミッツィーさんだし。
 「はい。そこから私のCDを買ってくれたり、ライヴに来てくれる方も増えたので」
――ラジオ効果は大きいですよね。
 「本当にありがたいです」
――当然、RHYMESTER宇多丸さんのことも詳しいわけですよね。
 「はい。2人組の……」
――ライムさんとスターさんでね(笑)。
メーカー担当者 「もうひとりDJがいるから(笑)」
 「あ、そうなんですか! (小声で)……どうしよう。宇多丸さんも、すごく優しいです」
――『タマフル』はよく聞かれてるんですか?
 「はい。しまおまほさん……」
――しまおさんは、どんな人ですか?
 「女性……」
――ダハハハハ! すごい! 打率高いですよ、星野さん!
 「そうですか(笑)」
――最高におもしろいです(笑)。
 「でも、曲が出たときにラジオでいつもかけてくださって。それでツイッターが盛り上がってるのをみて、“うおー”って思います」
――“ありがとう『タマフル』!” “でも、そんなには聞いてない!”って(笑)。
 「……聞いてます」
――好きなコーナーは?
 「ミッツィーさんのDJのコーナーです」
――今回はちゃんと答えられた!
 「今、めちゃくちゃヒヤヒヤしてます(笑)」
――最後に、ちゃんとアルバムの話しとかしますか? アルバムで告知し忘れたこととか何かありますか?
 「さっき言っちゃったんですけど(笑)。1曲目に入ってる〈ムーンライトに誘われて〉っていう曲は、私が作っているんですけど、バラードでお気に入りなので、みなさんに聴いてほしいです。〈E・I・E・N VOYAGE〉っていう曲は、最初どんな曲になるかイメージできなかったんですけど、いざアレンジがあがってきたら、すごくいい曲になって。何度も聴いちゃってます」
――そもそも、はせはじむさんとか佐藤清喜さんとか、プロデューサー陣は星野さんと一緒にやることになって驚いていませんでした? “あれ? この子シンガー・ソングライターのはずなのに、そんなに音楽知らないぞ”って。
 「薄々感づいてたみたいです。今はバレバレで、“みちるちゃん!”って言われます(笑)。でも、いろいろ教えてくれて」
――恋愛映画が好きな人だから、当然、そういうモードで歌詞も書きたいでしょうし。
 「そうなんですよね」
――でも、そういう歌詞に合う曲がそんなにないっていう。
 「“好き”とか“愛してる”とか、そういうのはもういいからって言われちゃいます」
――“もういいから”(笑)。
 「もうちょっと違う目線で歌詞を書いてほしいっていうのは言われます。そうすると固まっちゃうんですけど」
――“それ以外の引き出しないんですけど、わたし”みたいな。
 「それでいろいろ苦戦してます」
――さくらももこの、おもしろエッセイみたいな要素を歌詞に入れたらいいんじゃないですか?
 「あははは。おじいちゃんとか出てきたり? それに佐藤さんがかっこいいサウンドを付けてくれて(笑)。でも、楽しんでやっていきたいです、これからも」
――是非やってください!
 「今日は、ありがとうございました。すごい変な汗かきました(笑)」
取材・文 / 吉田 豪(2014年7月)
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星野みちるの黄昏流星群 VOL.1
E・I・E・N VOYAGE Release Party
ameblo.jp/michiru-h

2014年7月27日(日)
東京 渋谷 club asia
開場 / 開演 16:00
前売 3,000円 / 当日 3,500円 (税込 / 別途ドリンク代)


[出演]
星野みちる


[talk]
吉田 豪 x 星野みちる x Pちゃん

[DJ]
クボタタケシ / 小西康陽 / はせはじむ / ミッツィー申し訳 a.k.a DJ Michelle Sorry / 露骨キット / 西寺郷太(NONA REEVES) / norinori70 / 畑川 司 / 椎名 大

[VJ]
サリー久保田

[Back Band]
Alto Sax: 小池久美子(Wack Wack Rhythm Band)
Trumpet: Tomoko(Wack Wack Rhythm Band)
Keyboards: 伊藤寛(Wack Wack Rhythm Band)
Guitar: 山下 洋(Wack Wack Rhythm Band)
Drums: 和田卓造(Wack Wack Rhythm Band)
Chorus: レモン(Wack Wack Rhythm Band)
Tenor Sax: 後藤正成(Scafull King, Wuja Bin Bin)
Bass: 岩渕尚史(Sloppy Joe)
Percussions: 及川浩志(Central)

[Back Dancer]
RINGO☆凛子 / MIKU

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