舞台から声優まで変幻自在の女優、犬山イヌコ。久々のソロ音源について語る!

犬山イヌコ   2007/07/06掲載
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 無闇と多めに盛る定食屋「多め亭(現・早め亭)」店主(ドラマ『時効警察』シリーズ)とポケモンのニャースが、実は同一人物!? ……ナイロン100℃の看板女優である犬山イヌコが、inuko inuyama名義で久しぶりの音楽作品『inu cafe』(写真)を発表した。変幻自在の活躍を見せるサブ・カルチャー界のミューズに話を訊いた。


ケラリーノ・サンドロヴィッチ主宰による劇団ナイロン100℃をはじめとする舞台活動はもちろん、アニメ『ポケットモンスター』でのニャース役などでもお馴染みの犬山イヌコ。最近ではTVドラマ『時効警察』シリーズに登場した定食屋のおばさん役での強烈なキャラクターが記憶に新しいが、古くは有頂天筋肉少女帯たまなどで知られるナゴム・レコードに関わったりと、リリース作品は少ないものの、音楽面でも異彩ぶりを発揮しているのもまた彼女だ。

 ケラの呼びかけにより始まったというinuko inuyama名義でのニュー・アルバム『inu cafe』の制作。彼はナイロン100℃のオフィシャル・サイトで犬山について“僕がプロデュースした今のところ唯一の彼女のアルバム(ニャースものは除く)は、自分が関わった中でも五本の指に入る出来だと思うのだが、当の本人にもほとんど思い入れがないらしいのは少しさびしい”とコメント。ケラにとってこのアルバムは、自信作『TOKYO PORCUPINE COLLECTION VOL.3 featuring INUYAMA INUKO』(93年/現在は廃盤)に対するリベンジなのでは!? といった深読みもしたくなる。彼女自身は「気に入ってないなんてことはないですよ。わしはそもそもが役者なんで。大っぴらに“いいでしょ!”とは言いづらいだけで(笑)」と謙虚。そして、DISC1、2とでまったくカラーの違う今作では、飄々(ひょうひょう)と振れ幅の大きさを見せている。


DISC1は、作家陣にケラをはじめ、BEAT CRUSADERS森若香織(exゴーバンズ)、曽我泰久THE GOOD-BYE)らを迎えたロック/ポップス・サイド。コケティッシュな歌声とともにどこか90年代を思わせる味わいは、柑橘系の炭酸飲料をイメージさせる。

「『TOKYO〜』の時は企画盤だったんで、“これをやって”ってものに完全に乗っかった感じでしたね。でも、今回は打ち合わせの段階から参加してます。やっちん(曽我)の<Our Song>は、念願かなった前回に引き続いて。<Superstar's Favorite>では香織ちゃんが仮歌を録音してくれて。これ、ゴーバンズのシングルだって言われたら、騙されていたなって思いましたね(笑)」。さらには、「もともと沖縄民謡が好きで、この曲を三線のアレンジでやりたかった」というポケモン・ソングのセルフ・カヴァー「ニャースのうた」(もちろんヴォーカルもニャース声)もラストを清々しく飾っている。

 一方、DISC2は、犬山の作詞/作曲によるシュールな小品集サイド。「子供の思うことを子供の状態で歌っているというか、小さな子の絵日記みたいなイメージですかね。以前から芝居の稽古中にちょこちょこ書たりしていて、こういうのはつくっててスゴい楽しい」とのことだが、『帰ってきた時効警察』第四話の劇中で麻生久美子がカヴァーした「しゃくなげの花」や「月見そばのうた」なども、オリジナルのインパクトは強烈だ。


 まったくベクトルの異なる2枚組だが、両サイドの魅力が合わさり、トータルで1+1が5にも10にもなる『inu cafe』。だが、聴けば聴くほどさまざまに表情を変える歌声を含め、犬山のアーティスト像が分からなくなってくるのも事実。そこらへんはやはり、“役者”だからかもしれないが……。



取材・文 兒玉常利(2007年6月)
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