パンク/ニューウェイヴに触発された何かをやりたい、表現したいという共通した思い──石井聰亙 x 田口トモロヲ対談

石井聰亙   2007/12/20掲載
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 石井聰亙田口トモロヲ──片や、『狂い咲きサンダーロード』 『爆裂都市/BURST CITY』といった狂熱のスピードとエネルギーに満ちた作品群で世界中を震撼させた“永遠の若手監督”、片や、ばちかぶりのリーダーとして80年代のインディーズ・シーンを駆け抜け、90年代以降は銀幕に欠かせぬ屈指の個性派俳優──二人は共にメジャーのシステムを拒否し、パンクに触発され、自らの表現を加速し研ぎ澄ませていったという共通点がある。

 二人のコラボレーション作『穴』(オムニバス映画『TOKYO BLOOD』収録)を含む石井聰亙の80〜90年代以降の作品を収めたボックス・セット『サイケデリック・イヤーズ』(2007年12月22日発売/TMSS-075 \24,990(税込))の発売を記念して、ついに両者の対談が実現。ともに1957年生まれの50歳が、永遠に変わらぬパンク・スピリットを闘わせる!


──お二人の最初の出会いは。

田口「ぼくはもう一方的に……同世代ですけど、ぼくがまだモラトリアム期間にいたときにはすでに監督は作品をバンバン出されていた。同世代の監督が出てきたっていうのは、ものすごい衝撃でした。なにかやらなきゃ、という刺激を確実に受けました。たぶんぼくだけじゃなくて、その時代に何かをやりたいと思っていた同世代の人たちにとっては、観ざるを得ない、マスト・アイテムだったと思います、石井聰亙っていう監督の映画は」


石井「俺、ガガーリン(ばちかぶりの前に田口が在籍していたバンド)見てるんですね」
田口「あ、そうですか!(笑)」
石井「なんか裸で歌ってた(笑)」
田口「あの頃、裸は当たり前でしたからね。もう全部、肛門までさらけだして(笑)」
石井「役者としては『鉄男』(89年)も観たけど、あれはガガーリンのイメージと同じだった。そのあと廣木(隆一)監督の『さわこの恋』(90年)で、普通の青年の役をやってて、そのほうが印象が強かったな。激しいことをせず、普通に男性として女性に対して“受け”の芝居ができる。キャパの広さを感じました」




『TOKYO BLOOD〜穴』より


──石井監督の処女作『高校大パニック』は1976年の公開で、ロンドン・パンク勃興の年というのがすごく象徴的な符合なんですが、やはりパンクにはご自分の表現とシンクロするものを感じておられたんですか。

石井「本当に可能性を感じたのは、ピストルズが解散して流行としてのパンクが終わったあとですね。パンクは一瞬で終わったけど、そのあとのいろんな可能性を切り開いたんですよ。パンクによって一切のタブーも規制もなくなって、あらゆる若いバンドが次々と出てきた。そこにすごく大きな刺激を感じました。そういう連中はほぼ同世代でしたからね。こりゃ負けられんと(笑)。俺たちもやるんだと。そういう時代の中で、自分たちも何かやりたい、表現したいという共通した思いがあった。8mm撮ってた連中は皆そうですね」
田口「ぼくもパンク/ニューウェイヴに触発されて、楽器ができなくても発想とガッツさえあれば表現できるんだってことを教えられた。そういうラインを作ってくれた一人が石井監督だった気がします。いろいろなジャンルの人たちが“よしやろうぜ!”ってタテじゃなくヨコの関係で繋がっていって、なにかを作り上げていった時代ですね」


写真は『高校大パニック』(DVDボックスI収録)より


──今回のボックス・セットの時代の監督の作品については、どういう印象を?

田口「ぼくは<穴>に出させていただいたんで、それはもう嬉しかったですねえ。あの石井監督の作品に出られるんだって。そのときだけはただのミーハーですよ(笑)。それでこの『TOKYO BLOOD』の1話目が、『狂い咲きサンダーロード』の後日談的な話じゃないですか。山田(辰夫)さんが普通のサラリーマンになって街を走るっていう。あれを見たときには狂喜乱舞しましたね」
石井「とにかく『逆噴射家族』までは一直線だったね。何も考えてなかった(笑)。ただただ目の前にあることを必死にやってきただけで。でも『爆裂都市/BURST CITY』を撮って、あれで本当に爆裂しちゃって(笑)。何もなくなっちゃって。そこで違うチャレンジをしてみようと思って、『逆噴射家族』を撮った。その次に『半分人間』(ドイツのバンド、アインシュテュルツェンデ・ノイバウテンの音楽映像)を撮って、かなり刺激になったんですよ。そこで新しい映画の撮り方をいろいろ試みて。初めて自分の表現っていうものを意識して撮るようになったんですよ」


