【特別企画】アヴァンギャルド大集結“プレザンス・エレクトロニック”をレポート

シュトックハウゼン   2010/06/02掲載
はてなブックマークに追加
 “クラシックの現代音楽”という枠を超えて、電子音楽、ノイズ、インダストリアル、エレクトロニカ……あらゆるアヴァンギャルドな顔ぶれが集まるフェスティヴァル、“プレザンス・エレクトロニック”。シーンの最前線をいくパフォーマンスの様子を、パリからお届けします!
 今年20周年を迎えたラジオ・フランス(フランス公共ラジオ放送局)の現代音楽フェスティヴァル“プレザンス”の電子音楽バージョンとして、2005年から始まった“プレザンス・エレクトロニック”。今年も3月26〜28日の週末、パリ市の多目的現代文化施設“104”で行なわれ、アヴァンギャルドな音楽を聴くため多くの人が足を運んだ。入場無料ということもあって大盛況で、夜のコンサートには入れない人も出たほど。主催のGRM(国立視聴覚研究所“音楽研究グループ”)は、楽譜を使わず、直接、音を素材として扱い研究・作曲する“ミュジーク・コンクレート”のコンセプトを提唱したピエール・シェフェールによって創立された。そのためクラシック音楽の作曲を基盤にした器楽&電子音楽のミックス作品を主流にしているイルカムと異なり、クラシック畑でない作曲家も多く、“クラシックの現代音楽”という枠組みに縛られない。このフェスティヴァルでもアカデミックな電子音楽から、実験音楽、インダストリアル・ミュージック、ノイズ・ミュージック、エレクトロニカまでジャンルを横断した面白い顔ぶれが集まるのが魅力。昨年も、KK NULL、ミカ・ヴァイニオ、Sachiko M、爆発的なeRikmとF.M.アインハイトのデュオなど充実した内容で楽しませてくれた。


フランソワ・ベイル
3月27日(土) フランソワ・ベイル
(C)Ina / Didier Allard


 昨年から会場を移した“104”では、広いスペースを使った“アクースモニウム(マルチスピーカーシステム)”の豊かな音響を、床に座ったり、寝転がったりして聴ける午後のコンサートが一つの目玉アトラクションになっている。今年は26日カールハインツ・シュトックハウゼン、27日フランソワ・ベイル、28日ルチアーノ・ベリオというプログラム。上下左右、縦横無尽に駆け巡るダイナミックな音の動き、音のエネルギーに包まれる感覚を十二分に味わうことできた。とくにベイルの「音響実験」(1969〜1972/2010)は、沈黙に彩られ、さまざまなサンプリング、具体音、不快なまでに反復される、きしむ電子音などが次々と浮かび上がり、ポリフォニーをなすもの。“アクースモニウム”を考案した本人としてその醍醐味をしっかり聴かせてくれた。


フランソワ・ベイル
3月27日(土) クリスチャン・フェネス
(C)Ina / Didier Allard
 今年のポピュラー系参加アーティストは、スキャナーと、坂本龍一とも共演しているクリスチャン・フェネス。どちらもアンビエント色濃く、小単位の音型の反復・変化が心地よい。フェネスのエレキ・ギターは音の重なりの中、色の変化、あそびが効いていた。また個性派シャルルマーニュ・パレスタインはピアノ即興演奏でいつものミニマリスト・スタイルのドローン・ミュージックを披露。フェネスとともに有名どころとして人気を集めた。


シャルルマーニュ・パレスタイン
3月27日(土) シャルルマーニュ・パレスタイン
(C)Ina / Didier Allard
 面白かったのは、リウィンドのヒューマンビートボックスとディエゴ・ローザのターンテーブル即興の見事な掛け合い、オーケ・パルメ ルードの任天堂wiiのリモコンで操作する電子音楽。会場を盛り上げた。

 最終日トリは、フェスティヴァルの常連になりつつあるカスペール・トープリッツが、野尻敦子のビデオを背景に、エレキ・ベースとラップトップで、東京在住のズビグニエフ・カルコウスキの曲を演奏。ベースの低音が耳栓なしで耐えられうる限界までうなり轟き、まさに耳というよりは身体で響きを受け止める感覚。執拗なリズムの繰り返し、ベースの低音を引き裂くノイズ、トープリッツの単なるインパクトだけに終わらない、強烈な何かを残すパフォーマンスで今年の幕が閉じた。


カスペール・トープリッツ
3月28日(日) カスペール・トープリッツ
(C)Rene Pichet


■“104”Webサイト
http://www.104.fr/#fr/Artistes/A181-Presences_electronique_2010



取材・文/柿市 如(2010年3月)
最新 CDJ PUSH
※ 掲載情報に間違い、不足がございますか?
└ 間違い、不足等がございましたら、こちらからお知らせください。
※ 当サイトに掲載している記事や情報はご提供可能です。
└ ニュースやレビュー等の記事、あるいはCD・DVD等のカタログ情報、いずれもご提供可能です。
   詳しくはこちらをご覧ください。
[インタビュー] さらに成長をとげた2nd EPをリリース、鞘師里保[インタビュー] 和田彩花、全作詞とアートワークを手掛けたアルバム完成
[特集] 『マッカートニー 3,2,1』ポール・マッカートニーがこれまでの音楽活動をリック・ルービンと語るドキュメンタリー[インタビュー] デビュー20周年のジャズ・ヴォーカリスト、待望の新曲をリリース Shiho
[インタビュー] BeatleDNA、ビートルズへの思いがあふれる人気シリーズが完結 制作担当者が語る実現までの笑いと涙[インタビュー] 西から上がるロックンロール新時代の狼煙、THE PERRY
[インタビュー] 山中千尋、レコード・デビュー20周年を記念して、新録を含むバラード・ベスト・アルバムを発表[インタビュー] 佐藤浩市、キャリア初のヴォーカル・アルバムは豪華ゲストを迎えた無観客ライヴ
[インタビュー] 連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」のサントラを音楽担当の金子隆博が語る[インタビュー] こだわりがつまった完全セルフプロデュースEP、山村 響
[特集] ドキュメンタリー作品『ザ・ビートルズ:Get Back』を観た![インタビュー] ILL-BOSSTINO(THA BLUE HERB)、dj hondaとのジョイント・フルアルバムを発表
https://www.cdjournal.com/main/cdjpush/tamagawa-daifuku/2000000812
https://www.cdjournal.com/main/special/showa_shonen/798/f
e-onkyo musicではじめる ハイカラ ハイレゾ生活
Kaede 深夜のつぶやき
弊社サイトでは、CD、DVD、楽曲ダウンロード、グッズの販売は行っておりません。
JASRAC許諾番号:9009376005Y31015