【ジャクージinterview】ハイブリッドな新感覚エレクトロ・ポップ誕生――ドイツ発の3人組、ジャクージの日本デビュー・アルバムが登場

ジャクージ   2010/01/15掲載
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 ダブステップ、ラガ、ダンスホールといったヨーロッパ系ダンス・ミュージックをミックスしたようなハイブリッドなサウンドに、エレガントなヴォーカル及びラップが加わった新感覚エレクトロ・ポップ。それがジャクージだ。メンバーはスリランカ出身のMC=サシャ・ペレラ、イスラエル出身のサウンド・テック担当=オーレン・ゲーリッツ、ドイツ出身のビート・メイカー=ロボット・コッチという3人。今回日本限定盤として出た『BLN 4 JPN』は、2nd『ブリッツ・ン・アス』のポップなキラー・チューンと最新の新曲を収録した編集盤で、この後には3rd・アルバムのリリースも控えているという。初来日のサシャとオーレンの二人に話を聞いた。
──ジャクージはいろんなものをミックスしたハイブリッドな音楽をやっていますけど、そういうヴィジョンは2002年の結成当初からあったんですか?
サシャ 「初期の頃の〈フィッシュ〉や〈ブラック・バービー〉は、ラガ・テックやダビーなトラックの上に歌を乗せていて、そのスタイルが最初にあって、そこから発展していった感じ。最初はロバート(ロボット・コッチ)のPCだけで作っていて、まだその頃はオーレンがいなかったの。それが今ではオーレンが入って、サウンド・システムのあるスタジオができて、音の深さや音圧というところでは確実に進化してきているわ」
オーレン 「結成した2002〜2003年頃のドイツって、ライヴでエレクトロなことをやろうとするとみんなPCだけで音を出していたから、ライヴ・パフォーマンスとしてはすごくつまらなくてね。だから新しいことをやりたくて、生のベースと歌を加えて、観客とのコミュニケーションや音圧っていう要素を入れたんだ。そういうコンセプトは最初からあったね」


左からサシャ、オーレン、ロボット
(C)Rachelde Joode


──ライヴはエレクトロだけだったり、ベースが入ったり、ベースとドラムスが入ったりして、いろんなパターンがあるようですね。
サシャ 「ドラムスを入れたのは一回だけ。でも私はそれをあまり気に入っていなくて、機械的なビートの方が好きなの。生のドラムを入れると人間的なグルーヴになって、そうするとただのファンク・バンドになってしまうからね。エレクトロニックと生音の融合は、一歩間違えるとダサくてコマーシャルなものになってしまうのよ」
──エレクトロにこだわりがあるわけですか?
オーレン 「うん、ビートの部分ではこだわっている」
サシャ 「ただ、それ以外の部分ではオープンにやっているのよ。レコーディングではチェロやアコースティック・ギターを入れたりしているしね」
──いろんな音楽の要素があって、どれかひとつの音楽性に偏るということがなくて、結果としてひと言では言えないようなものになっていますよね。自然にそうなっているんですか?
サシャ 「セールスとかを考えて賢くやっていくなら、ひとつのジャンルに収まった方がいいと思うんだけど、でも私たちはそうやろうと思ってもできないのよ。エレクトロニック・ミュージックをやろうとすると、多くの場合はテクノよね。でもテクノって、エレクトロニック・ミュージックのフォームのひとつにしかすぎない。いろんな音楽をエレクトロを使ってやるのが、エレクトロニック・ミュージックなの。だからどんな方向へ行くこともできるのよ」
オーレン 「僕らの音楽がひとつの方向へ行かないのは、毎日ものすごい数の音楽を作っているからなんだ。あれもやりたい、これもやりたいって、いっぱいあるからね」
サシャ 「自分の体の中にたまっているものを、まずは吐き出したいのよ。だからひとつのフォームに偏ることはできなくて、いろんなことをやりたいの」


(C)Rachelde Joode


──これまでのアルバムでいうと、2nd『ブリッツ・ン・アス』で一気にポップになりましたよね。それが今回の『BLN 4 JPN』に入っている新曲では、対照的にダークな曲が多いように思えましたが。
サシャ 「1stよりも2ndの方がポップなものを作ることができて、それは私たちのいるベルリンのゲットーの中で、ロサンゼルスの人たちも引きつけられるくらいのポップなものを作ろうとがんばったからなの。それができたから、次はその反対のことをやりたくなって、ニュー・アルバムはもっとダークなの。全体を通してダークで、抽象的な雰囲気で統一したアルバムなのよ」
オーレン 「俺たちにとってダークな部分とポップな部分というのは、つねに両方とも持っていたいんだ。ただ新作は、色で言えばブルーなアルバムにしたかった。つねにハッピーな人なんていないし、つねに暗い人もいないだろう? いつも両方の部分があって、新作はそういうブルーな色になったってことなんだ」
──ということは、これから先も作品ごとに変化していきそうですか?
サシャ 「どんどん変化していくことが、自分にとっていいことだし、当然のことだと思うわ。それができるのも幸運だと思うしね」
取材・文/小山 守(2010年1月)
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