『TOKYO BLOOD〜STREET NOISE』より

──そこから作風が変わっていきましたね。初期のような肉体性の追求というよりは、精神性を重視した方向に向かっていますね。

石井「『鏡心』(2005年)なんて、その極みにいっちゃった。だから今、激しいものをやりたくなってるんですよ。ただ昔と同じことをしても意味がないし、ハリウッドの作品と同じ土俵で勝負しても勝てない。やるからには世界一の表現を目指したいからね。そのためには自分の中の東洋人、日本人としてのアイデンティティや自然観、思想を見つめ直す必要がある。タランティーノベルトルッチもやろうとしたけれども彼らにはどうしても届かないところがある。そこが俺の勝てるポイントで。……そこで勝負してみたいですね」




『鏡心』より

──今度はぜひ田口さんとがっちり組んで。

石井「やりたいですよねえ!」
田口「いやあ、そんな、言っていただけるとは!<穴>のときだったかな。“今まであなたがやったことのない新しい魅力を引き出したい”って言っていただいたんです。それはすごく俳優にとって嬉しいことなんですよ」
石井「やはりきちっとした芝居ができる役者がいいし、それには底力がないと無理だろうし、その人の生き様みたいなものも映っちゃいますからね。田口さんは激しさと狂気、プラス、静かな“受け”もできる。それでいて色気がある。理想的ですよ。そうそういないですよ。私にとってはとても大切な方ですね」
田口「ありがとうございます。そういっていただけるだけで、今日来てよかった(笑)」




進行/文 小野島大(2007年11月)



【石井聰亙 プロフィール】

1957年福岡県出身。
日本大学芸術学部入学直後、8mm映画デビュー作『高校大パニック』(76年)を製作。『狂い咲きサンダーロード』(80年)でジャパニーズ・ニューウェイヴの急先鋒となる。以降、『爆裂都市/BURST CITY』(82年)、『逆噴射家族』(84年)といった斬新で前衛的なアクション映画を撮り続け、イタリアの第8回サルソ映画祭グランプリ受賞など、海外でも高い評価を受ける。その前後からジャパニーズ・パンク・ニューウェーヴ・シーンと共闘した数々の音楽ビデオと実験的短編映画製作に打ち込み、『エンジェル・ダスト』(94年/バーミンガム映画祭グランプリ受賞)で再び長編映画製作にカムバック、『水の中の八月』(95年)、『ユメノ銀河』(97年/オスロ映画祭グランプリ)と作品を発表。

 21世紀に入ってからは新型時代劇大作『五条霊戦記 GOJOE』(2000年)ののち、映画のジャンルを超越したハイパーエキサイトムービー『ELECTRIC DRAGON 80000V』(2001年)、『DEAD END RUN』(2002年)を発表。続けて2005年には、フルデジタル機材を使用して撮影も兼ねた『鏡心・<3DサウンドHD>完全版』を、デビュー時以来の個人ベースで製作後、全国上映ツアーを行った。
映画製作以外にも、テレビ・ドラマ『私立探偵 濱マイク』(第8話「時よ止まれ、君は美しい」や、ミュージック・クリップ、ビデオ・アート、写真、ライヴ活動……さまざまなメディアで独自の作品世界を追求している。



【田口トモロヲ プロフィール】

1957年東京都出身。

 80年代はパンク・バンド ガガーリン、ばちかぶりのヴォーカリストとして活躍。俳優としては1982年『俗物図鑑』で映画デビュー。

 1989年に塚本晋也監督作品『鉄男 TETSUO』広木隆一監督作品『さわこの恋』などに出演。1996年日本映画プロフェッショナル大賞を受賞。1997年に今村昌平監督作品『うなぎ』長尾直樹監督作品『鉄塔武蔵野線』松岡錠司監督作品『私たちが好きだったこと』などで毎日映画コンクール男優助演賞を受賞。

 映画以外にもテレビドラマ/CM/声優としても活躍。また、監督として『アイデン&ティティ』(2003年)を撮影する。NHKのドキュメンタリー番組『プロジェクトX』のナレーターもつとめていた。
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